みなさん、普段外食をされるとき、"日本料理店"を訪れることはありますか?そしてどんな印象をお持ちですか?
値段が気になる…敷居が高い…そもそも割烹とか懐石とかよくわからない…
そんなイメージの日本料理ですが、改めてきちんと知っておきたいと思っている方も多いはず。そこで今回は、"デキる大人"の第一歩として、日本料理の楽しみ方を、Retty TOP USERで、日本料理を愛する美食家、光岡志朗さんにお話を伺いました。
日本料理を教えてくれるTOP USER
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光岡志朗
- 日本料理ならこの人!季節の料理を愛する美食家。季節の味覚を風情豊かに楽しませてくれる お店を中心に紹介させて頂きたいと思います。 機会がありましたら、 是非お楽しみ下さい。 街並みの風情が好みの神楽坂探訪が趣味。
ー 光岡さん、日本料理ってハードルが高いと感じてしまうんですが、ビギナーにも優しい楽しみ方ってあるんでしょうか?そもそもどんなことを知っておけば、より楽しむことができますか?
何が楽しいかは人様によりけりですが、でもまずは、"お料理の流れ"を知っておきますと、お店の説明にも、あぁ、これが椀盛なのね…とか、今日の八寸は綺麗…とか、感じるものが増えるかと思います。
次は何かなぁと期待を膨らませつつ、待つ楽しさも出て来ます。
そもそも日本料理の多くは会席料理店が多いかと感じてまして、会席自体は酒宴のための食事です。お酒を美味しく嗜むためのお料理なので、お酒とともにお料理を味わいますと、楽しさがさらに増えますよ。
ー なるほど。早速、料理の流れについて詳しく教えてください!
以下の流れを知っておくといいですよ。
1:先付
まず日本料理は「先付」からスタートします。季節により、走りのもの…つまり、出始めの食材や初物が出されます。寒い時には温もの、暑い時には冷製のもの。お口慣らしと思って下されば、宜しいかと思います。
その他、蓋物や蒸し碗、小皿で出されたりしますので、器に注目するのも楽しいですよ。
2:吸物
お吸い物のこと。
3:お造り(向付)
季節のお刺身のことですが、魚だけでなく、実は他にも注目していただきたいポイントがあります。それは、山葵醤油、煎り酒黄身醤油など、合わせるお醤油。
お店によってこわだりを持つことも多く、楽しみのひとつ。
お店のお醤油は、日常使いのお醤油よりも旨味を含んでる事が多く、家庭のお料理の参考になることも。美味しいプロのレシピをこっそり頂くのも楽しさの一つです。
4:椀盛 季節の煮物
日本料理の中心です。お料理の腕が試される一品でもあります。お出汁の旨さと素材の美しさが共演します。
5:八寸
正式には、八寸四方の杉のお盆に、海の幸と山の幸を盛った色とりどりの肴を盛り付けたものです。現在ではお盆の大きさに関係なく、中身のことを指す場合もあります。
八寸は必ず御献立に含まれるものではなく、無い場合も多いです。
食べ方のポイントとしては、基本はお好みで良いのですが、舌と言うのは敏感な器官で、濃度や刺激の高いものは後を引きます。ですので、食べる順番として、お味の優しいものや繊細なものから濃いものや辛いもの順に進めると宜しいかと思います。
6:焼物
魚介類を焼いた料理。塩焼き、照り焼きなど、様々な調理で楽しませてくれます。
7:揚物
季節の野菜やお魚を素揚げ、唐揚げにして出される事が多いです。
8:蒸物
茶碗蒸しや土瓶蒸しなどをさします。
9:酢の物
箸休めとして舌が疲れてくる頃合いに、お口の中をすっきりさせたり、箸休めさせたりする意味合いがあります。
10:お食事
ご飯、味噌汁、香の物。最近は白米より、土鍋での炊き込みご飯を出すお料理店が増えてます。
11:甘味
季節のフルーツ、アイスクリーム、水菓子、和菓子に抹茶や煎茶。
最後はやっぱり日本の渋味で、ほっこり落ち着いて退席と言う流れが一通りです。
(*料理名や順番は、お店や注文したコースの価格によって、多少の違いが場合があります。)
ー 流れが一通りわかったら、他に注目すべきポイントはありますか?
ずばり季節です。美味しい食事を楽しむためには、美味しい素材との巡り会いが不可欠。
日本料理は、季節を愛でる御献立が多く見受けられ、おおよそ毎月、季節感に合わせて、扱う食材、メニュー構成を変えるお店が多いです。
例えばお正月から初春にかけての筍をはじめ、お雛様の頃には菱餅形状のお盆や、陶器に春めく食材のふきのとうに七草など、季節を感じる献立が満載。
そのため、季節の食材を知っておくと、料理にも興味が湧いて面白さが増えます。
また、日本料理の楽しみ方として欠かせないのが日本酒。これは、嗜好が分かれますし、最近ではワインを合わせるお店もちらほらですが、基本は日本酒です。
寒い時の燗酒、ちょっと贅沢にひれ酒、暑い時の吟醸酒など、少しだけ覚えておくとお料理に付き添う飲み物として、楽しく味わいを深める事が出来ます。
詳しくなる必要はなく、お店にオススメのお酒を任せるのが安心です。
ー なるほど〜!他にもこれを知っていたら「通」だな〜!という点はありますか?
