連載:中国各省をご案内・旅する中華

焼き小籠包の楽しみ方指南付き!西川口・外灘「生煎饅頭」の美味しさに思わず笑顔

大家好!
相変わらず中華ばっかり食べているアイチーです。

ライター紹介

アイチー(愛吃)
アイチー(愛吃)
「中華地方菜研究会〜旅するように中華を食べ歩こう〜」主宰。四半世紀ほど前、中国・山西省へ留学。滞在中、時間を見つけては中国大陸を東奔西走。帰国後現地で食べた味が恋しくなり、日本で懐かしい味を求めて中華を食べ歩く。日本でも楽しめる「地方菜(中国各地の郷土料理)」を紹介しつつ、読者のみなさんとワイワイ食べる会も時折開催中。

ここ数年、中華料理や、世界の料理好きの方から「新チャイナタウン」として非常に注目が集まっている場地域が、埼玉県は西川口駅周辺エリア

ネットのみならず、テレビ・ラジオ・新聞など、近頃多くのメディアで取り上げられることが度々。それを見て、ちょっと気になりはじめている人も多いのでは?

つい先日も、Rettyグルメニュースで注目のチャイナタウンとお伝えしたばかり!

『あまりにもディープ…西川口チャイナタウンが今すごく盛り上がってるって知ってた?』詳しくはこちら▶︎https://retty.news/34999/ 

駅近の巡りやすい範囲に、次々と中華料理店が集まっていることから、これまで取り上げられる場所のほとんどは、駅の西口エリア。

そこを散策するだけでも、かなりテンション上がり楽しめますが、実は、反対の東口にも注目すべき、楽しく美味しい店が点在しているのです。

今回の「旅する中華」連載は、西川口駅の東口を出てすぐ、上海の名小吃(シャオチー、軽食のこと)を楽しめるお店をお届けいたします!

舞台となるお店は生煎饅頭の「外灘」

ここぞ、ザ! 上海!といった風景で有名な観光スポット「外灘(バンド)」がそのままの店名に。これだけで「おおっ、上海のお店だね!」とピンときた人も多いことでしょう。上海出身のご夫婦が営みます。

そして、店名のあとに続く「生煎饅頭」の文字。
これこそが、上海を…はたまた中国を代表する小吃で、お店の代表的な名物。

日本語では「焼き小籠包」という呼び名でおなじみですよね。

本来、中に具のない蒸し物が「饅頭(マントウ)」、具入りの物は「包子(バオズ)」と区別されますが、上海あたりの人々は、日頃その区別はなく、具入りも「饅頭」と呼んでいます。そのため「生煎饅頭」という呼び名が、馴染んでいったとされます。

なお、この美味しさは上海を飛び出し、中国各地、そして日本にも広がり、日本では「焼き小籠包」として、中国各地や香港・台湾などでは「生煎包」、「水煎包」などと表されています。

「生煎饅頭」の歴史は100年ほど。上海のとある茶館でお茶請けに提供したところ、その美味しさが大変好評で、段々とお茶以上に「生煎饅頭」に、多くの人々の関心を集めることになったんだとか。主役交代、一品料理として、存在を確立していったのです。

食客からの要望にも柔軟に応じてその姿も変化を遂げ、はじめは「一両(50g)で4個」だったサイズが「一両で1個」に大きく育ってゆきました(笑)。

そうして今や中国のみならず世界で愛される逸品となった「生煎饅頭」。美味しさを楽しむポイントを習得し、この逸品の魅力を余すことなく堪能しましょう!

「生煎饅頭」を楽しむ3つのポイント

1.「轻轻咬(皮のこと)」皮の一部をちょこっと噛み、穴を作る。

2.「慢慢吸(肉汁のこと)」その穴からそ〜っとゆっくり、中のスープを逃さず飲む。

3.「细细嚼(肉餡・皮のこと)」皮は、上部の白い部分の"ふっくら感"と、底部の黄金色の部分の”サクッ&カリッと感”のコントラストも楽しむ。

つい先日お店へ行った時は、ちょうど焼き上がりの直前。

ご主人の「さぁーっ、焼けたよー!」のコールと共に、奥さんが開けた木蓋の向こうには、平鍋に整然と並ぶ「生煎饅頭」の美しくもあり可愛らしくもある姿が!

