静岡県由比(ゆい)。富士山と駿河湾を臨むこの地域に、この季節多くの人が行列を作る店があります。
その名も「浜のかきあげや」。由比漁港で水揚げされた桜えびを、とことん味わえるお店なのです。
桜えびをとことん味わう…と言われても、触手が伸びない人も多いかもしれません。
“桜えびってあのお好み焼きとかに入ってるやつでしょ?”
“口に入れるとなんかチクチクするよね?”
たかが桜えびのために1時間以上並ぶなんてあり得ない・・・という人に、浜のかきあげ屋を訪れた今こそ、伝えたい。
桜えびをバカにしちゃいけない、と。
守られ続ける、日本で唯一の駿河産桜えび
日本で桜えびが生息しているのは、東京湾、相模湾、駿河湾。この中で駿河湾のみが漁獲できるというのをご存知ですか。そう、日本の桜えびは全て静岡県産というわけ。
そして、この桜えび漁の許可証をもつのは、静岡県清水区の由比港、蒲原港、焼津市の大井川港の120隻の船だけなのです。
また、桜えびの漁期はなんと年2回のみ。春漁は3月中旬から6月初旬、秋漁は10月下旬〜12月下旬。それ以外は桜えびを保護するために休漁となってしまうのです。
駿河湾の尊い恵みを長く美味しくいただくために、その保護にも徹底的に努めているのがこの桜えび。限られた船、限られた時期…と駿河湾の桜えびは非常に貴重なものということがこれだけでもわかりますね。
桜えびの本当の味わいを浜のかきあげ屋で学んだ
と言っても、まだまだイメージはお好み焼きに入っているような脇役的存在の桜えび。「たかが桜えび」(と正直思っている)に並ぶ人々のモチベーションを探りに、実際に「浜のかきあげ屋」に並んでみることに。
この日は非常にお天気で、暖かく、海風が吹いて気持ちがいいので実はあまり苦痛にならず。目の前が港で、漁船が綺麗に並んでいるのをのんびり眺めて、都会で疲れた心を癒しておりました(笑)。
こちらの横向きに並んでいる船が、桜えび用の漁船。
このように縦向きに並んでいる船が、しらす用の漁船なんだとか(と、地元のタクシーの運転手さんに由比港雑学を伺いました)。
待つこと1時間で注文を。今回は、桜えびのかき揚げ丼と、桜えびを秘伝のタレにつけた漁師飯、沖漬け丼セットをオーダー。
どどーん!
もちろん、こちらの桜えびは、私たちが通常知っている干した桜えびではなく、この日の朝水揚げされた、生のままのもの。かき揚げも、沖漬けも身がプリップリでふっくら。
普段脇役に回りがちな桜えびの圧倒的存在感。たかが桜えび、なんていってごめんなさい。
まずは、桜えびのかき揚げ丼を。
どうです、この桜えびの大きさ。このかき揚げに一体何尾の桜えびがいるんだろうと思いながら、ザクっと一口。
あ、甘い・・・。上品なえび感・・・。
春漁の桜えびは産卵に向けて大きく育っている時期のため、ふっくら歯ごたえがあるのが特徴なんだとか。桜えびにこんな食感があるなんて驚きです。今まで食べてた桜えびってなんだったんだろう…。
次はより桜えび感を感じるために、沖漬け丼を。
さらに、桜えびがぷりっぷりです。そして、チクチクしないー!!!(すいません、しつこくて)
火が通った桜えびばかり食べてきたこともあって、この生の桜えびには驚き。例えると、小さな甘エビ。甘エビのようなねっとりとした甘さや身の弾力が、この小さな体いっぱいに凝縮されていて口の中に広がっていきます。
そして忘れていけないのがこちら。
昆布だしでお茶漬けできる、と聞いたら試さないわけにはいきません。
桜えびが温かな出汁で半レアになり、旨味と甘みがマシマシ。スルスルっと胃の中に収まっていきます。
そしてお茶漬け好きの筆者は、この出汁で、かき揚げ丼もお茶漬けにしてみました。
これまた、絶品! お店推奨の食べ方ではありませんが、ぜひ最後の一口二口を残して出汁をかけてみてください。たまりませんよ。
今私たちが口にする桜えびは台湾産が多いそうですが、糖度計で測ると、この駿河産の桜えびが明らかに糖度が高いことが判明しているんだそう。
たかが桜えび。そう思っているあなたも、由比の桜えびを食べれば、きっと「されど桜えび」とその主役級の美味しさに目覚めるはず。
連休の後半、そしてこれからの気候のいい季節に、静岡までちょっと足を伸ばしてみませんか?
- 浜のかきあげや
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静岡県 静岡市清水区 由比今宿
天ぷら