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158センチ、23キロ。拒食症を克服した26歳が、「旅するおむすび屋」をはじめた心温まる理由

ライター紹介

八木彩香
八木彩香
Webメディアディレクターであり、池袋の酒場のオーナーでもある平成生まれ。好きな言葉は「はくなまたた」。ツチノコを探し求めて自転車で日本中を冒険しました。下ネタ以外はなんでもやります。よろしくお願いします。

こんにちは! 池袋で「旅する酒場 サカタビ」を経営している八木です。

最近、締めの新メニューを何にしようか悩んでいて、米・麺類・パンで店内アンケートをとったんですが、「米」って意外と人気ないんですね…! 

最近は若い世代を中心に糖質制限が流行っていて、何を隠そう、筆者もその一人。もはや家には炊飯器すらありません。

そんな米離れが進む時代の中、おむすびの魅力発信に全力を捧げる"女性おむすびユニット"があるらしいとの噂を聞きつけ、さっそく会いに行ってみました。
 
 
 

こんにちはー!

▲菅本香菜さん

▲菅本香菜さん

どーも!

なにやらおむすびの魅力を発信するために、全国をまわっているとお聞きしまして。具体的にはどういった活動をしているのでしょうか?

はい。私(菅本香菜)とさくらちゃん(吉野さくら)の2人で、「むすんでひらいて」というユニット名で旅するおむすび屋さんとして全国各地をまわっています。

全国を巡りながら地域の食材を使っておむすびをむすぶワークショップをしたり、期間限定でポップアップショップを出店したり、生産者さんのところへ行って食材のこだわりを知る「おむすびツーリズム」を開催したり。

おむすびを通して「人と人」、「人と地域」を結んでいくような活動をしています。

へぇ〜! やんちゃですね。いつ頃からその活動を?

本格的に動き出したのは2017年の夏頃です。全国をまわるための資金が必要だったのでクラウドファンディングで支援を募って、8月から全国をまわりはじめました。

・「”旅するおむすび屋さん”になりたい!」プロジェクトの詳細はこちら
 

なるほど! 支援を募って、全国をおむすびを握りながら旅していると。

はい。せっかくなので、私が握ったおむすびを食べていきませんか?

ぜひ! 

誰もが持っている「おむすびの思い出」

海苔がずらり。

海苔漁師さんを取材して以来、海苔の魅力に惹かれてしまって(笑)。

今回は海苔を「厳選 寒風一番摘み 焼海苔」「支柱式養殖海苔 たそがれ」「浮流式養殖海苔 かぎろい」の3種類を用意しました。

では、まず有明の「たそがれ」からいきましょうか。

はい。どうぞ、塩むすびです。お召し上がりください。

これこのまま食べていいんですか? 海苔は折らない方がいい?

そのまま。パリパリの海苔も食べてもらいたいので。

では、いただきます。

おー、海苔おいしい! なにこれ(笑)。

有明の海苔は、一口目に最も旨味を感じるんですよね。あと「支柱式養殖」なので、しっかりした食感というよりは口溶けが良くて甘みが強いと思います。

*支柱式養殖・・・九州・有明海特有の潮の干満の差を利用して、海苔を網ごと天日干しすることによって、旨味成分を十分に凝縮させる養殖方法

おいしい。塩むすび、最高。

嬉しいです。

私、コンビニのNewDaysの赤飯が世界で一番おいしいおにぎりだと思ってたんですけど、こっちのほうが断然おいしい。海苔がめっちゃいい香りする。

「一番海苔」っていう最初に摘んだ海苔なんですよ。なので一番柔らかくて風味がいいんです。

お米も超おいしいです。なんか丁寧に食べたくなりますね。

あ、それこの前ワークショップで食べてもらった人も言っていて。なんか両手で食べたくなるって。

それ、めっちゃわかります。

ワークショップの参加者さんに今までで一番思い出に残ってるおむすびの話を聞くと、みなさんいろんなエピソードをもっていて面白いんですよね。

あー、私も思い出のおむすびがあります。

え、どんなおむすびなんですか?

以前、自転車で日本一周の旅をしてたんですけど、その時にたまたま出会った夫婦が自宅に泊めてくれて。

▲日本一周を終えた八木

▲日本一周を終えた八木

次の日の朝、旅立つときにおむすびをくれて、旅中にお腹が空いたときに包を開けたら、手紙が入ってて泣きました。

めっちゃいい! 素敵なエピソードもってるじゃないですか!

ありがとうございます(笑)。

お米はおむすび専用にブレンドする

具材なしでもこれだけおいしいってことは、お米とか食材にすごいこだわってると思うんですけど、実際どうなんでしょ?

