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「とんかつ×メイプルシロップ」が生み出す夢幻の味。麻布十番・とんかつ都

近年、これまでB級グルメとされていた、ラーメンやお好み焼きが発展を遂げ、一部では高級食材を使用するなど、これまでのイメージを覆している。

事実、ミシュランガイドに掲載されるなど、世界的にもB級という括りは時代遅れ感もある。

ファストフードであった寿司が贅沢品へと変化した歴史があるのだから、この変化も当然の流れなのかもしれない。

そして、こうしたA級とB級の両方の要素を兼ね備えるメニューのひとつが、洋食のポークカツレツから発展した「とんかつ」だ。

とんかつと言えば「ソース」がベーシックだが、ソースではなく「メイプルシロップ」をかける、一風変わった食べ方が話題となっている。それが麻布十番の「とんかつ 都」だ。

贅沢な食材にこだわりつつ、高速シンカーのようにミットへ、ズバンッと決まる変化球を楽しませてくれる同店で、「とんかつ×メイプルシロップ」を味わってきた。

肉問屋がはじめた、あらたなアプローチ

東京メトロ・麻布十番駅から徒歩5分の場所にある「とんかつ 都」。

2017年8月にオープンしたばかりの新しいお店だが、口コミから評判をよび、昼時は行列をなす人気店だ。

店内は木を基調にした温かみのある内装。カウンター席をメインに、ゆとりある座席配置で、心豊かに過ごせる店作りが特徴だ。

店内に掲げられたメニューには、自家製ハムを贅沢につかった「極上ロースハムかつ」や、とんかつ屋にしては珍しい「ポーククリームシチュー」など、気になるラインナップも見られる。

まずは定番を……ということで、今回は250gというボリュミーなロースを使った「上ロースかつ(1,850円)」をいただいた。

さらにボリュームアップを狙うならリブロース350gを使った「特リブロースかつ(2,950円)」もある。こちらも人気メニューだそう。

厨房に目を向けると、予想以上の分厚い肉が切り出されている。250gという重量、それなりのボリューム感を覚悟していたが、実際の厚みをみると食べる前から心がワルツを踊りだす。

オープンキッチンスタイルならではのイッツ・ア・ショータイムといったところだろうか。

同店の親会社は神奈川県にある老舗の肉問屋。肉の仕入れを知り尽くした職人が、毎日50頭の豚の中から、とんかつに最良のものを選んでいる。

銘柄へのこだわりをあえて捨て、“その日一番のもの”を選ぶというのだから、人気店となるのも納得だ。また、肉問屋だからこそできる価格設定だというのも納得だ。

こだわりは肉だけではない。湘南のパン粉専門から取り寄せた、パウダースノーのような細かいパン粉が目を引く。

揚げ油に沈める前から、すでに待ちきれない想いが爆発しそうになる。

コレストロールゼロと、健康志向な人にも嬉しい、天然精油の菜種油で揚げていく。

店内にはほどよい油の香りが漂いだし、さらに空腹の胃袋が待ち遠しいと声をあげてくる。

パン粉=パンと考えると、とんかつとメイプルシロップは合う

同店では、これまでのスタンダードな「とんかつ」の美味しさを追求しながらも、さらに新しいアプローチは出来ないかと、オープンまでに試行錯誤を繰り返した。

たとえば、パン粉も、あっさりとしながらも旨さを堪能できるとんかつの仕上がりを目指し、余計な油を吸わせないこだわりがある。

そして、その最たるものが、特徴のひとつ「メイプルシロップ」だ。このアイデアは、肉屋の息子として長年、肉に向き合ってきた同店のオーナーが考案したもの。

調理を担当する店長の三橋さんも、最初は驚いたそうだが、パン粉=パンと考えると「メイプルシロップも合うかもしれない……」と試してみたところ、これが予想外に美味しかったと、その時の衝撃をうれしそうに語ってくれた。

メイプルシロップは、カナダ産のオーガニックのものを使用。砂糖や添加物が入っていない、健康に配慮したものを選んだ。

さらに同店では、特製ソース、だし醤油、南米ボリビアのウユニの塩、フランス西海岸ブルターニュ地方のゲランドの塩と、メイプルシロップ以外にもさまざまな味を楽しめるようになっている。

どれも、同店のこだわりを感じさせるものばかりだ。

その旨さ、まさに「食欲の貴公子」

仕上がりを見てほしい。実に美しい。

間近でみても、厚みがすごい。厚ければいいというものでもないが、思わず心が躍る。

そして、付け合せにも注目していただきたい。ポテトサラダのようなものは、揚げていない「生コロッケ」だ。

どうせなら単なるポテトサラダではなく、付け合せもこだわりたいという思いから考案したそうだが、これも別皿で提供してもおかしくない逸品だ。

さて、メインに戻ろう。はやる気持ちを抑えつつ、厚みのある一片を持ち上げると、中からふわっと蒸気が立ちあがる。

うっすらピンク色の豚肉を目の前に、早く口に入れたいと喉の奥が思わず“ゴクッ”と鳴る。

このまま食べてしまいそうになるほどの高揚感だが、忘れてはいけない。今回は「メイプルシロップ」の実力を確かめにきたのだ。

本来はタレ皿に入れて一片ずつ味わうのが流儀だが、今回はお店の人に特別に許可をもらい、大胆にざばーっと全体にかけさせていただいた。

さて、その実力だが……まさに「予想外」という言葉がピッタリ!肉の甘味をさらに引き立て、ほどよい塩味も感じさせる。

さらにメイプルシロップの独特な香りが、豚肉とマッチして、いくらでも食べていたくなる味わいだ。

ご飯をかっこむと、口の中で驚きのフュージョン(融合)が生まれる。

コンフュージョン(混乱)ではない。納得のフュージョン。

さまざまな要素を包括したフュージョンという音楽ジャンルがあるが、まさにそれ。

T-SQUAREの代表曲「TRUTH」が頭の中で鳴り響く。もはや、食べ進める手が止まらない。

さらにソースの合わせ技も最高だ。音速の貴公子、アイルトン・セナが眼の前を駆け抜けていく、そんな最高の瞬間が訪れる。このとんかつ、例えるなら食欲の貴公子だ。

今回はとんかつ屋では珍しい、こめかみから頬にかけての部位・かしらをつかった「かしらカツ」も注文したが、これも美味であった。胃袋の容積に自信がある人は、ぜひ注文していただきたい。

豚肉にパン粉をまぶし、油で揚げる。実にシンプルな料理だが、そこに無限の可能性を感じさせる新たなアプローチを魅せてくれた「とんかつ 都」。

食べ終わった瞬間、心の中のチェッカーフラッグが大きく揺れていた。

ライター紹介

黒宮丈治
黒宮丈治
1978年生まれ、福岡県出身。30種以上の職を渡り歩いた後、フリーライター/プランナーとして活動。取材&インタビュー記事を中心に、エンタメからグルメ、ビジネスまで幅広く執筆。食べ物写真を掲載したTumblrブログ・飯写はフォロワー12万人超のフォロワーを持つ。Yelpエリート。Instagramでの食べ歩きフォトのほか、自ブログでグルメ記事も更新中。 ・Instagramはこちら
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