一部に熱狂的なファンを抱える五反田の立ち食い寿司の名店「都々井(つつい)」。
しゃり自慢の美味しい寿司がリーズナブルに食べられ、駅前の高架下という訪れやすい立地で人気だった都々井さんですが、2017年3月に当時店舗のあった物件の都合で退去することになり、惜しまれつつも閉店。
かねてから、再オープンの噂はあったのですが、このたびついに「五反田ヒルズ」にて復活!
2018年4月現在はプレオープン中で、5月7日(月)にグランドオープン予定。
再オープンにあたり、応援資金を募れるクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」内で立ち上がったプロジェクトには、一週間足らずで100万円以上の支援金が集まり、現在は160万円を超えています。
・あの立ち退きから1年。五反田で再オープンした「立喰すし 都々井」をお祝いしたい!
上記サイトに寄せられた、復活のお祝いコメントは200件近くにものぼり、いかに愛されていた店だったかがわかります。
・五反田住民です。復活を心待ちにしてました!!!
・再開待ちわびていました!また通います!!!
・つついさん、復活おめでとうございます! 仕事で疲れた時のちょっとしたご褒美に使ってました。 お客さんもみんな優しくて。本当に復活嬉しいです。
(CAMPFIREに寄せられたお祝いコメント/原文まま)
この復活劇の裏には、クラウドファンディングのプロジェクト発起人であり、品川経済新聞の編集長でもある宮脇淳さんの存在がありました。
都々井さん復活までのストーリーとは? 宮脇さんはなぜクラウドファンディングのお手伝いをしたのか?
都々井さんと同じく五反田ヒルズ内にある、宮脇さんの運営するコワーキングスナック「CONTENTZ分室」にて、お話を聞きました。
多いときは週4通い! 都々井と宮脇さんの出会い
「宮脇さんは……都々井さんの大ファンということでよいでしょうか」
「そうですね(笑)。多いときは、週3〜4回は通っていました」
「めちゃくちゃ常連さんですね!」
「ちなみに僕は閉店時、最後の客なんですよ。最終日も行列ができていて、僕らのところでちょうど『しゃりが終わるのでここまで』と終わりになりました。店主の筒井さんは、僕らが並んでると知らなかったはずなので、たまたまなんですけど」
(※店名は「都々井」で、店主が筒井誠さん)
「閉店時に行列ができるほどの人気だったんですね。宮脇さんが編集長を務めている『品川経済新聞』でも、閉店のお知らせのニュースが2017年の閲覧数1位だったとか」
「たしか閉店の張り紙がされたのが、2017年3月4日です。僕がお店に行って気付いたのが6日だったかな。それで閉店日が18日なんですよ。閉店まで2週間もないから、品川経済新聞で記事にしなきゃと思って」
「ロケットニュース24やねとらぼといったウェブメディアも取り上げていましたよね」
「品川経済新聞を見て他のメディアが扱ってくれたりして。小さなつながりですけど、個人と個人のつながりからどんどん輪が広がっていった感じです。場所がなくなるってさみしいじゃないですか。ネットの反応もすごくさみしがってる人が多かったから。だからこそ、今回こうしてクラウドファンディングでお祝いしたかったというのはありますね」
「宮脇さんは、都々井さんとどうやって出会ったんでしょう」
「僕は2012年の春頃に、白金台から五反田に引越してきました。その少し前に、デイリーポータルZの林さんに初めてお会いしたんですね」
(※デイリーポータルZ=役に立つことはないけれど愉快な気分になる情報を発信している娯楽サイト。林雄司さんはその編集長)
「会ったのは50人くらいが集まっていた大きな飲み会だったんですけど、二次会に行く流れの中で林さんとふたりになって、『どちらに住んでいるんですか?』『もうすぐ五反田に引越すんです』と話して、とりあえず五反田方面に行きますかってふたりでタクシーで五反田に向かったんです」
