ライター紹介
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平島憲一郎
- 生活家電を中心に、雑誌やWebに製品紹介やレビュー記事などを書くフリーライター。また、趣味でやっていた立ち食いそば店巡りが高じて、立ち食いそばの本の取材・執筆もやっています。現在も家電などの取材の合間に、立ち食いそば店巡礼を行っています。
みなさん、駅のホームや構内にある蕎麦屋(駅そば)に立ち寄ることはありますか?
「駅そば」というと、電車の乗り換えの合間にパパッと食べられて便利な反面、コシのない茹でめんや衣多めの天ぷらなど味はイマイチ……と考える人も多いかもしれません。
でも最近の駅そばの中には、「茹でたて」とまではいかないものの、喉越しのいいそばと、だしの効いたつゆを使った、満足感の高い一杯を提供する店が増えてきています。もちろん、圧倒的人気を誇る老舗店も少なくありません。
今回はそんな駅そばの中から、駅の改札内、もしくは改札と改札をつなぐ連絡通路にあって、電車の乗り継ぎの合間についつい寄りたくなる店、途中下車してでも食べたくなる店を紹介したいと思います!
1日2600人来店、驚異の回転率!新宿駅地下「箱根そば本陣」
小田急線沿線を中心に展開する「箱根そば」の新宿にある旗艦店で、1日に約2600人が利用するという超人気店です。新宿駅西口改札と小田急線西口改札の間の地下コンコースにあり、昼時にはいつも行列ができていますが、客の回転がとても早く、それほど待たずにそばが食べられます。
カウンター内には常時10人のスタッフがスタンバイ。めんを茹でる係、つゆを張る係、トッピングを乗せる係など、役割分担がされており、1オーダーが10秒で提供されるという驚異の速さです。
そばは細めんでコシと喉越しが上々。そばは生めんを見込みで茹でていますが、茹でるそばから注文がどんどん入るため、客にはほぼ茹でたての状態で提供されます。つゆは本鰹節と宗田節からだしを取った、やや甘めの味わい。辛さが立たないつゆの味は、細めんとの相性が抜群です。
天ぷらは店内で頻繁に挙げられていて、運が良ければ揚げたてが食べられます。人気は定番のかき揚げで、玉ねぎを中心ににんじん、春菊、ネギが入っており、コロモはやや薄め。ちなみに他の「名代 箱根そば」はかき揚げそばにワカメが入っていますが、「箱根そば本陣」だけほうれん草を使っているようです。
同店では、かき揚げそばのほかに朝10時までの朝そばも人気。油揚げや揚げ玉、ほうれん草、焼き甘のり、ネギが乗って400円とコスパ良好です。また、カレーコロッケが乗ったコロッケそばにも根強いファンが多く、女性にはヘルシーな山かけそばが人気です。
- 箱根そば本陣
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東京都 新宿区 西新宿
そば(蕎麦)
創業は約50年前!春菊そばが絶品、秋葉原総武線ホーム内「新田毎」
秋葉原駅周辺は、実は都内でも有数の立ち食いそば激戦区。老舗の「二葉」をはじめ、「みのがさ」「岩本町スタンドそば」「川一」「あきば」など、人気店がしのぎを削っています。
- 駅ナカすたんど そば助 曳舟駅店
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東京都 墨田区 東向島
そば(蕎麦)
そんな中、秋葉原駅の改札内にも人気の老舗店があります。それが総武線下りホームにある「新田毎」です。創業はなんと1968年。1日に1000人の客が来店するそうで、朝の通勤時や昼食時は満席状態。ほかの時間帯も客が途絶えることがありません。
そばで人気なのは定番の天ぷらそば(かき揚げそば)のほか、春菊そばやとり天そばなど。
特に春菊そばの、青々とした春菊がドーンとどんぶりに鎮座するビジュアルは壮観!つゆはやや甘めで、だしのうまみがしっかり効いています。ここに揚げた衣のコクが加わり、つゆの味がワンランクアップします。
大ぶりの春菊天にかぶりつくと、心地よい香りと苦味が甘めのつゆをまとって、えも言われぬおいしさです!
