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日本酒ベンチャー「WAKAZE」が攻めすぎ!発酵中に「柚子」「山椒」「生姜」を入れた新商品を飲んでみた

今年11月、クラウドファンディングサイト「Makuake」内で新たなプロジェクトが始動。開始からわずか11時間で目標金額を達成し、今なお多くの支援を集めている全く新しいお酒があります。

それが、柚子や檸檬、山椒、生姜といった和の柑橘やハーブを使った新感覚のボタニカルSAKE「FONIA(フォニア)」。手がけているのは、“日本酒を世界に広めること”を目標に立ち上がったベンチャー企業「WAKAZE(ワカゼ)」です。

ボタニカルSAKE「FONIA」。左から天空をイメージした「SORRA(ソラ)」と、大地をイメージした「TERRA(テラ)」。

ボタニカルSAKE「FONIA」。左から天空をイメージした「SORRA(ソラ)」と、大地をイメージした「TERRA(テラ)」。

ビールやワインでフルーツやハーブを使ったものは珍しくありませんが、日本酒とボタニカル素材を合わせるというのは初耳です。果たしてボタニカルSAKEはどのようにして生まれたのか、そして肝心のお味は? WAKAZE代表の稲川琢磨さんに、FONIA誕生への思いを伺いました。

「ボタニカル素材×酒」の複雑でふくよかな味との出逢い

2016年1月に創業したばかりのWAKAZE。日本酒ベンチャーの企業として「新しい・おもしろい日本酒を造りたい」という思いから、創業後すぐに洋食とペアリングする日本酒「ORBIA(オルビア)」を開発。こちらもクラウドファンディングで400万円を越える多くの支援を集め、WAKAZEの取り組みは日本酒ファンの間でも注目されるようになりました。

ORBIAの誕生から間髪入れず、新たに開発に着手したのがFONIAです。“ボタニカル素材×日本酒”というアイデアは、どのようなきっかけから生まれたのでしょうか?

株式会社WAKAZE代表の稲川琢磨さん。三軒茶屋でのペアリングイベント(後述)にて。

株式会社WAKAZE代表の稲川琢磨さん。三軒茶屋でのペアリングイベント(後述)にて。

「いま、植物などボタニカルな素材を使って造るお酒が世界的にブームになっています。その一つとして、ORBIAの輸出を広げるため海外を飛び回っている中で、ロンドンのクラフトジンと出逢いました。一口飲んでみて、その味の複雑さとふくよかさに驚かされ、『こういうものを日本酒でも造れないか?』と思ったのが最初のきっかけです」(WAKAZE代表・稲川さん。以下同)

製法について参考になったのはワイン。以前とあるワイナリーで試飲した際、樽で「発酵させたワイン」と「熟成させたワイン」の味わいが全く違った、発酵させたものは味と香りが非常によく馴染んでいた、という経験から、「発酵の過程でボタニカル素材を取り入れたお酒」という構想ができあがります。

こうして、前人未到の「ボタニカルSAKE」への挑戦がスタートしました。

国産素材、日本の伝統技術にこだわる

まずこだわったのはFONIAの副原料となるボタニカル素材。国内外のさまざまな果物やハーブなどを取り寄せ、日本酒との数十種類の組み合わせを試した結果、「やっぱり和のボタニカルじゃないと和の酒である日本酒に合わない」(稲川さん)という結論に至ります。その中でも山椒・柚子・生姜・檸檬など、日本人に馴染みの深い素材が選ばれました。

素材が決まったら、それぞれの産地選びも重要です。より香り高い品質のものを求めて各地を巡り、生産者の方たちと顔を合わせて原料を選定したといいます。結果、山椒は和歌山県有田川町、柚子は高知県馬路村、生姜も同じく高知県、檸檬は広島県と、すべて国産の素材を副原料として使用できることになりました。

そしてこれらボタニカル素材を“発酵中に”混ぜる、というのがFONIAの大きな特徴です。山形県の工業技術センターという公的機関協力のもと試験醸造を行い、ボタニカル素材を投入しても発酵の邪魔にならないタイミングを見極め、味と香りが非常によく馴染んだボタニカルSAKEの醸造に成功しました。

発酵後に副原料を混ぜると酒類としては「リキュール」になりますが、FONIAは発酵中に混ぜているため「その他の醸造酒」という扱いになっています。

「FONIAは非常にチャレンジングな商品。ボタニカル素材を使った酒造りなんて聞いたことがないと、実はいくつもの酒蔵さんに醸造を断られました。ようやく、山形県酒田市にある酒蔵・オードヴィー庄内で造っていただけることになったんです」

酒米も同じ酒田市で育った「亀の尾」を採用。現代の酒米の祖先にあたり「幻の酒米」ともいわれている品種で、栽培期間中の農薬不使用、無肥料で育てた体にやさしいお米です。

