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ビリヤニに取り憑かれた男が語る!世界三大炊き込みご飯「ビリヤニ」の奥深さ22箇条

どうも、ライターのくいしんです。くいしんはもちろん、「食いしん坊」からとってます。

普段は、これからの暮らしを考えるウェブメディア「灯台もと暮らし」で編集・執筆をしています。ちなみに、犬ではないほうが僕です。

美味しいビリヤニが食べられるとのことで、登場時からニヤついてしまいまいた。

ビリヤニって、どんなお料理だかご存知ですか?

「インド料理?」

「ピラフみたいなもの? でも炊き込んであるから、違うの?」

「パエリヤみたいな感じじゃない?」

はい、わかります。そんな感じのイメージですよね。でも、今回ご紹介する“本物のビリヤニ”は、想像とはまったくの別物でした。

さて、いま僕がいるのは都内某所にある「ビリヤニハウス」。なんと、ビリヤニを作るために作られたシェアハウスです。

このビリヤニハウスでビリヤニを作っているのが、“めちゃくちゃ美味しいビリヤニを作る”と評判の大澤孝将(おおさわたかまさ)さん。噂によると、大澤さんは『日本ビリヤニ協会の元会長』とのこと。

実際にビリヤニを作ってもらいながら、”ビリヤニの奥深さ”を、解き明かしていきます!

ビリヤニの奥深さ(1)

▲大澤孝将さん

▲大澤孝将さん

「今日は、大澤さんにビリヤニってどういうお料理なのか、どれだけ奥深いのかを教えて欲しくてやってきました!」

「ようこそ、ビリヤニハウスへ! いきなりなんですけど、ビリヤニって、完成まで3時間かかるんです。今日はお時間大丈夫ですか?」

「3時間!? はっ、はい! 大丈夫です! 作りながらビリヤニについて、お話しを聞いてもいいですか?」

「もちろんです!」

ビリヤニの奥深さ(2)

「ビリヤニに使う材料はこちらです。今日は『マトンビリヤニ』を作ります」

「羊の肉であるマトン、スパイス、玉ねぎ、プレーンヨーグルト、トマト缶、バスマティライスという香り米を用意します」

「ふつうの家庭には並ばないような食材もありますね。これらの材料はどこで買うんですか?」

「材料は新大久保にあるインド食材店で買ってます。東京なら、どの街にも結構ありますよ。インド料理は足し算料理なので、食材の仕入れにもこだわることが出来上がりをより美味しくするためのコツなんです」

「インド料理の食材のお店があることを初めて知りました」

「この鍋でビリヤニを作っていきます」

「なんなんだ、この壺型の鍋は……?」

▲大澤さんがパキスタンで購入したというビリヤニ用の鍋

「さて、まずはマトンを煮込みます。肉が硬いといけないので、マトンは今からじっくり3時間火にかけていきます!」

ビリヤニの奥深さ(3)

「今の状況で、一体どんなものが完成するのか全然想像がつかないのですが……」

「ビリヤニって炊き込みご飯なんです。使っている食材はカレーとたいして変わりませんが、肉と米とスパイスを使った究極の料理がビリヤニなんです」

ビリヤニの奥深さ(4)

「そういえば、Wikipediaにも『パエリア』『松茸ご飯』と並んで、ビリヤニは『世界三大炊き込みご飯』って書いてありました」

「あー、『世界三大炊き込みご飯』って言葉は、僕が勝手に作ったんですけどね(笑)」

「えええええっ!(笑)。大澤さんが!?」

「僕は長野出身で松茸が好きなので松茸ご飯、知名度と美味しさともに世界的な炊き込みご飯であるパエリア、ビリヤニは自分が好きだというのもあるけど、南アジア、東南アジア、中東、アフリカで約20億人くらいに親しまれているグローバルな炊き込みご飯だから……勝手にその3つを『世界三大炊き込みご飯』に選びました(笑)

ビリヤニの奥深さ(5)

「Wikipediaに書かれるくらい、世の中に浸透したってことですね」

「あっ、ビリヤニのWikipediaのページは、ほとんど僕が作ったんです。当時書かれていた情報に僕が大幅に書き加えました」

「えええええっ!(笑)。大澤さんが!?」

「そのリアクション2回目だから」
(※小山内は、筆者くいしんのアシスタント)