また天ぷらそばは、平日の6:30~9:30と14:30~17:00のサービスタイムには通常400円が290円になります。
さらに同店は「お客様感謝デー」として、毎週月・水・金は天丼セットを490円で提供。火・木・土・日にはステーキカレー1100円が、690円で食べられます(感謝デーといいつつ、結局毎日サービスしてくれるのが太っ腹)。
感謝デーには1日300食出るというステーキカレーは、中がほんのり桜色のミディアムレアに焼いた牛肉をカレーにトッピング。カレーもまったりとした口どけの中にスパイスの辛さが広がる、往年のスタンドカレーの味です。
立ち食いそば好きを自認する筆者ではありますが、火・木・土・日に「新田毎」の前に立つといつも、そばにすべきかステーキカレーにすべきか、迷ってしまいます。
- 新田毎 秋葉原
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東京都 千代田区 外神田
そば(蕎麦)
特大サイズの唐揚げがドーン!インパクト抜群な我孫子の「弥生軒」
JR常磐線我孫子駅ホームにある「弥生軒」は、大ぶりの唐揚げが乗った「唐揚げそば」で有名な店。
JRの駅にあるそば店では珍しい、JR系の資本がまったく入っていないお店です。元々は駅弁を製造・販売する会社で、駅そば営業を始めてから50年近く経つ“老舗”店です。
ちなみに、駅弁を販売していた戦中・戦後の時代には「裸の大将」のモデルである画家・山下清さんが働いていたとか。
つゆは関東風の真っ黒な甘辛つゆ。産地直送の鰹節を使い、手間ひまかけてだしを取っているそうです。そばはそんな濃い味のつゆと相性抜群の、太くて柔らかい茹でめん。そばを「すする」というより、「かき込む」という食べ方が似合う、昔ながらの立ち食いそばの味わい。
そして、そこに丼ぶりの直径ほどの長さの鶏の唐揚げをトッピングすれば、名物「唐揚げそば」の完成。衣厚めで鶏肉には胡椒と生姜で下味がつけられ、そのまま食べてもおいしいですが、衣につゆがしみてきたところを食べると、また格別のうまさです。
最もオーソドックスなのは、この唐揚げを2個トッピングするスタイル。これで540円というのは驚きのコスパで、若者だけでなく年配の人も2個をペロリと食べるそうです。
ちなみに「弥生軒」で唐揚げを提供し始めた頃は、今ほど大きくなかったとか。それが、客の間で「弥生軒の唐揚げは大きい」と評判になり、引くに引けずにさらに大きくなってしまったといいます。
唐揚げは1店舗で1日700個出る人気ぶりですが、揚げ物ではほかにちくわ天も人気。磯辺風に青のりをまぶして揚げられていて、唐揚げとちくわ天を1個ずつトッピングして楽しむ人もいるそうです。
朝と夕方の通勤ラッシュ時には店内は客でごった返し、カウンターで食べられない人はどんぶりを片手にホームで“立ち食い”をしているとか。特に冬の時期に、吹きさらしのホームで食べる熱々のつゆを張った唐揚げそばは、格別なおいしさでしょう。
- 弥生軒 6号店
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千葉県 我孫子市 本町
そば(蕎麦)
注文30秒で出る蕎麦のコシに唸る!蒲田「しぶそば」
東急線沿線を中心にチェーン展開する「しぶそば」は、数ある駅そばの中でもそばのクオリティの高さに定評のある店。
特に、東急蒲田駅構内にある「蒲田店」は、「しぶそば」ファンの間でもおいしいと高評価を得ている店です。ちなみに、「しぶそば」の中でもイスなしの完全立ち食いなのは、この蒲田店だけです。
注文して30秒ほどで客前に出てくるそばは、生めん茹で置きながら、茹で置き時間が短く、特に混む時間帯はほぼ茹でたてに近い、コシのあるそばが食べられます。
つゆはややあっさり目ですが、鰹節とサバ節を使っただしがしっかり効いて、飲むほど、食べるほどにうまみが増します。
人気メニューは、やはり定番のかき揚げそば。揚げ置きの時間を極力短くしているそうで、サクサク感がしっかり感じられます。衣自体がやや甘めなのもグッド。かき揚げの具材は玉ねぎとニンジンを中心に、季節の食材が加わるのも楽しみです。
また、同店では「ぴり辛ねぎそば」も人気。豆板醤が入った甘辛だれで和えたねぎとチャーシューがそばの上にたっぷり乗った一品で、特に夏は冷やしにするとたまらなくうまいです。
ちなみに、「しぶそば」では、JR渋谷駅改札外にある「本家しぶそば」も、おいしい&コスパが高いと人気。こちらは他店に比べて、そばの量がやや多めな気がします。また、レジで注文して席に着く頃には注文したメニューが運ばれてくる供給スピードの速さにも驚かされます。