おっしゃる通りこだわりはいろいろありますが、まずはお米。そもそも、私がこの活動をするきっかけのひとつになったのは、お米に詳しいさくらちゃんとの出会いでした。

さくらちゃんは、新潟市内野町で「つながる米屋コメタク」という団体で活動をしていて、内野町に古くからあるお米屋・飯塚商店さんと一緒にお米の販売やワークショップなどを開催しています。

菅本さんは海苔好きで、相方のさくらさんはお米に詳しいんですね。

「お米と海苔でおむすびだね」と意気投合して、地域別の特徴や食の面白さをおむすびを通して伝えていきたいねって。

このお米は飯塚商店さんがブレンドしたお米を使っています。今食べてもらっているのは「コシヒカリ」と「こしいぶき」をブレンドしたものです。

お米をブレンドしてるんですね。

両方とも新潟産なんですけど、コシヒカリは粘り気が強くて味も濃い。

「コシヒカリ」だけでおむすびを作ってしまうと重たくなってしまうので、食べた瞬間に少しほろっとした食感を足すために、サラッとした食感の「こしいぶき」をブレンドしています。

もっちりとした食感だけではなく、一粒一粒がしっかり引き立つようにパラっとした感じも出るようにしてあります。

確かに一粒一粒が謙虚に自己主張してる感じがする。おむすび、思ったより奥深いな。

私が海苔に惹かれたワケ

あと、今日3種類用意してくれた海苔にもこだわりが?

そうですね。いまメインで使っているのが、有明の海苔漁師さんと宮城の海苔漁師さんのものです。

海苔がおいしいのはもちろんなんですが、私が海苔に惹かれた大きな理由は、海苔漁師さんのスタンスなんですよね。めちゃめちゃかっこよくて。

え?というと?

以前、仕事の取材で有明の海苔漁師さんにインタビューをしました。全国の海苔の中で一番値段が高いのって有明の海苔なんですよね。

でも、有明の漁師さんは「有明が一番だ」っていう話は一切しなくて、「有明はこういう特徴があって、瀬戸内はこういう特徴がある、宮城はこんな特徴があって……」みたいに、地域ごとの違いを話してくれて。

「記事にするときも有明が一番おいしいみたいな書き方はしないでください」ってお願いされたんです。

か、かっこいい。

その想いの背景には、海苔漁師さん達の横のつながりがあって。「お互い足を引っ張るんじゃなくて一緒に海苔業界盛り上げていこう!」と、全国の海苔漁師が集まる「海苔サミット」を年に1回100人規模で開催しています。

海苔サミット。

私は今までそういうつながりをもった一次産業業界を見たことがなかったので、海苔へのこだわりやそういう姿勢がかっこいいなと思いました。

▲海苔の特徴をアツく解説する菅本さん

▲海苔の特徴をアツく解説する菅本さん

じゃあ、将来は海苔漁師さんと結婚したいですか?

どうしましょうね。そうなったら。

結婚しそうだなー。そんなこと言ってて、もしIT社長とかと結婚したら、私2ちゃんに書きますよ。

やめてください(笑)。

「海苔漁師さんが好きって言ってたのに…!」って(笑)。若い海苔漁師さんもけっこういるんですか?

います。20代の方とかも。今日用意した有明の海苔は、28歳の漁師さんがつくったものです。

▲有明の海苔漁師

▲有明の海苔漁師

若くて、イケメンですね。

イケメンです。

あ、これ結婚するな。

どうでしょうね(笑)。

季節に四季があるように、塩にも四季がある

お米、海苔にこだわるだけでこんなにおむすびに違いが出るんですね。

最後にもう1つだけ!「塩」にもこだわってます! 

え、塩ですか?

よく使っているのは山口県の長門市にある百姓庵さんのお塩なんですけど、これがめちゃくちゃおいしいんですよ。ちゃんと旨味がある塩なんです。

しょっぱいだけじゃなくて旨味も? アジシオとは違うんですか?

違います(笑)。

でも、最後にアジシオかけておけば、ほとんどの料理がいい感じに仕上がるじゃないですか。だから、私はキングオブアジシオだと思──。

違います。食べてみてください。

お! アジシオとはまた違う深みがありますね!

しつこくない深みというか、優しい自然の味わいなんです。百姓庵さんは「山に四季があるように海にも四季がある」と考えていて、春夏秋冬のお塩を作っているんです。

▲百姓庵さんの塩づくりの様子

▲百姓庵さんの塩づくりの様子

塩にも旬があるんですか!