この瞬間の幸福感はたまらず、思わず写真を何十枚も連写してしまい、顔のにやけが止まないほど(笑)

ついついうっかり興奮したまま、ガブリとかじりついてしまいそうになるのですが、そこは一旦ひと呼吸おき、落ち着いて上記の3ステップに沿っていただきましょう!

店内には本場・上海料理の数々

名物の「生煎饅頭」の他、店先のショーケースには、テイクアウト用にパックされた一品料理が並びます。

中には「上海素鸡(鶏肉に模した、豆製の上海料理。棒湯葉のようだったり高野豆腐のようだったり、干し豆腐のようだったり様々)」が現れることも!


外観からの印象では、焼き小籠包とおかずのテイクアウト店のようですが、実は、ショーケースの右側のカーテンをくぐると…3席ほどの隠れカウンター席が!

さらに厨房の棚から垂れる紙には、数々の上海料理がずらりと書き並びます。

ちょうど春節の頃にお店へ行った時は、「春節に上海の家庭で食べる料理」をテーマに、数品頂きました!

汤年糕(白菜と豚肉ともちのスープ炒め)

年糕(もち)の発音から「年年高(年々諸事上昇する)」を祈願します。

荠菜大馄饨(入り大わんたん)

元宝(昔のお金)型に包み、財運上昇を祈願します。

春巻(白菜と豚肉餡の春巻)

白菜の発音が「百財」に似ている点と、豚肉(の赤身肉の色)を「红」とし、「红运(紅運)」の発音に近い「鸿运(物事が栄えていくこと)」を祈願します。

また春巻は、長型の端から端まで、同じ味わいを楽しめることから「終始一貫」に例えられ、ずっと良き財運が続くことを意味する、めでたづくしの食べ物です。

この時、春巻と、大わんたんの一部を持ち帰りました。

この大わんたん、店ではスープに入ったものをいただきましたが、お店の奥さん曰く、「うちのわんたんは皮がしっかりしているから、焼くのも美味しいよ!何もつけなくても良いし、黒酢をちょこっとつけてもいいね。」と御指南をいただき、早速家で焼いてみました!

焼くと、しっかりした皮がカリッと仕上がり、スープの時とはまた異なる食感で、これもまたよし!

ふるふる食感「豆腐花」もイチオシ!

また、数ある上海の味と共に、お店のイチオシが豆腐花。上海のみならず、幅広い地域で愛される小吃です。

こちらの店では、毎日その日のコンディションに合わせ、にがりを調整し、絶妙なふるふる豆腐を手作りしています。

味付けは、ピリ辛スープに海苔と干しエビがたっぷり。喉越し、そして香りが良く、スルスルーっとたいらげてしまいます!

ちょうど隣にいた、風邪気味の中国青年も(総合感冒薬が入った買い物袋が置いてあった)、テイクアウトの料理を待つ間、この豆腐花をすすり、あったまっていました。

彼が帰る時、お店のご夫婦が「気をつけて帰って、大事にするんだよ〜」と言いながら手を振る姿に、豆腐花の効果プラスアルファで、心がほっこり温まったのでした。

西川口の、ここ数年の中国人急増の変化を見守り続けるご夫婦の存在は、在住の中国人の皆さんにとって「西川口のお父さん・お母さん」のような存在。来るひと皆、単なる商品と会計のやりとりだけでなく、身の上話を打ち明けてゆくのです。

そんな様子をわたしもお店へ行くたび目の当たりにし、いつも温かな気持ちにさせてもらっています。

現地の「小区里的熟食店(団地住宅街の中にあるお惣菜店)」が、ここ西川口にもある…そんな趣を感じます。

さぁ、皆さんも、上海の路地の住宅街を旅するように、美味しく、そして温かなお店「外灘」に食べに出かけてみてはいかがでしょうか?


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*動画はこちらから!!
メシテロ#276(西川口リトルチャイナで中国一周食べ歩き/ザムザムの泉)
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