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イスラム教徒が入れる日本の飲食店は1%以下! 日本ムスリム協会理事に聞く”おもてなし大国”ニッポンのリアル

2016年の訪日外国人数は6月5日に過去最速のスピードで1000万人に到達した。訪日外国人のなかには美味しい「食」を求めて日本へやってくる観光客も少なくないという。

しかし、その一方で「食」を理由に日本への旅行を断念している人々がいる。それが「イスラム教徒」だ。

今回、日本社会では馴染みの薄いイスラム教徒の食事情について理解を深めるため、日本ムスリム協会理事の樋口美作氏・遠藤利夫氏に「イスラム教徒と食をめぐる問題」についてお話を伺いました。

インタビューのなかで「イスラム教徒が入れる日本の飲食店は1%に満たない」という驚きの事実を語った遠藤氏。その言葉の背景にはどんな問題があるのでしょうか?

イスラム教徒から見た日本

ーー:本日はよろしくお願いします。

遠藤利夫氏(以下、遠藤):あのね、本来はあなたにお茶を出すところなんだけど、昨日からイスラムではラマダーンという断食をする月で我々もお茶を飲まないですし、お客様にも出さないという決まりなんでね、そこをどうかひとつご理解を。

ーー:そうなんですね、おかまいなく。では、まずイスラム教徒の人口や信仰について教えていただけますか?

遠藤:世界のイスラム教徒の人口は、およそ16億人と言われています。20年後〜30年後には20億人ほどになる予想です。

日本にいるイスラム教徒の人口については、統計がないんですね。推定でおよそ15万人ほどいて、うち日本人は1万人ほどではないかと言われています。

樋口美作氏(以下、樋口):外国人でもずっと住んでいる人なのか、一時的な旅行者やビジネスマンなのか、そういった長期・短期に関してはわからないので、はっきりと統計はとれてないんですね。

ーー:海外にいるイスラム教徒の方々からみた日本の認知度というのはどの程度なんでしょうか?

遠藤:日本がロシアと戦争をして勝ったという歴史があり、その歴史のおかげでイスラム諸国で暮らす人々の日本に対する認知度はかなり高いです。

樋口:実は、生活スタイルや道徳観はイスラム教徒と日本人は近いです。忍耐、誠実さ、弱者に親切であれ、親を大事に、挨拶も重要視します。そういったところも非常に似ています。

なぜイスラム教徒は豚肉とアルコールを口にしないのか?

ーー:イスラム教徒の信仰について詳しくお伺いしたいのですが、よろしいですか。

樋口:まず、日常生活に近いところで言うとイスラム教徒には教義上の義務行為というものがあって、1日に5回の礼拝の時間があります。日の出前・お昼・午後・日没・夜の5回です。あと食事で言うと、豚肉と豚肉に由来するもの、アルコールが禁止です。

ーー:なぜ禁止なのでしょうか?

樋口:アルコールに関しては、飲むと酔って理性を失い悪事に走ってしまうからですね。豚肉については、不浄視されているからです。

ーー:コーランにもそういった記述があるんですか?

遠藤:そうですね。コーランに「あなたに禁じられたものは、死肉、流れる血、豚肉、アッラー以外の名を唱え殺されたもの、絞め殺されたもの、墜死したもの、角で突き殺されたもの、野獣が食い残したもの、ただしこの種のものでもあなたがたが止めを刺したものは別である」との記述があります。

死肉というのは、どんな死に方をしているかわからないもの。なので、イスラム教徒は基本的にイスラーム法による屠畜(家畜等の動物を殺生すること)をします。

ーー:殺生目的ではなく、食して生きるためにということですね。

遠藤:そうです。肉は自分たちで屠畜したものを食べます。ただ、豚肉はどこにいっても食べませんね。

イスラム教徒は醤油もみりんも口にできない?

ーー:近年、日本にイスラム教徒の観光客が増えているそうですが、理由はあるんですか?

遠藤:3〜4年前に尖閣諸島問題や竹島問題があって、中国や韓国からの観光客が一時激減しましたよね。そこで、日本政府が東南アジアからの観光客を増やす活動を始めたんです。東南アジアにはイスラム教徒が多いので、イスラム教徒への受け入れ体制を整えるという点で始まったのがおもてなしの「ハラール認証」です。

「ハラール」とは、合法的なものとか、許されたものを意味するアラビア語で、イスラム教徒にとって日々口にする食べ物がハラールであるかどうかは非常に重要な意味をもつわけです。そういった理由で、世界各国でイスラム教徒の消費者を安心させ、信仰を手助けする役割としてハラール認証の必要性が強調されてきたわけです。

ーー:日本のハラール認証への取り組みは3〜4年前に初めて始まったんですか?

遠藤:そうです。それまではイスラム諸国に製品を輸出している一部の企業は海外向けにやっていましたが、日本国内ではハラール認証というのはなかったです。

ーー:ハラール認証で特に厳しいものはありますか?

