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クルム伊達公子がつくる「ドイツパンと淹れたてコーヒー」のお店。恵比寿・FRAU KRUMMのこだわりとは

クルム伊達公子プロデュースのベーカリー「FRAU KRUMM」

2016年8月4日、JR恵比寿駅から徒歩5分ながら閑静な裏路地にオープンした「FRAU KRUMM」は、早朝7時半からオープンし、焼きたてのドイツパンと共にオーダーを受けてからドリップする淹れたてのコーヒーを提供するベーカリーストアです。

店名から分かるように、このお店は両親の影響で6歳からラケットを握り、高校を卒業してプロテニスプレーヤーとなって世界で活躍するクルム伊達公子さんがプロデュースしました。

ラウゲン液で艶やかに輝くブレッツェルやスタンゲン、ドイツを代表するシュトロイゼルクーヘンなどの菓子パンは本場ドイツでの生活経験を活かした本格派。

単なる著名人の飲食店経営というありがちな事象を超えた何かを感じさせられます。

開店までの経緯、開店3か月を迎える現在の感触、今後の展開について、「FRAU KRUMM」のブランド広報と、店舗スタッフの高橋ジョアンさんにお話を伺ってきました。(以下、敬称略)

生活に溶けこむヨーロッパのカフェに感銘を受けた

福地:「FRAU KRUMM」はクルム伊達公子さんが世界の暮らしを見て、経験して、感じた思いを具現化して、消費者とそれを共感することを目指したブランドだということがHPに記されていましたが、ドイツパンとコーヒーをその第一号店の主役にされた理由はなんだったのでしょうか?

広報:すごく漠然とした表現になりますが、ヨーロッパ独特のゆったりとした時間の流れを体験して欲しいという想いがベースになっています。その具体的な表現が「カフェ」という形なのです。

実際にヨーロッパで生活した中で、カフェが暮らしに溶け込んでいて、つまり人々が日常的にカフェを利用して、そこで過ごす時間を楽しんでいるところに感銘を受けていたことが出発点となっています。

今回はとてもコンパクトな店舗ですが、イートイン席を設けたのも、こうした意図があったからです。

高橋:伊達さんはパンとコーヒーはもともと大好きで関心があったそうですが、伊達さんの感性に最も響いたのがブレッツェルやラウゲンクロワッサンだったことから、「ドイツパン」を主力にしました。

福地:パンやコーヒーを通して、食文化を紹介したいという大きな意図があったのですね。

広報:例えば朝食ですが、日本ではパンは夜買って帰って、朝家で食べるのが一般的になっていますが、ヨーロッパでは朝散歩ついでに街へ出ると焼きたてのパンがあって、それをカフェで食べるというのが定番です。

営業開始時間を7時半とし、ブレッツェル、ラウゲンクロワッサン、デニッシュ系などの主力商品は開店から出揃うようにしてもらったのもその生活スタイルを紹介したいという伊達さんの意向を汲んだものです。

福地:他に食文化の紹介という観点での伊達さんのこだわりを感じられる部分はありますか?

広報:慌ただしい朝も少しでも寛いでもらえるようカウンター前面に自然木をあしらうなどナチュラルでリラックス感のあるものを取り入れたのも伊達さんの提案でした。

設計はもちろん専門家にお願いしていますが、ディスプレイや照明などにも伊達さんの意見をうまく取り込んでいただきました。

高橋:制服となっている七分袖のTシャツには、オーガニックコットンが使用されています。これも伊達さんのこだわりで、ナチュラルなイメージで考案されました。エコバックが麻袋というのも同様です。

夏場は厨房が暑くなるため、半袖にしようということになり、プロテニスプレーヤークルム伊達公子のスポンサーであり、ドイツに本社を置くアディダス社のものを着用しています。

パンやコーヒーへのこだわり

福地:思いの伝達手段としてのパンやコーヒーへのこだわりについて教えてください。

広報:特にブレッツェルやラウゲンクロワッサンには伊達さんのこだわりが詰まっています。ドイツの粉を使用している点もそうですが、こだわりどころは形です。

太いところはもっちりしていて、細いところはカリッとしている、そのギャップが必要だとのことで、かなり細かいオーダーが入りました。それらを吸収してたどり着いたものを店頭に並べています。

