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カレー年表に残る歴史的事件!大阪スパイスカレーの大本命「旧ヤム邸」、東京進出の裏側

ライター紹介

カレー細胞(H.Matsu)
カレー細胞(H.Matsu)
3000軒のカレー屋を食べ歩いた通称「カレー細胞」。生まれついてのスパイスレーダーでカレーはもちろんのこと、食のトレンドウォッチャーとしても分析力・発信力は折り紙付き。 カレー専門のブログ「カレー細胞-TheCurryCell-」を運営。

2017年のカレー界を代表する一大事件「大阪スパイスカレー東京進出」

2017年カレー界最大のトレンドは、「東西カレー文化の融合」。カレー愛好家の間では、「カレーの最先端は大阪」と言っても過言ではないほど、大阪のカレーシーンが盛り上がりを見せています。

そしてこの夏、その流れを象徴するエポックメイキングな出来事が起こりました。

ついに!ついに!

大阪スパイスカレーの本丸「旧ヤム邸」が、堂々の東京進出!!2017年7月20日に下北沢に「旧ヤム邸 シモキタ荘」が誕生しました。

早速、そのカレーをご紹介しましょう。

キーマ三種の合がけ、これぞ「旧ヤム邸」のカレー!

「旧ヤム邸」では、キーマをベースにした日替わりカレーが提供されます。季節ごとに、旬の素材を用いたさまざまな日替わりカレーが食べられるとあって、いつ行っても楽しめるのが特徴。

注文は3種のバリエーションから2つを選ぶ「あいがけ」か、「全部盛り」かを選択する方式。いずれにも味変に使える「サラッとカレー」がついてきます。

ちなみにこの日のカレーは……。

①豚モツ煮込み味噌マトンポークキーマに焼茄子サブジ(写真上)

②新ジャガ生姜風味の鶏キーマにキュウリと鶏モモのクミン炒め(写真右)

③ハーブ香る!ポーク&鮪の夏キーマに辛にが緑豆チャトニ(写真左)

<サラッとカレー>白菜とイカゲソの旨味、牛乳と鶏ガラのカレースープ

という内容。

季節の食材をふんだんに取り入れ、素材の旨味、そしてカルダモンとブラックペッパーの香りをグンと際立たせた「旧ヤム邸」らしい構成です。

「3種全てがキーマってどうなのかな?」と思う方もいるかもしれませんが、それこそが「旧ヤム邸」の真骨頂、想像を超えた味と香りの多彩さに驚くはず

これぞ大阪スパイスカレー、東京にはなかった奥深いカレーの魅力なんです。

後半戦は「サラッとカレー」をかければ、旨みと香りが変化。大阪特有の混ぜ込み文化が存分に楽しめます。

▲カレーに合うちょっと贅沢なお酒「ゴディバラッシー」もおすすめ。

▲カレーに合うちょっと贅沢なお酒「ゴディバラッシー」もおすすめ。

ようやく本物の「大阪スパイスカレー」を東京で味わえる日が来るなんて!!

……と、ここまで興奮そのままに勢いで書き進めてしまいましたが、ひょっとすると、読者のみなさんの中には「大阪のカレー屋が1軒、東京に出店しただけでしょ?」と思っている方もいるかもしれません。

いえいえ、これは今後のカレー界を大きく変えてしまうかもしれないほど重要な出来事なのです。今回は「旧ヤム邸シモキタ荘」店長の藤田さんに、「そもそも大阪スパイスカレーって何?」という根本的なところから、東京進出の経緯までお話を伺いました。

▲「旧ヤム邸 シモキタ荘」藤田店長、通称・イチさん。大阪時代は「旧ヤム邸」の旗艦店「空堀店」の店長を務める。

▲「旧ヤム邸 シモキタ荘」藤田店長、通称・イチさん。大阪時代は「旧ヤム邸」の旗艦店「空堀店」の店長を務める。

そもそも「大阪スパイスカレー」って?

