オーストラリアのグルメシーンが、いま注目を集めています。
南半球に位置するオーストラリアは独自の生態系をもち、広大な大地と温暖な気候によって育てられた動植物の数々は、まさに食材の宝庫。さらに、ヨーロッパやアジアからの移民が多いオーストラリアでは、様々な食文化が融合し、料理の多様性は世界屈指とも言われています。
そんなオーストラリアグルメの中でも、特に「オージー・ラム(羊肉)」に愛情を注ぎ、その魅力を熱く発信し続ける集団「ラムバサダー」をご存知でしょうか?
以前もメンバーの方にはRettyグルメニュースにご登場いただき、オージー・ラムのおいしさや楽しみ方をたっぷりと教えていただきました。
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そんなラムバサダーがいま注目しているというのが、”森のキャビア”とも呼ばれる「フィンガーライム」なる果物。
聞き慣れない名前ですが、どうやら独特の食感や香りがラムとの相性抜群との噂。その真相を確かめるべく、北参道のレストラン「TERRA AUSTRALIS(テラ・アウストラリス)」へ直行! ラムバサダー×フィンガーライムのコラボレーションイベントに潜入してきました。
- TERRA AUSTRALIS
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東京都 渋谷区 千駄ヶ谷
オーストラリア料理
注目食材「フィンガーライム」とは?
フィンガーライムは、オーストラリアの原住民・アボリジニの間で古くから食されてきた柑橘系の果物。オーストラリアの料理人たちにとってはポピュラーな食材で、主に魚介類の料理と合わせて振る舞われてきました。
近年、増々注目が高まり、美食大国フランスをはじめ、海外から輸入するプロの料理人も多いといいます。
手のひらに収まるほどの細長い実をカットすると、ツヤツヤと光沢のある粒々の果肉が出現。そして、食べてみたところプチプチとした独特の食感が!!
そう、このキャビアのような見た目や食感こそ、フィンガーライムが「森のキャビア」「キャビアライム」とも呼ばれる所以。果肉は種類によって白、赤、緑などの色があり、その多彩さも料理に花を添えてくれます。
また、フィンガーライムの皮からは、山椒のような香りがし、この皮の活用法も料理人たちの間では注目されているんだとか。
人気の高まりからオーストラリア国内でも値段が高騰し、日本国内では数カ所でしか栽培されていないというフィンガーライム。
その希少なフィンガーライムを今回のイベントに提供してくれたのは、愛媛県八幡浜で柑橘を栽培している「梶谷農園」。生産者の梶谷高男さんは、その美しさに一目ぼれし、フィンガーライムの栽培を決意したといいます。
「まず見た目が美しいし、手に持った時の感覚や口の中に入れたとき、口の中で実がはじけたときのインパクトもある。スパイシーで独特な香りなので、皮だけ削って香りづけに使ってもいいですね。
フィンガーライムはとにかく温度管理が大変な果物。オーストラリアは温暖な気候なので路地栽培ができますが、日本の気候ではハウス栽培でないと難しいんです。花が咲いてから収穫するまでに半年かかるんですが、5年ほど前から栽培を始めて、苦節5年でようやく育てられるようになってきました」(梶谷高男さん)
梶谷さん曰く「今年の収穫目標は50kg」。その量からも希少性の高さがうかがえます。販売価格も1本300円~500円という高めの価格帯で、現在は業者や料理人などが主な購入者とのこと。
最近では梶谷さんが運営するブランド「10FACTORY」でも取扱いをスタートし、通販や店頭での購入が可能に。今後はわたしたち一般消費者がフィンガーライムを手にしたり口にしたりする機会も増えていきそうです。
カクテル、麻婆豆腐、お寿司まで! “ラム×ライム”を堪能
梶谷さんのお話からフィンガーライムの魅力がひしひしと伝わってきました。これはぜひラムと一緒にいただきたい!さっそく、今回のイベントのためだけに振る舞われたコラボレーションメニューを試食させてもらいました。
まずは、オリジナルカクテル「Harbal Tree」。ジンをベースにパインジュースや自家製ハニーシロップ、パクチーなどが絶妙にブレンドされ、爽やかなヨーグルト&クリームエスプーマの上には愛らしいエルダーフラワー、そしてジュエリーのように輝くフィンガーライムが添えられています。
ピリリとスパイシーなフィンガーライムの香りが引き立つ、夏にぴったりなカクテルです。
続いて「ラム麻婆豆腐」。ラムの肩肉をクミンやターメリックなどと一緒に煮ているため、スパイスの効いたエスニック料理のような印象です。シェフの福田さん曰く、中近東で食べられている「タジン」をイメージしたそう。
そこに効かせているのがフィンガーライムの酸味。さらに山椒を思わせるペッパーベリーの香味もアクセントになり、一口食べるだけでさまざまな味覚を刺激される楽しい一皿に。筆者はこの味がクセになってしまい、ついついおかわりをしてしまいました…!
和風のアレンジが光ったのが「ラムスイートブレッドの炙り寿司」。スイートブレッド(胸腺肉)とは、仔牛が乳を飲んでいる期間にしかないというとても希少な部位のこと。
この上に味噌で作ったマヨネーズとライム果汁を混ぜたソースを乗せ、とびこをイメージしたフィンガーライムを添えてお寿司風に。やわらかいお肉とコクのあるソースが絶品なのはもちろん、噛むたびにフィンガーライムがプチプチッとはじける食感もたまりません。
他にも、食べる直前にスモークで香りづけする「ラムタンとホタテ貝」や、かぶりつかずにはいられない「ラムラックとパドゥーパンスパイス」など、ラム×フィンガーライム尽くしの料理の数々にあっという間にお腹は膨れ、大盛況のうちにイベントは終了しました。
もともとラム好きの筆者、喜び勇んでイベントに赴いたのですが、そのおいしさとバリエーションの豊富さにますますラムファンになってしまいました。
そして、今回出逢ったフィンガーライムは、見た目・香り・食感とそのすべてが新鮮で、今後日本でもブレイクの兆しを感じさせます。広大なオーストラリアの地が生んだ2つの食材「ラムとフィンガーライム」、これからの動向に注目せずにいられません。
ライター紹介
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芳賀直美
- フリーライター/編集者。神奈川県出身。WEB制作会社、編集プロダクションを経て2016年に独立。カルチャー、美容、グルメなど、ジャンル問わず執筆中。パンダとお酒が好きです。