後編では、前編に引き続き、郷土色豊かなイタリアのパスタを使った料理を、実際にインカントの小池シェフに作っていただきます。
北、中部、南イタリアの代表的なパスタ料理を、ジュゼッピーナさんに選んでいただきました。
北イタリア 玉ねぎの甘さ引き立つビーゴリ・インサルサ
1品目は北イタリアのパスタ「ビーゴリ・インサルサ」。
玉ねぎとアンチョビを炒め合わせたシンプルなパスタ。玉ねぎをじっくり炒め最大限まで甘味を引き出した優しい味わい。
全粒粉を使い、表面がザラッとしたビーゴリはソースにからみやすい。
ビーゴリは木馬のようなトルッキオという器具を使って、生地を絞り出す。
トルッキオの先に取り付ける銅型。穴の表面に細かな凸凹が付いているため、パスタの表面もザラッとした仕上がりになる。
ジュゼッピーナ スクアルゾンさん(以下ジュ):これは私の生まれ故郷のヴェネトの代表的な郷土料理で、故郷を思い出す味です。このパスタはビーゴリと言って、トルッキオというパスタを絞り出す器具を使って作ります。実家にはこのトルッキオがあり、子供の頃はビーゴリを作っていました。生地が硬いので回すのがすごく固くて、作るのに5時間くらいかかります。今日と同じように、インサルサ(アンチョビと玉ねぎを炒めたソース)をからめたビーゴリをよく食べていましたね。
シェフ:インサルサは今は一年中食べますよね。
ジュ:シェフのパスタはソースの量が絶妙なバランスです。イタリア人はパスタを食べる時、スプーンを使わないんですよ。フォークだけで食べるので、ソースが多すぎるのは良くないんです。皿に残ったソースはパンで拭って食べます。
Retty編集部(以下Retty):なるほど。パスタとソースの割合も大事なんですね。麺がしっかりとした歯ごたえがあって存在感があり、肉も魚も入っていないにもかかわらず食べ応えがありますね。
ジュ:イースター前の40日間や、金曜日は肉を食べてはいけないので、そういう時に食べますね。肉を煮込んだラグーソースを合わせるのも定番の食べ方です。
中部イタリア 穴の通ったストロッツァ・プレーティ
続く2品目は中部イタリアのパスタで、ストロッツア・プレーティ。合わせる具材はグアンチャーレとトマトにキノコ、そしてトリュフを使った、なんとも贅沢な一品です。
画像ではうどんのように長細く見えますが、長さは10センチほどで、中は穴が空いています。
ジュゼッピーナさんに食べていただきます。
ジュ:うーん、Buono!
Retty:うーん、これはすごい!しっかりと歯ごたえのある肉とパスタの弾力が同じで、一体化してます。肉の脂が多いはずなのにしつこくなく、噛むごとに肉の旨味がグワッと広がって、トマトの酸味も絶妙です。
シェフ:グアンチャーレとは、豚の頬から喉にかけての部位を皮付きのまま塩漬けにした生のベーコンのようなもので、脂が多いのが特徴。イタリア中部を代表する食材です。
これがグアンチャーレ。喉の部分をそのまま切り取って塩漬けにしており、幅30〜40センチの巨大な塊で迫力満点。
脂身が多いけれど、クセも臭みもなく品のいい旨みがある。
ジュ:グアンチャーレが入っていると中部地方の料理だなって感じがします。他の地方では見かけないので。
シェフ:グアンチャーレやきのことストロッツァ・プレーティを合わせるのは地域的な方程式です。
Retty:地元の人にとってしっくりくる組み合わせなんですね。それにしても、先ほどのビーゴリもコシがありましたが、このパスタはさらに上に行く感じで、弾力がものすごいです。
シェフ:小麦粉の種類が違うんです。うちではコシを出すために前の日に生地を打って、一晩寝かせています。
南イタリア もちもちの耳たぶのようなオレッキエッテ
Retty:そして最後は、南イタリアのパスタです。南イタリアといえば明るい太陽に、青い空、料理にはトマトソースや魚介、オリーブオイルを使うイメージがあります。
ジュ:今日紹介するのは、オレッキエッテというパスタで「耳たぶ」という意味なんです。形が耳たぶみたいでしょう?
「ポチャッケ」と書かれていますが、「オレッキエッテ」の別名で作り方と材料は同じ。
ジュ:南イタリアの代表的な食材、サルシッチャ(イタリア語でソーセージの意味)と青菜を入れたパスタをリクエストしました。
ちょうど窪みのところに具が入り、パスタと一緒に食べやすい。
シェフ:これは”ストラシナーティ”と言って、生地を引っ張りながら作るパスタの一種です。
Retty:生地がモチモチしてツルんとした舌触りですね。
ジュ:サルシッチャはどの地方でも作られていますが、ハーブのフェンネルシードが入っているのが、南イタリアらしいですね。青菜ととてもよく合うと思います。この苦味が美味しいんです。
シェフ:青菜はプーリア州や南カンパーニャ州で取れるフリアリエッリという葉っぱで、菜の花に似たえぐみが特徴です。
自家製サルシッチャ。これをちぎって加えることで、肉の脂や旨味、スパイスの風味がパスタにからみ、シンプルながら味わい深い一品となる。
Retty:サルシッチャの中に、ゴロッとした肉の塊がそのまま入っていて、日本のソーセージとは随分違いますね。言われなければお肉がそのまま入ってる感じです。パスタ、サルシッチャ、青菜と全て同じ産地の具材を組み合わせてるんですね。
ジュ:はい。これは本当に南イタリアらしい味わいだと思います。
イタリア人にとってパスタ料理は、まさに郷土料理なんですね。確かに納豆や明太子などの和風パスタとは、そもそもの成り立ちが違うようです。イタリア料理の奥深さにちょっと触れられたような気がします。
今回は、イタリア北部、中部、南部のパスタ料理3品を紹介しましたが、広尾「インカント」では、他にも多彩なパスタ料理を揃えています。
イタリアの郷土色豊かな本格パスタ料理を、皆さんもお店でぜひ味わってみてはいかがですか?きっとプチ旅行気分が味わえるはずです!
シックで落ち着いた店内は大人の雰囲気。
イタリアの個性あふれる土着品種を使ったものなどワインは500種類以上のラインナップ。
- インカント
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東京都 港区 南麻布
イタリア料理