こんにちは。Retty編集部の岡田です。
僕にはここ数年ずっと成し遂げたかった夢があります。それはズバリ「行きつけのバーを作る」ことです。
行きつけのバーがある大人ってかっこいいですよね。バーテンダーの方と気さくに話したり、珍しい名前のカクテルを頼んだり、周りのお客さんとも仲良くなっちゃったりして。
僕なんてそもそもバー自体に行ったことがほぼないし、頼んだことのあるお酒はなんとなくそれっぽいって理由でジントニックだし・・・。いや、ジントニックが悪いとは言ってないですよ?ジントニックよく飲むし、普通に大好きですけど、ほら!マティーニとか言ってみたいじゃないですか!(偏見)
それにバーって聞くとなんとなく常連さんがいたりして新参者は馴染めなかったり、緊張して雰囲気に飲まれたりしそうっていうネガティブなイメージしかないし、まずどんな風に行きつけにしたいバーを見つければいいかさえ分からず、スタート地点にすら立てていないのがホンネ。
とりあえずハードルが高いです!でももうすぐ30才だし、ワンランク上の大人になりたい!そういう願望だけは強くあります。世の中の同世代男性諸君!そう思わないか?
とは言えバーテンダーの知り合いもいないし、この想いをどうすればいいかわからずにいたときになんと!「昼飲みができるバー」があるという情報が!!!
こりゃ取材に行くしかない!昼飲みならバーとはいえ、なんだかいけそうな気がするし初心者にとってはうってつけ!
てな訳で速攻アポ取ってお邪魔してきましたよ!とにかく、あるがままに聞きたいことを聞いてきたので、最後まで見てくれよなっ!
今回、お邪魔したのは四ツ谷にあるティグラートさん。夕方に訪れたこともありパッと見はカフェっぽい外観の、落ち着いた雰囲気が特徴的なお店でした。
- TIGRATO
-
東京都 千代田区 六番町
カフェ
ーーー本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
ーーーまずは高宮さんご自身について少しお聞きしたいと思います。もともとバーテンダーはどういった経緯ではじめられたんですか?
バーテンダーそのものに興味を持ったのはある映画を見てからです。かっこいいエピソードがあればいいんですが、はじめは応募して受かったからその店で働きはじめたという感じですね。
今とは違い、ネットもそこまで普及していないので、お店の雰囲気などもわからなかったんですが、なんとなくバーテンダーをやるなら銀座や六本木のイメージがあり、そのあたりで探して応募しました。
ーーーなるほど。そういえばこちらのお店は営業時間が23時までですよね?バーとしては早い気がしますが、なぜこの時間帯にしたのかお伺いしたいです。
最近はとても優秀な女性バーテンダーが本当にたくさんいるんですね。でも、女性としてのキャリアを積んでいくことを視野に入れている人も多い。就業時間が夜間だと産後は負担になりますし、復帰できる環境が少ないと感じていました。
あとは昼のみを提唱することで、お客様の間口を広げたかったというのもあります。遅くまでやっているバーはたくさんあるから、そこでは勝負せずに違ったアプローチを試行錯誤した結果、今のお店のシステムになりましたね。
ーーー確かにお昼から飲めるバーってあまりないですし、女性が働きやすい環境はこの時代に重要視される要因ですよね。客層はどんな感じなんですか?
ジェラートも提供しているので、時間帯によっては小さい子供も来ます。
また、最近は働き方も柔軟になっていて、スタバなどのカフェで仕事をしている光景が当たり前になったように思います。カフェではなく、ちょっとお酒をひっかけながら作業したい人達の利用がこれから増えていくであろうことも見越しています。
ーーー無知で申し訳ないのですが、バーとカフェの境界線ってあるんですか?
明確にはないですが、単純に提供している内容の違いが大きいですね。
ただ、海外だとバーでもバリスタを雇っているのが主流で、バリスタがカクテルを作ることが至って当たり前なんです。イタリアだと資格が同じということもあり、バリスタはバーテンダーもできなければプロとは言えません。
なんとなくバーと聞くと会話が生まれ、カフェと聞くと会話が減るイメージがあると思いますが、それは日本だけの独特な風習と言えます。
もともとの起源を辿るとカフェもバーから派生した形態なので、本来のイメージは近いものがあるのかもしれませんね。
ーーーカフェがバーから派生して出来たとは知らなかったです。ではここで少しブレイクして、オススメのカクテルをいただけますか?
かしこまりました。「ジントニック」とかよりも、バーならではのカクテルの方がいいですよね?鰹ダシを使ったカクテルがあるのですが、そちらはいかがでしょうか?
ーーー鰹ダシですか?どんな味なのか想像できないですが、オススメということでしたら是非!
では、少々お待ちください。
レモンベースですが鰹節の香りが深みを増してくれます。また、鰹節と梅干しの成分が化学反応を起こすことで旨みが増します。
オリジナリティのあるカクテルを楽しめることは、バーの醍醐味の一つと言っていいかもしれませんね。
ーーー鰹節がレモンとこんなにマッチするんですね!少し話はそれますが、僕の中でバーといえば「マティーニ」なイメージがあります。映画の中でそういったシーンをよく見かけるからだと思うんですが、なぜマティーニがその立ち位置になったとお考えですか?
