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【相撲めし】店主はちゃんこを愛した元力士!相撲×ラーメンが融合した「つけ麺 しろぼし」へ行ってきた

体型とか体格って、その人の人生を物語っていると思いませんか。

とくにプロレスラーや力士的な、体格のいい男性と知り合うと、何をしてそれほど大きい体になったのかを知りたくて、「◯◯さんって、何かスポーツされてましたか?」とつい聞いてしまいます。

先日、宮崎出張をした際、明らかに体格のいい男性と仕事で知り合ったんです。なんとなく予想した上で聞くと、「相撲部でした」とおっしゃり、「おー! やっぱり! 素晴らしい!」と口にせずにはいられませんでした。

力士御用達の飲食店を訪ね歩く本連載「相撲めし」2回目で伺った東中野にある「つけ麺 しろぼし」の店主、木村謹仁(のりひと)さんも、とてもいい体格の持ち主で、どこからどう見ても元力士です。

▲店主の木村謹仁さん

▲店主の木村謹仁さん

武蔵川部屋に所属し、「巨武蔵(おおむさし)」という四股名(しこな)で活躍。平成19年1月に引退するまで、15年の力士生活を送りました。

そんな「つけ麺 しろぼし」は一般の方はもちろん、相撲界を引退した相撲OBや武蔵川部屋を中心とした現役力士も集う店です。愛される理由のひとつは、相撲と聞くと思わず連想する「ちゃんこ」(※)をベースにしたスープにありそうです。

※ちなみに、相撲界で言う「ちゃんこ」は、ちゃんこ鍋だけを指すのではなく、力士が食べる食事全般のことを指します。

「ちゃんこ×ラーメン」を思いつき、ラーメン屋の開業を決意

現役時代、膝の靭帯や半月板のケガに悩んだ時期もある木村さん。相撲をとれなくて休場すると番付(力士の地位や序列のこと)ががくんと下がります。上がったり下がったりを繰り返し、キャリア15年目で引退を決意。ただ、セカンドキャリアをどうするかは考えていませんでした。

「15年も相撲界にいた後、一般社会へ戻ると“浦島太郎”状態なんですよね。中学を出てすぐに入門し、バイト経験もないから、みんながどんな風に働いているかもわからないんです。飲食店を経営する親から、いずれ一緒に店をやらないかといわれていましたが、まずはよその飲食店でバイトしようと思いました」

30歳にして初めて社会人経験を積んだ場はブラジル料理店。そこで働いているとき、ラーメンを土鍋で出す店へふらっと入った木村さんは「ちゃんこ(鍋)とラーメンを融合させたら面白いのでは?」とひらめき、将来はラーメン屋をやろうと決意。ブラジル料理店を1年で辞め、ラーメン屋に転職します。

はじめの1年は昼にラーメン屋、夜につけ麺屋と掛け持ちし、つけ麺屋 やすべえで5年、さらに油そば屋1年、和食屋1年と8年近く修行を積み、2014年12月に自身の店をオープンさせたのでした。

野菜たっぷりのつけ麺は、見ても食べてもちゃんこを感じる

つけ麺 しろぼしのこだわりはスープやタレ、ラー油、メンマなど、麺以外ではすべて自家製のものを使っていること。

スープは魚介や豚骨のほか、10種類以上の野菜を使って作り、ちゃんこ鍋の味付けを活かしています。ネギがどっさり入っているのは、ネギ好きにはたまりません。

人気が拮抗しているのは、「醤油炊き しろぼしつけ麺」(800円)と「醤油炊き 辛味しろぼしつけ麺」(800円)。

今回は後者に味玉がついた「醤油炊き 辛味しろぼし味玉つけ麺」(900円)を選択しました。さらに人気の「チャーシュー丼」(350円)も付けて、これぞ力士めし! といえるボリューム感のある組み合わせに。

つけ麺の上に乗っているのは、鶏団子に味玉、キャベツ、もやし、かつお節、ネギ、海苔。ちゃんこ鍋に入っていそうな食材ばかりですね。別添えされたれんげには大根と油揚げ、柚子が乗っていて、好みに合わせてスープに入れて食べることで、味の変化が楽しめるよう工夫されています。

もちもちの麺はこっくりした深い味わいでありながら、ちゃんこを思わせる優しさのあるスープと絡むと最高に美味しいです。正直、箸が止まらないです……。しばらく食べ進めた後、大根や柚子を加えると、さっぱりした味わいが広がります。濃厚な味玉も食べて良かった! と心から思う存在感のある一品でした。