さらに「日本酒の伝統的な酒造りを復活させたい」と考え、緑色のボトル「TERRA」では、平安時代に奈良菩提山の正暦寺で行われていた「水酛(みずもと)」による造りを取り入れています。

現代では酒母に乳酸を添加する「速醸酛」という方法が一般的ですが、水酛は乳酸菌の力を使って自然に乳酸を呼び出すという方法。より自然な醸造方法で、味わいに深みや厚みが生まれるのも特徴だといいます。

「国産素材と日本の伝統的な造りにこだわり、和のテイストは感じつつもこれまでとは全く違う個性的な味わいに仕上がりました。和食だけでなくフレンチやイタリアン、スパイスの強いエスニック料理などにも合うお酒です」

ペアリングで広がる「FONIA」の可能性

稲川さんのお話を聞いているうちに、ますますFONIAがどんなお酒か気になってきました! 試験醸造酒をいただけるとのことで、三軒茶屋にある「フィレンツェSAKE」で行われたWAKAZEとのペアリングイベントに参加してきました。

「フィレンツェSAKE」は、日本酒とイタリアンのペアリングが楽しめる新感覚の和酒バル。10人ちょっと入ればいっぱいというこちらのお店もまた、クラウドファンディングで支援を募りオープンしたという経歴を持つ、WAKAZEとのシンパシーを感じるチャレンジングなお店です。

イベントではシェフが腕によりをかけたイタリアンタパスに、それぞれ厳選したワインやWAKAZEのORBIAなど、お酒とのペアリングを一品ずつお店から提案。おいしい料理とそこに花を添えてくれるお酒の数々に、参加者も高揚した様子で楽しんでいます。

白ワイン樽熟成の「ORBIA LUNA(ルナ)」はキンと冷やして。

白ワイン樽熟成の「ORBIA LUNA(ルナ)」はキンと冷やして。

食感も楽しい「カブと柿、リコッタチーズ、ハチミツのサラダ」。

食感も楽しい「カブと柿、リコッタチーズ、ハチミツのサラダ」。

ぬる燗の「ORBIA SOL(ソル)」とジューシーな「自家製ローストポーク」の相性は抜群!

ぬる燗の「ORBIA SOL(ソル)」とジューシーな「自家製ローストポーク」の相性は抜群!

単品で飲むとやや個性の強いORBIAですが、料理と一緒にいただくと、複雑な味が途端に馴染んで奥深い味わいになることに驚きました。料理と一緒になって初めて完成する、これぞペアリングの醍醐味といえるかもしれません。

すべての料理が出そろい、イベントも終わりに近づいたころ、いよいよFONIAの試験醸造酒の登場です。早速、新感覚のボタニカルSAKEを試飲してみます。

山椒・柚子・檸檬を副原料とした「SORRA(ソラ)」は、爽やかな香りとスッキリとした酸味が特徴。柑橘系独特のほろ苦さも感じつつ、キレの良い飲み口は食前酒にぴったり。あっさりした味付けの前菜などとも相性は良さそうです。

続いて山椒・柚子・生姜を使い、先述の水酛で仕込んだ「TERRA(テラ)」。生姜を加えたことでよりスパイシーな香りが際立ち、パンチのある肉料理やハーブを使った料理の味にも負けない個性が光ります。試しに、この日に振る舞われた「軽いチーズの盛り合わせ」と一緒にいただくと、チーズのコクをさらに引き立たせてくれました。

「FONIAはまだ試験醸造を終えた段階でこれから本格的な造りに入るので、今とは異なる味わいになる予定です。ですが、どんなにおもしろくてもおいしくないものを造ったら意味がないので、まずはおいしいものを造るということを大前提にして造っていきます。そしておいしいと思っていただけたら、レストランなどお店側が提案する新しいペアリングとして、FONIAを武器にしていただきたい。お店にとってもお客様にとっても、サプライズになるようなお酒にしたいと考えています」

熱のこもった声で、稲川さんは続けます。

「いま世の中が求めているのは『モノ』ではなく『コト』、つまり体験です。FONIAで新しいSAKEの体験をしてほしい。日本国内に関わらず、世界各国で飲んでいただけるお酒だと僕は確信しています」

「もっとおいしいお酒になる」という稲川さんの力強い言葉に、FONIAの今後の展開を期待せずにはいられません。そしてボタニカルSAKEの次はどんな新しいお酒が生まれるのか? WAKAZEの今後の動向にも注目です!

ボタニカルSAKE「FONIA(フォニア)」の支援はこちらから!

ライター

芳賀直美
芳賀直美
フリーライター/編集者。神奈川県出身。WEB制作会社、編集プロダクションを経て2016年に独立。カルチャー、美容、グルメなど、ジャンル問わず執筆中。パンダとお酒が好きです。
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