大阪に訪れる、観光客や修学旅行生が一度は立ち寄るスポットといえばここ、新世界。
そびえ立つ通天閣の前には、ズラリと並んだ大阪のソウルフード・串かつの店の数々。まさに、大阪に訪れるのであれば“必食”のスポットです。
そういえば……美味しい串かつには、いつもキャベツが寄り添っているもの。何も考えずについついつまんでいたけれど、これって実はどういう理由で置いてあるのでしょう?これって、ただのサービス?
そこで今回は、新世界の人気店「串かつ じゃんじゃん 新世界本店」の店長である黒川さんにその理由を聞きながら、串かつにまつわるお話を伺ってみました。
ここ、「串かつ じゃんじゃん 新世界本店」は通天閣前のメインストリート沿いにあるお店。
入り口では、ビリケンさんがお出迎えしてくれます。
今回お話をしてくださる、黒川さん。
早速ですが聞いてみましょう、串かつ屋さんでほぼ確実に出てくるキャベツって、一体何のためなんですか?
「一番大きな理由は、ソースが2度漬け禁止だからです」
確かに串かつ屋ではもはや定番の「ソース2度漬け禁止!」のメッセージ。ですが、それとキャベツにどんな関係があるんでしょう?
「ソースに漬けて、一度食べた串かつは途中で味が足りない場合も、衛生的な理由でソースに2度漬けすることは禁止されています。そこで活躍するのが、サービスでお出ししているキャベツ。これでソースをすくって、串かつにかけていただくんですよ」
ということで、試してみましょう。
角切りにされたキャベツは、その形状もあいまって、実はソースをすくいあげるのにぴったり。スプーンを使うかのようにソースをすくって……
足りない部分に、サッと注げば……
ばっちり、ソースの追加が可能に。もちろん、ソースに浸けたキャベツも美味しくいただけます。
「今でこそ、着席されたお客様ごとにキャベツの容器を配置していますが、もともと立ち飲み屋が基本スタイルだったので、当時はざっくりとキャベツを盛ってカウンターに置いていました。食べたい人はそこから自由に取っていってね、という現在よりもラフなスタイルだったんです。ソースだって共用、だから2度漬けが禁止されていたということです。
ちなみに昔は、食べ終わった串は床に捨ててたりしていたんですよ、串かつはかっこつけずに食べるメニューなんですよね」
なるほど。しかしなぜレタスでもなく、他の薄切りにした別の野菜でもなく、キャベツなんでしょうか?
「キャベツには、アーチがあって強度がある。それがソースをすくうのにぴったりなんですよ。それに串かつは揚げ物ですから、口の中をリセットするような意味でもぴったりの食材です。もたれそうな胃にも効果がある野菜ですし……と、まあ後半の理由は後付けですが(笑)、色々とぴったりの食材だったんですよね」
無料で出してくれる、おかわりも自由なキャベツ。お客さん目線としてはとっても嬉しいですが、葉物野菜が高騰した時なんかは大変だったんじゃないですか?
「それは企業努力でカバーしましたし、特に問題なかったですね。おかわり自由だからこそ、皆さんにはたくさん食べて欲しいなと思っています。また、串かつの注文の合間に、次がくるまでのつなぎとしてもぽりぽりと食べていただきたいですね。箸休めのような存在ですし、胃もたれもしにくくなりますので」
天候などによっても衣の状態は日々変わるので、こまめに店の串かつを食べては状態を確認しているという黒川さん。実は衣には山芋なども練りこまれており、細かなパン粉をまぶしてあるのが特徴となっています。
「串かつ じゃんじゃん 新世界本店」では、100種類を超える豊富なメニューもこれまた特徴。
いい話を聞けたな〜と思っていた筆者、ここで壁に衝撃的なメニューが並んでいることに気づきます。
すいません、あれって……!??
「ああ、うちで人気のゲテモノ系メニューです。ちょっと食べてみますか?」
そう言われて登場したのは、正直いうと見た目にはなんの変哲もない串かつ。串かつって、衣をつけちゃうからこれの中身が何かってのかわかりにくいんですよね……。何はともあれ、いざ実食。
ぱくりと食べると、淡白な白身魚のような味わい。衣とばっちり相性も良く、ソースにも絡みます。これって……?
「ワニですね。美味しいでしょ」
驚く暇もなく、ついつい食べ切っちゃいました。言われなかったら絶対に魚だと思っていたレベル。とっても美味しいのですが、衣と白身がぐんぐんソースを吸い込んでしまうし、淡白な味わいなのでキャベツでソースがもっと欲しくなっちゃいます。
ということで、ソースを追加。うーん、このキャベツシステム。やっぱり理にかなっている!
「飲み物であれば生ビールと烏龍茶が圧倒的人気で、食べ物は牛カツやどて焼きが人気ですね。これらのゲテモノ系もかなりの人気で、当店でしか食べられないメニューでもあるので、かなりのお客様が注文してくださいますよ」
「もちろん、ゲテモノも同じくソース2度漬け禁止。味が足りない時は、ぜひキャベツを使って“追いソース”をしてみてくださいね」
スタッフの皆さんと和気あいあいと話しながら、キャベツの魅力や重要性について語ってくれた黒川さん。
キャベツだけでもついついお酒が進むお客さまや、無料で提供されるキャベツに驚いてくれる外国人の方もいらっしゃるんだそう。
まさにこれは、大阪独自の串かつにキャベツ文化。大阪へ行く際には、ぜひその目で確かめてみてはいかがですか?