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ネットでは「低評価」で話題だった。奇跡の再建を果たした浜田山の名店が惜しまれつつも閉店

こんにちは、ライターの蛯原天です。

多くの街には"地元で長年親しまれているお店"というのがありますよね。そんな老舗に普段からよく足を運ぶのですが、今回私が訪れる舞台となるのは閑静な住宅街、杉並区の浜田山にあるこちらのお店です。
その名も『てげ・てげ』

700を超える銘柄の和酒と、おいしい馬刺し、そして沖縄料理が楽しめるお店で、地元の方はもちろんのこと、著名人や口コミで遠方から来る方もいるという浜田山の人気店なんです。

しかし諸事情で42年間続いたこのお店が、来年の1月末に閉店を迎えるらしいんです。
現在、閉店の1月末までの期間中、週替わりで厳選和酒を一杯390円(税抜)にて提供する「ありがとうセール」を開催中ということを聞きつけたので、さっそく行ってきました。

浜田山の人気店は、かつて「汚い・臭い」で有名な居酒屋だった

お店に入ると、そこには見渡す限り大量の酒瓶がずらり。所狭しと並べられています。

ここはお酒を置くとこなの?ってスペースにも酒瓶が

ここはお酒を置くとこなの?ってスペースにも酒瓶が

さすが700以上の銘柄の和酒を取り扱うお店。
焼酎・日本酒・泡盛など有名なものから希少性の高いお酒までひしめき合っています。

メニューもすごい!
事業報告書のような大きなファイルには、お酒と豊富なお食事メニューがまとめられています。
この品数…たくさんのスタッフさんで回しているお店なのだろうと思っていたのですが…。

なんと基本は店長である中島さんがお一人で営業しているとのこと。
さぞかし思い入れのあるお店だったことでしょう。閉店に対する今のお気持ちを伺ってみました。

ーー『てげ・てげ』がオープンした経緯をお伺いできますか?

「元々は父である先代が、大衆居酒屋としてスタートしたお店なんです。売上が落ちてきたので、違う店にしようという経緯で『てげてげ』が誕生しました。しかし、変えたのは名前だけで、やり方を変えなかったので売上は全く伸びなかったんです。それどころか設備はどんどんボロボロになるし、まともなメニューも1つか2つしかないという…。

汚く臭い店として、他のお店を出禁になった方が集うような店でした。400万以上の家賃滞納があり、当時はインターネットの掲示板で連日のように悪評が書かれていたほどです」

ーー現在の綺麗な内装や落ち着いた雰囲気からは、そんなお店だったなんて想像がつかないです…。

「そんなドン底の状況に拍車をかけるように先代が病で倒れ、親孝行をと思い店を継ぐことにしたんです。先代が倒れた翌月に家賃滞納で退去通告が届いたので、昼はサラリーマンをしながら夜は店を開け、加えて先代の介護や借金返済をこなす地獄の日々でした。悪評はなくならないし、まさに沈みゆく船ですよね。逃げるように店員も辞めていき、ついには一人きりになりました。

サラリーマンをやめてこの店一本でスタートしたのは、忘れもしない2011年3月11日のことです。独り立ちをして、最初の仕事は割れた酒瓶の片付けからでした。悪評に加え、震災の影響で飲食店全体が自粛ムードの中、完全なるマイナスからのスタートでした」

少しずつ集めてきた和酒がウリの店作り。今では閉店を知り、涙する常連さんもいるほど

「まずはできる範囲で"汚い・臭い"というイメージを変えていこうと努めました。そもそもお金がないので、ガラリとお店を一新することもできず、1つずつやっていくしかなかった。そして次は何かお店の特徴となるものを作らないと、と思ったんです。革新的なアイデアはなかったものの、お酒が好きだったので、お店の特徴はお酒に関することにしようと決めました。

生活費をつぎ込みながら自分がおいしいと思う焼酎を増やしていくと、いくつかの蔵元さんとも仲良くなったり、プレミアのつくようなお酒を造る蔵元さんがお店に興味を持ち、お客さんとして来てくださるようにもなったんです。徐々にお酒での知名度が増していき、北は北海道、南は沖縄からお客さんがくるようになりました。最終的に、焼酎・日本酒・泡盛・国産ウイスキーなど700以上の日本のお酒がある、珍しいタイプの居酒屋になったんです」

