日本にはおいしいブランド牛がたくさん!“日本三大和牛”として知られている三重県の松阪牛、兵庫県の神戸ビーフ、滋賀県の近江牛のほか、実に300種類以上のブランド牛が全国に存在しています。
そんな中、宮城県の「仙台牛」が今注目されているのをご存じでしょうか。
先に挙げた三大和牛などと比べると知名度はまだまだ高くありませんが、昨年実施された全国肉用牛枝肉共励会(肉牛の品評会)では、仙台牛の去勢牛が最高位の名誉賞を受賞するなど、そのおいしさが今、じわじわと全国に広まりつつあるのです。
そんな仙台牛をもっと多くの人に知ってほしい、もっと多くの人に食べてほしい!とPR活動に力を入れている「仙台牛レボリューションズ」(通称:仙レボ)なるグループがいると聞きつけ、Rettyグルメニュース編集部は一路、仙台へと向かいました。
若い農業の担い手で結成・イベントを通して仙台牛を全国へアピール
仙台牛レボリューションズは、今回取材に参加してくれた8名を含む計110名、全員が専業の畜産農家として牛を育てているメンバーたちで結成されています。
もともとJAグループ宮城の「50歳までの若い担い手で仙台牛を盛り上げよう」という呼びかけで集まり、その平均年齢は約38歳なんだとか。
そんな未来ある若き農家の皆さんが、どんな思いで仙レボの活動や日々の飼育に取り組んでいるのか。まずは代表メンバーの佐野さんにお話を伺いました。
「ブランド牛といえば、やはり松阪牛、神戸牛、近江牛。東北での位置づけは岩手県の前沢牛、山形県の米沢牛、その下が仙台牛なのかな、という認識だったと思います。ですが、仙台牛は地元のササニシキやひとめぼれなどの稲藁を食べさせて育てているので、味が濃厚で脂の質もいい。僕たち農家の中では数年前から『仙台牛が東北で一番だ!』と確信し始めていました。ちょうどその頃、「仙レボ」が結成され、PR活動を積極的に行うようになりました。結成から今年で3年目になります」(佐野さん)
主な活動は、東京・お台場や宮城でのBBQイベントの開催。消費者と直接顔を合わせ、仙台牛のおいしさを広く知ってもらうことが目的です。仙台牛を食べたことがない、和牛自体高価なためあまり食べる機会がない、という人にアピールできる良い機会になっているそう。
そもそも仙台牛は、宮城県内で飼育された黒毛和種の中でもA5またはB5ランクに格付けされなければ名乗ることができないほど、厳しい基準のもとで定義されているもの。
どの農家も毎日牛舎に足を運んで牛の体調をチェックし、餌の配合内容を工夫し、仙台牛になる牛を育てるために日々奮闘している、と佐野さんは語ります。
雌牛専門、全国一位の実績……個性豊かな仙レボメンバー
一頭一頭育つ牛が違うように、仙レボのメンバーも一人ひとり個性豊か。ちょっぴりコワモテ!?の鈴木さんは、メンバーの中で唯一雌牛を専門に飼育しており、飼育には繊細に気を遣っているといいます。
「仙台牛の雌雄では味に差が出ます。特に脂の質が違って、雌牛の脂は口の中に残るような感じがしない、スッと抜けるような味なんです。うちの場合は脂の質を改良するために、炊いたうるち米を混ぜた自家配合の餌を与えるなど、雄牛とは育て方も違います。
人間の女性同様、雌牛も時期によってホルモンバランスも変わるので、体調管理にもすごく神経を使います。でもそうすることで、脂のサシの良い良質な仙台牛になる。やっぱり人の口に入るものだから、僕はとことん味にこだわりたいんです」(鈴木さん)
そして、石巻市で農家を営む川村さんは、冒頭で紹介した全国肉用牛枝肉共励会で最高位を受賞し、一躍時の人になりました。うちの牛なら受賞できる!という自信はあったのでしょうか?
「とてもレベルの高い品評会なので、自信は全くなかった。たまたま今回、うちで育てた牛が受賞できただけだと思っています。受賞したその日は浮かれていたけど、翌日からは仙台牛が全国の農家やバイヤーから注目される立場になりましたからね。そこは気を引き締めていかなければと、意識が変わりました」(川村さん)
川村さんの快挙には、他の仙レボメンバーも大きな刺激を受けたと佐野さんはいいます。
「仲間が名誉ある賞をもらったことで、自分たちにもチャンスがあるんだなという希望になりました。ますます切磋琢磨していこうという気持ちが高まりましたね」(佐野さん)
仲間との情報交換が仙台牛の発展につながる
グループの結成前から市場でよく顔を合わせていたものの、コミュニケーションを取る機会は少なく、お互いに顔と名前が一致しないメンバーも多かった仙レボ。結成後から交流が深まり、今では仕事以外でも仙台牛を食べながらお酒を交わす機会も多くなりました。
「みんな同じ仕事をしているし、共通の話題でどんどんつながっていく。あまり悩み相談とかはしないんですよ、それぞれ農家としてのプライドがあるので。でも良い点、悪い点を出し合って意見交換をすることで、仙台牛の発展に役立っていると感じています」(佐野さん)
ただお酒を飲んでいるだけ?と思いきや、これも農家同士の絆を深め、仙台牛の発展について考えるために必要な時間です。今後は地元仙台の人たちが「仙台の名産といえば、仙台牛」と自信を持って言えるぐらい、仙台牛の名前とおいしさを浸透させていきたい、と語る仙台牛レボリューションズ。これからの彼らの活躍にますます期待できそうです。
「NO仙台牛、NO LIFE!仙台牛を食べて笑顔にならない人はいません!」(佐野さん)