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連載:日本酒ライターKENZOの「1/3の純情な吟醸」

「絶対ムリ」は、養分でしかない 1本17800円の日本酒づくりからはじまる若き起業家の挑戦

こんにちは、熱燗DJつけたろうこと、日本酒ライターのKENZOです。

日本酒と発酵を勉強するため山梨に移住し、サラリーマン生活もそろそろ終わりをむかえそうです。

6月からは晴れてロイヤルニート。30代独身、移住して金なし、職もなし。人生が俄然たのしくなってきました(笑)。
 

さて、日本酒好きの方はすでにご存知かもしれませんが、日本酒業界には「SAKETIMES(サケタイムズ)」というWebメディアがあります。

今回は、その運営を行っているClear Inc.代表の生駒龍史さんにインタビューをさせていただきました。
 

▼取材の後日、生駒さんがForbes2018年6月号にて「SAKEイノベーター」として中田英寿さんと並んで紹介されていました!すごい!

お話を伺う人

生駒龍史(いこまりゅうじ)さん
生駒龍史(いこまりゅうじ)さん
SAKETIMESを運営しているClear.incの代表。嫁のことが大好きな32歳。最近子供が生まれた一児のパパ。以前お酒の席で一緒になったとき、その素敵な人柄に熱燗DJつけたろうはすぐに生駒さんのことが大好きになった。

 
 

本日はよろしくお願いします。

よろしくお願いします!

生駒さん、今日はインタビューをしながら、僕がつける熱燗で酔わせてしまっても大丈夫ですか?

え? あ・・まぁ・・・・少しなら。

おそらくForbesとは大違いな投げかけに戸惑う生駒さん

おそらくForbesとは大違いな投げかけに戸惑う生駒さん

日本酒メディアの創業者は、日本酒がずっと嫌いだった

日本酒のメディアを運営しているくらいなので、生駒さんは昔から日本酒が好きだったんですか?

大学生の時に飲み会で一気飲みをさせられて、酔うわ、吐くわ、頭痛くなるわ、授業出られなくなるわで、僕の中での日本酒のイメージは散々なものでしたね。酔うために飲むお酒みたいな。

昔から日本酒好きなわけじゃなかったんですね。では、なぜ日本酒メディアを立ち上げようと?

大学を卒業してサラリーマンを2年間やって、24歳の時に会社をやめました。「なんとなく起業したい」という想いで、並行輸入品の販売をはじめたんですが、それがまぁ、ビックリするくらい上手くいかなくてですね(笑)。

大変だ(笑)。

お金が入らず貯金もなくなり、家賃も払えなくて大家さんに泣きながら「払えない」と電話したこともありました。電気は止まるし、ガスも止まるしの生活で。

警備員・コンビニ夜勤・弁当屋などのバイトを掛け持ちしながら、ECの運営や経営の勉強を続けていました。当時はとにかくお金がなくて、鼻をかむティッシュすらもったいなかったので、指で鼻をかんで水ですすいでました。

手で鼻水を!(笑)

ある日、友達が家に遊びにきてくれた時に、なけなしのお金で買ったティッシュを一度に2枚使われた時は本気で怒りましたね。1枚で鼻かめよ!と。お金がないと、人間は心の余裕がなくなります。

暗黒時代ですね(笑)。

ただそんな状況でも、ネット通販というのは、やればやるほど知見がたまっていくんですよ。で、そのタイミングで……。

はいはい、そのタイミングで?

下積み時代のような時に、大学時代の友人から「日本酒に特化した酒屋さんを継ぐことになって、これからはネット通販の時代だから一緒にやらないか?」と言ってもらえて。

おお〜、ここでついに日本酒が登場するんですね!