ビリヤニの奥深さ(6)

「Wikipediaを作ったり、ビリヤニ協会の元会長も務めたり……大澤さんって、どうしてそんなにビリヤニに詳しいんですか?」

「ビリヤニに出会ったのが、当時やっていた仕事でインドへ行ったことがきっかけだったんですけど、そのとき初めてビリヤニを食べて『なんて美味しい料理なんだ!』と思って、そこから1日4食毎日ビリヤニを食べ続けました」

「(狂気だなあ……)」

「その後、日本に帰ってきて『日本にあんな美味しいものがないのはヤバい』と思って、そこら辺のインド料理屋さんを貸し切り、次々にビリヤニパーティーを開いていったんです」

「すさまじいビリヤニ愛ですね」

ビリヤニの奥深さ(7)

「今こんなにビリヤニに詳しいのは、僕が一緒にインドを巡った仲間のビリヤニ太郎と出会ったことや、日本に帰ってビリヤニパーティーをやっているうちにビリヤニの話しかしない仲間ができたことが大きいです」

「ビリヤニ太郎?」

「今の日本ビリヤニ協会会長です。僕はビリヤニの研究に注力したくて隠居したので、会長の職を降りました(笑)。ビリヤニ太郎は出会った当時まだ20歳だったのにビリヤニにすっごい詳しかったし、とても美味しいビリヤニを作るんですよ」

ビリヤニの奥深さ(8)

「えっ、その油は……」

「次は、ビリヤニに入れるフライドオニオンを作ります」

「先程も言いましたが、インド料理は足し算の料理なので、ひとつひとつの食材をどれだけ良い状態で合わせられるかが最終的な料理の味を左右します。なので、100点のフライドオニオンを作ることをいつも心がけています」

▲こちらが完成したフライドオニオン

「わぁ、茶色いんですね」

「玉ねぎは元々糖分がたくさん入っているのですが、一方で辛味成分も入っているので、生だと辛いだけなんです。それを加熱すると辛味成分が飛んで甘みだけが残る。この甘みだけの状態が、白いフライドオニオンです。そこからさらに焦げない程度に茶色くなるまで加熱していくと、糖分とタンパク質が反応して旨味成分が出てくるんです。くいしんさん、食べてみますか?」

「いただきます」

「おお!うまい! 人生で一番のフライドオニオンだこれ……」

「いや、口から玉ねぎ出てますよ」

ビリヤニの奥深さ(9)

「ビリヤニって、どういう言葉の意味なんですか?」

「ビリヤニは、ペルシャ語で『ロースト(あぶり焼き・蒸し焼き)』を意味する『ベルヤーン』がその語源ではないかと言われています。ビリヤニは炊き込みご飯なので、少し意味が変わってしまっているようにも思えますけど(笑)。面白いことに、ヒンディー語はペルシャ語由来の言葉が多い」

「ペルシャってことは、今のイランですよね」

「もともと炊き込みご飯は中東から来たんです。それがインドに伝わって、インドのスパイス文化と融合してビリヤニができました」

ビリヤニの奥深さ(10)

「次は、ニンニクと生姜でペーストを作ります」

「なるほど、だからミキサーを用意していたのですね」

「ニンニクの皮をこうやって剥いて」

「でもって、こうやって……」

「っっっ!?(めっちゃ鍋振ってる……!!)そ、そのニンニクの皮を剥く方法は、インドで教わったのですか?」

「いえ、これはYouTubeで」

「YouTubeだった」

「僕はインド中のビリヤニ店を何度も訪れてますけど、作り方については誰かから教えてもらったわけではなくて、見よう見まねで研究してビリヤニを作れるようになったという感じなんです」

ビリヤニの奥深さ(11)

「そしていよいよ、ビリヤニのスパイスを調合したマサラペーストを作ります」

「油めっちゃ使いますね」

「スパイスには『親油性』の辛味成分があるので、直接この煮込んでいるマトンに入れてしまうと、すごく刺々しい味になってしまうんです。そこで、油に1回なじませてあげると、『親油性』の辛味成分が油に溶けて嫌な辛さがなくなるんです」

