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店選びは「人を好きになるか」で決める。カリフォルニア出身のシェフが営む、帰りたくなる小さなレストラン

ライター紹介

山口祐加
山口祐加
ごはんの人。東京生まれの25歳。出版社を経て、食のプロデュース会社で働いています。両親共働きで、母親に「ゆかが料理を作らないと晩御飯ないよ」と笑顔でおどされ、7歳のときに料理に目覚めました。趣味は友人にご飯を作ることと、ストイックな食べ歩き(2016年は新規125軒、2017年は新規220軒)です。

はじめまして。ライターの山口祐加です!

1992年生まれの25歳で、好きなことは「料理」と「食べ歩き」。2017年も残すところあと2ヶ月ですが、まだまだ食べ歩きたい所存です。

(私のレストラン記録はこちら→https://www.instagram.com/yucca88/

さて、突然ですが質問です。

みなさんはお店を選ぶとき、何を基準に選びますか?

料理のジャンル、価格帯、立地、好みの味かどうか、食事の出てくる早さ...など、人によって様々ですよね。また、友人や恋人など一緒に行く人によっても店選びは大きく変わります。

上記に挙げた条件も大切ですが、それ以上に私にとって大切なのは「人」です。お料理を楽しみながら、シェフやサービスを務める方とお話しするうちに人柄に惹かれ、何度も通うことに…ということが多々あります。

「人を好きになると、余計に料理がおいしい」

私の中でハズレなしの基準です。そんな“チャーミングな人がいるレストラン”が、またひとつ東京に誕生しました。

▲目黒駅から徒歩7分。淡いネイビーの外観が目印。

▲目黒駅から徒歩7分。淡いネイビーの外観が目印。

▲Localeとは英語で「場所」を意味する。

▲Localeとは英語で「場所」を意味する。

10月頭にオープンしたばかりの「LOCALE Tokyo(ローカルトウキョウ、以下LOCALE)」は、目黒の住宅街にひっそり佇むカリフォルニア料理のレストラン。

シェフを務めるのは、カリフォルニア出身、サンフランシスコの名店で修行を積んだ笑顔がチャーミングなケイティ。

シンプルな調理法に少しひねりを効かせたお料理は、彼女の愛する農家さんたちが育てたお野菜を使っています。素材から溢れるパワーが、食べる人を少しずつ元気にしていく、そんなお料理たち。

▲ルッコラとスペイン原産のマンチェゴチーズ、クルミのサラダ。12ヶ月熟成されたチーズが絶品!

▲ルッコラとスペイン原産のマンチェゴチーズ、クルミのサラダ。12ヶ月熟成されたチーズが絶品!

ケイティは、チャキチャキと料理を作る一方で、自らサーブをしたり、メニューの相談に乗ったりとまるで居酒屋の女将的なコミュニケーションでお客をなごませます。

おかげで、初めて訪れても友達の家に呼ばれているような心地に。早い時間は店内に私たち一組でしたが、お腹が落ち着いた頃にはもう満席。これは、流行りそうな予感。

▲カウンターは食材が調理されていく様子を眺める特等席。

▲カウンターは食材が調理されていく様子を眺める特等席。

でも、そんな素敵なレストランをどうして日本で?
そもそも、カリフォルニア料理ってなに?
ここにたどり着くまでにどんな経緯があったの?

いつものように「シェフ」のことが気になり、ケイティにインタビューを申し込み、二つ返事で「喜んで!」と快諾してくれました。

愛する農家さんが作った野菜を届けたい

山口「まず、このお店のコンセプトを教えてください。」

ケイティ「コンセプトは“Farm to Table、Eat Local、Cook Simple”です。日本各地の信頼できる農家さんや生産者さんから直接食材を仕入れ、素材の良さを活かしたシンプルな料理を提供しています。