マティーニはカクテルの王様と呼ばれていいます。材料や作り方はかなりシンプルで決して難しいものではありません。しかし定番だからこそ作り手によって個性が出るので面白みがあるんです。
お酒としてはかなり強いため、興味本位で飲んでしまうと酔っ払って失敗することもあるので、注意が必要ですけどね。
ただ、それって別に悪いことではなくて、「失敗する」ということもバーの楽しみの一つと言えるのではないでしょうか!僕はそう思います。
ーーー失敗を楽しむって、なんだか大人ですね!では、いよいよ本題に入りますが、バー初心者はまずどういうお店を選べばいいか知りたいです。決め手やアドバイスはありますか?
なんとなくバーのイメージって地下だったり、窓のない雑居ビルの一室だったりすると思うのですが、そういう雰囲気の場所にいきなり入るのは誰でも勇気がいると思います。
なので一階にあるお店や、周りが見渡せるオープンなバーだと入りやすいかもしれません。
でもドキドキするのもバーの醍醐味だと僕は思っています。バーに来る人ってそういうドキドキ感を乗り越えて来ている人が多いので、ある程度感性の似た人が集まってくるんです。それってとてもラッキーなことだし、はじめから共通点や仲良くなれる素質を持っていることだと言えませんか?
ーーードキドキを乗り越えた同志と言えるわけですね。なんだかロマンを感じずには要られません。
バーテンダーも「この人はバーに来ることにあまり慣れていないのかな?」というオーラは感じるので、初めてのお客様がいらした場合は、自ら話しかけたりするなど気を遣うお店が多いと思います。
ーーーとはいえ、今のお話をお伺いしてもまだバーに対するハードルは高いと感じます。僕自身も今、「行きたいけどもうひと押しほしい!」という感情なので。ズバリ「これをしてみれば?」というアイデアはありますか?
そうですね〜。もしかしたら電話をしてみるのがいいかもしれません。そして電話口で「バーに今まで行ったことがない」ということも伝えておくと、バー側も様々な準備をすることができるんです。
例えば、長いカウンターのお店の場合、混雑時には忙しくて「どうしても端っこのお客様と会話することが難しい」ときがあります。でも、事前に電話をいただければ、真ん中の席を用意するなど、初めてのバーで失敗しないための提案を店側も行えます。
ーーー電話ですか!確かに考えたことがなかったです。いきなり入ることに対するハードルが高いはずなのに、いきなり入ること以外の選択肢を見逃していました・・・。
電話口でバーテンダーの声色や雰囲気を事前に知ることで、なんとなくの安心感も得られますしね。一見するとなんのひねりもない古典的な正攻法ですが、もしかするとベストなアプローチかもしれません。
ーーー確かにバーに行くハードルを下げるという意味で、電話を事前にしてみるというのは本当にアリだと思いました。ちなみに実際にバーに言った時に心得ておくべきマナーなどはありますか?
知ったかぶらないことですね。素直にオススメを聞いたり、好みを伝えることが何よりも大切です。
知っているからという理由で「ジントニック」と注文してしまえば、ジントニック以上の体験はできない。バーテンダーによって得意なお酒も様々なので、会話しながら注文していただくことをオススメします。
ーーーな、なるほど。まさに自分自身に言われている気分です(汗)。
そしてこれは基本中の基本ですが、バーはあくまで社交の場であり、ナンパの場ではないことをしっかりと弁えなければなりません。それゆえに、ある程度の距離感が必要になってきます。
我々バーテンダーは横の繋がりが強いので、たくさんの情報交換も行なっています。仲良くなれば色んな情報を提供してくれたりもしますよ。例えば「今度どこどこに行くんだよね」という会話から、「じゃあ、この店行ってみれば?」と、その土地のオススメを紹介してくれたり!
実りのある交流を我々バーテンダー側も求めていますからね。
ーーー社交の場。素敵な言葉ですね。僕も行きつけのバーを見つけるべく、まずは電話してみます(笑)。本日はありがとうございました。
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ということで、わかりましたね!?電話です!電話が大事です!そして知ったかぶらずに初心者であることをバーテンダーの方に告げましょう!
そうすることで、行きつけのバーを見つける手がかりになります。
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<あとがき>
お店へ行くとまずガッシリとした握手で迎えてくれた高宮さん。爽やかで、落ち着きがあって、だけど茶目っ気もあるダンディな大人の男性でした。
取材後にお酒をいただきながら、なんてことない身の上話をしている間も、高宮さんの距離感はとても絶妙で、美味しいお酒とも相まってほろ酔い気分を堪能しちゃいました。
バーという空間の中では無理に話す必要はないし、話したい時に話しかければいい。なんだかそう言われている気すらしましたね。
「これを機に少しでもバーの扉を開く若者が増えれば」と協力してくれた高宮さん。今度はプライベートで来たいと心に決め、再会を誓ってお店を後にしましたとさ。