営業終了まで残り1年! 渋谷の古きよき大衆酒場「富士屋本店」で呑み語ろう

ライター紹介

塩見なゆ
塩見なゆ
酒場案内人/フリーランス。作家で飲兵衛の両親に育てられた生粋のお酒好き。毎日5軒以上はハシゴ酒、年間2,000軒の酒場を飲み歩いています。Web・TV等で酒場情報を発信中。

2018年10月末、渋谷の名酒場「富士屋本店」の灯りが消えます。

創業から半世紀ほど、渋谷に集うノンベエの”居場所”として多くのファンに親しまれてきた立ち飲み屋です。変化の激しい渋谷において、富士屋本店は変わらないことが魅力でした。

残り1年を切った今、改めて富士屋本店に浸りながら、お二人のゲストとともに酒場の楽しさについて語り合いたいと思います。

富士屋本店は老若男女問わずあらゆる人達のオアシスでした。今回はベテランライターの松浦達也さんと若手の酒好き代表として今野亜美さんにお越しいただきました。

富士屋本店は地階の酒場。学校の教室ほどの空間に全周30メートルのロの字カウンターが広がっています。

えっと、どちらで飲んでいらっしゃるのかな? 時間は18時過ぎ、すでに満員御礼の賑わいです。

▲ベテランママのヨシエさんがお出迎え

▲ベテランママのヨシエさんがお出迎え

こんばんは! 遅れちゃってすみません、年末は混んでいますね。あ、もう始められていますね! では今夜はよろしくお願いします!

「かんぱ〜い!」

おつまみはどうしましょう。

前回来たときにハムキャベツを食べられなかったので、それを食べることが今日の課題なんです。あとはポテトサラダも!

ナス味噌が名物なのでぜひ食べてみてください! まぐろぶつは今日はないんですね…じゃあ、しめ鯖で!

あとハイボール追加で!!

松浦さんはどういう流れで利用することが多いですか?

地下は軽く飲むのにいいですね! ちょっとした時間調整的な感じで。あとは同じ富士屋本店でも、坂の上の富士屋本店ダイニングバーにいくこともあります。オシャレなんですがカジュアルなので、誰とご一緒してもいい感じです。

よく飲みに行く街はどこ?

お二人は、どういうところに飲みに行くことが多いですか?

野毛が多いですね。出会った人と盛り上がる街って感じで。ハシゴ酒も好き。野毛はお店同士も仲が良かったりして街全体が酒場みたいです。店主の方といっしょに飲みに行こうと繰り出すのも楽しかったです。

その若さで野毛なんだ(笑)

自分の世界が広がるのが酒場、はじめての街も居酒屋に行けばなんとかなるかなって。この前も女性のプロレスラーの方と仲良くなって盛り上がった勢いでハシゴしました。世界が広がります。

よく「若者の○○離れ」といいますが、この会話からは「若者の飲み屋離れ」はまったく感じないですね(笑)

お酒が本当に大好きなので(笑)。なゆさんはどこに飲みに行くことが多い?

あまりこの街って決めていません。毎日あっちこっちハシゴ酒で。この間、ふっと思い立って日帰りで大月(山梨県東部)にいってきました。駅の電光掲示板を眺めていて、そうだ、ここ行ってみようってノリで(笑)

え、大月って山梨の? アルファベット一文字違いで大塚かと思った(笑)

ええ、私も一緒に酒場遠征行きたい〜!

料理登場

やったー!ハムキャベツだ!

ポテサラの山に登りたい! テンションあがるー!

ヨシエさん、昔はメニューに「ハムキャ別」って書いていましたよね。あれが面白くって、最近は他の居酒屋にもハムキャ別を置いているお店があったり、ここから始まった酒場の定番料理だと思います。ベツを"別"にした意味はなんだったんですか。

「とくに意味なんて無いわよ。昔、キャベツの別を漢字で書く時代があったんじゃないかな。うちのハムキャベツのハムは昔は渋谷のお肉屋さんで買っていたんだけど閉店しちゃって。いまはわざわざ赤羽まで買いに行っているのよ」

こだわりなんですね! 酒場の名物の裏話を聞くのも楽しいですよね。松浦さんはどこで飲むことが多いんですか?

