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元力士が相撲を解説してくれる居酒屋「闘勝花」 相撲ファンに全力でおすすめしたい!

小結・貴景勝関が13勝2敗と素晴らしい成績を残し、幕内最高優勝を果たした大相撲九州場所。私は5日目、博多に飛んで現地観戦していました。

貴景勝関が好調かつ身体もメンタルも強いことは、前々から感じていましたが、まさか22歳の若さで優勝を成し遂げるとは、想像していませんでした。横綱たちが戻ってくる1月場所での活躍に期待がかかります。

今回は、こんな私のような相撲ファンにはたまらない、元力士が経営する居酒屋「闘勝花」(埼玉県草加市)をご紹介します。

元力士のオーナーが作る料理を食べられる喜びもさることながら、なんといっても大相撲本場所開催中、店でNHKまたはAbemaTVの相撲中継を観戦しながら、独自の解説をしてくれる、というのです。これ、特に相撲ビギナーにとっては最高だと思いませんか?

名物「カレーちゃんこ」を食す

こちらがオーナーの福田雅文さん(元 闘勝花雅文さん)。これまで取材してきた元力士のオーナーの方々は、現在も恰幅の良い方が多かったですが、福田さんはジムで鍛えているマッチョ系。ちょっとタイプが違います。よく見ると二枚目かもしれません。

1998年に19歳で入門し、2001年に22歳で引退した福田さん。最高位は3段目29枚目という、もう少しがんばれば幕下に上がれた地位にいました。

店内を埋め尽くす相撲関連グッズ

店内を埋め尽くす相撲関連グッズ

力士廃業後は12年会社員として働き、6年前に自身のお店をオープン。店内には相撲にまつわるアイテムがあふれています。これを見るだけでも面白いですし、福田さんが今も現役力士たちとのつながりを持っていることがわかります。

ちなみに現在フリーで、彼女募集中だそうです

ちなみに現在フリーで、彼女募集中だそうです

この日は「かにみそ春巻き」(480円・税込)と「カレーちゃんこ」(1人前1200円・税込、2人前2000円・税込)をいただきました。

かにみそを混ぜて焼くだけという春巻きは、白いごはんが欲しくなる美味しさ!

カレーちゃんこにはたっぷりの野菜に、肉団子、鶏肉などボリューム感のある具材が入っています。

普段なかなか食べられないカレーちゃんこは、スパイスが食欲をそそり、この季節にうれしい一品でした。シメにはごはん+チーズを投入して、クリーミーなチーズカレー雑炊をいただきました。麺を選ぶこともできます。

わかりやすい相撲解説を一度聞いてみてほしい!

店に伺ったのは九州場所の9日目。写真は、大翔丸関ー隠岐の海関の取り組みを解説してもらっているときのもの。

相撲では立ち会いのとき、仕切り線(土俵中央付近に引かれた2本の線)のすぐそばに立つか、離れ気味に立つか、人によって違いがあります。これって何でだろう? と思っていました。

福田さんによると、「突き・押しを得意とする大栄翔関に、四つ(組む)を得意とする隠岐の海関。ふたりが得意とする型は違っていて、それぞれが各々の得意な型を作りやすい位置にいる」と言うのです。確かに力士は一人ひとり、勝ちに持っていきやすい型をもっています。

その型が同じ者同士なのか、異なる者同士なのかによって、立ち会いの仕方も変わり、取り組みの時間も長くなったり、逆にすぐに勝負が付いたりするそうです。この1年、独学で相撲を勉強してきた者にとっては、とてもありがたい解説タイムが続きました。

小学校から相撲歴10年「もう相撲はいいや」と思っていた

とても平易な解説をしてくれて、さらに相撲に関するあらゆる疑問に答えてくれる福田さんは、相撲が盛んな長崎県平戸市に生まれ、小学3年生で相撲を始めます。

中学では長崎県の大会で個人優勝を果たすなど、優秀な成績を収めたことから、高校でも相撲部に入部するのは自然な流れだったようです。

進学したのは公立の進学校。しかし、授業には出ずに、部活にだけ参加する日も少なくありませんでした。「そんな生徒、僕くらいでしたよ(苦笑)」と振り返る福田さん。

高校3年まで足掛け10年、相撲を取り続けて「やりきった感」があったため、卒業後は一般企業への就職を考えていた、というのは意外な話です。

人生が思わぬ方向に。大相撲の世界へ進む

「地元のホテルに就職しようとしたんですが、授業への出席日数の少なさが影響したのか、就活がうまくいきませんでした。卒業後はアルバイトをしながら、相撲部に顔を出して後輩に教える日々。そんなときに(相撲部の)監督から、大相撲の世界に入らないかと誘われたんです」

提示されたのが湊部屋と出羽海部屋、田子ノ浦部屋(当時の鳴戸部屋)の3つ。もともと大相撲に入るつもりはなく、各部屋の特徴も知りませんでしたが、関取が7人いて力士の人数も多い出羽海部屋への入門を決めます。