『私の作りたい料理』が先にあるのではなく、『大好きな農家さんたちが育てた野菜をどうやって料理しよう?』といつも考えています。

農家さんには“オススメボックス”として旬の野菜を入れてもらうようにお願いしています。例えば15,000円でお願いしますと伝えて、内容に関してはあまり口を出しません。ですので、開ける瞬間まで何が入っているかわからないのです。届いた食材で料理をするのが、私たちの仕事です。

農家さんたちが手塩にかけて野菜を育てた時間、注がれているエネルギーをお客さんにシェアしたい。私はただ『農家さんとお客さんの間に通じている人』というイメージです。ただ、お野菜をそのまま出したらいいわけではなく、お客さんにおいしさを伝えるためにはうまく料理しなければなりませんね」

▲新鮮な野菜がずらりとならぶ。

▲新鮮な野菜がずらりとならぶ。

山口「どうしてそこまで『農家さん』に思い入れがあるのでしょうか?」

ケイティ「私が住んでいたサンフランシスコのレストランでは、料理のジャンルに限らず『生産者の見える食材を使うこと』が当たり前になっています。まず生産者は誰か、どうやって野菜を育てているかを知り、料理を食べるお客さんに伝えることが自然な流れです。シェ・パニーズなどの有名レストランだけでなく、街中にある普通のレストランも当たり前のようにそうしています。

そんな場所で10年間シェフとして働いていたので、農家さんたちともたくさんの縁ができました。お野菜は、一朝一夕でできるわけではありません。まいた種を農家さんが毎日気にかけながら大切に育てて収穫され、やっと私たちが食べられる状態になります。

手間暇がかかる農業に愛を持って取り組む人々が作る野菜を食べられることは、幸運なことだと思っています」

▲三浦の農場で育てられたにんじん(写真提供:LOCALE Tokyo)

▲三浦の農場で育てられたにんじん(写真提供:LOCALE Tokyo)

山口「なるほど、そういう背景があったのですね。このお店をオープンさせる前にも、いくつか農家さんを尋ねられたそうで?」

ケイティ「はい、日本各地の農家さんをいくつか巡りました。農業の現場は見ているだけで楽しいですが、彼らの優しい目や力強い手を見るのがとても好きです。話は少し反れますが、鹿児島で出会ったオーガニック農場を営む30代のカップルがいて、その昔、彼のほうがガソリンスタンドで働いていました。

地元の農家さんがガソリンを入れに来るたび、彼に野菜を差し入れていたそうです。そのおいしい野菜を食べているうちに彼は農家になりたいと思い、農家に転身しました。彼らのエピソードは記憶に残っています」

(写真提供:LOCALE Tokyo)

(写真提供:LOCALE Tokyo)

Farm to Tableとは最近よく聞くようになったコンセプトですが、調理されてしまえば顔の見える野菜でもスーパーで買った野菜でも見た目は一緒です。

つまりFarm to Tableとは、シェフへの信頼感によって作られる。ケイティはその点において、全幅の信頼を一瞬で寄せてしまうような芯の通った人です。

「カリフォルニア料理」って何?

山口「とても心温まるエピソードですね。そんな愛する農家さんの野菜を使って、お店ではカリフォルニア料理を提供されているそうですが、“カリフォルニア料理”とは一体何なのでしょうか?」

▲生米を粉砕した衣をつけて焼いたカマス。ブラウンバター、エシャロット、ケッパーのソース。お皿にしかれたのはセロリのピューレ。衣が香ばしく、唐揚げ感覚でビールがすすむ。

▲生米を粉砕した衣をつけて焼いたカマス。ブラウンバター、エシャロット、ケッパーのソース。お皿にしかれたのはセロリのピューレ。衣が香ばしく、唐揚げ感覚でビールがすすむ。

ケイティ「現地では、多文化からインスピレーションを受けた料理が『カルフォルニア料理』として認知されています。よく日本では多国籍料理を『フュージョン(融合)』と表現しますが、現地でそう呼んでいる人はほんの数人です。

