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神保町のカレー屋「ボンディ」があのジャガイモを出すのはなぜ?付け合わせに隠された創業者の愛情

ライター紹介

山口祐加
山口祐加
ごはんの人。東京生まれの25歳。出版社を経て、食のプロデュース会社で働いています。両親共働きで、母親に「ゆかが料理を作らないと晩御飯ないよ」と笑顔でおどされ、7歳のときに料理に目覚めました。趣味は友人にご飯を作ることと、ストイックな食べ歩き(2016年は新規125軒、2017年は新規220軒)です。

はじめまして。ライターの山口祐加です!

1992年生まれの25歳で、好きなことは「料理」と「食べ歩き」。

昼ごはんを食べながら「夜は何を食べようか?」と想像してしまうほど、暇さえあれば食べることばかり考えてしまいます。

2017年は、今のところ180軒のお店を新規開拓したのですが、行ってみたいお店は増えるばかりです…。

(私のレストラン記録はこちら→https://note.mu/yucca88

しかも、外食でおいしいものを食べると、今度は自分で料理を作りたくなり、友人を呼んでは私が料理をふるまうというイベントも定期的に行っています。

▲イベントの様子

▲イベントの様子

そんな食べることを中心に生活を送っている私が、今年になってどっぷりハマったのが「カレー」です。

カレーにわいた2017年

今年はグルメ系のメディアに留まらず、ファッションやカルチャー系のWebメディア・雑誌でも数多く「カレー特集」が組まれました。

Instagramを開けばカレーの写真、カレーを食べるイベントやカレーの学校まで、「カレー」の文字を見ない日はないくらい。私自身も「今年の夏は胃袋をカレーに捧げる!」と覚悟を決め、カレーをひたすら食べまくる夏を過ごしました。

▲私のお気に入り、西永福「ウミネコカレー」。

▲私のお気に入り、西永福「ウミネコカレー」。

新しい店に行けば行くほど、一口に「カレー」と言っても様々なスタイルがあるカレーの懐の深さと、すべてを包み込むスパイスの旨みと香りにハマっていきました。本当、なんでカレーってあんなにおいしいんでしょう。

そんな充実のカレーライフを過ごしていた私は、ひとつの不思議と出会います。

カレーの名店・神保町「ボンディ」と「じゃがいも」の謎

9月のとある日、神保町にある欧風カレーのお店「ボンディ」を訪れたときのこと。ひとりでお店に行き、たち込めるカレーの香りにくらっとしながらカウンターに座りました。

さっそくカレーを注文し、厨房からお客のもとへ運ばれるカレーたちをぼんやり眺めていると、「コトン」と私の目の前に何かの置かれる気配が。

「ゆでたじゃがいも……と、バター?」

「え、なぜじゃがバター……? これからカレー食べるのにお腹ふくれそう」

それが私の抱いた第一印象。疑問に思いながら、数年前に神保町の名店「エチオピア」を訪れたときにも、カレーの前にじゃがいもが出てきたことを思い出しました。

そのときも同じ心情を抱きつつ、普段あまり自分では作らない「じゃがバター」の素朴で直球なおいしさに唸ったんだ、そういえば。

話は戻って2017年、ボンディ。

そのときぶりに食べたじゃがバターは、もはや説明不要のおいしさ。そのあと出てきたカレーは、甘み・コク・辛みがこれ以上ないほどに融合していて、今まで食べた欧風カレーの中でも群を抜く逸品でした。

一方で、大変おいしくいただきながらも「なぜ神保町の人気カレー店ではじゃがいもが出てくるのか?」という疑問がふつふつと湧き上がり、頭から離れないままだったのです。

じゃがいもの謎を突きとめたい!

