うどん年間400食！のうどん女子が説く「脱・さぬきのススメ」【都内でおすすめの名店5選付き】

Yamada Kazumasa 2016/06/22

「コシがないうどん」はうどんじゃない？

90年代の大ブームにより一躍脚光を浴びた「さぬきうどん」。

現在も都内には多くのさぬきうどん屋がありますが、今、その人気が思わぬ方向に影響しているようです。

年間400杯以上のうどんを食べ、自身のメディア「うどん天国、ニッポン」で全国のうどん情報を発信するライターの井上こんさんに聞きました。

井上こん氏（以下、井上）：ブーム以降、都内のさぬきうどん屋の店舗数は爆発的に増えました。しかしそれに伴い、いつしか一部の食べ手の間で「コシこそうどんの真なり」、ひいては「さぬきイズベスト」といったやや乱暴な評価軸も見られるようになりました。

口コミサイトをのぞくと、さぬきを謳っていないにも関わらず「さぬきのようなコシがない」という理由でネガティブな評価を受けるお店は少なくありません。

たとえば、新宿の「慎」。

瑞々しく、しなやかな麺が人気の同店では、たしかに香川県内で製粉された小麦粉を使ってこそいるものの、そのことは打ち出していませんし、出汁も麺との相性を考えた関西風であるにもかかわらず、ときに前述のような評価を受けることも。うどん愛好家として、こういった風潮には違和感を覚えます。

井上：そもそもコシの定義があやふやなんです。コシというのは、「タンパク質やデンプン、水分量などが複雑に関係した粘弾性のようなもので、麺表面に歯を押し返すような弾力があり、それでいて内部は餅のように伸びやかなもの」と私は考えているのですが、とかく「コシ＝硬さ」だと思い込んでいる人が多いです。

その裏に、さぬきと謳いながらもただ硬いだけの麺を出す不十分な店の存在があるように思います。

個人的に、都内で本当においしいさぬきうどんを出す店というのは水天宮前「谷や」や神保町「丸香」、赤羽「すみた」ほか数軒を加えた10軒程度だと思っていて、大半の「名ばかりさぬき」の店が冒頭のような誤った認識を生み出す原因となったと考えています。

▲「谷や」のうどん。打ちたて・切りたて・湯がきたての「三たて」を忠実に守る、正統派さぬきうどん屋

「脱・さぬきうどん」を提案しているものの、決してさぬきうどんの不食キャンペーンを企てるものではありません。ただ、「店舗数の多さ＝ヒエラルキーの頂点」にあるかのような解釈は少々短絡的ですし、特に東京のさぬきうどん屋は玉石混交、むしろ良店のほうが少ない。

一方で東京は地方うどんが数多く集まるうどん天国でもあります。各々の魅力を見過ごさないためにも、あやふやな物差しは一度捨ててみてはいかがでしょう。

涼感あふれる細麺がウリ、稲庭うどんの名店「佐藤養助」

井上：稲庭うどんの名店で、丁寧に綯われた涼感あふれる細麺がウリです。繊細な見た目からは想像できない瑞々しい弾力がこれからの季節にぴったりです!

東京に住む福岡県出身者が通う、博多うどんの「丼拓」

井上：博多うどん不毛の地である東京において、福岡出身者の心のよりどころのような存在。ふんわり柔らかなうどんとウルメイワシやカツオ節などの削り節から引いた出汁は郷愁の味です。

超極太麺が人気の武蔵野うどん「うちたて家」

井上：硬麺が好きな方なら、ぜひ池袋の「うちたて家」は押さえておいてください！　こちらはうどん界の雄と呼ぶべき武蔵野うどんのお店で、麺は1cm超とたくましく、噛むとアゴにずしりと来て……私は“アゴ泣かせ”と呼んでいます（笑）。

うどん界の新勢力"豊前うどん"が食べられる「大地のうどん」

井上：今、私が注目しているのは福岡生まれの「豊前うどん」です。写真は今年の3月、福岡から東京初進出を果たした「大地のうどん」のもので、厳しい温度管理の元で熟成された麺は透明度が高くツヤのある細麺。粘りとコシが共存した素晴らしい仕上がりです。

関西うどん界のカリスマが手がける「釜たけうどん」

井上：関西うどん界のカリスマ・木田武史氏が手がけ、今年ビブグルマンを獲得した大阪発のお店です。「大阪さぬき」の異名をとる太麺はモチモチとしたリッチな弾力で食べ応え抜群！　その太麺とやや甘めの出汁も相性ぴったりです。

（注：ビブグルマンとは、グルメ情報のガイドブック「ミシュランガイド」に導入された評価指標で、従来の星「三つ星、二つ星、一つ星」の評価からは外れるものの、安くておすすめできる店舗に与えられる印）

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