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「肉汁あふれるハンバーグ」へのアンチテーゼ、「焼かないハンバーグ」を食べた話

はじめまして。このたび、Rettyグルメニュースにて書かせていただくことになりました高須賀と申します。
 
一応簡単に自己紹介をさせて頂くと、平日は医者をやっておりまして、オフの時は美味しいものを食べに行くというのを生きがいにして生活しております。

1人の食べ手として、日本の食文化の豊かさには感謝しかありません。
 
今年で食べ歩きを開始して5年ほどになるのですが、今に至るまで"どういう風にレストランでの食事を楽しむべきかについての手引きが全くと言っていいほど整備されていない"ということに関して少々思うことがあり、このたびレストランの楽しみ方について、ヒントになるようなことがお伝えできればなと思っております。
 
まあ堅苦しい話もなんですから、実際に美味しいレストランを題材にあれこれ書いていくことにしましょう。
 

ハンバーグの美味しさはどこまで高められるのか

これは都立大学駅にあるフランス料理屋「フクシマ」さんで食べた熟成牛のパテです。

 
このお店は夜はコース1万円程度と若干お高いものの、ランチではコースを3,000円から食べられまして、この写真の熟成牛のパテも、ある日のランチで食べた一皿になります。
 
このパテですが、夜のコースで出す熟成牛をトリミングした際に出てしまう肉を何とか利用できないだろうかということで作られた品のようです。はっきり言って3.000円のランチで食べられるレベルの味を超越しています。

というか、僕が食べたお肉のパテの中でも群を抜いて美味しい。
 
この美味しさを紙面に表現するのはなかなか難しいのですが、あえて誤解を恐れずに踏み込んで言ってみると、この皿は究極のハンバーグと言っても過言ではないでしょう。
 
ハンバーグというと、表面がこんがりと焼けた、切るとジュっと肉汁がでるタイプのものが一般的に好まれる傾向がありますが、あれは正直申しまして美味しさという観点からいうと少々残念なものです。
 
よくスーパーに置いてあるお刺身や生肉類なんかで、肉から褐色の汁がでてしまっているのを見かけたりすることがありますが、あれは専門用語でドリップといいまして、まあ簡単にいうとお肉の中に含まれている旨味の成分が抜け出てしまっているものと考えて頂いて差し支えありません。
 
冷凍したお肉が美味しくないと言われる所以も、このドリップが原因でして、急速に解凍した肉は組織が壊されてしまうことから、どうしてもこのドリップが出てしまうことを避けられません。
 
ですからステーキを焼く名人なんかは、焼く際にこのドリップをいかにして出さないようにするかを腐心して肉を焼きます。

肉に火を入れたら少々フライパンから取り出して、お肉を休ませて肉汁を中に戻し、しばらくたったらまた焼いて・・・という風な具合で作るわけです。
 

肉汁がジュワッと出るハンバーグは正解なのか

冒頭にあげた肉汁がジュワッと出るハンバーグですが、実は肉汁が溢れ出てしまっている時点でお察しというか、肉焼きの原則からすれば0点といっても過言ではないわけです。

演出としては100点なのかもしれませんが、旨味成分である肉汁が外に噴出してしまっているわけですから、美味しさという観点からすれば大変にもったいないことをしちゃっているわけですね。
 
で、この熟成牛のパテに話を戻すと、これ、ある意味では上に書いた悪いハンバーグの弱点を超克しているのです。

パテ状にして加熱することで、ドリップが外に出ることを極限にまで抑え、中に肉汁がしっかりと馴染ませることに成功しています。
 
熟成牛が用いられていることから、肉自体の旨味も焼いたものと比較して全く遜色がないレベルにまで高まっており「ああこうやって肉を熟成させれば、こんがりと焼き目をつけなくても肉自体の旨味が存分に味わえるのだな」と、ナイフで切り取りパテを口に運ぶたび、喜びを噛み締められる時間は幸福以外の何物でもありません。
 
また、中に含まれているチーズが憎い演出でして、これが絶妙なアクセントとなって旨味を倍増させているのですよね。

卑近な例で恐縮ですが、ハンバーグの上にとろけるチーズがのっかってる奴、めっちゃ美味しいじゃないですか。あれと全く同系統の旨味を、より高次元にするとこんな味になるのだな、と。
 
この日は結局、突き出し・前菜・一口カツサンド・魚料理・メインの肉料理・デザートと値段からみれば食材の原価率が心配になるレベルの料理を堪能したわけですが、こちらの真骨頂は夜メニューにあるスペシャリテの熟成牛のタルタルとロースト、そして30品目近い種類の野菜を使って作られた究極のサラダ(僕が勝手にそう呼んでるだけ)にあります。

ぜひランチがお気に召されましたら、夜も一度訪れてもらえればなぁと思います。特にサラダは、サラダというものへの概念が根本から変わります。
 
 と、まあこんな感じで小難しいことをあれこれ考えながら、レストランでの食事を楽しませて頂いております。

今後も読者の方々に、外食の楽しみ方のポイントや勉強になりそうなことを少しずつお伝えできればいいな、と思っております。
 
もし次回があったらですが、次は高級鮨屋のあの値段は妥当なのかという少々アレなテーマについて書いていこうかと思います。

ライター紹介

高須賀
高須賀
平日は医者をやりつつ、余暇で美味しいものを食べることを生きがいにするものです。食事を単なるエンターテイメントから文化レベルに高める為、食べ手の皆様と共に成長できるヒントとなるお役立ち情報をお伝えできればと思っております。好きな食べ物は寿司とチャーハンとトンカツです。
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