「それで都々井さんへ?」
「林さんが『よく行く寿司屋があるんですけど、行きませんか?』と誘ってくれて。それが初めてでした」
「それから宮脇さんが都々井さんに足繁く通い始めたのは、どこがポイントだったんですか?」
「やっぱり気軽に行けるところですね。美味しい寿司が食べられるのに、安い。ビール一本飲んで、寿司もしっかり食べて、会計すると2000円前後です。毎回『えっ!?』って言ってしまうくらい。会計間違ってるんじゃないかって(笑)」
都々井復活のきっかけは「配膳のお姉さん」
「今日取材で使わせてもらっているこの場所、コワーキングスナック『CONTENTZ分室』は、宮脇さんが経営しているんですよね」
「そうなんです」
「同じ五反田ヒルズ内に都々井さんがオープンしたということは、誘致というか、『一緒に五反田ヒルズでやりましょう』ってお誘いしたわけですか?」
「結果的には同じ五反田ヒルズ内でやることにはなったんですけど……。そもそも僕らはあくまで、店主と客の関係です」
「あっ、大の仲良しってわけでもないんですか?」
「そうですね。今日の取材のように、都々井さん復活の立役者みたいに言ってもらえることはありがたいのですが、僕はあくまでクラウドファンディングのお手伝いをさせてもらっただけで」
「プライベートでもふたりでよく飲みに行っていたみたいな感じではなく」
「ではないんですよ。今に至る経緯としては、都々井さんで配膳しているお姉さんがいるんですけど。ミユキさんという方が」
「ミユキさん?」
「ミユキさんは都々井さんが閉店したあとも五反田で働いていて。僕が昼ごはんを食べようと串揚げのお店に入ったら、そこにミユキさんがいたんです」
「すごい偶然ですね」
「『ここで働いてたんですね!』と話していたら都々井さんの話になって、『お店をやる場所が見つからなくて大変らしいのよ。困ってるみたいだから連絡してあげてよ』って言われたんです」
「そこから連絡を取り合うようになったんですか?」
「そうなんですよ。そこから店舗の空き情報があったらたまにLINEで送ったりとか。そうしているうちに、じゃあまあ一回飲みに行きますかってことで、ここ(CONTENTZ分室)に来てもらったんです」
「クラウドファンディングをお手伝いしているくらいだから、よほどの大親友なのかと勝手に想像していました」
「むしろ、ミユキさんがいなかったら、会う機会すらなかったかもしれません。それがお店を閉めてから、半年くらい。もちろん気にはしていましたし、早くオープンしてくれたらいいなとは思っていたんですけど。僕はその間、ほとんど寿司を食べずに待っていましたから(笑)」
五反田ヒルズ入店にまつわる、いくつかの偶然
「そしてなぜ都々井さんは、五反田ヒルズに?」
「僕は勝手に『五反田ヒルズに都々井さんが入ってくれたらいいなあ』と想像していたんです。ただ、テナントのほとんどが5坪くらいの広さしかなくて、寿司屋をやるのは難しいだろうなって考えていました」
「敷地面積的に」
「そうそう。でもいま都々井さんが入った場所は、20坪近くあるんです。そこはもともとドレッシーなお姉さんが横に付いてくれるようなラウンジで、五反田ヒルズの理事長のお店だったんですね」
「理事長のお店ってことは、どこかに移ることもそうそうなさそうに感じます」
「そうなんですけど、そのお店をマネジメントしていた理事長の右腕みたいな方が辞めることになったと聞いて」
「これまたすごい偶然ですね」
「でも、お店は続けるという噂だったんです」
「新しい人を雇えば続けられそうですもんね」
「で、あるとき理事長に『マネジメントやってる男性辞めちゃうんですよね?』『どうするんですか』って話を振ったら、『どうしようか考えてんだよね』と言っていて」
「ちょっとチャンスっぽい(笑)」
「僕は『駅前の高架下に立ち食い寿司あったじゃないですか。あのお店、移転先の店舗が見つからなくて、すげー困ってるんですよ。人気店だから、入ったらこのビル活性化すると思いますけどね〜』って伝えて」
