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「海苔は地球の味がする」 1人の海苔漁師が"陸での発信"にこだわり続ける理由

みなさん、こんにちは。

クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」で働きながら、旅するおむすび屋として全国でおむすびを結ぶ活動をしている菅本香菜です。

突然ですが皆さん、感動するほど美味しい「海苔」に出会ったことはありますか?

普段口にすることの多い海苔ですが、脇役として食卓に並ぶことが多く、「海苔をちゃんと味わうぞ」と意識して食べることは少ないのではないでしょうか。

私はおむすび屋として全国をめぐる中で各地の海苔漁師さんと出会い、海苔の魅力に惚れ込んでいった無類の海苔好きです。

今回は、身近にあるのに意外と知らない「海苔」の面白さについて、みなさんにお伝えできたらと思っています。

海苔漁師の相澤太さん(写真はアイザワ水産HPより)

海苔漁師の相澤太さん(写真はアイザワ水産HPより)

私が尊敬してやまないのが、宮城県東松島市で海苔漁師をいとなむ相澤太さん(アイザワ水産代表)。

「一生で一番美味い海苔を作る」の言葉を掲げて作られる相澤さんの海苔は、品評会で優勝を果たし、皇室にも献上されました。

そんな相澤さんから

「海苔漁の時期が終わる前に船に乗りにおいで!」

そんな嬉しいお言葉をいただいたので、現地へ行ってお話を伺うことに!
 
 

相澤さん、こんにちは〜!

よく来たね!せっかくの取材だからさ、オススメの場所へ連れて行くよ!

やった!お願いします!

はい、到着!いいでしょ、海眺めながら話すの。

わぁ、素敵!防波堤でお話できるなんてロマンチックすぎる…映画の主人公になった気分です。

俺、高校生の頃ラッパーでさ。海を眺めながら詞を書いてたんよ。でもこんなロマンチックな場所で作詞しても、優しい歌しかできなくてさ(笑)。

えっ、ラッパーだったんですか!? ラップのことも深堀りしたいけど、本題の海苔について聞きますね(笑)。

何でも聞いて!

「海苔、なめんなよ」一歩踏み出すきっかけの言葉

相澤さんが海苔漁師を目指したきっかけは何だったんですか?

俺のじいちゃんから海苔漁を始めて、俺で3代目なんだけど、小さい頃からなんとなく海苔漁師をするだろうとは思ってたかな。小学校の卒業文集は「将来の夢は海苔漁師」って書いてたし。

今ではその頃の夢が叶ったわけですね。

本当は別の世界をのぞいてから、タイミングを見て漁師になろうって思ってた。でも、親父にそれを伝えたら「海苔、なめんなよ」って言われたんだっちゃ。これまで海苔の仕事を「手伝え」とも言われたことがなかったから、正直びっくりしたよね。

軽い気持ちでやってほしくなかったんですね。

その言葉もあって、高校卒業してすぐ海苔の世界に入って。最初は修行のために、熊本で海苔のタネを販売している業者に半年間働きに行ったよ。

まずは、海苔のタネから学ばれたんですね?

そうだね。それと合わせて、仕事の合間に海苔漁師の手伝いをさせてもらったり、海苔の育て方について聞いたりしてた。半年間、みっちり勉強したつもりだったから、宮城に帰る頃には海苔漁師としてうまくやっていける自信しかなかったね。

実際に帰ってみてどうでしたか?

もうボロボロ(笑)。全く思うようにいかなくて、親父からは怒鳴られてばっかり。周りから「頑張れよ」って優しい言葉をかけられる度に、自分が情けなくてめちゃくちゃ悔しかった。

そんな状況で、海苔漁師が嫌にならなかったんですか?

難しかったから、逆にハマったんだよね。絶対うまい海苔を作ってやるぞって。

海苔づくりの難しさが相澤さんを海苔の世界に引き込んだんですね。

そうそう、誰よりも早く海に出て、誰よりも遅く陸に戻って来たし、周りの漁師がどんなふうに海苔を育てているか徹底的に観察したり。海苔にとって大事な時期は、居ても立ってもいられなくて船で寝泊まりしてたこともある。どうしても海苔の隣で寝たくてさ(笑)。

海苔への愛情がすごい!

