Rettyグルメニュースをお読みの皆様、こんにちは。「むむ先生」こと、杉村です。
今回編集部からいただいたお題は「なぜ人はこんなにもフライドポテトを欲するのか?」というもの。
これは非常に難しい問題です。順を追っていろいろと説明をしたうえで、ハンバーガーチェーンなど各社がしのぎを削るフライドポテトを食べ比べてみようと思います。
なぜフライドポテトはやみつきになるのか
そもそも、なぜ我々はフライドポテトを無性に食べたくなるときがあるのでしょうか。
その1.油の薬理学的報酬効果
これは難しい言葉のように聞こえるのですが、ようは油はおいしすぎて脳が快感を覚える、ということです。
ねずみにさまざまな食べ物を食べさせる有名な実験があるのですが、他のものは満腹になると食べるのをやめるのに対して、砂糖(甘味)と油だけはどんどん食べて肥満になってしまった、という結果が出ています。
生きていくためにはカロリーがどうしても必要なので、高カロリーのものは脳がおいしい、もっと欲しいと感じるというわけです。
その2.塩分が起こす快感
舌には味を感じる味蕾(みらい)という部分がありますが、味を感じる強さに限界があります。限界を超える味は、痛みや苦痛として感じられるのですね。
フライドポテトの表面にまぶされたたくさんの塩を舌が感じると、脳は痛みを感じ、それをやわらげるために快感物質であるエンドルフィンを出します。
そうなると、フライドポテトを食べた際に快感を感じるようになるため、ついつい手が出てやめられない止まらないとなるわけです。
でもポテトは痛みを感じるほど塩辛くないと思うかもしれません。
それは、油とジャガイモの甘味や脂肪で塩辛さが中和されているからそこまで感じないだけで、実際には大量の塩分が舌を襲っていることになるのです。
90年代の人気漫画『鉄鍋のジャン!』では、この原理を使い、料理勝負で主人公を破るキャラクターが登場します。興味のある方はそちらも読んでみてください(文庫版6巻収録)
その3.カリウムとナトリウムの関係性
人体の中には、より正確にいうと細胞の中には、ナトリウムとカリウムが一定の割合で含まれています。
両者の量を比べてみますと、ナトリウムのほうが多く、カリウムのほうが少ないという状態でバランスをとっています。
そこに、ナトリウムよりもカリウムが多い食べ物や飲み物を摂るとどうなるでしょうか。
カリウムが増えた結果、ナトリウムを増やそうという指令を脳が出すのです。ナトリウムが欲しい、つまり塩を体が欲するというわけですね。
ジャガイモはカリウムが豊富な食べ物です。カリウムは水に溶けやすいのですが、油で揚げる分には失われません。
そこで、フライドポテトを食べてカリウムが増えるとナトリウムが欲しくなり、ちょうどフライドポテトに塩分があるのでそれを食べ、そしてジャガイモが吸収されるとカリウムが増え、またポテトに手が伸び……と、なるわけですね。
ちなみに、ナトリウムよりもカリウムが多い飲み物の代表がビールです。
つまり、ビールを飲むと塩気があるものが欲しくなるように、我々の体はできているというわけです。
さらに、ビールのアルコールを代謝するときにはエネルギーを使います。そのエネルギーは血中のブドウ糖から得るため、代謝するとブドウ糖が減り、血糖値が下がり、このままではいけないということで炭水化物(ブドウ糖に変化する)を食べろと脳が指令を出すのです。
そして、ポテトは炭水化物、でんぷんが豊富です。ビールを飲んでいるときにフライドポテトを食べると、これまた止まらないのはそういった理由もあるのでした。
各店のフライドポテトを食べ比べてみた
ではここからは、さまざまなファーストフード店のポテトを食べてきたので、実際にポテトの特徴をレビューしていきましょう。
とはいっても、全てのお店のものを食べられたわけではありません。先にお腹の限界がきてしまいました。
また、フレーバー類は一切注文せず、基本的にはプレーンの状態で食べています(ケチャップとかを付けることはありました)。あらかじめご了承ください。
マクドナルド
マクドナルドのポテト、いわゆる「マックフライポテト」は、同じ太さになるよう仕上げているのがポイントでしょう。
カタチを揃えることで火の通りを均一にしているのだと思われます。
外はややカリッと、中はふわっとしていて、食べやすいです。王道のフライドポテトですね。
実は、マクドナルドのポテトは塩の量を加減してもらえます。塩無しで注文することもできるのです。塩分が気になる人は塩無しで注文するのもいいでしょう。
それに加えて、普段は塩を振った状態で保存されているため、「塩抜きで」と注文すると、新たに揚げてくれるため、いつでも揚げたてを食べられるテクニックでもあります。
塩抜きの場合は「ケチャップをつけてください」と言うと、ケチャップを無料でつけてくれるのでオススメですよ。
モスバーガー
モスバーガーのポテトは「フレンチフライポテト」。マクドナルドのものよりも太切りで、ホクホクとした食感を重視しています。そのため、あまりカリッとはしていません。
太い分、冷めにくいのが特徴でしょうか。かなり長い間、アツアツのホクホクで食べられます。ちなみに、こちらも塩分を調整できます。
オニオンフライと合わせて、オニポテにするのもいいですね。
クア・アイナ
クア・アイナの「フレンチフライ」は、マクドナルドのものよりもかなり細い、極細のポテトです。
それをカリッカリに揚げているのが特徴でしょう。食感ではダントツです。
さらに、外側は冷めてもカリカリなので、食感が落ちないのもポイントでしょう。
ハンバーガーにつけるケチャップやマスタードをポテトにつけて食べてもいいですね。
フレッシュネスバーガー
フレッシュネスバーガーの「フライドポテト」は、三日月型のくし切りで、さらに皮までついているポテトです。この皮がまたおいしいのです。
香ばしさとホクホク感が同居している、かなりレベルの高いポテトだと思います。
シェイクシャック
波状にカットした、いわゆるクリンクルカットのポテトフライを提供しているシェイクシャック。メニュー名は「フライ」ですね。
波形にしたことでカリカリの面積が大きく、よりカリッとした食感を感じさせます。
ケチャップやマスタードもよく絡むので、さまざまなソースをつけて食べました。
サブウェイ
サブウェイの「コロコロポテト」は他のものに比べて、ダントツにカロリーが低かったりします。
というのも、油で揚げているのではなく、オーブンで焼いているからなのですね。
それでいて、外はカリッと、中はホクホクの食感が楽しめます。皮付きのくし切りだからでしょうか。
カロリーが低いと、たくさん食べても大丈夫な気になりますね!
みんな大好きフライドポテトは、結構お店によって特徴が出ている部分であることもわかりました。
今回行けなかったお店や、コンビニのフライドポテトなどは、この記事が好評だったらまた行くことを考えます……!
ライター紹介
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杉村啓
- 日本酒ライター、料理漫画研究家、醤油研究家。 日本酒の基本から歴史・造り方までを熱く語った『白熱日本酒教室』やタモリ倶楽部でも紹介された醤油の奥深さを書いた『醤油手帖』など、食に関する書籍を多数執筆。「むむ先生」として食のコラムや紹介を各メディアで担当。8月末には、グルメ漫画の半世紀を辿る新著『グルメ漫画50年史』を上梓。