ただ、「ネット通販はできるけど、日本酒には良いイメージがないからできない、ちょっとムリだ。好きじゃないからできない」と断ったんです。

そうか、まだイメージが悪いままなんですね。

日本酒に良いイメージを持てなかった過去を持つ現在の生駒さん(飲んでいるのは山形県「日本響」の燗酒)

日本酒に良いイメージを持てなかった過去を持つ現在の生駒さん(飲んでいるのは山形県「日本響」の燗酒)

そしたら「美味しい日本酒一本持っていくから、好きだと思ったら一緒に仕事しよう」って言われて、その時に持ってきてくれて飲んだのが熊本県の「香露(こうろ)」というお酒なんです。

お〜! 香露! また、お友達は渋いチョイスですね。

香露とは:
熊本県の熊本県酒造研究所が造る日本酒。協会9号酵母、通称「熊本酵母」と呼ばれる歴史ある酵母が培養され、全国の酒づくりに影響を与えた。生駒さんが口にした2012年頃は華やかでフルーティな日本酒が全盛期だったので、そのトレンドからは外れる香露を持ってきた友人はかなり渋い。

香露がもつコクや深みに非常に感銘を受けたんです。

そこから日本酒のマーケットを調べてみたら、国内はダウントレンドな側面もあるけど、海外は盛り上がっていて、造り手側にも世代交代が起きていたので、イノベーションの芽があるんじゃないかと。しかも、日本酒業界はネット通販が活用されていない業界だとわかったんです。

そこで、日本酒の通販を始められるんですね。

最初にやったのが「日本酒の定期購入サービス」です。やるからには一般的なECではなく、消費者の課題を解決できるものにしたいと思っていたので、「日本酒に興味はあるが、何を飲んで良いのかわからない」という悩みを解決するために、いわゆるサブスクリプションコマース(定期購入)でオススメの日本酒が定期的に届くという形にしました。

たしかに、日本酒を好きになっても「酒屋さんに日本酒を買いに行く」ってすごくハードルが高いですもんね。

そうなんですよ。

わんこそばのように注がれる熱燗

わんこそばのように注がれる熱燗

その定期購入サービスをはじめるにあたっての資金調達をCAMPFIRE(キャンプファイヤー)というクラウドファンディングで開始して、初日で80万円を集めて目標金額を達成したんです。これがメディアにウケて、日経新聞やワールドビジネスサテライトにも取り上げられ、目に見えて世の中の反応が良かった。

そこが生駒さんの転機となったわけですね!

サブスクリプションコマースとクラウドファンディング:
今でこそ世の中で認知されてきているサブスクリプションコマース(定期購入)だが、2012年当時にその手法はまだ知られていなかった。そこに早くから目をつけた生駒さんは資金調達の手段として、クラウドファンディングを利用。「日本酒 x ネット販売 x 定期購入 x ネットで資金調達」という図式は、最先端だった。

ただ酒を売るのではなく「どう楽しめば良いのか」、情報と共に体験を提供するというコンセプトが響き、2014年6月までには、獲得した月額会員総数が述べ1,000人以上となりました。

ひとつの酒屋に毎月日本酒を買いに来る人が1,000人いると考えると、かなりすごいですよね!

「これも美味い...」ともらす生駒さん(飲んでいるのは三重県「参宮」の燗酒)

「これも美味い...」ともらす生駒さん(飲んでいるのは三重県「参宮」の燗酒)

その時の学びとしては、情報が付加されると日本酒が美味しくなるということです。僕も酒屋の彼に教えてもらうことで日本酒を好きになりました。やっぱり、日本酒というのは教えてくれる人がいることで、より深く楽しめるようになるんですよね。

ああ〜なるほど! 生駒さんの事業には、自身の感動を追体験してほしいというモチベーションが根っこにあるわけですね。

日本酒メディア「SAKETIMES」の創業

日本酒の定期購入サービスからはじまり、なぜ日本酒メディアを立ち上げるに至ったんですか?

定期購入サービスの体験から「情報という付加価値を乗せることで、日本酒のファンが増える」ことがわかった一方で、改めて感じたのは「お酒を買ってもらう」ことへのハードルの高さなんですよ。

そうですよねぇ。

「1本のお酒を買う」より「1つの記事を読む」ほうがハードルは低いよなぁと思って、メディアを始めました。Web記事ならタダで読めるし。僕の事業に共通していることは、日本酒の新しい消費者を増やしたいんです。

新しい消費者というと?

