現在、全国の農家やバイヤーから注目を集めている宮城県のブランド牛・仙台牛。
宮城で育った牛すべてがなれるわけではなく、厳しい基準のもと仙台牛になれる肉牛が選ばれているといいます。では一体「仙台牛とはどんなブランド牛なのか?」。その魅力を、さらに深堀りしていきましょう。
厳しい基準をクリアした牛だけが「仙台牛」を名乗れる
「仙台牛」は、下記4つの基準を満たしている肉牛がその名を名乗ることができます。
・黒毛和種であること
・仙台牛生産登録農家が個体に合った適正管理を行い、最長及び最終肥育地が宮城県である肉牛
・仙台牛銘柄推進協議会が認めた市場並びに共進会等に出品されたもの
・(公社)日本食肉格付協会枝肉取引規格が、A5またはB5に評価されたもの
一年間に宮城県で食肉として出荷されるおよそ20,000頭の肉牛のうち、仙台牛の名で出荷されるものはおよそ3割というデータもあり、その基準の厳しさがうかがえます。全国に数あるブランド牛の中でも「A5またはB5」の等級のみが認められているのは仙台牛だけ。
霜降りと赤身のバランス、きめの細かさなど細部までチェックされ、最高ランクに格付けされた牛肉だけが「仙台牛」の称号を得ることができるのです。さらに2011年の東日本大震災による原発事故を受け、厳しい管理の下に放射性物質の全頭検査も行われています。
味の特徴は、脂肪と赤身の絶妙なバランスによる、やわらかい口当たりの良さとまろやかな風味。
米どころ・宮城のササニシキやひとめぼれなどの稲わらを贅沢に食べて育つことで、うまみがギュッと詰まった仙台牛へと成長します。最高品質のおいしさと安心・安全を兼ね備えたブランド牛、それが仙台牛の特徴なのです。
「質が良くて安定供給できる」料理人から見た仙台牛の魅力
厳しい基準をクリアして出荷される仙台牛ですが、実際に調理・販売する立場の人たちにとってはその魅力はどんな点にあるのでしょうか?
仙台牛レボリューションズのメンバーとも交流が深い「焼肉 泰山」の代表取締役社長・張泰成さんにお話をうかがいました。
泰山は仙台市内に2店舗を展開。東北を代表する球団・東北楽天ゴールデンイーグルスの選手らも足を運ぶという人気の焼き肉店です。
「仙台牛の魅力はやっぱり味ですね。僕は19歳のときから肉に携わり、東京の有名店で修業を積んで独立しました。
これまで他のブランド牛を扱っていたこともあったんですが、いろいろ試した結果、やっぱり質が良くて安定供給できるのは仙台牛だな、という結論に至ったんです。
泰山は今年で7年目になりますが、最初から『仙台牛をメインにした焼肉店をやろう』と思ってスタートした店です」
肉は注文を受けてからカット、一切冷凍せず新鮮な状態で提供するなど、仙台牛を一番おいしい状態で楽しんでもらうための工夫に力を注ぐ張さん。
このこだわりには、仙台牛生産者の若手集団である「仙台牛レボリューションズ」との深い交流が背景にあるといいます。
「やはり、作っている人の顔が見えるというのは大きいです。普段から情報交換をしたり、牛舎を見学させてもらったり、農家さんがどんな思いで牛を育てているかを知っているから、どう提供するかは常に真剣に考えています。
初めて皆さんに会ったときは若いし、農家さんに全然見えなかったんですけど(笑)、すごく情熱を持っている人たちなんですよね。話を聞いているととてもおもしろいんです」
一番おいしい状態で提供することへのプレッシャー
この日、泰山で振る舞われていたのは仙台牛レボリューションズメンバーの川村さんが育てた仙台牛。
ディナーのピークとなる午後7時台を迎えて次々とオーダーが入り、張さんはその都度一枚一枚丁寧にカットして提供します。
「仙台牛レボリューションズのメンバーはみんな宮城が大好きで、そういう人たちが育てているから、牛にも愛情が詰まっているというのが伝わってきます。
それを知っている分、もちろんプレッシャーも大きいです。
皆さんよくお店に食べに来てくださるんですが、育ててくれた本人に仙台牛を提供するので、その瞬間の緊張感はありますね。
大事に育ててくれた牛を一番おいしく新鮮な状態で提供していくことは、これからも常に意識してやっていかないと、と思っています」
プライベートで飲んでいても、皆さんとはいつのまにか牛の話になっているんですよ、と笑う張さん。
仙台牛レボリューションズと張さんは、お互いに相手を慕い、リスペクトしている様子がうかがえました。生産者と料理人の厚い関係性が、おいしい仙台牛をよりおいしく提供する一助となっているようです。