「ラーメンの主役は麺だ」。一杯のラーメンからそんな強い主張を感じるのは、八丁堀にある「麺や 七彩」。
「打ち立てじゃないと食べられない味がある」と、あえて効率を度外視し、"手打ち麺"にこだわる同店の魅力に迫る。
オーダーを受けてから麺を打つ!?
"自家製麺"を謳うラーメン屋のほとんどが、提供する日の朝にまとめて1日分の麺を打っておき、注文が入ると麺を茹でるというのが常識だった。しかし、「麺や 七彩」はお客のオーダーを受けてから麺を打つ。
麺から打つにもかかわらず、注文から提供までの時間は10分もかからないという職人技。席の目の前で作られる手打ち麺に、「いま打ってる麺は自分の分かしら?」と期待感が高まる。
打ち立ての麺をひと口すすると、生麺のテュルンとした食感。麺の舌触りは滑らかでありながら、噛むと適度に押し戻す弾力がある。こういった麺こそ、本来の意味で「コシがある」と言うのだろう。
10分前までただの小麦粉だった麺。噛めば噛むほど、小麦の甘さと香りが口いっぱいに広がる。
上品な煮干しの香りが食欲をそそる醤油スープ。優しい味わいが、ずずずーっと五臓六腑に沁みわたる。
スープは①丸鶏・昆布・かつお・鯖節・煮干しなどから取ったスープをベースに、②煮干しのみのスープを加える。
煮干しラーメンは好き嫌いが別れるというが、この店では「子供がおいしいと感じるか」をラーメンを提供する際の判断基準にしているという。たしかに、煮干しの苦味やえぐ味は一切なく、それは女性から子供まで幅広い客層に現れている。
おいしいものを届けるためなら、効率は捨てる
店主の藤井吉彦さんに、打ち立て麺へのこだわりを伺ったところ、「打ち立てじゃないと食べられない味があるから」という答えが返ってきた。
従来のラーメン屋は製麺の際に「こねる・練る・寝かす」という工程をたどるが、この店の麺作りは「こねない・練らない・寝かさない」という真逆の製法をとる。
従来の製麺は、「こねる・練る・寝かす」ことで小麦粉のグルテンを増やし、"旨味"を増幅させていく。一方で、その工程に時間をかければかけるほど、小麦の"甘さ"と"香り"は失われていくという。
そこに注目した藤井さんは、小麦の味と香りを最大限に引き出すために、オーダーを受けてからの"手打ち麺"にこだわるのだそうだ。
この手法が多くの人に広がってほしいと、店内はガラス張りで誰もが製法がわかるように麺打ちを行っている。
「おいしいものを届けるためなら、効率は捨てる」という料理人の本質を「麺や 七彩」の煮干しラーメンに見た。
- 麺や 七彩
-
東京都 中央区 八丁堀
ラーメン