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どんな役もこなす個性派ベテラン俳優?フレンチシェフが教える、珍味「ほや」の圧倒的魅力

こんにちは、釣りアンバサダー中川めぐみです。

この連載では「釣り」や「美味しい魚」を切り口に、日本各地の魅力的な人やお店をご紹介します。

ライター紹介

中川めぐみ
中川めぐみ
GREE・電通で新規事業の立ち上げ、ビズリーチで広報などに関わる。その間に趣味としてはじめた釣りの魅力に取り付かれ、昨年12月に退職し「釣り × 地域活性」事業で独立。釣りを通して日本全国の食、景観、文化などの魅力を発見・発信することを目指して、2018年は100地域での釣り旅を計画している。

 

全国の海を飛び回り、いろんな海鮮食材に触れる私ですが、いま特に注目している食材があります。

それは……「ほや」
 
 
ほやといえば、こんなイメージだと思いますが、
 

 
 

実は獲れたてはこんな見た目なの、知っていますか?
 

今回はまだまだ知られていないほやの魅力について、紹介させていただきます!

「ほや」についてどれくらい知ってる?

ほやはヒトの仲間!?

関東では「ほや貝」なんて呼ばれることもありますが、貝類ではありません

実は脊索動物門・尾脊索動物亜門・ホヤ網に分類され、なんと「ヒト」など脊椎動物の近縁にあたります。

栄養素がヤバい!

美容や健康に嬉しい栄養素がタップリ!

・ 鉄分はホウレン草(ゆで)の6倍
・ 亜鉛は鳥レバーの1.5倍
・ DHAはマグロと同等

認知症対策に期待されるプラズマローゲンもたっぷりで、認知症予防サプリの原材料にもなっています。

参照元はこちら

5つの味覚が揃った、超レアな食材!

ほやは「甘味、塩味、酸味、苦味、旨味」と、ヒトのもつ5大味覚を全てもっています。
 
 

などなど、他にもほやにはたくさんの魅力が詰まっています。

一方で、ほやは非常にデリケート。鮮度が落ちたりストレスがかかると、独特の臭みをもってしまいます。

ほやが苦手……という方は、そんな臭みの出てしまったほやを食べたのかもしれません。

ただ何度でも言うように、新鮮で元気なほやは、本当においしい!!

某有名ホテルのシェフに「キャビアやフォアグラに負けない『世界第四の珍味』になれるのでは!」と語らせるほどなんです。

私も本当においしいほやを食べてから、すっかり虜! 他では替えのきかない味わいで、「ほやブーム」を巻き起こすと思っています!!

そんなことを思っていたとき、恵比寿駅の人気フレンチビストロがほやで新メニューを開発したと聞き、はりきって取材してきました。

ほやは、とにかく鮮度が命

おじゃましたのは恵比寿駅から徒歩3分。

オシャレかつ温かい雰囲気で、都会の喧噪を忘れさせてくれる雰囲気の「ダルブル」さん。

こちらではフレンチをベースにしたビストロメニューを気軽に楽しむことができます。

 
 

いらっしゃい。今日も良いほや届いてますよ。

出迎えてくれたのはダルブルのシェフ、無藤さんです。

お話を伺った人

無藤 哲弥(むとう てつや)
無藤 哲弥(むとう てつや)
幼い頃からお菓子をつくったり、料理番組を見るのが好きだった。辻学園調理・製菓専門学校で学ぶ間に、フレンチレストラン「ヴァンサン」の城悦男氏の本を読んだことがキッカケで、フランス料理の道へ。城氏のもとで修行した後に、虎ノ門の「ヴァンシュールヴァン」を経て、2007年より「ダルブル」のシェフを務める。

無藤さん、今日はよろしくお願いします!新しいほや料理、楽しみにしてきました!

はい、食べたことのない料理をお出しできると思います。ほやの「殻」でつくった料理とか食べたことないですよね?

