日本にある中国各省の料理をご紹介してゆくことで、読者の皆さまにも実際に中国を旅しているような気分を楽しんでもらおうという本企画「旅する中華」。
【旅する中華】第3回は、湖南省!
大家好!
相変わらず中華ばかり食べているアイチーです。
今回登場する湖南省は、前回の広東省の北側に南嶺山脈を挟んで接し、洞庭「湖」の「南」に位置します。
水墨画のような切り立つ山々の風景がすっかり有名になった省西部の張家界や、南・東部を山に囲まれた省面積は中国全土の2%ほどだというのに、ここには5%近くの人口が住んでいるという、密集地域。
ここにもまた、およそ6,800万人近くの湖南の民の胃袋を支える特色ある味わいが豊かに存在するのです。
中国三大「からい」料理のひとつとされる、湖南料理の辛味とは?
辛味の強い料理を特徴とする地方の代表格が、四川・貴州・そして湖南。
四川料理の「麻辣(痺れ辛い)」は、日本でもすっかりおなじみになってきましたね。その「麻辣」が表すように、実は「からさ」にもさまざまあるのです。
では湖南のからさの特徴というと…
☆酸辣(酸っぱ辛い)
☆鲜辣(ストレートで強烈に辛い)
それらの湖南らしい辛味は、赤・青のさまざまな唐辛子を、生・乾燥・漬けたりし、さらにそれらを単独で使ったり数種を組み合わせたりすることで形成されます。
生の鮮やかさ・乾燥の深みある濃さ・漬けたもののオレンジに近い明るさ…見た目の豊かな色彩からも食欲をそそられてしまいます!
剁椒(漬け唐辛子)と魚の頭(いただいたときは鯛の頭)を蒸したもの。「湖南料理」といえばまずあがる代表格。
剁椒は、酸っぱさがツーンとし過ぎずまろやかな口当たり。「酸辣」な味は蒸した魚頭へ浸透し、つまみ始めると箸が止まりません。
さらに、このひと皿はこれで終わらず、麺を投入!
魚を食べ終えたあとに残る剁椒ソースに和えて絡め、「酸辣」を余さずとことん味わい尽くすのです!
この「剁椒」には、湖南省の中でも西部の人々は特に思い入れが強く、无辣不欢,无酸不入口(辛くなきゃがっかりだし、酸っぱくなきゃ口にしない)と言って、より酸味を効かせたものを愛用するほど。
湖南の味は、辣だけにあらず。
からい料理が豊富なことは確かですが、そればかりでもなく実は優しくほっこりとした味わいの蒸し・煮込み料理も湖南ではよく食べられます。
これらの料理は通常メニューに載っています。
カラッと揚げたたまごと唐辛子をサッと強火で炒めたもの。唐辛子の彩りにたまごの黄金色が加わり、ひときわ鮮やか。食感もカリカリふわふわで、目にも口にも楽しい料理。
これは通常メニューにありませんが、今春開催した、中華地方菜研究会の「湖南編」にてリクエストして、実食が叶いました!会の参加者のみなさんからも大変好評でした。
食べてみたい方は、前もって問い合わせて予約してみてくださいね。
毛沢東が愛した「クサうま!」料理とは?
「臭豆腐」といえば、厚揚げのような見た目をしながらも独特のニオイを放つ小吃(軽食)として、中国や台湾などへ旅したらチャレンジする人が増え、それが気に入り恋しくなるファンも増えてきている模様。
そんな臭豆腐ですが、省都長沙をはじめとした湖南省の臭豆腐は、なんと真っ黒!色もニオイもインパクト大なのです。
湖南省の「臭豆腐」、真っ黒でクサい…その正体とは!?
黒色の正体は、豆豉。豆豉は塩を加えた黒豆を発酵させ水分を取り除いた調味料。ちょこっと使うとまろやかなコクを生み、幅広い地方の中華料理で活躍していますね。
この豆豉をまず煮立たせ、冷ましたのちシイタケ・タケノコ・酒などを合わせ、豆腐漬け込む「漬け汁」を作ります。
そこへ豆腐を漬け込むことおよそ半月ほど。そうして汁からしっかりと色を吸い、発酵によりニオイと栄養分を蓄えて、真っ黒クサい、けれどクセになる、クサうまな「長沙臭豆腐」のできあがり!
湖南省といえば、毛沢東の故郷としても有名。彼の愛した味は「毛家菜」と呼ばれ、湖南料理のいち側面を形成します。豚の醤油煮込みが有名ですね。
その毛沢東が愛した味のひとつに、この「长沙臭豆腐」もあります。
「闻起来臭,吃起来香!(嗅げばクサいが食べるとウマい)」と大変気に入り、故郷の村から省都長沙に出てきた学生時代、のちに視察として帰郷した際に、欠かさず食べていたのだそうです。
そうして多くの人にこの料理が知られることになり、湖南の名小吃と育ってゆきました。そしてなんと最近この「长沙臭豆腐」が「李厨」でレギュラー化したのです!ぜひこの機会に超クサうまな一品をみなさんチャレンジしてみてください!
別冊メニュー「最新の料理」は要チェック!
「故郷湖南の味を日本でより多くの人々に紹介したい!」と熱き想いで数々の料理を提供してくださっている、省都長沙出身の李志紅・沢紅の兄弟シェフ。
通常メニューの中もかなり高い「湖南率」ですが、さらにあふれんばかりのふたりの想いが詰め込まれた別冊メニュー「最新の料理」にも、さらにここでしか味わえない湖南の味が並びます。
このメニューを裏返すと日本語版もありますが、先ほど紹介した臭豆腐など、「多分日本人のお客さんにはあまり好まれないてあろう」と察し、いくつか省略されてしまっています!ご注文の際はお気をつけください。
ぜひ、高田馬場「李厨」で、旅するように湖南料理を召し上がってみてくださいね!
- 本格湖南料理 李厨
-
東京都 新宿区 高田馬場
四川料理
ライター紹介
-
アイチー(愛吃)
- 「中華地方菜研究会〜旅するように中華を食べ歩こう〜」主宰。四半世紀ほど前、中国・山西省へ留学。滞在中、時間を見つけては中国大陸を東奔西走。帰国後現地で食べた味が恋しくなり、日本で懐かしい味を求めて中華を食べ歩く。日本でも楽しめる「地方菜(中国各地の郷土料理)」を紹介しつつ、読者のみなさんとワイワイ食べる会も時折開催中。