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パンの歴史こそヒトの歴史!焼きたてメロンパン、チーズ蒸しパン…平成に起きた「パン」10大ニュース

2019年4月30日をもって「平成」が終わりを迎え、新元号に変わります。

みなさん「平成最後の◯◯」と称してそれぞれに楽しんでいらっしゃるようなので、私も「平成最後の年末」は、この1年だけではなく「平成30年間」をパンに限定して振り返っておくことにしました。

昭和、明治に続く30年という長さですので、記憶に残るパンを10個セレクトして、その頃の食文化と合わせて辿ってみましょう。

その1.ダブルソフト

平成は1989年1月8日、昭和天皇の崩御と共に始まりました。

当時の世相を振り返ると、世は空前の好景気。1986年後半に始まったバブル経済が華やかなりし頃で、夜ごとに高級フレンチや料亭での接待が繰り返されました。

ディズニーランドの開業以来、お客様へのおもてなしの精神として「ホスピタリティー」という言葉が使われはじめ、接客もマインドが重視されるようになっていきます。

そんな接客を是とする雰囲気が提供側、利用者側双方に根付いたのも、好景気を機に高級店を訪れて、その卓越したサービスを享受する機会が増えたからなのかもしれません。

平成最初の年、1989年5月に発売のダブルソフトも、お客様からの「耳まで柔らかい食パンが食べたい」というリクエストに応えて開発されたもの。

従来の商品の1.5倍はあろうかという厚みと、トーストしたパン生地の軽妙な歯応えが好評で、山崎製パンのロングセラーとなっています。

その2.チーズ蒸しパン

バブル景気が続く1990年。メディアでは毎日「グルメ」をテーマに多くの飲食店が紹介され、食にこだわりを持つことがトレンドになります。

個人の外食・中食の消費も増え、飲食業界ではこうしたトレンドの需要を満たす商品開発を目指すようになります。

そんな中で、大ヒットしたのが「チーズ蒸しパン」。もちふわの食感と、チーズの豊かな風味が新しいと話題を集めます。

北海道に本社を持つ日糧製パンの「チーズ蒸しパン」が人気になったのをきっかけに、こぞって各メーカー、個人店が販売を始めました。

きめ細やかな気泡による口どけの良さが、チーズ蒸しパンの魅力のひとつ。今になると、気泡は当時の世相を表したバブルそのものと言えるかもしれません。

その3.ベーグル

チーズ蒸しパンとは対極にある目が詰まって食べ応えのあるパンが、バブル崩壊後の2000年頃に流行し始めます。

特に人気となったのは、ベーグル。元はユダヤ人のパン職人が、馬具の鐙(あぶみ)をモチーフにして作った輪っか型のパンです。

ベーグルはユダヤの戒律に沿ってシンプルな配合で作るパンだったため、脂質・卵・乳製品を使用しないヘルシーフードとしても着目され、ニューヨークで大ヒット。

アメリカナイズされ、バリエーションが豊かになったベーグルが日本に入ってきたのです。

次第に国内で小さめで柔らかいベーグルを売る専門店が登場し、ベーグルだけを食べる“ベーグラー”と称される愛好家に支持されるようになっていきます。

ブームが落ち着いた今も、日本のパン市場に定着しています。また、大手メーカーが常温だけでなく、チルド用のベーグルを展開し、スーパーやコンビニで広く取り扱われています。

その4.ハード系

ベーグルと時を同じくして注目され始めたのが、バゲットなどのフランスパンを中心としたハード系のパン。

外側のバリっと固い皮と、内側のしっとりとした食感のコントラストが魅力です。

ふんわり好みの日本人には外側の固さがなかなか受け入れられませんでしたが、外国人シェフを旗頭に掲げたブランドの日本進出を機にブームが訪れます。

主にフランスからの進出が多く、パリさながらの雰囲気のある店舗づくりもあいまって「カッコイイ」パン、ひとつのファッションとして市場を確立したのです。

2001年オープンの「メゾンカイザー」が外国人シェフ系ブランドだとするならば、2003年の「ヴィロン」はフランスのヴィロン社の扱う最高級小麦粉"レトロドール"が主役の原材料系ブランド。

切り口は様々ながら、ハード系を主体としたオシャレな店舗が次々とオープンし、フランス語でパン屋を意味する「Boulangerie ◯◯」を店名に冠する店が増えたのも、この頃だったのではないでしょうか。

その5.焼きたてメロンパン

ハード系の台頭と共に、街中で見かけるようになったのが「焼きたてメロンパン」。

売れ行きを見ながら生地を追い焼きしていくので、常に焼きたて。

焼き上がると、クッキー生地の甘い香りがオーブンから店いっぱいに広がり、自然と呼ばれてしまう経験をした人も多いのではないでしょうか。

あの香りはズルい、そして窯から出たての状態でアツアツを手にしたら、その場でかぶりつきたくなるのは必然。

原宿のクレープだけでなく、全国の路上でメロンパンを頬張る姿が見られるようになり、それが後に「ワンハンド」をキーワードにしたトレンドへと発展していったのかもしれません。

