断言しよう、かき氷は料理の一ジャンルだ。「和kitchenかんな」がそれを証明している

ライター紹介

山路力也
山路力也
フードジャーナリストかつ、ラーメン評論家でもあり、かき氷評論家でもある。「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を常に考えながら、テレビ・雑誌・ウェブなど様々な媒体で活躍。

かき氷はもはや「料理」の一ジャンルだ

年々レベルが上がっているかき氷の世界。夏の屋台で出されているかき氷と異なり、かき氷専門店で作られるかき氷は精緻な設計と繊細な調理を必要とする。

氷を削る温度を何℃にするか、削る厚さを何mmにするか、シロップの濃度や糖度をどうするか、氷の中に何を潜ませるかなど、かき氷はもはや料理と言っても過言ではない。

かき氷を料理として捉えるのは、かき氷評論家としての私の見解であり、実際にかき氷を提供している店側がどう考えているかは人それぞれだろう。

しかし、三宿にある人気店「和kitchenかんな」の店主、田中完児さんは間違いなくかき氷を料理として作っている人だ。

「和kitchenかんな」は、昨今のかき氷ブームを牽引する人気店であるが、店名の通り本来は和食を提供する料理店である。

田中さんは寿司店での修業を積んで30歳の時に独立。いくつかの人気店を立ち上げたのち、2013年に「和kitchenかんな」をオープンさせた。和食離れしている若い人に気軽に和食を楽しんで欲しいというコンセプトの店で本気のかき氷も提供しているのだ。

料理人としてのアプローチでかき氷を作る

田中さんがかき氷と真剣に向き合うようになったのは、まだかき氷ブームになる前の2009年、和食店時代のことだ。和食の締めにふさわしいデザートを、と考えた時に思いついたのがかき氷だった。

ただ和菓子を出してもつまらない。では何を出そうと思った時に、かき氷はオリジナリティも出せるし可能性があると気付いた田中さん。和食の料理人として、料理店としてのアプローチで新しいかき氷を作れるのではないかと、かき氷への挑戦を決めたという。

旬の素材や和の食材を用いてオリジナルのシロップを作り、氷を削り出す温度を見極め、薄くていねいに削ってシロップや素材と重ね合わせて盛りつける。それは田中さんにとって料理そのもの。

色合い、フォルム、変化していく味わい。今までにない美しさと美味しさを持ったかき氷は人気となり、今では季節を問わずかき氷を求めて行列を作るようになった。さらにかき氷イベントに出店したり、沖縄にもかき氷専門店を出店するなど、かき氷店としての展開も広げている。

和をイメージした美しいかき氷

かんなのかき氷に貫かれているテーマは「和」である。和素材や和のエッセンスを生かすというアプローチは創業以来変わることがない。時には和と洋の素材を組み合わせるなどのチャレンジもあるが、和食店が作るかき氷というスタンスはそのままだ。

まるで繭のようなフォルムを持ったかき氷は美しく、食べて崩してしまうのがもったいないほど。氷の中にもちゃんと味は入っているので、横からではなく上から食べていくのが正しい流儀。そうすることで途中での崩落を防ぐことができる。

氷は純氷だが、追加料金で天然氷からも選ぶことができる。天然氷は日光の老舗蔵元「松月氷室」のものを使用する。純氷、天然氷のいずれもしっかりと温度管理がなされていて、削り出しの温度を高めにしているので、頭にキーンとくることはない。

「かんなの氷しるこ」は必食の一品

定番の味から旬の素材を生かした季節限定の味まで、どれも魅力的なかんなのかき氷は選ぶのに迷ってしまう。その中でもこれは必ず食べるべし、という一品が「かんなの氷しるこ」だ。

金時のような餡子ではなく、あくまでもかき氷にかける前提で作られたオリジナルの餡シロップが特徴。甘味だけではなく程よく塩味を加えることによって、より餡の甘さを引き出している。この塩梅こそが和食の料理人としてのアドバンテージ。

素材をどう生かして調理するか、味をどう途中で変化させていくか、まだまだかき氷には可能性があると、田中さんはかき氷の料理としての魅力を感じている。田中さんの料理としてのかき氷は、かき氷好きはもとより、地元三宿の家族連れなど幅広い客層に愛されている。

和食だと敷居が高く感じる人も多いが、かき氷だと小さい子供からお年寄りまで幅広い人に楽しんで貰えるのが、料理人として何よりも嬉しいと語る田中さん。かんなの店内にいる人たちの笑顔がそれを物語っている。

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