海苔を知ってもらうためにはじめた「敬語の勉強」

がむしゃらに海苔漁に打ち込み続けて、22歳の時に海苔の品評会(奉献乾海苔品評会)で準優勝、28歳の時に優勝して、思いっきりやれば結果がついてくることを実感したね。

相澤さんの海苔が世間にも認められ始めたんですね!

だけど、世の中では質の良い海苔より、「安く多く」が求められててさ。問屋に自分の海苔を食べてもらった時に「これからは良い海苔作っても意味ないよ。(安価な)中国、韓国製に結局負けちゃうよ」って言われたの。うまい海苔を追求していきたいのに、それができないって思ったら悔しすぎてさ。辞めたいとも思ったくらい。

おいしさで判断されないって、作り手にとってツラいですね。

ただ、その後に中国の食品偽装問題が明るみになって、国産品が見直されるようになった。日本の海苔を伝える最後のチャンスだと思って必死だったね。海で良いものを作るだけじゃダメだ、陸にあがって(海苔の魅力を)伝える力を身につけないとって

具体的に何をしたんですか?

本を買って敬語の勉強から始めたよ(笑)。

敬語の勉強!

そうそう。今まで海にしかいなかったから、敬語の使い方もろくに分かんない。まず敬語の本を読んで、営業の本を読んで、問屋に行って実践して。で、やっていくうちに、作り手が伝えること自体が大きな付加価値になるってことに気づいた。

相澤さんがいろんなイベントで話している姿を見て「しゃべりが上手いなあ」と感じてたんですけど、努力の結果だったんですね。

津波でついえることのなかった海苔への想い

「伝える」という点では、東日本大震災もひとつのポイントになったと前にお聞きしました。

そうだね。俺、まさにこの辺りの海沿いで被災したの。海底が見えるくらい波が一気に引いて、「来るな」って思ってからは一瞬だった。日頃から「いつか津波がきたらここに逃げよう」って決めてた建物があったから瞬時に逃げて、なんとか命は助かったんだけど。

1日建物の屋根の上にいて、目の前で海苔工場も船も流されて。正直その時はもうダメかもしれない、もう海苔は作れないだろうと思ったよね。

この海が、迫ってきたんですね…。想像もつきません。

「海苔の次、何しよう?」って思ったんだけど、俺にはやっぱり海苔しかないなと思って。ただ海苔を作りたいんじゃない、自分で最高の海苔を作って食べる人に届けたい……そう思って、震災3日後には「また海苔をやろう」って決めてたね。

震災の3日後にはもう…。海苔づくりはすぐに開始できたんですか?

道具も工場も全部流されたから、すぐには再開できなくて。まずは、道具がそれほど必要じゃないワカメの養殖からはじめたね。全国にワカメの養殖に必要な道具を集めに行って、ネットカフェでワカメの養殖を学んで、そこからのスタートだった。

目の前で津波を見た後で、海に出るのは怖くなかったですか?

震災だけじゃなくて、漁に出るときも、いつも覚悟して海に出てるからね。それに震災後の海はキラキラしてすごく綺麗だった。津波も地球にとってはまばたきみたいなもので、海底を綺麗にしてたんだよね。

ずっと海に向き合っているからこその見え方ですね。ワカメ漁をしながら、海苔の準備をされたんですか?

そうだね。2012年には漁師が共同で使える工場が完成したから、震災1年後には再開できたよ。海苔を作れなかったのは1年だけなんだけどさ、海苔を育てる網を久しぶりに触ったとき本当に涙が出そうになったね。

相澤さんにとって、海苔漁師という仕事は本当に大切なものなんですね。震災後に意識が変わったことはありましたか?

言いたいことはなんでも言って、やりたいことは何でもやろうって決めたね。漁が落ち着いた時期に全国を巡って、海苔について俺の想いを伝える活動をしたり。

相澤さんファン、全国にいらっしゃいますもんね!今、食べる人たちに一番伝えたいことや知ってもらいたいことはありますか?