入門後、新弟子たちは「相撲教習所」に通う。その修了証が飾られている

入門後、新弟子たちは「相撲教習所」に通う。その修了証が飾られている

当時の出羽海部屋には、福田さんと同郷である長崎出身の境川親方(部屋付き親方=部屋を持つ親方ではなく、部屋に所属する親方のひとり)がいました。

福田さんが入門前から「入門後の進路」を聞かされていました。それは、境川親方が出羽海部屋から分家独立し、中立部屋(現在の境川部屋の前身)という新しい相撲部屋を創設することに。

それに伴い、福田さん自身は1カ月だけ出羽海部屋に所属し、その後は境川親方に付いて、中立部屋へ移籍することになりました。

「目覚まし時計だけは地元で買ってきなさい」師匠の言葉の意味は

入門後に即部屋を移籍、というのはけっこうなレアケースです。環境も激変します。

長崎出身の元 佐田乃島さん(最高位幕下38、佐々野和穂さん)が1番弟子、福田さんが2番弟子となり、また長崎出身の大鳴戸親方(元 吉の谷関・故人)と共に、中立部屋へ移籍したのでした。

「力士の人数が多く、大所帯だった出羽海部屋と比べて、中立部屋に所属する力士はふたり。親方の2LDKのマンションへ引っ越し、親方と女将さん、お子さんふたり、それから僕たち若い力士ふたりで、一般の家族のような暮らしに変わって、最初は戸惑いもありました」

現在は、2016年秋場所で優勝を果たした大関・豪栄道関、関脇に在位したこともある妙義龍関、幕内上位の佐田の海関など、実力者として知られる関取たちを育ててきた、境川部屋を率いる名師匠、境川親方。そんな親方との今でも忘れられない思い出を福田さんは語ってくれました。

上には怪しいメニュー(?)がずらり。その下には境川部屋の関取たちとの写真が

上には怪しいメニュー(?)がずらり。その下には境川部屋の関取たちとの写真が

「上京する前に『衣食住は用意するから基本的に何もいらない。ただ、目覚まし時計だけは地元で買ってきなさい』と言われました。力士は早寝早起きで、規則正しい生活を送ります。

目覚まし時計は毎日必ず使うものなんですね。『(アラームをセットしたり、消したりするタイミングで)地元のことを思い出すし、送り出してくれた親の顔を忘れずにいられるから』と話していました」

「俺たちの仕事は本場所じゃなく、稽古だ」師匠の大切な教え

この他にも、親方は力士としてだけでなく、人として大事なことを教えてくれた、相撲の師であり、人生の師でもあったと福田さんは振り返ります。

「『俺たちの仕事は本場所じゃなく、稽古だ。職場は稽古場なんだ。だから、稽古場は神聖な場所であって、常にきれいにしておかなければならない』と口を酸っぱくして言われました。

お客様に見られる本場所は、人前での技量審査のようなものだ、とも。それだけ日々の基礎的な稽古をしっかりやることが大事なんだと教えてくれた人でした」

前出の大鳴戸親方も、福田さんを支えてくれた人のひとりでした。中立部屋ができた当時、境川親方が35歳、大鳴戸親方が47歳。ちょうど一回り年の差があるふたりは、福田さんにとって「お兄さんと先生」のようで、どちらも大切な存在だったと言います。

ふたりの師匠がいたから、今の自分がいる

「大鳴戸親方は、僕が四股を踏んでいるときに、『どんな気持ちで四股を踏んでいるんだ?』と聞いてくるような人でした。『地元の父ちゃん、母ちゃんのことを考えながら四股を踏め』と。境川親方とは違う視点でものを見る人だったと思います。

もうひとつ、印象的だったのは、後援者が部屋に来ているときに、彼らの前で『嫌々飯を食うな』と叱られたこと。なかなか食べられなくて、太れなかった僕は、無理矢理食事をしていたんですね。すると『おまえはもう力士をやめちまえ。プロゴルファーになればいいんだ。嫌々飯を食っても力士の体はできない。自分のために食え』と」

一見厳しい言葉のようですが、優しさが含まれていることが伝わります。食の細かった福田さんのために、白米をたくさん食べられるようにと、スーパーで塩昆布を買ってくれたこともあったと言います。

ふたりの師から教わったことは、当時すぐに血肉にはできなかったものの、2〜3年後にふと思い出して、教えの意味を理解することが多々ありました。今の福田さんが持つ情熱や、店を6年続けてきた粘り強さは、師匠たちから授かった教えが濃く影響しているのでしょう。

「小中高は嫌々相撲をとることが多かったけど、大相撲に入ってから相撲が楽しくなったんです」と話す福田さん。だからこそ、引退後も相撲の面白さや魅力を伝えたい、という純粋な思いで活動しています。

本場所中に元力士による生解説を聞きたい方、相撲に関する疑問をぶつけたい方、元力士が作るちゃんこを食べたい方……相撲に関わるあらゆる楽しみ方ができる居酒屋なので、ぜひ一度訪れてみては。

良い意味でぶっ飛んだ、超おしゃべり・サービス精神旺盛なマスターが迎えてくれますよ。

ライター紹介

池田園子
池田園子
フリーの編集者/記者。女性向けメディア「DRESS」編集長。著書に離婚経験後に上梓した『はたらく人の結婚しない生き方』など。プロレスが好きで「DRESSプロレス部」を作りました。
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