- しぶそば 蒲田店
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東京都 大田区 西蒲田
そば(蕎麦)
うまみが凝縮した塩だしそば!「すたんど そば助 東武曳舟駅店」
そばやうどんのつゆと言えば、そのほとんどが「しょうゆ味」。関東の甘辛のつゆは言うまでもありませんが、関西でも薄口しょうゆを使っていて、しょうゆはそばやうどんに欠かせない調味料となっています。
今回紹介する「そば助」は、そんな「しょうゆ至上主義」に異を唱える立ち食い店。鰹節、宗田節など10種類以上の素材からだしを取り、塩のみで味つけする独自の「究極の塩だし」がそばファンの注目を集めています。
台東区稲荷町駅近くにある本店のほか、人形町や池袋などに店舗展開する「そば助」は、一方で駅ナカにも出店。「東武曳舟駅店」はそのうちの1店で、鳥そばや豚そば、ラーそばなどのオリジナルメニューに加え、かき揚げそばや春菊天そばなど駅そばではマストのメニューも食べられます。
本店などでは十割そばを茹でたてで提供していますが、お客が電車の待ち時間に食べにくる駅ナカ店ではさすがにそれは無理で、茹で置きのめんをチャッチャと温めてくれます。券売機で買った食券をカウンターに出してから30秒もしないうちに提供されるそばは、喉越しのいい細めん。
つゆはもちろん塩だしで、かき揚げそばも塩だしでの提供。黄金色に輝く透き通ったつゆは、とにかくだしの味が濃厚で、まったりとした余韻が口の中に長く留まります。かき揚げは店内で揚げ置きしたもので、薄めの衣にパリッとした食感があってなかなか美味。噛みしめると玉ねぎの甘みと香ばしさがジュワッと広がります。
また、この店に初めてくるなら試してほしいのが鳥そば。つゆと同じ塩だしで煮込まれたであろう鶏肉がゴロゴロと入っていて、満足感の大きい一杯です。
鶏肉のうまみと塩だしのうまみが混じり合い、つゆもさらにうまみを増しています。どんぶり一面を海苔で覆い尽くし、その真ん中にうま辛のラー油ダレを乗せた「元祖ラーそば」も辛さがクセになる一杯です。
ちなみにカウンターテーブルには、七味唐辛子とともに激辛のゴマ唐辛子が置かれています。これが辛みだけでなくコクも出て、鳥そばや天ぷらそばに入れるとおいしくアジ変。辛いのが大丈夫な人はぜひ試してみてください。
所沢住民のソウルフード!鉄道ファンに愛され続ける「狭山そば」
西武所沢駅1番ホームにある「狭山そば 所沢店」は、昭和51年から営業する立ち食いそば店。1日に700~1000人が利用する人気店で、学生からサラリーマン、年配の方まで幅広いお客で賑わっています。
特に、サラリーマンがお酒を飲んだあとの〆に立ち寄ることが多く、お昼時と並んで夜の9時から閉店までが、忙しさのピークなのだそうです。
そばはやや太めで平打ちの茹でめん。つゆは鰹だしベースの、やや甘めでマイルドな味わいで、モチっとした食感のそばと不思議に相性がいいです。
この店の名物は、豚肉たっぷりの肉そば。鮮度のいい豚肉を店のそばつゆで煮込んでトッピング、豚肉の脂の甘みがつゆに溶け出し、さらに揚げ玉をトッピングすることでコクがプラスされます。ややカロリーが気になるところですが、ひと口食べた途端、迷いは吹き飛び、完食まっしぐら。
そのほか、定番の天ぷらそばや春菊天そばも人気。夏には冷やし天ぷらそば、冷やしたぬきそばなどがよく出るそうです。
実は同店、駅構内の改装に伴い、2011年末に一度閉店しています。ところが、再開を望むファンの声に後押しされ、1年半後の2013年6月にリニューアルオープン。
再開後には地元の人だけでなく、全国の鉄道ファンや立ち食いそばファンも数多く店を訪れたそうです。
また、リニューアルに伴い、ドアなし吹きさらしの店構えから、ドアありの広い店内に模様替え。そのせいか、女性客が以前より増えたそうです(吹きさらしのほうが味わいがあったというオールドファンの声も一部にはありますが)。
- 狭山そば 所沢店
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埼玉県 所沢市 くすのき台
そば(蕎麦)
忙しい仕事の合間に、おいしい「駅そば」でちょっと息抜きを
今回は、多くの人が利用する都心のターミナル駅だけでなく、都心からちょっと離れた小さな駅の絶品駅そばも紹介しました。
そうした駅にはなかなか行く機会も少ないかと思いますが、もし仕事などでその駅を利用したり、近くの駅に行く機会があったら、ちょっと時間を作って、個性あふれる絶品駅そばを堪能してはいかがでしょうか。