「幻のシナモンロール」。
そう呼ばれている、シナモンロールがあるのをご存知ですか? 何がどう幻なのか。
そして、なぜバゲットでも、クロワッサンでもなく、「シナモンロール」なのか。
その秘密は、向ヶ丘遊園駅からほど近くにある「CEYLON(セイロン)」にありました。
この「CEYLON(セイロン)」は、1日限定100個分のシナモンロールが、開店から1時間ほどで売り切れてしまうという人気店。1時間で売り切れてしまうので「幻」というわけですね。
そんな多くの人を引きつけるおいしさの秘密を探るべく、パンコーディネーターの福地寧子(ふくちあやこ)さんと共に、取材へ行ってきました。
プロフィール
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福地寧子
- 私にとってパンは“命の糧”、1日3食(以上)パンを食べています。年間延べ200軒のパン屋を訪れてまもなく四半世紀。パン屋巡りや食べ歩きの備忘録としてブログ「For Bread Lovers 3」を綴っています。
これまで10年以上、ほぼ毎日パンを食べ続けて、年間200軒ものパン屋を訪れるという福地さん。実はこのCEYLONには初来店。さあ、幻のシナモンロールとは一体どんなものなのでしょう。
シナモンロールとしては珍しいキューブ状の理由
可愛らしい装飾に包まれて、絵本に出てきそうな街のパン屋さんのよう。ディスプレイには定番の「プレーンシナモンロール」のほかにも、季節ものが取り揃えてあります。
店主の森麻里子さんは、製造と販売をひとりでこなしています。元々パティシエの仕事をされていたのですが、青年海外協力隊として、スリランカで2年間活動されていた経験があります。
福地「キューブ状って、とてもめずらしいですね。こんなにもキレイに仕上げることは、むずかしいことだと思います」
森 「一番の理由としましては、一つひとつしっかりと水分調整ができるということ。また、あなただけのために焼き上げました、という気持ちも伝わると思っています。作り上げるまで12時間かかるので、すべてをきちんとコントロールするには、1日に100個がMAXですね」
福地「パン好き仲間からの口コミや、お店のホームページを拝見して、こだわりが伝わっていました。一番下の段のプレーン以外は、すべて季節商品ですか?」
森 「はい、季節によってさまざまな素材の違いや工夫があります。たとえば『キトゥルハニー&トリプルナッツ』に使用するナッツも、季節によって、ロースト具合やミックスを変えたりしているんです」
福地「本当に季節感がありますね。次は何が登場するのかなって、ワクワクします」
今まで感じたことのないシナモンの香りに感動!
通常は上から十字にカットするのですが、中のロール部分を撮影できるように、まずは上下半分にカットしてくださいました。
福地「一般的なものよりも、アイシング(砂糖衣がけ)がすごく控えめですね」
森 「セイロンシナモンの香りに寄り添いつつも、スイーツの甘さにしてあります。クリームチーズと、有機のレモンを使用しているのですが、季節によっては有機のライムにすることもあります」
福地 「……本当に香りがいいです。本物だということが、しっかりと伝わってきますね。食べてみても、軽やかな印象を受けました」
森 「半分だけにするつもりだったのに1個丸ごと食べちゃった、とおっしゃるお客さまもいらっしゃいます(笑)」
福地 「今、下半分も味わってみたのですが、すみません……、シナモンの甘さに感動しています! 上のほうはアイシングでバランスが整えられていますが、下のほうはまさにシナモンが前面に感じられて、すっごいですね!」
森 「わぁ、嬉しい……!」
福地「すっごいおいしいです、ほんとに(笑)」
希少なスリランカコーヒーの味わいも◎
福地「ミルキーな味わいが、あー、すごい……!」
森 「スリランカって、実はコーヒーの名産地でもあるんです。フローラル調の香りがあって、軽やかさがあります。自家製のカスタードクリームとシナモンと砂糖に加えて、ホワイトチョコレートを少し巻くことで、ラテのイメージに仕上げています」
福地「こちらを食べた人は、間違いなく次も買って帰るでしょうね。なんだか少し、プレーンよりもしっとりしている気がします」
森 「ホワイトチョコレートが混ざりあっていることと、プレーンよりも卵の配合が少しだけ多いんです」
日本ではめずらしいキトゥルハニー!