帰り道、「神保町カレー屋のじゃがいもの謎」についてネットで調べていると、次の4つのことがわかりました。

①神保町のカレー屋でなぜ「じゃがいも」が出てくるのかはあまりわかっていない。ベストな食べ方もわからない人が多い
②提供されたじゃがいもに対して、じゃがバターとして食べる派と、カレーと一緒にまぜて食べる派がいる
③最初にじゃがいもを出し始めたのは「ボンディ」らしい
④神保町でカレーを提供する前にじゃがいもを出すお店「ボンディ、ペルソナ、カヴィアル、エチオピア」の4軒はすべて半径200mの範囲に集中している

と、ここまでは調べたものの「じゃがいもの謎」についてお店の方が語っている文献はなかなか見つかりません。(もしあったら、ぜひ教えてください!)

それならばと、僭越ながら私がその謎を突き止めようじゃないか!ということで、じゃがいもを最初に出したとされる「ボンディ」の2代目オーナー・村田信輔さんにお話を伺ってきました!

▲この看板を目印に、ボンディはビルの2階にあります。

▲この看板を目印に、ボンディはビルの2階にあります。

……とその前に、ボンディを知らない方へざっくりとボンディについてご説明します。既知の方は読み呼ばしてくださいね。

そもそも神保町「ボンディ」って?

ボンディは1978年、神保町にオープンした「欧風カレー」の発祥の店。創業者の村田紘一氏がフランスへ渡り、現地の料理店で働いた際にソースの奥深さに魅了され、ブラウンソースをベースに作ったのがボンディの「欧風カレー」。

カレー好きのあいだでも数多くのボンディファンがおり、カレー激戦区・神保町におけるカレーの代名詞のようなお店なのです。

せっかくなので、創業者・村田紘一氏の息子さんである2代目オーナーの村田信輔さんにボンディのカレーの特徴を直接伺ってみました。

現オーナー・村田信輔さん。「カレーも好きだけど、ラーメンも好き」だそうです。

現オーナー・村田信輔さん。「カレーも好きだけど、ラーメンも好き」だそうです。

「ボンディのカレーは、口にしたとき最初に玉ねぎの甘みがきて、次にカレーのコクや旨味があり、最後に辛みを味わえるのが特徴です。すべてのメニューはこのカレーソースをベースに作られています。

ビーフカレーはソースと肉を一緒に煮込んだり、チキンカレーはカレー粉と塩で下味をつけた鶏のもも肉を1日寝かせ、オリーブオイルで焼いてソースをかけたりなど、調理法を変えて提供しています」

▲ビーフカレー(1,480円 税込)

▲ビーフカレー(1,480円 税込)

「ライスは、コショーやにんにくなどを使ったオリジナルのブイヨンスープ、バター、ローリエを入れて炊き込んだボンディのオリジナルです。

上に乗っているチーズはゴーダチーズで、塩気が効いていてカレーによく合うんです。小梅とかっぱ漬けは、お口なおしとして添えています」

カレーだけでなくライスやチーズにもこだわり、お口なおしまで気が効いているというさすがの一皿。「ここでしか食べられない味」を求めて、下は中学生から上は80代まで幅広い世代のお客さんがいらっしゃるそうです。

さて、お待たせしました!ここで本題の「じゃがいもの謎」についてお伺いしました。果たして、その理由とは?

▲素手で持ち続けられないほど、運ばれてきたときはアツアツ!

▲素手で持ち続けられないほど、運ばれてきたときはアツアツ!

じゃがいもに隠された、時代背景と創業者の愛情

「じゃがいもを前菜として提供している理由は3つあります。

1つ目は、父が修行したフランス料理の『最初の一皿(前菜)』をイメージしてじゃがいもを出し始めたからです。創業当時、カレーの平均価格が300円程度だった時代に、ボンディは880円で提供しており、まわりと比べて高価でした。ですので、ただご飯にルーをかけたカレーではなく、フランス料理でドレッシングを入れる器にカレーを盛ってみたり、ライスを別添えにしたり、前菜を出すなどして高級感を出したという経緯があります。

2つ目は、ボンディのカレーソース自体にじゃがいもが入っていないので、別口として提供したという理由です。日本人にとってカレーの具といえば、『玉ねぎ・にんじん・じゃがいも』。そのうちの玉ねぎとにんじんはミンチされてソースに入っていますが、じゃがいもは水分が出やすく、カレーが水っぽくなるので入れていません。ただ、カレーからじゃがいもを外すのは違うだろうということで、ゆでたじゃがいもを出しています。

