日本にある中国各省の料理をご紹介してゆくことで、読者の皆さまにも実際に中国を旅しているような気分を楽しんでもらおうという本企画「旅する中華」。
【旅する中華】第4回は、福建省!
大家好!相変わらず中華ばっかり食べているアイチーです。
日本でも聞き慣れた地名のひとつ「福建」。
旅行好きなら世界遺産「福建の土楼群」を訪れた方も多いでしょう。そんな、馴染みありそうな福建省ですが、どんな料理が食べられているのだろう…と考えると、実はあまり福建料理ってピンとこないですよね?
福建省は、中国東南部に位置し通年温暖な気候で、東側が海に面し、ほか三方は険しい山地が多くを占めます。そんな土地の特性の影響を受けつつ、福建料理(略称:閩菜)は、以下3つに大きく分けられます。
福州(閩北:びんほく)料理:省都福州あたり。海産物豊富、あっさりめの味、蒸し物やスープが充実
閩西(びんせい)料理:龍岩など客家土楼群あたり。山の幸や乾物を活かした客家料理
閩南(びんなん)料理:アモイ・泉州あたり。土地柄、台湾料理と共通点が多く、広東潮州や、東南アジア諸国の味も取り入れられている。
今回は、その中から「閩南料理」にクローズアップします!
きっかけ…それは、ある一軒の店との出会い
あれは何年前のことでしょう…
いつものように、新たな中華料理に出会うため、街をぶらりと探検に出かけた時のこと。
降りた駅は蒲田。目的地は未定。さて、歩き始めよう!と駅ロータリーを過ぎて早々に、一気に気持ちが高揚してしまう看板が目に飛び込んできたのです!
その店は「厦門厨房」。
北京、上海、西安あたりの名称を冠する店は数あれど、厦門とは!
アモイ!これまで無かったぞ!
興奮した勢いのまま、店へ吸い込まれたのを思い出します。
早速訪ねてみると、ここ「厦門厨房」を営むシェフ長であるご主人と奥さんのご夫婦が、福建省厦門のご出身とのこと。来日してから数年間、蒲田にあった別の中華料理店でご経験を積んだのち、今からおよそ14年前、2003年8月に「厦門厨房」を開店しました。
さて、こちらで食べることができるのはどんな料理なのでしょうか?
今回ご紹介する福建料理3分類のひとつ「閩南料理」の特徴を、「4つの料理」に沿って少し掘り下げてみましょう。
1.<沙茶面>サテスープ麺
福建省は「華僑の故郷=僑郷(きょうきょう)」と言われ、多くの海外華僑が福建人。(ちなみに華僑とは、中国本土から海外に移住した中国人およびその子孫のこと)
閩南の沿岸都市である厦門には、戻ってきた人々によって色々な国々の味が持ち込まれ、日々の食生活に浸透しています。
福建省の海側以外は、山に囲まれている影響から、隔絶とまではゆきませんが大陸よりも海外との繋がりが高まったのでは…ともいわれます。
特に東南アジアの存在感が大きく、インドネシアの「サテ」に通ずる「沙茶(シャチャ)」味や、マレーシアの「肉骨茶(バクテー)」の姿が。
特に「沙茶」は、元の甘めなピーナッツソースにほんのりピリッとした辛味や虾酱(海老味噌)を加えコクがアップ!その濃厚スープを使った「沙茶面(サテスープ麺)」は、厦門の味の代表格。
現地では人気の小吃(シャオチー、店や屋台で食べる中華の一品料理のこと)なのです。
「厦門厨房」では、通常メニューにはありませんが、数日前までに予約すればいただけます!
2.<海蛎煎蛋>牡蠣玉、牡蠣のお好み焼き
厦門は、東南アジア同様、対岸の台湾とも人々の往来が活発で、料理においてもより多い共通点を見出すことができます。
「海蛎煎蛋(牡蠣玉、牡蠣のお好み焼き)」は、台湾の夜市などでお馴染みですね。「あーっ、カキオコじゃん!」と思った方も多いのでは?