「おおおお!!」
「『理事長! お店辞めて貸しませんか?』って、そこまで提案したんです。そうしたら後日ネットで調べたようで、『あの件、大将と一回会わせてよ』と言ってくれました」
「ネットで話題になったことが効いたんですね!」
「ちょっとはあったかもしれません(笑)。それで、ふたりでここで話してもらったら、理事長はもう貸す気だったみたいで」
「へえ〜」
「僕が言いふらすのもおかしいかなと思って黙ってたんですけど、次の日には五反田ヒルズ中の人がみんな知っていて、『なんでみんな知ってんの!?』って聞いたら『理事長が言いまくってるよ!』という話で」
「嬉しくて言いふらす理事長!(笑)」
「心配だったのはそのお店で働いていた人たちがどうなるのかという点だったんですけど。他のお店に移ったりして、理事長がうまくまとめてくれたようでよかったです」
無償でも手伝うのは、ただ好きだから
「クラウドファンディングをやろうというのも宮脇さんが提案したんですよね?」
「そうそう。筒井さんはネットが得意じゃないから、僕のほうでいろいろ準備しました。筒井さんは一年間無職で収入がなかったわけだから、それを助けたいというのがまずあって。話に乗ってくれたのは、『いい宣伝になるよね』ってことで一緒にやらせてもらえることになりました」
「聞いた話では宮脇さんは報酬を一切受け取らないとか?」
「うん、そうですね」
「ふつう、もらいませんか?(笑)」
「なんかお金をもらっちゃうと悪いですよ(笑)。店舗探しに動いたりクラウドファンディングを手伝ったりしたのは、ただ純粋に『好きだから』なんです。それ以上のことは何もなくって」
「(まさに無償の愛だなあ……)」
「都々井さんに行くたびにFacebookに投稿していたら、みんなが『あそこ行きたい!』って言ってくれるようになったんです。行きつけって、そういうことですよね。誰かを連れていきたくなる、とか」
「宮脇さんご自身の居場所でもあるみたいな」
「人を連れていくときに、立ち食い寿司ってちょうどいいんです。立ち食いだから長居はしないので、小一時間で切り上げられるし。後輩やこれから親しくなりたい人も誘いやすいんですよ。こちらがお代を出すと、『ごちそうさまでした!』って感謝されるけど、実際はお会計すごく安いしね(笑)」
さいごに
いくつかの偶然と宮脇さんの尽力によって、復活を遂げた都々井さん。
美味しいお寿司やご飯は日本全国にたくさんありますが、自分の居場所でもある行きつけ店を「好きだから」という無償の愛で応援するその姿勢は、他の何かに変えられないしあわせな姿に感じられました。
最後に、宮脇さんお気に入りの寿司ネタを聞いてきました!
「お気に入りの寿司ネタはありますか?」
「都々井さんで三大好きなネタがあって、コハダ、ヅケマグロ、ヒラメの昆布締めです。ヒラメの昆布締めは10回行って1、2回くらいしかないんですけど。……あと、シメ鯖。あとは、わさび巻きかなあ〜!」
「どんどん出てきますね(笑)。さすが常連」
「わさび巻きは誰かと行ったときによく食べてもらうんですけど、みんなこうなります」
「辛いから一気にビール飲んで、それを見てゲラゲラ笑うというのがいつものパターン(笑)」
「あはは(笑)」
「いわゆるよくある練りわさびじゃなくて、刻みわさびなんです。ちょっとつぶつぶしていて、粘り気のあるわさび。頼めば、辛さを調整してくれますよ」
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クラウドファンディングのプロジェクトは現在も進行中!
今からでも支援可能なので、ご興味のある方はぜひ支援をお願いします。
- すし処 都々井
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東京都 品川区 西五反田
寿司