「先ほどペーストしたニンニクと生姜も、こうやって油に溶かすことによって、臭みを飛ばすんです。こんなことを自分で研究してやっていたら、パキスタンのお店でも同じことをやっていて驚きました。美味しさを突き詰めていくと、結局ひとつの方法にたどり着くんです」

ビリヤニの奥深さ(12)

「煮込んでいるマトンにトマト缶とヨーグルト、今油に溶かしたマサラペーストを入れてグレービーソースを作ります」

「どうしてヨーグルトを入れるのでしょう?」

「旨味と酸味をプラスするためです。ヨーグルトを入れないビリヤニはインドではほぼ見たことがないですね。ちなみに僕は、この『ナチュレ恵』一択ですね。他のヨーグルトもいろいろ試したんですけど、美味しいビリヤニを作れたときはいつもこのヨーグルトでした」

ビリヤニの奥深さ(13)

「大澤さんは、一時期はビリヤニのお店『ビリヤニマサラ』を運営していたとお聞きしました。さっき、『ビリヤニの研究がしたくて隠居した』とおっしゃっていましたが、お店をやっていたほうが研究できるんじゃないんですか?」

「ビリヤニを食べ過ぎてしまったせいで、自分の中の、理想のビリヤニの目標が高すぎて。まだまだ研究しないと100点のビリヤニは作れないし、80点くらいのビリヤニをお店で出すのは恥ずかしい。それに、お店をやるとなると多少の無理が生じてくるので」

「多少の無理?」

炊きたてで提供することの難しさですよね。やっぱり僕は『炊きたてにあらずんばビリヤニにあらず』だと思っているので、炊きたて以外で提供したくないんですよ」

「すごいこだわり」

「米料理なので時間が経つと水分が飛んじゃいますし、水分の量で美味しさが全然変わってきちゃうんです。でも、お店をやるとなると、ビリヤニの炊きあがりの時間まで何時間もお客さんを待たせられないじゃないですか。これが、僕がビリヤニのお店をやっていない理由です」

ビリヤニの奥深さ(14)

「たしかに、炊きたてを守るためにはお客さんに待ってもらわないといけないですよね。本物のビリヤニをお店で提供する方法はないんですか?」

「あるとしたら、20名くらいの完全予約制のお店ですかね」

「20名!」

「ビリヤニは少量で作っても美味しくならないんですよ。一度に大量に炊くことが美味しさのコツ。今作っているのも15〜20人分です(笑)」

ビリヤニの奥深さ(15)

「大澤さんの理想のビリヤニって、どんなビリヤニなんでしょう?」

「ビリヤニは炊き込みご飯、米料理です。だから理想は、米をガツガツ食べてもらえるビリヤニにすることですかね。そのためには、次のバスマティライスを炊く工程がものすごく大事なんです」

「いよいよ、米を炊くんですね!」

ビリヤニの奥深さ(16)

「バスマティライスを塩茹でするのは、『塩味をつけるため』と『米のデンプンを抜くため』です」

「デンプンを抜くため?」

「真水で茹でると米の成分がとけすぎて米がボサボサになっちゃうし、逆にとけないままこのグレービーソースの釜に入れると、モッタリとした重いビリヤニになってしまうんです」

「重いビリヤニに……」

「そこで、お米を塩茹ですることで適度にデンプンを抜いていきます。最初は塩茹でして、そのあとにグレービーソースの入った釜にお米を入れて炊いていきます」

「おおお……、完成が見えてきましたね!」

「もう少しです。序盤に作ったフライドオニオンは、このタイミングで釜に移しておきます」

ビリヤニの奥深さ(17)

「さて、いよいよ最後の工程です。茹でた米を釜に移して、炊いていきます。ここで、使うのが……」

「小麦粉……?」

「接着剤に使います」

「接着剤!?」

「こうして、鍋の淵に接着剤のように小麦粉を貼り付けていきます。小麦粉で蓋をすることで、鍋を完全に密封できるんです」

ビリヤニの奥深さ(18)