▲390円のラインナップから、泡盛・松藤

▲390円のラインナップから、泡盛・松藤

「借金返済を全て終えた年、先代が亡くなりました。その後、数年が経ち、ようやく昨年に代替わりをしてからの最高益を出すことができました。しかし喜んだのも束の間で、なんと大家さんから"今年この建物を建て替える"からと、立ち退きを言い渡されたんです。

お店を始めた頃からは想像できないですが、閉店になると知って泣いてくださるお客さんもいます。内装も2年ぐらい前に変えたばかりなんですけどね…。しかし、自分の中では一通りの目標は達成したので後悔などはありません。今一番困っているのはこの酒瓶たちをどう処理しようかなってことくらいです(笑)」

お店再建の歴史が刻まれたこのお酒たち、確かに飲まなければもったいない!
390円のラインナップを次々と飲んでいきます。

日本酒はワイングラスに入ってオシャレですね。
豊富な和酒に合わせたい、こだわりの料理もご紹介していきます!

『てげ・てげ』の人気メニューを紹介!

『てげ・てげ』自慢の沖縄料理は、どんな和酒にも合わせやすいいい感じの味付けにしているそう!

▲ゴーヤチャンプルー 555円(税抜)

▲ゴーヤチャンプルー 555円(税抜)

ゴーヤの苦味が少なく優しい味で、コテコテの沖縄料理というよりは、家庭的な和食を食べているようなマイルドさがあります。

▲ラフティ 480円(税抜)

▲ラフティ 480円(税抜)

とろんとろんの大きなラフティ。24時間煮込むことで、スープにお肉の出汁が溶け出しています!

▲馬刺し 399円(税抜)

▲馬刺し 399円(税抜)

焼酎に合わせたい馬刺しも大人気!馬肉の製造元から直接仕入れることで、この価格を実現しているそう。
結構なボリュームなので、良心的なお値段が嬉しい!

リーズナブルなメニューに390円のお酒。お得感あります!

リーズナブルなメニューに390円のお酒。お得感あります!

10年我慢すればお客は必ずついてくる

ーー奇跡的な再建だったと思いますが、一番苦労したことはなんですか?

「元々あまり深く考えない性格なのでね(笑)。傍から見たら苦労だと感じることも、私自身は"こなさなきゃいけないこと"として捉え、とにかくコツコツひたすら実行に移してきました。悪い評判が10年続くと、戻すのにも10年かかります。今でも"あの店はあんな感じ(先代の時代)なんでしょ?"って言われることもありますし。飲食店は2〜3年で6割が潰れるので、粘り強く続けていくことがそもそも難しいんですよね」

ーーそんな中よくお店を続けましたね…。

「真面目に10年やれば、お客は必ずつきます。飲食店を始める人はやはり夢があるし、最初の頃はその理想と現実のギャップにぶつかるのでしょうね。それに絶えきれず、潰れてしまうお店は多いと思います。ただ、どのお店もゼロからのスタートじゃないですか?私はマイナスからのスタートだったので、理想からは縁遠かった。とにかくひたすら地道にやってきたことが良かったのだと思います」

ーーお店を閉じたあとの目標はありますか?

「居酒屋ではなく、まずは自分のやりたいと思っている事業をやっていこうと思っています。もし軌道にのったら、また同じスタイルの居酒屋をやろうかな〜とは思っていますよ。本当は3年後にワイン入れようとか、いろんな計画はあったんですけどね(笑)あ、でも悔いは本当にありませんよ。残りわずかですが、色んなお客さんにウチのお酒を楽しんでもらえたらと思います」

マイナスからのスタートを経てお店を再建したにも関わらず、立ち退きを理由に閉店。
普通の人ならうなだれたくなるような境遇にも、柳のようにしなやかに、そしてひたむきに向き合ってきた中島さんの「人生の宝物」とも言える700種を超える和酒。
1月末の閉店まであと僅かですが、店主の激動の人生を噛み締めながら、ぜひ皆様にも味わっていただきたいです。

ライター紹介

蛯原天
蛯原天
タレント・フリーアナウンサー / 八丈島うまれ、伊豆大島出身。グラビアやバラエティで活動の傍ら、2010年よりインターネットライブメディアの世界へ。出演だけでなく企業のライブ配信の企画構成から技術、広告、執筆まで一手に請け負うマルチプレイヤー。好きな食べ物は赤身肉とチョコレート。
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