こちらでは青菜を入れず、シンプル仕上げ。つなぎに地瓜粉(サツマイモの粉)を使うことで全体がぷるんとして、プリプリっとした牡蠣の食感も引き立ちます。「厦門厨房」では、通常メニューにあります!
3.<家常海鲜粥>海鮮かゆ、<芋头粥>里芋かゆ
お粥は、シェフ長や奥さんにとって故郷の家庭の味。
魚貝使い・煮込み過ぎない米粒の具合などは、地理的に厦門と近い、広東潮州の「潮州粥(ちょうしゅうがゆ)」との共通点も感じられます。
(潮州粥とは雑炊のようなさらさらとした長時間煮込まれたお粥のこと。様々なおかずと共に食べる)
具はいろいろな組み合わせがありますが、味のポイントは、たけのこ発酵調味料「福州笋丝」。これが、独特の発酵臭を放ちます。つまり…クサい!
その臭いのスゴさには、「厦門厨房」で逸話あり。
この「福州笋丝」を使った料理が運ばれたとき、近くのテーブルにいた中国北方出身のグループがそのクサさに驚き、皆そろって、ガタッと起立してしまったというのです…!
前回「湖南編」に登場した臭豆腐のように、ここにも「クサうまグルメ」が!▶︎詳しくはこちらの記事をチェック https://retty.news/34624/
好きな人にとっては、店に入って「おっ!このニオイは…ホンモノだな!」と小躍りする、嗅ぎ分けポイントでもあります(笑)
ちなみにお粥はメニューにないため要事前予約が必要ですが、この「福州笋丝」を使った料理はメニューに載るものもいくつかあるので、ぜひ嗅いでみたい!と気になる方はぜひチャレンジを!
ちなみにこのお粥との出会いは、一昨年こちらで開催した「中華地方菜研究会」福建厦門編で、シェフ長がサプライズで「家常海鲜粥」を出してくださったこと。このときは牡蠣など魚貝が色々入ったお粥でした。のちの再訪時にご用意いただいたのは、里芋メインに海蛏(マテ貝)などの魚貝類を加えたもの。
いずれも、ガタッとおののき怯むクサさではなく、優しめに程よく香っていました。クサさの強弱の希望は、予約時にリクエストしてみるとよいでしょう。具やごはんをまろやかにまとめてくれて、クセになりそうな旨さですよ!
4.<海蛎饼>牡蠣揚げ餅
現地の厦門では、海外で仕事を成功させ帰ってきた人々が開いた豪華な海鮮レストランも存在しつつ、街に充実しているのは屋台の小吃。
そんな地元の屋台で、シェフ長が小さい頃からよく食べたという「海蛎饼」。
スプーンやレンゲ、おたまですくい、高温の油へ放ち揚げるので「匙子炸」との名も。
カリカリっとした皮のなかは、牡蠣・海苔・葱・もやしなどぎっしり具沢山!ひと口噛めば海の香りがふわ〜っと広がり、気分は厦門の屋台に!
大きさは、握りこぶし大くらいでなかなかボリュームがありますが、止まらずどんどん食べてしまいます! メニューには載っておりませんが、5個以上から事前予約できます。
なお、予約はできなかったけれどフラッと立ち寄りたい時も、店のメニューにはまるまる1ページ「郷土料理」を集めたページがありますので、福建料理を気軽に楽しめますよ!
<福建焖面>汁焼きそば
<厦门炒饭>オリジナルあんかけチャーハン
<花生饺>ピーナッツ揚げ餅
ぜひ、蒲田「厦門厨房」で、旅するように福建南部・閩南の厦門の味を召し上がってみてくださいね!
- 厦門厨房
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東京都 大田区 西蒲田
中華料理
ライター紹介
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アイチー(愛吃)
- 「中華地方菜研究会〜旅するように中華を食べ歩こう〜」主宰。四半世紀ほど前、中国・山西省へ留学。滞在中、時間を見つけては中国大陸を東奔西走。帰国後現地で食べた味が恋しくなり、日本で懐かしい味を求めて中華を食べ歩く。日本でも楽しめる「地方菜(中国各地の郷土料理)」を紹介しつつ、読者のみなさんとワイワイ食べる会も時折開催中。