その6.とろとろクリームパン

メロンパン流行が全国へ広まった頃、2005年に結成されたのが「AKB48」。

テレビやコンサートでしか会えなかった従来のアイドルとは違って、AKB劇場での公演や握手会などで会いに行けるアイドルとして次第に人気を集めていきます。

長引く不況の中、「AKB48」と同じくちょっと頑張れば手が届く幸せとして、ほんの少し贅沢感が味わえるスペシャルなパンやケーキが注目を浴びます。

そのうちのひとつが、「八天堂」のクリームパンでした。

クリームパンが1個200円はちょっとお高いけれど、決して手が届かない値段ではありません。

従来のクリームパンとは違う、薄い生地とたっぷりと入ったとろとろのカスタードクリームの組み合わせが人気となり、駅ナカを中心に首都圏各地で行列をつくりました。

冷蔵ケースでひんやり冷やして販売するスタイルも斬新でした。

クリームパンという日本人にとって馴染みのアイテムであること、5個入る箱で体裁も良いこと、一箱で1,000円というカジュアルな差し入れに丁度いい価格設定。

3つの要素が、自宅に"持ち帰らない"パンを買うという新しい「手土産需要」を生み出し、それが徐々に浸透していきます。

各店で同じようなクリームパンが発売され、冷やして食べるクリームパンとして夏の売り上げ低迷期を乗り切るアイテムとして定着していきます。

その7.ソフトプレッツェル

外食業界では「海外ブランドを日本で展開する」という手法がよく使われます。

例えば、ファミリーレストランのデニーズが代表例です。2000年以降、グルメバーガーやパンケーキなど、各ジャンルで海外ブランドがブームを作っていきます。

そんな海外ブランドのひとつとして日本に輸入されたのが、柔らかくて食べやすいソフトプレッツェルを主力商品とする「アンティアンズ」

池袋に1号店がオープンしたのは2010年。目の前で生地をひも状に伸ばし、くるりとひねって成形して焼き上げるライブ感。そしてなにより、焼きたての温かい状態で提供されることが、来店客の心を掴みました。

独特のプレッツェル型が広く一般に認知され、コンビニの袋パンにも登場したほどでした。

こうした海外ブランドの輸入は、その後も盛んに行われていきます。「ルークス」「リチュエル」など、アパレル業が本業の「ベイクルーズ」が展開したパンブランドは行列になり、日本でもコアなファンを増やし続けています。

こうしたブランド輸入で飲食店運営のノウハウを蓄えた「ベイクルーズ」は、2017年にオリジナルブランドのベーカリー「ブールアンジュ」を立ち上げています。

その8.食パン

2013年4月に発売された、セブン&アイ・ホールディングスの高級食パン「金の食パン」が爆発的にヒット。それをきっかけに食パンブームが起きます。

スーパーで販売される一般的な食パンは、100〜150円前後であったのに対し、「金の食パン」は250円と高価だったにも関わらず、発売から2カ月間で販売累計720万食。

ヒットを受けて高級食パン使用のサンドイッチを販売すると、それもまたヒット。遂には、食パン専門店が次々と登場するまでに。

食パン専門店では、ノースライス2斤売りが主流。これまでとは異なり自由度が高く、食パンの活用度の高さを改めて認識した方も多いのではないでしょうか。

惣菜パンや菓子パンを中心に発展してきた日本のパン文化が、食パンブームをきっかけに変化した気がします。ブームは2018年のいまも継続中で、いまなお新たなお店が誕生しています。

その9.コッペパン

食パンとほぼ同時期に注目され始めたのが、コッペパンでした。

一部の年代には郷愁を誘う懐かしの給食メニューでもあり、一般的には「ワンハンド」「カスタマイズ」といった流行のキーワードに当てはまることもあり、人気に火が付きました。

ブームの牽引役となったのは、岩手県の福田パンの流れをくむ「吉田パン」。冷ましたてに、目の前で好みのフィリングを塗って手渡されたコッペパンは、女性ならがぶっといくのが躊躇されるほどのボリューム。

1個で十二分に満足できてしまうのに、バリエーションの多さに2種、3種とついつい買い求めてしまいます。

2〜3種を購入してもらうことを前提に、ポーションを小さめにしたお店も登場。

「えびすコッペ」や「イアコッペ」がそれに当たります。両者ともにSNS映えを意識して、コッペパンに焼き印を押したり、切り口を上部に向けて断面をキレイに飾ったりしています。

様々な要素が混ざり合って、パンを食べるスタイルが変わってきています。

その10.パネトーネ

平成の30年間で、パン屋さんにクリスマスの季節商品として定着したのが「シュトーレン」。

日本で最初に販売したのは、福岡の老舗洋菓子店である千鳥饅頭本舗で、1969年の出来事だったとされています。

それから半世紀、特にパンブームで勢いのあった最近の30年で「シュトーレン」は市民権を獲得したといっても過言ではありません。

1個100円~200円というパン屋さんのラインナップの中では段違いに単価が高いため、初期には苦戦しましたが、各店が工夫を凝らして商品作りに取り組み、徐々に認知度が高まりました。

その「シュトーレン」に加えて、平成最後のクリスマスシーズンにパン業界が推しているのが「パネトーネ」。

卵とバターを利用したリッチな生地に、ドライフルーツやナッツなどを練り込んでドーム状に焼き上げたイタリアの伝統発酵菓子です。

発祥の地であるイタリアでは、1シーズンの消費量は1人平均2キロとも言われており、互いに贈りあう習慣もある季節の定番アイテム。

日本の「パネトーネ」の草分け的存在の、全国に店舗展開する「ドンク」や王子にある路面店「ロワンモンターニュ」でもギフトボックスに入ったプレゼント仕様も用意されています。

2012年のリニューアルオープン後、ベーカリー部門の躍進華々しい「パレスホテル東京」などのホテルメイドも登場、様々なお店で店頭に並んでいます。

パンと関りを深め、経験値が高まった今の日本なら、瞬く間に広まっていくかもしれません。次の時代に平成から引き継がれていくであろう、注目アイテムです。

ライター紹介

福地寧子
福地寧子
私にとってパンは“命の糧”、1日3食(以上)パンを食べています。年間延べ200軒のパン屋を訪れてまもなく四半世紀。パン屋巡りや食べ歩きの備忘録としてブログ「For Bread Lovers 3」を綴っています。
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