「さて、いよいよビリヤニが炊けました!」

「やったーー!!」

「え!真っ白!ビリヤニ感が全然ない……」

「これを盛り付けると、ビリヤニになるんですか!?」

「そうですね。盛り付けも大きなポイントです。ビリヤニにとって、水分の調節が美味しさの生命線なんです。食べるときに水分をベストの状態にしておくためには、まず大皿にビリヤニを移し、そのあと小皿に各自で取り分けてもらいます」

「楽しそう」

「大皿を介すのは、蒸気を逃がすためです。蒸気を逃して大皿に盛ることで、均等な水分量のビリヤニを小皿に取り分けられることになります。本場インドのプロでも、ここの調整は難しくて、お店で一番偉い人『ビリヤニマスター』しか携われない部分だったりします」

「つまりここからの盛り付けがとても大事だと……。なんだか、ここ一番で緊張してきましたね」

「いきますよ!」

ビリヤニの奥深さ(19)

「んん!?」

「グラデーションになってる!!」

「お肉も均等に落とされていっている!すごいですね」

「こういうふうに色がまだらだったら、ちゃんとビリヤニを炊いている証拠なんですよ。ここにパクチーを乗せたら……」

「ビリヤニの完成です!!」

ビリヤニの奥深さ(20)

「ついに!日本一のビリヤニが目の前に!!!!」

「ものすごくいい香りですね〜。くいしんさん、いただきましょう!」

「っっ!!……これは」

「うまいっ!!」

「すごく美味しいです。今まで食べたことのない味がします」

「ちょっと辛いけど、ずっと食べ続けちゃいますね。なんだろう別世界だ。狂いそう」

「それはもう、スパイスがキマってますよ(笑)。スパイスって中毒性があるんです。スパイスが人間の体に与える刺激・興奮って脳に美味しさとして結びつきやすいんですよ」

「もはや麻薬ですね」

「興奮と美味しさが結びついちゃうと、興奮がないと食べた時の満足感が満たされないからスパイスを求めちゃう。日本人は昔からカレーを食べる文化があるから、スパイス中毒の素質はあると思います」

「スパイスがキマってて、今日はもう無理ですね」

「何がですか?」

「仕事」

ビリヤニの奥深さ(21)

「ビリヤニは、日本ではまだまだ浸透してないけど、僕は美味しいビリヤニを食べたいのでもっとプレーヤーが増えてほしいんですよね。ラーメンみたいに」

「なるほど、ラーメン市場は成熟してますもんね」

「僕はただ、ものすごくうまいビリヤニが食べたいだけなんで。僕より美味しいビリヤニを炊く人が出てきたら、さっさと引退します」

「引退しちゃうんですか!?」

「引退して、うまいビリヤニを出すお店に通いつめます(笑)」

ビリヤニの奥深さ(22)

「僕は自分のFacebookでビリヤニのレシピも公開しているので、お店はやっていないけどみんなに作ってもらうことはできると思います」

「大澤さんの言う美味しいビリヤニって、ズバリなんなんですか?」

「世界中のみんなが共通して美味しいと思えるようなビリヤニです。慣習的に美味しいものじゃなくて、人間の知覚として美味しいものを突き詰めたい。僕もまだまだ修行の身なので、もっと美味しいビリヤニを作れるようになって、いつかインドで名を馳せれるようになったら、お店もまたやってみたいです」

まとめ

作るのに3時間もかかるビリヤニ。細かく作る工程を紹介しているとあまりに記事が長くなるので、これでもずいぶん省略してしまいました。気になる方は、大澤さんのFacebookから作り方をチェック!

Wikipediaのページも、いろんな種類のビリヤニが丁寧に紹介されていておすすめです。

あまりにも深すぎるインド料理とビリヤニの世界。そして、その奥深い世界を徹底的に極めようとする大澤さんの姿は、好きなものをとことん突き詰めて生きている人は超おもしろい!という事実を改めて気づかせてくれました。

おしまい。

ライター紹介

くいしん
くいしん
1985年、神奈川県小田原市生まれ。株式会社Wasei所属。これからの暮らしを考えるウェブメディア「灯台もと暮らし」の編集者。高校卒業後、お笑い芸人見習い、レコードショップ店員を経て音楽雑誌編集者。その後、フリーでウェブ制作を行いウェブディレクターに。数々の転職を繰り返し今に至る。グビ会主宰。
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