私は吉祥寺生まれなんで、好きな飲みエリアも吉祥寺のある中央・総武線沿線です。焼鳥の「いせや総本店」から1分の場所の病院で生まれました。親から小学生の頃、「いせや」みたいなところへ行ってはだめと言われたのを覚えています。でも、そんな思い出があるからこそ、飲み始めた頃からいせやが大好きで(笑)

実は、私の酒場デビューも「いせや」なんです。デビューと行ってもベビーカーで(笑)。父も母も物書きだったので昼から酒場に行くタイプだったんです。

親が酒場歓迎の一家なら、後ろめたさゼロですね! 

私は大学が西荻窪だったので、「戎」が酒場好きになったルーツのひとつです。いまでも特に落ち着く街です。

西荻こそお酒好きの街って感じいいですよね。他に行くエリアは?

酒場巡りにハマったきっかけは、大井町北口の路地です。細い路地の奥の小さな居酒屋にたまたま入って、そこは常連さんしかいないんです。

大井町! その年で怖くないですか?(笑)

お酒が好きすぎて入っちゃう。アドベンチャーというか冒険心みたいなものが、不安よりも勝ってしまいます。居酒屋巡りの楽しさって冒険的な要素もあると思います。

いまの若者の酒場デビュー話には思えないな(笑)

大井町、だいぶディープだよね。分け入っていく楽しさと怖さが入り交じるような。

そうですね! 純粋な美味しさの追求とは違う、扉の向こう側が気になるんです。私、映画『ロッキー』が大好きなんですけど、そういう刺激がほしくって(笑)

20代でロッキー好きだとは(笑)。飲み屋は普段出会えない人に出会えるから刺激あるよね。酔った勢いって素晴らしい、誰とでも仲良くなれるから。

松浦さん、亜美さんに刺激のありそうな酒場を教えてあげてください(笑)

ベテランのお姉さんが接客してくれる居酒屋さんで、元祖ガールズバーと冗談で呼んでいる「高砂屋」が好きです(笑)。客のあしらい方が絶妙にうまいんです。

へぇー、おもしろそう!今度行ってみますね!

京成線は立石がよく話題に上るけど、他の駅も面白い酒場がたくさんありますよ!!

いい酒場の探し方って?

あと、いい酒場の見極め方を教えてほしいです。

自転車が店の前に並んでいるか、これは大事です。私の経験では、自転車に囲まれている居酒屋にハズレなし。ちゃんと手で押して帰ってくださいね(笑)。あとは、暖簾や立て看板が綺麗かもポイントですね。

江戸時代は暖簾が汚い寿司屋は、それだけお客さんが暖簾で手を拭いて出たからいいお店だと言われていたそうです。でも、やっぱり寿司屋は暖簾が汚れている方がいいとか嘘ですよね(笑)

暖簾が汚れている方がいいなんて初めて聞きました(笑)

その話はどこまで本当かわからないけど、古い酒場はやっぱりいいよね。関東大震災と戦災、このふたつが東京の酒場を襲ったけど、それがいまの東京の名酒場を育てたという面もあると言われてるしね。老舗の「みますや」や「鍵屋」はぜひ行ってほしいお店かな。

大衆酒場ってどんな存在?

お二人にとって大衆酒場はどんな存在ですか?

マズローの5段階欲求ってありますよね。ピラミッドの下から、食べるなどの生理欲求、次に安心な暮らしがしたいという安全欲求、それが満たされると次は集団に属したり、仲間が欲しくなったりという社会的欲求になるんだけど。

▲マズローの5段階欲求説

▲マズローの5段階欲求説

酒場は3段階目の「社会的欲求」までをすべてフォローする役割をもっていると思ってます。日常で誰とも交流がない人も酒場に通えば、飲み食いができてそこが帰属する場所になるわけです。そんなことから、社会のセーフティーネット的な役割があるんじゃないかな。

急に社会派ですね(笑)。亜美さんは?

私にとって「酒場は第二の家」です。ここに来たらほっとする、知らないお店に冒険するのと並行して、いつもの酒場に行けば誰かが迎えてくれる安心感があります。健康を気遣ってくれる女将さんや親戚のように接してくれる常連のお客さんと話していると、ここは家なんだなーと思うことがあります。

「酒場は第二の家」かぁ! いい答えが聞けたから仕事はこれで終わり! そろそろスタッフの皆さんも一緒に飲みますよー!

これから、スタッフも一緒に渋谷の街へハシゴしていくのでした。私たちのように渋谷の一軒目は富士屋本店を使うという方も多いのではないでしょうか。

なくなってしまうことは寂しいですが、系列店が三軒茶屋に出店する話もでてきていますし、未来の富士屋本店も一緒に応援したいですね。まずは心ゆくまで今の「富士屋本店」に浸りませんか。

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