カレー細胞:「大阪スパイスカレー」の定義って、聞かれて困ることが多いのですが、そもそもどういうものなのでしょう。

藤田店長(以下、藤田):定義は単純ではないのですが、シンプルに言えば、「小麦粉を使ったカレー粉やルウを使わず、スパイスを独自調合し、既成概念にとらわれず自由な発想で作るカレー」ってところでしょうか。

カレー細胞:なるほど。大阪スパイスカレーがおもしろいのは、店主の自由な発想のもと、時代ごとにその年代を代表するような新しいカレーがどんどん生まれている点です。一般的に大阪スパイスカレーの起源は北浜「カシミール」で、「旧ヤム邸」は大阪スパイスカレー第二世代の代表店、というように捉えられています。けれど、「カシミール」以前にあった「ルーデリー」というお店が起源という説もありますよね。

▲「カシミール」のビーフカレー

▲「カシミール」のビーフカレー

画像引用元:https://retty.me/area/PRE27/ARE92/SUB9203/100000031828/24839169/

藤田:そうですね、細かく説明すると時間がいくらあっても足りないのですが、「ルーデリー」さんには今のスパイスカレーの大きな要素が網羅されていました。小麦粉を使わずシャバシャバで、スパイスを前面に出して……つまり小麦粉やカレー粉を用いた日本のカレーや欧風カレーに対するカウンターカルチャーだったんですね。

どのお店も「ルーデリー」さんに何らかの影響を受けているはずです。「カシミール」の後藤さんも「ルーデリー」さんには食べに行っていたはずですし。けど、うちのルーツも意外と古いんですよ。

カレー細胞:「ヤムカレー」ですね。

藤田:はい。実は「ヤムカレー」の前にうちのオーナーは、「ヤムティノ」というお店をやっていまして、それが1999年。「ヤムティノ」「ヤムカレー」と来て、「旧ヤム邸」になったのが2011年です。

カレー細胞:なるほど、それで「ヤムカレー」のあたりが「コロンビアエイト」「バンブルビー」などと並ぶ、第二世代と言われることになったと。

▲「コロンビアエイト」花火カレー

▲「コロンビアエイト」花火カレー

画像引用元:https://retty.me/area/PRE27/ARE91/SUB9104/100000450620/25214750/
▲「バンブルビー」鶏三姉妹カレー

▲「バンブルビー」鶏三姉妹カレー

画像引用元:https://retty.me/area/PRE27/ARE91/SUB9102/100000022318/2994796/

藤田:いずれも今なお独自のスタイルを貫き続ける個性派店です。

カレー細胞:それらのカレーの流れを汲みつつ、かつスリランカカレーの影響を受けて誕生した第三世代が「バビルの塔」「nidomi」「ボタニカリー」「谷口カレー」。

ここで一気に「大阪スパイスカレー」の認知が拡大し、大阪でものすごいムーブメントになりましたよね。

▲「スパイスカリー バビルの塔」梅しそ風味のあさりキーマ

▲「スパイスカリー バビルの塔」梅しそ風味のあさりキーマ

画像引用元:https://retty.me/area/PRE27/ARE96/SUB9601/100000143810/21746351/
▲「カリーバー ニドミ 」の混盛カレー

▲「カリーバー ニドミ 」の混盛カレー

画像引用元:https://retty.me/area/PRE27/ARE96/SUB9601/100001282744/27979210/
▲「ボタニカリー」ボタニカリーとシュリンプのあいがけカリー

▲「ボタニカリー」ボタニカリーとシュリンプのあいがけカリー

画像引用元:https://retty.me/area/PRE27/ARE91/SUB9102/100000816909/25888116/
▲「谷口カレー in FOLK old book store」スパイシーチキンカレー

▲「谷口カレー in FOLK old book store」スパイシーチキンカレー

画像引用元:https://retty.me/area/PRE27/ARE91/SUB9104/100000707981/27454100/

カレー細胞:で、そこに続く世代が「アアベルカレー」「金剛石」「堕天使かっき~」など、第四世代と言うことになるのでしょうか。

▲「アアベルカレー」チキンカレーと豚バラとロロンカボチャのマサラのあいがけ

▲「アアベルカレー」チキンカレーと豚バラとロロンカボチャのマサラのあいがけ

画像引用元:https://retty.me/area/PRE27/ARE627/SUB9302/100001274119/20233621/
▲「定食堂 金剛石」のポークカレー

▲「定食堂 金剛石」のポークカレー

画像引用元:https://retty.me/area/PRE27/ARE96/SUB9601/100001332956/27526644/
▲「堕天使かっき~」鯛出汁×鶏キーマの二層カレー・アサリとたけのこの塩カレー(あいがけ)

▲「堕天使かっき~」鯛出汁×鶏キーマの二層カレー・アサリとたけのこの塩カレー(あいがけ)

画像引用元:https://retty.me/area/PRE27/ARE627/SUB62704/100001232214/16032863/

藤田:そういった流れになるかと思います。それぞれのお店がオリジナリティ豊かなカレーを作っていて、どれもお手本にできるほど完成度も高いんです。

カレー細胞:なるほど、そのレベルの高さが「大阪=カレー最先端」だと私が感じている所以です。ただ、最近では大阪スパイスカレーの人気が高まりすぎて、お店が飽和状態になっているとさえ感じることがあります。