季節によって海水も変わるので、塩の味も少しずつ変わっていくそうです。旬の食べ物には旬の塩が合うっていう話を聞いて、非常に興味深いなと。

ふぇー! 私、アジシオが塩業界の最高峰だと思ってたんで価値観ひっくり返りました。

嬉しい(笑)。ワークショップでは、よく塩おむすびに海苔を巻いただけのものを作ります。

米・海苔・塩の3つだけでも地域の特色が出るんですよね。シンプルだからこそ、わかりやすくて面白いなと思って。

あえての塩むすびだったんですね。

はい。それをベースに訪問した地域ならではの食材を加えれば、それはそれで地域らしさが出るんです。以前から「食」に興味をもっていたので、こういった活動ができるのは嬉しいですね。

菅本さんが「食」に興味を持ったきっかけって何かあるんですか?

身長158センチ、体重23キロ…拒食症で苦しんだ過去

一番大きなきっかけは中学2年生の時に拒食症になってしまったことですね。身長158センチで体重は最低の時で23キロ。小学生1年生の平均体重ぐらいまで落ちちゃって。

▲病気時代の菅本さん(写真右から2番目)

▲病気時代の菅本さん(写真右から2番目)

お医者さんにいつ死んでもおかしくないと言われ、学校にも行けなくなってしまいました。ほとんど骨と皮だけのような状態になってたんですけど、それでも食べるのが怖くて。

それはツラいですね。

当時は「食べなくて良ければ、しあわせなのに」と思っていました。食べられないから人と食卓を囲むのも嫌で、そのときに人と一緒に食事ができないだけで、こんなに1日が楽しくなくなるんだと痛感しました。

その後、拒食症を克服し、食は毎日の喜びにつながっていると身をもって体感したので、それが「食」に興味を持ったきっかけですね。

なるほど。拒食症が完治したのはどういった経緯で?

完治したのは大学生のときでした。拒食症のときはビックリするほど痩せていたので、周りの人はやっぱり距離をとる人が多かったんですよね。

でも、高校2年生のときに仲良くなった子が"普通に"接してくれたことがすごく嬉しくて。ご飯を食べられない私がいても、食べる食べないに関係なく、食卓という場を一緒に楽しんでくれたことに心が救われました。この出来事が完治のきっかけになったと思います。

みんなで一緒に食べる楽しさを実感できたからこそ、その大切さを伝えていきたい。おむすびなら誰でも簡単に作れるし、みんな好きだし、食の大切さを伝えるハードルが低いかなって。

菅本さんの「食」への想いが形になって、今の「むすんでひらいて」の活動に繋がったってことですね!

菅本さんイチオシのおむすび「ベーコンブ」

話を聞いていたら私も握ってみたくなりました。なにか簡単にできて、なおかつ超おいしいおむすびってあります?

おすすめは、ベーコン&昆布の「ベーコンブ」ですね! この組み合わせは、昆布の美味しさを広めている北海道の「ナナクラ昆布」さんに教えていただきました。今回はそのナナクラ昆布を使いますが、ご家庭であれば細切りの塩昆布でも代用できます。

塩昆布と炒めたベーコンをご飯に混ぜ込むだけでOKです。昆布にもベーコンにも塩っけがあるので、塩は少なめにしてむすびますね。

ベーコンブ、できました。どうぞ!

これもう見た目がおいしいですもんね。では、いただきます!

昆布の塩気とベーコンの旨味が最高にマッチしてます。かなりいい感じです!

よかった、いい感じで!

作るのも簡単だし、2018年「ベーコンブ」ブームくるんじゃないですか? ZIPとかに取り上げられないかなぁ。

あと、おむすび食べるといいことした気分になりますね。真っ当に生きてる感じがする。汚い世界から足洗おうかな、みたいな。

(笑)。私は最近ずっとおむすびを見てるせいか、だんだんかわいく見えてくるんですよね、おむすびが。

あー、それルンバに名前つけたくなるみたいな現象ですよね?

そうですそうです。だんだん愛着が沸く。

ルンバに名前つけたら終わりって言いますよ。結婚できなくなるって。

え、じゃあおむすびに名前つけるのはやめときます(笑)。あと、友達に「だんだんおむすびっぽくなってきたね」って最近よく言われます。

あー! 確かに髪型おむすび風かも。

おむすび愛が滲み出てますね。

ありがとう、なのかな?(笑)

取材を終えて

運動会のときに食べた、お母さんが握ってくれたおむすび。幼い頃に秘密基地で食べた、商店街のおばちゃんがくれたおむすび。

久しぶりに食べたおむすびは、過去の思い出が走馬灯のように蘇る優しいおいしさでした。旅するおむすび屋さん「むすんでひらいて」の思惑通り、食の大切さに気付いた3時間30分(取材時間)だったと感じています。

私は今日で汚い世界から足を洗います。
 
 
 
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