樋口:調味料も対象になります。アルコールが添加されている醤油、みりんなどはダメですから。ただ、醤油やみりんの醸造過程で発生するアルコールなら大丈夫と言われます。日本に行きたいけど、食事が難しいという大きな障害があるんです。だからこそ、ハラール認証の問題を解決していかなければと。

遠藤:ちなみに、化粧品や医薬品でアルコールや豚由来物が入っているものもダメです。現在は工業技術が発達して、いろんなものがわからないように使われているので大変なんです。

イスラム教徒が入れる日本の飲食店は1%以下

遠藤:今年の3月に東京都では、どこのレストランでハラール認証された食事を提供しているかがわかる冊子を作ったんですよ。

ーー:この冊子を見る限り、ハラール認証を受けている店舗が少ない気がするのですが…イスラム教徒の方が通える日本の飲食店ってどのくらいあるんですか?

遠藤:残念ながら、飲食店全体の1%もいかないでしょうね。

ーー:1%以下ということは、イスラム教徒の方々が日本に来るのは難しくなりますよね。

遠藤:そうなんですよ。ほとんどの飲食店に入れないわけですから。ただ一方で、ハラール認証の基準が厳しすぎて日本では認証の発行が難しいという問題もあります。本来はお酒が置いてある、それだけでもダメですから。

ーー:豚肉は絶対にダメだけど、お酒ならちょっとくらい飲むというイスラム教徒の方もいると聞きましたが。

樋口:。義務行為は神様と自分との約束ですから。最終的に自分が来世は天国に行けるかどうかは自己責任ですからね。自分が考えるのです。悪いことをしてしまっても、良いことをして帳消しにするんです。

ーー:1つ悪いことをしたら、1つ良いことをして罪を償うという。

樋口:そうですね。

遠藤:イスラム教徒がラマダーン月に毎年1ヶ月間の断食をするのも、過去のすべての罪を許して貰おうと思っているからです。あくまで自己解釈ですが、イスラム教徒の中にはお酒を飲んで、ラマダーン月に断食することで許して貰おうと安易に思っている方もいます(笑)。

ーー:かなり都合がいいんですね(笑)。

樋口:ほとんどの人は違いますよ。アルコールも豚肉も飲食しません。

日本ムスリム協会によるハラール認証への取り組み

樋口:うちは宗教法人だから本来ならハラール認証にああだ、こうだと関わる立場にはないんです。しかし日本の事情を知らない同胞が日本へ来るわけです。そうすると安心して食事のできる飲食店がどこにあるのかという問題や言語の問題もあって生活に困るわけですよ。

その人たちに日本の状況を提供するのは日本人のムスリムしかいないということで、私たちはボランティアで食に関する情報を提供しているんです。

ムスリムが安心して暮らせるように国内対応のハラール委員会を設置して、推薦基準を満たした飲食店に向けて「推薦状」を発行しているんです。間違ってほしくないのは「ハラール認証」マークを発行しているわけではないということです。マレーシア政府が出している「ハラール認証」基準はとても厳格で、トラック運送や倉庫からレストランの厨房まで全て厳密に調べるんです。非イスラーム国の日本では絶対的に無理なんですよ。

(注:マレーシアは世界で唯一、政府がハラール認証を行い、「グローバル・ハラル・ハブ」となることを国策として推進しているため、ハラール認証への信頼性が高い)

かといって、自分たちで独自の「ハラール認証」基準を作ってしまうとマレーシアの「ハラール認証基準」とダブルスタンダードになってしまう。だから、うちの協会では「ハラール認証」は出さないことにしたんです。

それよりもその飲食店がある一定のハラール基準を満たすことができるなら、「ムスリム食品推薦状」を出すことにしたんです。なにも店選びの基準がないよりは、うちが出す「ムスリム食品推薦状」があったほうが少しは信頼できるというイスラム教徒もいるのでそういう取り組みを始めたんです。

樋口さんがムスリムに紹介するお店3選

ーー:樋口さんがイスラム教徒の方に「おすすめのお店」を聞かれたら、どちらを紹介しますか?

樋口:基本的にはムスリムの方が料理人をやっているお店を紹介します。それなら安心ですからね。

・野菜を中心に素材の味を活かしたイラン料理がおいしい「アラジン」(六本木)

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE14/SUB1402/100000046853/749268/

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・世界三大料理のひとつトルコ料理を味わうなら「ボスボラス」(新宿)

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE1/SUB104/100000037594/1358508/

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE1/SUB104/100000037594/774152/

・ピッツァ、ケバブの種類が豊富な「ミセスイスタンブール」(羽田空港国内線ターミナル)

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE19/SUB1903/100000734079/9378100/

画像引用元:https://retty.me/area/PRE13/ARE19/SUB1903/100000734079/4147937/

樋口:日本のみなさんには、ムスリムにまつわる食の問題をもっと知っていただきたいですね。

ーー:本日はイスラム教徒の方々が抱える食の悩みについて本当に勉強になりました。ありがとうございました。

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