日本ではすっかりおなじみの明太子や納豆を使った和風パスタ。
時々無性に食べたくなることありませんか?
そんな和風パスタ。イタリア人は果たしてどう感じているのか?
素朴な疑問をぶつけてみました。
コンサバティブなイタリアの食文化は郷土密着型
教えてもらう人:ジュゼッピーナ スクアルゾンさん
在住10年、流暢に日本語を話す生粋のイタリア人。大学で日本文学を学び日本文化に関心を持つ。現在はイタリア食材の専門商社に勤め、イタリア食材に対しての造詣は深い。
Retty編集部(以下Retty): 納豆パスタや明太子パスタは食べたことはありますか?
ジュゼッピーナ スクアルゾンさん(以下ジュ):食べたこと、ありますよ。日本に来て間もない頃、同僚と一緒に食べに行き、初めて見たときは「⁈」と思いました。納豆は大好きなんですが、うーん……。イタリアではパスタは伝統的な料理なので、こういうアレンジされた食べ方はしないですね。
Retty:もし、イタリアに和風パスタのお店ができたら、受け入れられると思いますか?
ジュ:うーん、難しいでしょうね。お寿司とか日本の料理ならばOKですが、パスタはイタリアのものなので、アレンジされることに抵抗があります。特にイタリアは食文化については保守的です。
イタリアという国はもともと一つの国ではなく、小さな国に分かれていて、それぞれにフランス、スペイン、アフリカなど外国の影響を受け、独自の文化が築かれた歴史があります。
昔は交通手段がなく交流もなかったため、その地域でしか食べられないチーズやパスタ、生ハムが作られ、そうした郷土色が今も色濃く残っているんです。
Retty:パスタもその地域でしか作られていないものがあるんですか?
ジュ:はい。パスタはイタリア全土で約300種あると言われています。
Retty:300種!そんなにあるんですね。
ジュ:イタリアの食文化であるパスタは、地方によって乾麺の多い地域と生麺の多い地域に分かれていたり、ソースに入れる具も魚、肉、野菜と地元の食材を使うので、地方毎に個性を持っているんです。
Retty:パスタってそんなに奥が深い食べ物だったんですね……。
そこでジュゼッピーナさんオススメの多彩なイタリアの郷土料理を食べられるリストランテ「インカント」さんにお邪魔し、さらにパスタについて深く教えていただくことにしました。
広尾のリストランテで、本場イタリアのパスタに挑むシェフに聞く!
今日お邪魔するのは広尾、天現寺交差点近くの「インカント」。
- インカント
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東京都 港区 南麻布
イタリア料理
小池教之シェフ
中学生の頃からイタリア料理人を志す。日本のイタリア料理店を経て32歳の時にイタリアへ。約3年に及びイタリア各地の店を巡り、郷土料理を学ぶ。その間イタリアを数回行脚。インカントでは、イタリア全20州の郷土料理を振舞い、本場仕込みの手打ちパスタも種類豊富に用意。土着品種のワインとのペアリングが楽しめる。
店内に飾られている鮮やかな地図はイタリア食材の産地が描かれたもの!左がサラミで右がチーズ。
ジュ:インカントさんは本当に人気のお店で、予約もなかなか取れないんです。特にパスタは大変素晴らしいです!
Retty:これ、手打ちパスタの見本だそうですが30種以上並んでいますね。
ジュ:これほどたくさんのパスタは私も見たことがありません。私の知らないものもありますね。
Retty :例えばブシャーティとコルディロ ディ フラッテは、形は似てますが違いは太さだけですか?
小池シェフ:ブシャーティは南イタリア、西シチリアのパスタで、棒に巻きつけて作ります。
ブシャーティは編み物の棒という意味です。コルディロ ディ フラッテは中部イタリアのパスタで、僧侶の腰紐という意味。生地を手のひらでよじって作ります。ブシャーティと形は似ていても、作り方は違うんです。
Retty:このマンフリーコリは日本のうどんみたいですね。
シェフ:確かにうどんに似ているかもしれません。マンフリーコリは中部のウンブリア州のパスタで、水と粉と塩だけで作るシンプルなパスタですね。
Retty:トロッコリは色が黒いですが、イカスミなどが入ってるのでしょうか?
シェフ:トロッコリは焼畑農業で焦げた小麦(グラノーアルソ)を使っているので色が黒いんです。香ばしい香りが特徴ですね。南イタリアのプーリア州のパスタです。
ニョッキ ディ セーモラ:セモリナ粉で作ったローマ風ニョッキ。溶かしバター、チーズをかけてオーブン焼きにする。
Retty:このチャルソンスは餃子みたいです。
シェフ:チャルソンスは北東部のフリウリ・ベネツィア・ジューリア州のもので、ジャガイモ、カカオ、シナモン、レーズン、スパイスの入った詰め物パスタです。
ジュ:イタリアでも珍しいです。現地にいかないと食べられないパスタですね。
シェフ:うちの店はイタリアよりもマニアックかもしれません(笑)。
ジュ:イタリアは山もあって海もあるので、肉、きのこ、魚と同じ州でも地域によって使う材料が変わりますね。
シェフ:それがイタリア料理の面白いところですよね。
パスタを作る道具類。先述のトロッコリは真ん中がギザギザになっている綿棒(トルコラトゥーロ)で作る。
小池シェフ:イタリアでは村が変わるとパスタの呼び名が変わるので、村の数だけパスタがあるといえますね。大まかにいうと南は乾麺の文化。生の手打ちパスタは北イタリアのイメージが強いけれど、手打ちパスタはイタリア全土にいろんなバリエーションがあります。
Retty:一言にパスタと言っても、本当に色、形と様々なんですね。こんなに種類が豊富だなんて驚きました。味わいがとっても気になります!!
そこで後編ではいよいよ小池シェフ自慢の手打ちパスタを使った絶品イタリアンが登場します!
ご期待ください!!
*後編は近日公開予定