高橋:コーヒーは堀口珈琲(本店:東京都世田谷区)のものを使用していますが、開店前に主力のブレッツェルやラウゲンクロワッサンに合うものを、伊達さんご本人が試飲して選んだのがクルムブレンドです。

コクがあって力強い味わいで、しっかりとした食感や、香ばしい風味とよく合っていると私も思います。テイクアウトも含めて開店からじわじわとご愛飲いただける方が増えている、という実感もありますね。

広報:パンはドイツ風のものばかりでなく、フランス的なハード系やヴィエノワズリー、日本の食パンなども置いています。

食パンを買いに入ってみたら、ブレッツェルとかラウゲンクロワッサンが目立っていたから、試しに買ってみたのが食べ初めというお客様がリピートしてくださっていて、主力商品として売り出したというこちらの意図と、美味しいからまた買いに来たというお客様の需要がマッチしてきているようなところもあります。

福地:ドイツパンにこだわり過ぎず、バランスよく商品構成を考えたところが、ドイツパンを受け入れてもらえる一因になったという一面もありそうですね。

広報:この辺りは、国籍を問わず海外生活体験のある方も多く住まわれているのですが、本場のドイツパンを知る方々にも「美味しい」と言っていただけるのも嬉しいですね。

ドイツ大使館や、アディダスの役員でドイツ国籍の方々も気に入っていただいていて、直にご来店いただくこともあります。

「FRAU KRUMM」が作りたい空間とは

福地:店舗のデザインで活かされた感性も含め、伊達さんはスポーツだけではなく食でもプロフェッショナルにご活躍されそうな予感がします。

今後の展開についてはどのようなイメージを持たれているのでしょうか?

高橋:少しずつ固定客、特に店内で焼きたてを楽しんで下さるお客様が増えています。リピートしてくださる方にもっと楽しんでもらえるようにパンもコーヒーもバリエーションを増やしていきたいですね。

広報:3か月がようやく過ぎようとしているところですが、設計・製造・運営…お店の全てに多くの力を借りています。それぞれのプロに支えられて、いまは勉強させていただいているというのは伊達さんが常々口にしていることです。

まだ将来はどうしたいと具体的に申し上げる段階ではないかもしれませんが、できれば今回は実現できなかったカフェとしての席数の確保を2号店ではまず目標に掲げたいと思います。

福地:飲食ではない方面でのブランド展開はお考えなのでしょうか?

広報:それはいまのところ考えていません。まずはここで勉強させてもらったことを次で活かしたいと思っています。

福地:2号店では、サンドイッチを超えてカフェプレートなど料理の提供もお考えですか?

広報:いきなり料理は難しいかもしれません。まずはパンとコーヒーを、ヨーロッパさながらの広いスペースでゆったり楽しんでいただきたいです。

「FRAU KRUMM」が作りたいのは、「街の中にあるカフェ」です。なので、駅ビルの中で大きくやりたいというよりは、ビジネスもあり、住居もあるところで地元に根付いた店をやりたいと思っています。

次もそんな立地でご縁があればと考えています。東京とも限りませんし、極論を言えば日本とも限りません。ブランドの世界観を大事に次の展開を考えていきたいと思っています。

福地:人々の生活の中に溶け込んだ、という伊達さんのカフェに対するイメージを大事にされていることを感じます。だからこそドイツパンをメインテーマにしつつも、食パンがここにあるのでしょうね。

広報:伊達さんも気に入っていて、お店に来た時は食パンも買って帰ります(笑)。

リハビリ中で東京に居ますし、もっと将来的にテニスをリタイアしたら拠点は東京になるかもしれませんし。

福地:まだまだ先のことかもしれませんが、そうなったら東京には少し店舗が増えそうですね。楽しみにしています、本日はありがとうございました。

これからは「パンの楽しみ方」を売る時代へ

イートインスペースを設けたり、カフェを併設してくれたりするお店が増え、日本のパン屋さんはパンを売るだけではなく、パンの楽しみ方も一緒に売ってくれるようになりつつあります。

そんな中で、具体的にドイツの、ヨーロッパの生活スタイルを提供することをブランド理念と謳う「FRAU KRUMM」の出現は、日本のパン屋さんの進化のスピードをより早めてくれる起爆剤になるのではないかと私は期待しています。

私にとって「ふらっと」という場所でないのが残念ですが、「わざわざ」焼きたてパンと淹れたてコーヒーの朝食を楽しみに出掛けてみたいなと思わされました。

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