え!殻って食べられるんですか?絶対に食べたことのない料理です。

そうですよね。良かったら、ほやの殻を剥くところから料理の工程も見てみますか?

ぜひお願いします!

こちらが今しがた届いたほやです。鮮やかな赤色をしています。これが鮮度がおちると黒っぽくくすんできちゃうんですよ。

ほやはデリケートで、鮮度が落ちたりストレスを溜めると臭みがでてきちゃうと聞きましたが…。

よくご存知ですね。ほやは、とにかく鮮度が命。ストレスを感じさせないうちに処理をして、その後は空気に触れさせないことが重要です。

ちなみに「殻付き」って良いイメージがあると思うんですけど、ほやについては間違いです。

そうなんですか?

殻が付いてる方がカッコいいのと、なかには殻付きの方が鮮度が保てると思って、殻付きにこだわる方もいるんですが…。

実は殻付きの状態でストレスが溜まると、ほやが内臓からニオイを発して、そのニオイが身についてしまうんです。

へぇー!

だから殻付きの場合、輸送から処理まで迅速・丁寧が絶対です!ちなみに漁師が獲ったあとすぐに捌いてくれる「剥きほや」もあります。なんと収穫から4時間以内に加工するらしく、味・香りもとれたてと遜色ないです。

でも無藤さんは、あえて殻付きなんですね。

僕は「殻」や、殻の中にはいっている「ほや塩水」も使うんで。そのために、漁師さんや運送業者さんに協力してもらって輸送にはかなり気を使っています。

その成果が、この赤くてぷりぷりのほやですね。

元気なほやはこんな風に鮮やかで、触るとぷく〜っと膨れるんです。ちなみに、ほやにはプラスマイナスがあるんです。ほら。

指差している方がプラス

指差している方がプラス

ほんとだ!!なにこれ!

プラスが「入水孔」で、海水やエサを取り込むところ。マイナスが「出水孔」で、排泄や産卵する(卵子・精子を出す)ところです。

おもしろい!なんだか、ほやがかわいく見えてきました!

料理に使える「ほや殻」と「ほや塩水」

じゃあ、調理を開始しますね。

ジョキン!!(プラスマイナスを切断)

はっ!チャームポイントのプラスマイナスが…(涙)。

どんどんいきますよー!

チョキチョキ

ぷるんっ♪

わー!気持ちいい。こんなキレイに殻から外れるんですね。

あとは肝膵臓や腸管を切り離せば下処理OK。ちなみに、最初の料理は「身」ではなく、「殻」を使います

本当に殻を使うんですね!どんなお料理になるんだろう。

まず、ほやの殻をバターで炒めます。で、セロリやトマトなどを入れてまた炒め、ほやを捌く時にでてきた「ほや塩水」を。

普通なら捨ててしまいそうな部位ばかり使うんですね。

実は、ほやの殻は産業廃棄物にあたり、捨てるのにお金がいるんです。本来ならコストのかかる殻がお金になったら漁師さんも喜んでくれるのでは?と考えたのが、この料理です。

よし、ほや殻から旨味がばっちり出ました。ここで殻を取り除き、液体側をミキサーにかけてこし、クリームなどを入れて整えれば……はい!まずは「ほや殻のビスク」です。

キレイ!これは想像がつきませんでした。さっそくひと口……。

わわわ!エビとか甲殻類を使ったみたいな、濃厚な香りと味。臭みは全くないです。甲殻類に比べると、後味に甘みとまろやかさがあって、長く「おいしい」の余韻が続きます。

さ、どんどんいきましょう。次は、「ほやとアスパラガスのスフレ」です。

これにもほやが?どうなっているのか全く分からない…。

わわ!中からほやとアスパラが!!