初心者からどんどん好きになって行くプロセスを追体験してもらいたい、とさっきお伝えしましたが、自分のように日本酒にのめり込む人を増やしたいというエゴがあるんです。

その気持ち、めっちゃわかります。

初心者にも日本酒を好きになってほしいから、まずはその魅力を情報として届ける。0を1にするのは情報だと思っているので。

なるほど、それでSAKETIMESという日本酒メディアの創業につながっていくんですね。

SAKETIMESは「日本酒の情報流通に革新を起こし、その魅力をすべての人へ」がミッションで、日本酒は今まで情報がちゃんと流通していなかった。

たしかに...。商品は流通しているのに、情報が置いてきぼりだと。

そうそう。だから、日本酒の情報が流通するインフラになろうと思ったんです。日本酒について知りたい読者も、日本酒の魅力を伝えたいメーカーの想いも、SAKETIMESにきたらわかると。知りたい人と伝えたい人たちのハブになりたかったんです。

栃木県「鳳凰美田」の燗酒を飲む生駒さん。「美味しいなぁ、酔っ払ってきた」

栃木県「鳳凰美田」の燗酒を飲む生駒さん。「美味しいなぁ、酔っ払ってきた」

でも、最初は「日本酒でメディアをやってます」と言っても全然信頼されなかったです。酒蔵に行った時にも「よく名前聞くんだけど、信頼できないんだよね」と直接言われたりもしました。

おお……。SAKETIMESが信頼されるようになった転換期はあったんですか?

それがないんですよねぇ。酒蔵の1人1人と会う、1つ1つの記事を作る、その積み重ねが少しずつ評価された結果だと思っています。酒蔵の方も「実際に会って話してみると、熱い人だったから安心したわ」と言ってくれるんです。

そういった地道な努力があってか、日本酒のWebメディアといえば「SAKETIMES」というくらい、唯一無二な存在になっていますよね。

ありがとうございます。僕らの記事は全て一次情報なので、北海道から沖縄、海外の酒蔵まで実際に訪問していることが、読者や業界の信頼につながっているのかなと。

メディアより業界の最前線にいたい

いま新たにお酒を造られてますよね? なぜお酒を造ろうと思ったんですか?

Makuakeのプロジェクト:100年誇れる至高の1本。上質を極めた日本酒『百光』を限定先行発売

百光:
SAKETIMESを運営するClear Inc.は、新しい日本酒ブランド「SAKE100(サケハンドレッド)」を開始。最高峰の酒造技術でつくりあげる"100年先にも色褪せることのない日本酒の魅力"を提供する日本酒ブランドの第一弾として「百光(びゃっこう)」がMakuakeにて先行リリースされた。

今日はライターというよりもイチ日本酒ファンとして、どうしてもここの部分を聞いてみたくて。

僕、SAKETIMESって本当に良いメディアだと思っていて。手前味噌ですが、この世の財産だと思ってるんですよ(笑)。

おおお!(生駒さんがノッてきた!)僕もそう思います。

杜氏さんが死んじゃったら今まで残らなかったことも、僕らが情報をシェアすることによってサーバーがあり続ける限り、100年も200年も残るんですよ。そのことの重要性を前提に話すんですが……

前提で……?

やっぱりメディアとしての僕たちって、業界の最前線にはいないんですよ。第一線で頑張っている人たちを応援するポジションなんです。なので、1.5線くらいにいる。

メディアは第一線ではなく、1.5線。

僕はそこに、満足しきれなくて。酒屋の定期販売をしていた頃は最前線にいたし、お客さんを増やしている自負がありました。何よりスタートアップ的な動きでいうと「最前線でマーケットを開拓している」という自覚があったんです。

メディアをやっていると「話を伺う」ことが多くなって、僕のなかでどこか物足りなく感じていったんです。それはもう事業の良し悪しではなく、経営者としての方向性の問題なのですが……。

ふむふむ(めちゃくちゃぶっちゃけてくれてる...!)。

だから僕は、一度もSAKETIMESの編集長を名乗ったことはなくて、編集長の器ではないんです。僕はもっともっと日本酒のマーケットを切り開いていく、最先端にいたかった。

なるほど! SAKE100は日本酒メディア「SAKETIMES」としての新たな展開ではなく、運営会社であるClear Inc.の新規事業ということなんですね。「日本酒で事業をやっていくぞ」と決めた起業家・生駒龍史の次の挑戦だと。

おっしゃるとおりです。

そういうことかー!