チャーシュー丼は、これでもかと言わんばかりに、刻まれたチャーシューがたっぷりと贅沢に乗っています。

メンマやネギ、かつお節の粉、海苔も入っていて、ラーメンのごはんバージョンといったところ。「元力士がやっている店ということもあって、ボリューム感たっぷりにしたかったんです」と木村さん。ざっくりと混ぜ合わせて、豪快にいただくのが粋です。

初めて食べた相撲部屋のちゃんこに感動

さて、元力士に話を聞ける貴重な機会です。ここからは木村さんの力士時代のお話を。

生まれたときは3200gと標準サイズだった木村さんでしたが、すくすくと成長し、小学生対象では最大規模の相撲大会「わんぱく相撲」で全国大会に出場。そんな木村さんがプロの世界と接触を持ったのは中学2年生のときでした。

「わんぱく相撲の大会に出ていたときは、友達の勧めということもあって、そこまで熱烈な関心はなかったんです。ただ、90年代の若貴ブームの頃から、相撲に興味を持って、真剣に見るようになりました。そのタイミングで、武蔵川部屋関係者の知り合いから、部屋の見学に来ないかと誘われて遊びに行ったんです」

プロ力士の稽古を見て、彼らと混じってちゃんこを食べた木村さんは、その味に感動します。

14年間食べてきた食事のなかで一番美味い。こんなに美味いものをおすもうさんはいつも食べているのか、と衝撃を受けました。そのときから武蔵川部屋で食べてきたちゃんこの味付けは、今のつけ麺屋でも活かされています。

それからも学校が休みの日に遊びにいったり、平日も朝から稽古に参加し、ちゃんこを食べてから登校したりすることも。その流れで、木村さんが中学卒業前に、武蔵川部屋に入門したのは自然の流れのように見えます。

昇進を決めた思い出の一番

175cm、125kgという体格で入門した木村さんでしたが、最初のころは恐怖を感じることばかりでした。わんぱく相撲の全国大会出場経験や柔道の経験があるとはいえ、自分より高いレベルの相撲をとる同期や体が大きい同期と相撲をとると、「どうして相撲取りになってしまったんだろう」としゅんとしてしまうほど、不安で仕方なかったといいます。

「入門から1年は悩みが尽きない時期でした。付け人(十両以上の「関取」について身の回りの世話をする後輩のこと)の仕事も覚えることは多かったですし、ちゃんこ番や電話番など、部屋の仕事もたくさんあります。精神的に参ってしまうこともありました。ただ、入門前にいろんな人からがんばれと送り出されているので、この世界でがんばろうという気持ちしかなかったです」

力士の世界は完全なピラミッド社会です。地位は上から横綱、大関、関脇、小結、前頭、十両、幕下、三段目、序二段、序ノ口となっています。十両以上を関取といい、月給が発生します。幕下以下は月給がもらえません。

年6回の本場所ごとにいくらか手当と奨励金はもらえますが、実質無給。十両と幕下を隔てる壁は厚く、着るものや身に付けるもの、付け人がつくかどうかも変わります。

そのため、入門後の力士は皆はじめに「関取になること」を目指します。木村さんももちろん関取を目指していましたが、自身の最高位は幕下19位。幕下上位になると十両に昇進できる可能性がかなり高くなるため、あと一歩で関取に届きそう……という惜しい地位でした。

「僕のなかで強く思い出に残っているのは、三段目筆頭(三段目の一番上)で3勝3敗し、次に勝てば幕下へ上がれる、という一番(取り組み)でした。前の場所で幕下にギリギリ上がれなかったこともあり、このときに勝てて幕下に上がれることが決まって、花道で先輩が肩をぽんと叩いて『おめでとう』と言ってくれたときは本当に嬉しかったです」

自身が目指した関取にはなれなかった木村さん。でも、15年という長い期間を相撲に捧げ、人として力士として鍛錬してきた木村さんからは、お話ししていて器の大きさを感じました。

元アスリートらしい溌剌とした話し方や人懐っこい可愛らしい笑顔。そして相撲界を引退してから積み重ねてきた、新たな夢へ向けた努力の数々。

木村さんの歩んできた人生が詰まった店、つけ麺 しろぼし。相撲に興味がある方はもちろん、つけ麺好きな方も一度来店してみてください!

ライター紹介

池田園子
池田園子
フリーの編集者/記者。女性向けメディア「DRESS」編集長。著書に離婚経験後に上梓した『はたらく人の結婚しない生き方』など。プロレスが好きで「DRESSプロレス部」を作りました。
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