私が育ったカルフォルニアは、多国籍な人が混ざり合いながら文化を育んでいて、人が多様であれば、食文化も多様になります。

また、お店のコンセプトと同様に“Farm to Table、Eat Local、Cook Simple”はカルフォルニア料理の基本ですね」

▲鹿児島の福留ポーク。ほんのりピンクがかったじゃがいものピューレと、グリルしたミニパプリカを添えて。極上の柔らかさで旨味がつまった一皿。

▲鹿児島の福留ポーク。ほんのりピンクがかったじゃがいものピューレと、グリルしたミニパプリカを添えて。極上の柔らかさで旨味がつまった一皿。

▲上の写真の豚肉を提供している福留さん。チャーミングな生産者さんの写真が撮れるのもきっとケイティならでは。

▲上の写真の豚肉を提供している福留さん。チャーミングな生産者さんの写真が撮れるのもきっとケイティならでは。

山口「ケイティさんご自身はどのようなスタイルでお料理をされるのでしょうか?」

ケイティ「私の料理も同じく、いろんな国の文化の影響を大いに受けていて、お料理にスパイスを使ったり、土鍋で調理したりなど調味料や調理方法は様々です。日本で料理をするという意味では、和食らしい繊細な味付けや、種類の異なる食感を取り入れるのはとても勉強になります。

いろんな文化を交えながら、いい食材を使って手を加えすぎずに料理することが大切です。それから色使いに関しても、見た目にも楽しくなるよういつも心がけています」

▲お客が使うほとんどの皿は、ケイティ自身で製作したもの。

▲お客が使うほとんどの皿は、ケイティ自身で製作したもの。

“I’ll cook for you(あなたのために料理を作ります)”

ケイティの料理のスタイルについて、お店でサービスを務めるアスカさんから、いい言葉をもらいました。

▲写真右がアスカさん。

▲写真右がアスカさん。

アスカ「ケイティはよく“I’ll cook for you(あなたのために料理を作ります)”と言うのですが、お客さんと話しながら好みやその日のコンディションを察して料理を作るのに長けていると思います。

特別な日にかっちりときめてディナーをしたい人でも、お店に来てケイティと話しながら10分も経つとリラックスして和やかなムードになります。彼女の気さくで茶目っ気のあるパーソナリティに惹かれて、お店のファンになってくださる人は多いですね」

▲朝、世田谷のフラワーマーケットで花を仕入れて持って来てくれるそう。

▲朝、世田谷のフラワーマーケットで花を仕入れて持って来てくれるそう。

▲いちばん背の高い木は、ブルーベリーの木が紅葉した姿。

▲いちばん背の高い木は、ブルーベリーの木が紅葉した姿。

帰ってきたくなる小さなレストランを目指して

山口「オープンして間もないですが、どんなお客さんがいらっしゃいましたか?」

ケイティ「近所の方やカップル、海外からのゲストなど、さまざまですね。週末のブランチは家族連れで賑わいます。トレンディな方々が来てくださるのもいいですが、近所の人といい関係でやっていけるのが何よりうれしいですね。

職種・性別・年代・国籍問わず、いろんなタイプのお客さんに気兼ねなく来てもらえる場所にしたいです。どんなお客さんにとっても、いい時間とおいしい経験を得てもらいたい。シンプルにそう思っています」

▲お店のメニューは食材によって毎日更新される。

▲お店のメニューは食材によって毎日更新される。

お店のインテリアやお料理も素晴らしかったですが、なによりも朗らかで芯があり、チャーミングなケイティ自身が最大の魅力であるレストランだと素直に思いました。

家にいるような心地よさでワイン片手に料理を囲み、食事をきっかけに気づいたら人との距離が縮まっているような空気感に包まれる場所。帰り道で「ああ、また行きたいな」と思わせる、お店の全てが幸福感で満ち溢れている店でした。

みなさんもぜひ、ケイティに会いにお店へ訪れてみてくださいね!

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