「白金」といえば、言わずと知れた東京のセレブタウン。「シロガネーゼ」なんて言葉もありますが、なんなんでしょう自分とは縁遠すぎるイメージが……。そもそも、白金ってふだん行く機会すらほとんどないです。
そんな東京を代表する高級住宅街にたたずむお寿司屋さん。そこへ取材に行ってきてくださいと編集部に依頼をいただいた私。
正直、「え、白金高輪……?(回ってない)お寿司屋さん……!?」ってちょこっとビビりましたよね。
けれど、今回取材した「白金オカミハウス」、良い意味で予想を裏切られます。高級住宅街にたたずむ隠れ家的お寿司屋さん、なのに気さくな女将が腕をふるう塩ラーメンが有名!……ハイ、これがいわゆる「なのにメシ」なのです。
というわけで、この上なくこだわりが詰まった一杯の塩ラーメンを求めて行ってまいりました。
老舗のお寿司屋さん、なのに塩ラーメンもおいしいと話題に
西麻布や広尾、そして白金台と場所を変えつつも約40年の歴史を刻んできた「寿司おさむ」。それが名前も新たに「白金オカミハウス」へとリニューアルしたのは2017年12月のこと。
これまでどおり大将の修(おさむ)さんが築地で買い付けた新鮮なネタで寿司を握る一方、平日のランチタイムと日曜・祝日は女将の温子(あつこ)さんがふるまう塩ラーメン専門店に変わるというスタイルで営業しています。
2014年に提供して以来、この塩ラーメン「塩麺」がお客さんの間で「おいしい」と話題に。お寿司と塩ラーメン。意外な組合せではありますが、逆に目新しさもあったのか、「お寿司屋さんなのにラーメンもおいしい」と人気を呼んだことが「なのにメシ」の始まり!
魚のアラ数種類を煮込んで作るこだわりのスープ
さっそく温子さんに自慢の「塩麺」を作っていただきました!
あっさり、なのに濃厚という複雑な味わい深さを持ったスープ。嫌な脂っこさがないのでスルスルと箸が進んでいきます。
魚介系ラーメンを出すお店は他にもありますが、豚骨や鶏骨などと組み合わせてスープにしているお店がほとんど。けれど、こちらの「塩麺」は動物系のだしはいっさい使用していません。日々出る魚のアラ数種類や野菜などでだしを取り、そこに塩ダレとゆず油(どちらも自家製)を加えて作っているのだとか。
この日、だしに使われていた魚のアラは天然鯛、コチ、マコガレイ、穴子、鮭……なんて豪華なの!その日その日で使う魚も異なるので、スープの味や香りにも日によって微妙な差異が出てくるといいます。
ただのあっさりじゃない!食べればパワーが出る「スタミナ麺」
実はこの「塩麺」、温子さんによると“スタミナ麺”が裏コンセプトなのだとか。そう、ただのあっさり系で終わらないところがスゴいんです。
ーーー「スープにショウガやニンニクもけっこう使っていますし、魚からはコラーゲンも出る。年配の方でもさらっと食べられて、さらにパワーもチャージできるんです」
とのこと。たしかにスープを見ると、トロリと光っていてコラーゲンがたっぷり含まれている様子。夏バテしやすい今の季節、これは嬉しい!
そしてそんなスープに浸していただく、ちゅるちゅるっとした喉ごしの細麺やふわっふわの蒸したアナゴ……これまた本当においしい。
この日もただならぬ暑さだったので、お店に来る前はアツアツのラーメンなんて食べられるか心配でしたが、気がつけばなんとスープまで飲み干し完食しちゃってました。
二代目女将が誕生したきっかけとは……?
これだけの塩ラーメンを生み出した温子さん、料理の道も長いのかと思いきや、実はお店でのラーメン作りはまだ4年ほど。前身の「寿司おさむ」を手伝い始めるまでは、まったくちがう業界で働いていたというから驚きです。
しかも「女将さん」と聞くと奥様を想像しますが、温子さんはもともと「寿司おさむ」の常連で、今は修さんの養女なんだとか。先代の女将さんが亡くなり、修さん一人では店を続けるのが難しくなったとき、「それならば私が」とお店を手伝うことを決意したのだそう。
温子さんが前職で悩んでいたとき、修さんと先代の女将さんに助けられたことがあったことから、その恩返しの気持ちが込められているのだといいます。
おつまみだけ、ラーメンだけもOK!気軽に入れるお店です
ザ・昭和の男といった寡黙そうな大将と気さくな女将さん。ふたりのかけあいを見ているとそこに遠慮はなく、本当の親子のよう。
ーーー「もう17年の付き合い。実の父親より修さんの方が本当の父親なんじゃないかと思うほど、馴染んでいるんですよね」
と温子さん。それだけに、お店や修さんの握るお寿司に対する思いも人一倍。そんな温子さんが願うのは
ーーー「ラーメンをきっかけに、もっともっとお寿司のことも知ってほしい。大将が握るお寿司を食べてほしい」
ということ。そう考えると、温子さんの「塩麺」はクッション的存在としてピッタリかも。「白金にあるカウンターのお寿司屋さん」という言葉だけ聞くと、気軽に入るのをためらってしまいそうですが、そこに“絶品の塩ラーメン”もあると知れば、一気にお店へ入りやすくなります。
実際にラーメンを目的に来た人も、お寿司が気に入って常連になっている人もいるそうで、温子さんは
ーーー「これまで寿司がメインだったけど、おつまみだけでもラーメンだけでもOK。食べてもらわないと分からないから、まずは気軽に来てほしい」
と話します。70歳になる修さんをサポートしながら、日々新たな取り組みにも意欲的な温子さん。高級住宅街のお寿司屋さんだからといって身構えず、皆さんもまずは気楽な気持ちでこだわりの「塩麺」を食べに行ってみてくださいね。
- 白金オカミハウス
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- 住 所
- 東京都港区白金1丁目25-23 江塚ビル1F
- 電 話
- 03-3446-2177
- 営業時間
- 11:00〜23:00(L.O.)
ランチ 11:00〜15:00 - 定休日
- 日・祝(※日・祝は塩麺専門店として営業)
- 白金オカミハウス
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東京都 港区 白金
寿司