海苔って地球の味そのものだから。まず日本にうまい海苔があることを知ってほしいし、食べられることの幸せに気づいてほしい。だって、自慢じゃん!この日本でこんな美味しい海苔を食べられるなんて。

日本の豊かな自然があってこそですよね。

うん、誇りだよね。俺は来世も海苔漁師になりたいから、日本の海をどうやってみんなと一緒に守っていくか、次の世代に伝えていくかを考えたいと思ってる。

来世まで海苔漁師。しびれます。

今世だけで、満足できるものが作れるほど海苔って簡単じゃないからね!(笑)

海苔、めちゃくちゃ奥深いです。

食べ手と出会い、海苔と向き合う

ちなみに相澤さん、海苔いただいてもいいですか? 実は、おむすび結んで来たんです!

準備いいね〜!よし、食べよう!これが皇室に献上された海苔の「厳選」。

海苔を巻いてっと。いただきます!

美味しい!青海苔の風味がほのかにするし、後からグッと磯の香りが押し寄せてきます。

九州で獲れる有明海苔は、口どけが良くてひと口目に旨味がくるのが特徴なんだけど。東北の海は荒波だから、どちらかというと歯ごたえがしっかりするんだよね。

海苔は産地によって個性がまったく違いますもんね。

そうそう。だから東北のその特徴を活かして、口に入れて5回噛んだ時に一番旨味が爆発するように海苔が細胞の段階から味を設計してる。

そんな綿密に計算を…!たしかに噛んでる途中で一気に香りが広がりました!

ちなみに、おむすびに巻いてしっとりさせるための海苔も作っててさ。それは「厳選」よりも歯ごたえがある海苔を使って、焼き加工をいつもより少し強くすることで海苔の苦味をあえて出す。そうすることでお米の甘みが引き立つの。

海苔だけで食べている時と、おむすびに巻いて時間を置いて食べる時とで違う顔を見せますね!

食べる人にきちんと出会ってると、どんなシーンでどんな風に海苔を楽しんでもらえるかわかるからね。どんな海苔を作ればいいか見えてくるよ。

相澤さんは、食べる人と積極的にお会いされていますが、生産者さんは積極的に食べる人に会いに行くべきたと思われますか?

そうだね。食べる人の想いを知ることも大切。だけど、それだけではダメで。生産者はやっぱりうまいものをつくるために人生をかけるべきだと思ってるから。そういう意味では、生産者が消費者に会いに行ってばかりはできないからさ。香菜ちゃんみたいに食べる人と作る人をつなげてくれる存在は本当にありがたいよ。

嬉しい!活動していて良かったって本当に思えました。これからも作り手の皆さんと、食べる人をつなげていけるように頑張ります!今日はお忙しい中、本当にありがとうございました。

こちらこそ、ありがとう!また今度、みんなで遊びに来てよ!

もちろんです!楽しみにしています!

おわりに

熱い熱い想いを語ってくださった相澤さん。

私たちが感じる“美味しい=美しい味”は、舌の上だけでなく、作り手の姿勢の美しさを知ることで更に感じられるのかもしれません。

最後になりますが、相澤さんをはじめ、全国のかっこいい海苔漁師さんとみなさんをお繋ぎしたくて、7月21日(土)に海苔祭り『海苔祭り』を開催します!

【旅するおむすび屋一周年企画】海苔祭り『のりのりの』を開催!

・詳細・申込はこちら

海苔漁師さんによる海苔ワークショップをはじめ、全国の海苔をつかったフルコースパーティーまで盛りだくさんですので、みなさんぜひ漁師さんに会いにきてくだい!

ライター紹介

菅本香菜
菅本香菜
福岡県北九州市生まれ。クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」で勤める傍ら、「旅するおむすび屋」として全国を巡る。おむすびに目覚めたのは、海苔漁師のお母さんが結んでくれたおむすびを"ご馳走"と思ったことがきっかけ。
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