日本酒の市場と文化を発展させるには、飲んでもらわないとはじまらない。飲んでいただくことが何よりも大事だと思っているんで、メディアを読むだけでは「美味しいなぁ」とは思わないじゃないですか。やっぱり飲んでなんぼ。

体験してなんぼですよね。

メディアがあることによって興味を持つ潜在顧客層を増やすことができるから、日本酒に興味をもった人の次のステップとして、SAKE100を通じて今度は飲んで美味しいという顧客体験を提供していきたいんです。

めっちゃいい話だ…!

100年後にも誇れる日本酒づくりを

今回はすごいハイスペックな日本酒を提供していますが、今後はどういった展開を考えているんですか?

1本目の「百光(びゃっこう)」が精米歩合18%の純米大吟醸だったので勘違いされがちなんですけど、ハイスペックだけを追い求めるわけではないんです。今後は純米酒や普通酒、熟成酒なども出す予定です。

そうなんですね!

精米歩合(せいまいぶあい)とは:
玄米からお米を削る際にどれくらい削ったのかを表す表記。精米歩合18%というのは玄米を100%とした時に82%お米を削ってできているお酒。お米は中心にいけばいくほど雑味がなくなり、より綺麗な味わいになると言われている。「大吟醸」と表記されるお米は50%以下からなので、18%というと、限りなくお米の中心部分しか使用していない。ちなみに、普通の白米は90%程度の精米歩合。

SAKE100では日本酒の多様性を高いレベルで知ってもらいたいと思っているので、別にハイスペックにこだわっているわけじゃなくて、高付加価値の商品であればいいんです。「精米歩合」は1つの大事な価値観なので、それを知っていただくために今回は百光を出しています。

うんうん、なるほど。

今後リリースする各商品がテーマをもっていますが、第一弾の百光が背負うテーマは「日本酒における上質な味わい」なんです。僕はこれまで1%、7%、8%、9%、13%、23%、25%、33%と、高精白の酒を飲んできましたが、18%精米の酒にしか表現できない上質で上品な米の味わいがあると感じました。

ほぉ〜!

今回は米、酵母、麹についても楯の川酒造さんと協議を重ね、「絶対に美味しいと言える自慢の1本」を造りました。みんな違ってみんな良いんだけど、「絶対に間違いなく美味しいものは何か」と問われた時に、みんなの頭に「百光」が思い浮かぶ、そんな商品にしようと思っています。

めっちゃ飲んでみたいです。

やはりというべきか、日本酒愛に溢れる方々からは今回の百光は「磨きすぎ」とか「高すぎる」とか、ご批判をいただくこともありました。ただ、現在購入していただいた方のコメントや情報を追っていくと、日本酒ビギナーの方が多かったことが一番の収穫です。

かなりいいお値段の日本酒(720ml/17800円 送料込み)が、ビギナーの方に飲まれていると!

興味はあったけど何を飲んで良いかわからない、失敗もしたくない。けど、SAKE100の百光なら、間違いなさそうだから、デザインがかっこいいから、価格的にも安心できそうだから、などいろんな理由があるようですが、高単価市場のニーズはあるのだと確信しました

SAKE100の今後が楽しみすぎます! 生駒さん、ありがとうございました!

おわりに

いかがでしたでしょうか?

日本酒メディア「SAKETIMES」を立ち上げた生駒さんの次なる挑戦。

起業家として、フィールドを日本酒業界に選んだ彼の新たな一手。

日本酒の定期販売も、日本酒のメディアも、今回の酒販業SAKE100も始める前はいろんな人から「絶対にムリ」「上手くいくわけがない」と散々言われたようです。

でも彼は「起業家に『絶対にムリ』なんて養分でしかない」と笑って話します。

みんながムリだというところにこそチャンスを感じ、愛を持って、歴史ある業界の常識を打ち破る。

どんな業界でもイノベーション(革新)を起こすのは、きっとこういう愛と度胸を兼ね備えた方なんだろうなと感じました。

日本酒業界の転換期に現れたSAKE100の「百光」、あなたも味わってみませんか?

Makuakeのプロジェクト:100年誇れる至高の1本。上質を極めた日本酒『百光』を限定先行発売!
 

※プロジェクトは5/30(水)で終了しました

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