3つ目は、食べてくださる人にお腹いっぱいになってほしいからです。神保町は学生も多いので、高いお金を払ってでも食べにきてくれる人にご飯を大盛りにするだけでなく、じゃがいもも提供することで満足してほしい。そういった願いを込めて創業者の父がはじめました」

じゃがいもの謎が解けました。日本人が思い描くカレーを大切にしながらも、値段相応にするために “前菜”の役割をじゃがいもに与え、極めつけは「学生さんにお腹いっぱいになってほしい」という愛情を込めた…。

ボンディのじゃがいもには、こんなにもいろんな経緯と愛情が詰まっていたんですね。この事実を知ると、お客さんがじゃがいもを頬張る様子も、また少し違って見えてきます。

オーナーが語る「じゃがいもの食べ方指南」

「じゃがいもは、シンプルに水から塩ゆでしているだけです。品種は主にホクホクしていて、じゃがいもの味が強い男爵を使っています。1日平均で450人ほどお客さんがいらっしゃるので、1人あたりじゃがいもを2個出すとなると毎日900〜1000個近く仕込んでいます

じゃがいもに付け合わせているバターは、じゃがいもにもカレーにも合うようにオリジナルで作ってもらっています。ほとんど無塩バターに近いような塩加減です。なので、じゃがバターとして食べるときはテーブルの塩・コショーをかけて食べるとおいしいですよ

ライスどころか、バターまでオリジナルで作ってしまうボンディ、おそるべし。つまり、このじゃがバターはボンディでしか味わえないということです…!

▲塩コショーで食べると、バターの風味が強まってより一層おいしい

▲塩コショーで食べると、バターの風味が強まってより一層おいしい

ここで①じゃがバターとして食べる派と、②カレーと一緒にまぜて食べる派がいることについて、どちらがオススメなのか伺ってみました。

「僕は2つのじゃがいもを①と②の両方の方法で食べるのをオススメしています。1つはじゃがバターとして食べて、カレーが待ち遠しい空腹を紛らわせます。もう1つはカレーが来たら、じゃがいもを一口サイズにしてバターを塗り(※ここ重要)カレーをかけて食べます。バターとカレーの香りが絶妙に相まって、おいしいですよ」

ということで、じゃがバターとして食べる派のみなさま、カレーと一緒に食べる派のみなさま、どちらも正解でございます!

せっかく2個あるのであれば、どちらも試すのは名案ですね。

さっそく、村田さんオススメの方法「一口サイズのじゃがいも+バター+カレー」でいただいてみました。

まず、じゃがいもを一口サイズにして、バターをつけ、

その上にカレーをかけて、

いただきます。

最高においしい! じゃがいもがバターと絡まってカレーとのつなぎ役になっています…!

私はこんなにおいしい「カレーのじゃがいも」を後にも先にも知りません。ぜひみなさまお試しあれ!

「ボンディとじゃがいも」の切っても切れない関係性

今回お話を伺って、まさかじゃがいもにそこまでの物語があるとは思っていませんでした。玉ねぎ・にんじん・じゃがいものポテンシャルを最大限に活かしつつ、理にかなっていて、考えに考えつくされたことがよく伝わります。

もしも、ボンディに来て前菜がじゃがいもではなく、ゆでた「にんじん」や「玉ねぎ」だったら…きっと、さみしくてしょうがありません。

また、じゃがいものお話だけでなく、ライスやバターをオリジナルで作っているなど、カレーのおいしさを引き出すために徹底的にこだわっているお話を伺って、ますますボンディのファンになってしまいました!

ちなみにですが、過去に村田さんが受けた取材で「じゃがいも」についてここまで聞かれたことは初めてとのこと。行ってよかった!

みなさまもぜひ熱々のじゃがいもに想いを馳せながら、2度に分けて味わってみてくださいね。

それでは!

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