元々は「他と違うことを自由にやる」のが大阪スパイスカレーの本質だったのが、ブームになってからは「大阪スパイスカレーを作りたい」というモチベーションに変わり、逆に型にはまってきた感があるというか……。

藤田:確かにそういう部分はあるかも知れません。けれど、私はまたここから新しいカレーが生まれてくると考えています。「旧ヤム邸」の中にもいろんな世代のスタッフがいるんですが、考えも違ってて面白いカレーを作るんですよ。

「旧ヤム邸」東京進出について

▲「シモキタ邸」のオープン初日。たくさんの花が届けられていました。

▲「シモキタ邸」のオープン初日。たくさんの花が届けられていました。

カレー細胞:ところで、東京進出の話が出たのはいつ頃ですか?

藤田:実は、オーナーがかなり前からあたためていたんです。市場はあるのにまだどこもやっていない。だったら自分らが最初にやっちゃおう、ということで。

実は1年前にカレー細胞さんとお会いして「最初に東京進出するとしたら『旧ヤム邸』さんじゃないですか?」と言われたとき、実はもう準備が進められていたんですけど、あの時はまだ言えなかったんですよ(笑)。

カレー細胞:なんと!1年前にはすでに!?で、1年かけて準備をしてきたわけですね。

藤田:……といいますか、物件が全然決まらなかったんです。大阪からカレー屋がポッと出てきても、こんなに貸してくれないものなんだなーって。

で、たまたま下北沢の老舗の玩具屋だった場所が空くっていうんで来てみたら結構良かった。最初っから下北沢に決めてたわけじゃないんですけど、結果この街にオープンできて良かったなと思ってます。

カレー細胞:下北沢はかつて札幌スープカレーの「マジックスパイス」が東京初進出した街ですし、カレー文化が交流する場所として面白くなってきましたね。

メニューになるのはプレゼンで合格したカレーだけ

カレー細胞:ところで、「旧ヤム邸」といえば、季節の素材を用いたさまざまな日替わり、月替わりカレーが名物ですよね。10人以上の作り手たちが、それぞれ自分の考えたカレーをプレゼンしたり試食しあったりして、お店に出すカレーを決めていると聞いたのですが、今でもそのように?

藤田:ええ、今でもやっていますよ。東京のほうは今、僕とオーナーの2人なので、そこで決める場合が多いですけど、大阪のスタッフとLINEでレシピのやりとりをしたり、今後東京のほうに新しい作り手のカレーが加わる可能性もあります。

カレー細胞:おお、なるほど。けどプレゼンしてみて、「これは『旧ヤム邸』のカレーらしくない」という理由でボツとかはないんですか?

藤田:ないっすね(笑)。 割と自由なんです。

強いて言えば、うちのカレーのアイデンティティってのは、キーマを軸とし、季節食材を取り入れ、旨みと香りにこだわるってことでしょうか。スパイスで言えばカルダモン、ブラックペッパーあたりが特徴的かな。

▲取材日とは別日の全部盛り。日によって雰囲気も変わります。

▲取材日とは別日の全部盛り。日によって雰囲気も変わります。

カレー細胞:実は私、「旧ヤム邸」の東京進出をめちゃくちゃ心待ちにしていた反面、「大阪で食べたあの感じと違ってたらどうしよう」なんて心配もあったんです。ですが、全くそんなことはなく、完全な「旧ヤム邸」のカレーでした。凄く嬉しかったです。

藤田:ハハハ、うちの店はめっちゃ自然体なんです。大阪スパイスカレーを東京に広めたい!とか大それたことではなくて、これからもヤム邸はヤム邸でいこう、というスタンスです。 日替わりスタイルを続けているのも、ご近所さんにちょくちょく来てもらうためなんです。

カレー細胞:毎日日替わり、めちゃくちゃ大変じゃないですか?

藤田さん:大変です(笑)。けど、それが楽しさでもあるので。 オープンしたばかりですが、すでに何回も来てくれているシモキタのご近所さんもいて、そういうのがめちゃくちゃ嬉しいんですよ。

※※※

間違いなく2017年のカレー界を代表する一大事件である「大阪スパイスカレー東京進出」。 けれど、当の本人たちは意外なほど自然体。すんなりと、シモキタの風景に溶け込みつつあるのがとても印象的でした。

作られたマーケティングではなく、必然としてやってきた感さえある「旧ヤム邸」。ここから東京のカレーカルチャーがどのような影響を受けていくのか、いちカレー好きとして実に楽しみです。

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