福地「なんだろう、プレーンと食べ比べてみると、濃度が増したような気がします。なんというのかな……、ものすごくチャーミングですね(笑)!」
森 「ありがとうございます! プレーンのようにハチミツではなく、キトゥルハニー(スリランカの天然甘味料)を入れているので、焼けたときの香りが少し変わってきますし、よりシナモンのコクが伝わってきます」
上質なセイロンシナモンスティックには甘みが……
森 「こちらのシナモンスティックは、今回仕入れた中でも、グレードが一番高いものなんです。この薄さにするのが、すごくむずかしいんですよ」
福地「あれ、今までシナモンが、こんな香りだったことがない。すごく爽やかな香りですよね」
森 「スリランカでは砕いてお料理に使うんですよ。よかったら、かじってみてください」
福地「ほんとに少しだけなのに、口中に甘みと香りが広がります!」
森 「お口に入れると、少しずつ味が変化していくので。お口直しにハンカチに包んでもっている方も多いんです。また、シナモンは、血管をパーっと開いて、気持ちをリラックスさせるといわれています」
福地「実際に現地へ行って買われるんですか?」
森 「はい、毎年二回ほど、買い付けに行きます。実際に農場を見て、その土地に吹く風や土壌による違いを見極めて、私の好みのものを選んでいます」
福地「すごいなぁ、ロマンがありますね」
スリランカを知ってもらいたいという想い
福地「ここまでシナモンに惚れ込んだのは、どうしてですか?」
森 「元々パティシエなのですが、学生の頃から、セイロンシナモンが世界一だと知っていました。その後、スリランカに派遣が決まったときに、これは運命かもしれないなと」
森 「実際に行ってみると、やっぱりずば抜けて、想像以上のレベルのシナモンが、普段から使われていました。スリランカの皆さんにはほんとにお世話になったので、シナモンを通してスリランカを広く知っていただけたらいいなと思っています」
福地「ここまで人気になると、今後の展開を考えられる方もいますが、森さんはいかがですか?」
森 「ほんとにここでお店を始めたときは、まったく土地勘がなかったのですが、施工中から近所の人たちが大丈夫?って声をかけてくださいました。皆さんから可愛がっていただいて、これまでの五年間があります。ですので地域密着型として、なるべく長く続けられることを目標にしています」
福地「パン屋さんの理想って、近所の人が買えてこそだと思っています。ですので、このスタイルのままでいていただきたいなと、個人的に応援しています!」
まっすぐな想いと眼差しはこれからも
「この子はプレーンで、この子はカフェラテで……」と、我が子のようにパンを呼んでいた、森さん。そして、パンを主食にし、パンをこよなく愛する福地さん。おふたりの出会いも、シナモンが引き合わせた、必然的な運命のように感じました。
森さんのお子さんが二歳の頃に、家を離れてお店にいても、寂しくならないようにと、友人が描いてくれたという子供の絵。店内から可愛らしい笑顔で、外を眺めながら、皆さんの到着を待っているかのようですね。ぜひ、愛に満ち溢れるシナモンロールを味わいながら、スリランカに想いを寄せてみませんか?
- CEYLON
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- 住 所
- 神奈川県川崎市多摩区登戸1813
- 電 話
- 044-911-9017
- 営業時間
- 火・水・金曜日----14:00~16:30 (完売にて終了)
土曜日-------------11:00~14:00 (完売にて終了) - 定休日
- 月曜日・木曜日・日曜日・祝祭日(臨時休業はFacebookに記載)
- セイロン
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神奈川県 川崎市多摩区 登戸
パン屋