和食の「五味 五色 五法(ごみごしょくごほう)」を知っておくといいですよ。
五味とは、甘味、辛味、塩味、苦味、酸味の5つの味覚の事です。これに渋味を加えて六味と言う方もいらっしゃいます。
五色とは、赤、青(緑)、黄、白、黒のことで、素材の色を組み合わせる事で、盛り付けの鮮やかな色合いを作り出します。目で見て美味しそうだと食欲を刺激させると共に、季節感を満喫して頂くためのものです。
五法とは、焼く、煮る、蒸す、揚げる、生のままの美味しさを仕上げる調理法のこと。
この全てを体現させたお料理の一品逸品を、ご自身の五感で味わうことができたなら、もう貴方や貴女の舌はプロのフードコーディネーターといえるでしょう。
続いては、私のオススメのお店をご紹介します。まずはじめの1軒は初心者さんでも安心価格のこちらのお店です。
初心者さんにまずオススメの1軒「和食ありえ」
秋葉原と御徒町の中間、仲御徒町の路地裏にひっそりと佇むお店がここ「「和食ありえ」です。
こちらはとにかく、リーズナブルという枠を超えた、驚きのお値打ち価格が特徴。(ありえコース5,980円)
真心こもったお料理と、女将さんの丁寧なおもてなしを感じに一度訪れてみてはいかがでしょう。
- 和食ありえ
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東京都 台東区 上野
割烹・小料理屋
ちょっと背伸びをするならこの2軒!
「荒木町 たつや」
ちょっと慣れてきたら、背伸びをしてこの2軒に訪れてみてください。まずはこちら、神楽坂石かわグループからの初の独立を 果たした、元「蓮」の料理長、石山竜也氏のお店、 「荒木町 たつや」。
こちらの写真は先付け。半生に茹でた車海老に、菜の花が添えられ、白味噌の餡がかかったもの。海老と白味噌の甘さの調和、そしてとんぶりの食感も楽しい一皿。
おまかせ7,500円は、非常にコスパのよさを感じます。
- 荒木町 たつや
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東京都 新宿区 荒木町
日本料理
「宮わき」
四谷の車力門通りから一本裏手に入った、道沿に佇む隠れた名店「宮わき」。
お任せコース8,000円の、丸鍋、香箱蟹、鰻ご飯の美味しさ三連発にとにかく驚きました。(詳しくは私のレビューでご確認を)
ぜひこちらでも、季節の美味しさを感じていただきたいですね。
- 宮わき
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東京都 新宿区 荒木町
割烹・小料理屋
慣らし運転が一通りすんだらこちらの2軒!
さて、先にご紹介した3軒を訪れたら、続いてはちょっと小粋な所で割烹を楽しんでみましょう。続いてはこちらの2軒、「津の守坂 小柴」と「割烹 山路」です。
「津の守坂 小柴」
曙橋駅から徒歩数分の津の守坂沿いのマンション2Fに佇む「津の守坂 小柴」。こちらではお任せ12,000円を。
少し春めく花風景を模した芸術作品を見てるような八寸。
またこちらの焼物は、備長炭で焼くお魚を選べます。(いずれか1つを選ぶのですが、これが悩んでしまうのです。)
訪れた日は、甘味たっぷり、白身がホロホロと溶けてゆくようなのど黒を選びました。
- 津の守坂 小柴
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東京都 新宿区 荒木町
日本料理
「割烹 山路」
最後は新橋駅日比谷口改札を出てSL広場近く、 烏森神社通り沿いの雑居ビル2Fに店を構える「割烹 山路」です。
お任せコースは8,000円。
訪れた日は体の芯から温まる、毛蟹の茶碗蒸しからスタートしました。
料理も終盤に差し掛かったところで、提供されたお食事が、「河豚の白子焼きいくら卵かけご飯 」。いくら×卵×ご飯×白子の美味しさに、忘れ得ぬ夕餉となります。
お昼時にもコースを頼めるとのことで、私も次回は、昼顔の割烹山路のお料理を味わいたいものです。
- 割烹 山路
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東京都 港区 新橋
日本料理
ー 写真からも感じる美味しさと美しさ、そして季節の食材など、知れば知るほど奥が深いと実感します。
そうなんです。器についても、季節感感じる絵柄や、椀と蓋の絵が対になっていたりと、食材だけでなく風情を感じることができます。
また、アラカルトで食材を選べる場合がありますが、人様が頼んだものの方が美味しそうで、少し食べたいと思うものです。そんな時は、あらかじめ取り皿を頼んでおいて小分けして嗜むのも楽しい。
女性の方には男性から、自分の分を小分けしてあげると嬉しいものですし、微笑ましいデートになると思います。
と、知れば知るほど奥が深いため、訪れる度に感動があります。まずは実際に訪れてみて、その美味しさを感じながら、季節の食材、風情を楽しんでいただきたいですね。