こちらは1番下にほやの茶碗蒸しを敷いて、そのうえにアスパラガスと、アスパラガスのムースを乗せて焼いています。

ベースのほや茶碗蒸し

ベースのほや茶碗蒸し

ふわっふわで食感も味わいも優しいムースに、シャキシャキで爽やかなアスパラガス。火を通して弾力を増したほやの塩味と甘味が混ざって、もう何と表現すればいいのやら……いろんなおいしさがたたみ掛けるように展開していきます。ただ、全体としては、出汁やお醤油など和がベースなので優しい味わいですね。

ほやは「どんな役でもこなす個性派ベテラン俳優」

次は「エスニック風のサラダ」です。

エスニック!ほやでフレンチもびっくりでしたが、エスニックも合うんですか?

ほやは「五味」があるって聞いたことあると思うんですが、そのなかの「酸味」の側面がエスニックにぴったりなんですよ。ナンプラーの効いた、すっぱめのドレッシングと合わせました。

ほんとだ!!このすっぱめのドレッシングがほやの「酸味」をより引き立てて、すごくスッキリした味わいになってます。でもほやの「甘み」も活かされていて、刺激的なすっぱさではなく食べやすい。

最後はまたフレンチに戻って……「ほやの赤ワイン煮、新ごぼうのフランと共に」。

またオシャレ!これまでのほやのイメージと全然違います。

ほやの身を殻からはずして、フランとマッシュルームと一緒に…。

おいしいーーーー! 火を通したことで、身が締まり噛みごたえが出て、そこに赤ワインの酸味とコク、黒こしょうの刺激も染み込んで、まるでお肉を食べてるみたい。これは言われなければ、ほやだって気付かないかも。

味だけでなく、食感も料理次第で変えられるので、ほやはおもしろいんですよ。

これまで「刺身・つまみ」というイメージしかありませんでしたが、ほやっていろんな楽しみ方があるんですね!

さっきもお話したように、ほやは「五味」を持つ特殊な食材です。しかも、どの特徴も強くて、「どんな役でもこなせる個性派ベテラン俳優」みたいな食材だと思います。ただ扱いを間違えると、個性が出過ぎて扱いづらい……なんてことも。

無藤さん、ベテラン俳優のマネージャーみたいですね。

本当にそんな感じです。苦労もあるんですが、ぴたりとハマると代えがきかない。彼じゃないと、ほやじゃないとダメなんです(笑)。

実はほやが苦手だった

ちなみに無藤さんは、実はほやが苦手だったと聞いたんですが…。

初めてほやを食べるとき、興味本位で腸管とか「臭みの元」になる部分まで食べちゃって(笑)。「ほや=臭い」ってイメージになっちゃったんです。でも、そんな自分だからこそ「ほやが苦手な人でも美味しく食べられる料理」が作れるんじゃないかと、逆に燃えてきちゃって。

確かに今日いただいた料理は、ほや特有のニオイが全くしなかったです。あと五味のなかの「苦み」もなかった。

ほやは色んな個性をもっているから、扱う側(シェフ)が、どの要素を抑えて伸ばすかの見極めが大切なんです。どんな食材が合うかもまだまだ未知数なんで、僕はいろんな食べ合わせを試しまくっています。チョコとかジャムも試しました。

なんてチャレンジングな……。

全く合わなくて悶絶することもあります(笑)。でも、こんなにおもしろい食材はなかなかない。これからも新しい料理にチャレンジしていきます。

ほやをブームでなく文化に!

改めてほやの魅力・可能性を味わった1日でした。

ほやを食わず嫌いでいる方、以前に食べたけど合わなかった方、ぜひ一度ダルブルさんのほや料理を食べてみてください。

本物の「ほやの実力」を知って、ほやの概念が変わること間違い無し!

ほやは一時期のブームにするのはもったいない。ブームでなく、「文化」として絶対に根付くべき!

ほやの旬は、5月〜8月。旬を過ぎるとメニューから消えてしまうので、気になる方はお急ぎを!
  
 

※ほやを使ったメニューは来店時によって、変更となる場合があります。 

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