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幼稚園の先生から、なぜ牛飼いに!? 島根で「放牧牛」を育てる女性が、自然に学んだ生き方のヒント

どうも、ライターのくいしんです。

名前の由来はもちろん「食いしん坊」からとっています。

おわかりでしょうか、右下にチラッとうつっているのが僕です。

それはそうと、ここ。

なんだかわかりますか?
 
 
 

草原と……

牛。

です。
 
 
 

ここは島根県大田市の三瓶町(さんべちょう)にある放牧場。

牛というと、ふつうは牛舎の中で育てられているのが一般的ですよね?

でも、ここ三瓶には、このように放牧して牛を育てているご夫婦がいるんだとか。
 
 
 

そして何より……
 

放牧牛は、めちゃくちゃ美味しいらしいんですよ。

 

というわけで、まずはいただいちゃいましょう。

放牧牛。

やってきたのは「山の駅 さんべ」。

こちらに放牧牛を使ったローストビーフ丼があるんです。

こちらをパクり。

あっ、めちゃくちゃ美味しい。

牛肉のうまみが口の中にブワーっと広がります。

調べてみるとこのお肉、経産牛なんです。

経産牛って知ってますか?

簡単に言うと「お産を経た牛」。

最近では「熟女牛」や「熟ビーフ」といった名称でブランド化され、知る人ぞ知る人気の牛肉になっているんです。

こちらの放牧牛を育てているのが、「かわむら牧場」の川村千里(かわむらちさと)さん。

今日は千里さんに聞いたお話をお届けします。

肉のうまさについて聞こうと思っていたら、話はそこに留まらず、日本の緑、草は、大切な資源なんだというお話に。

それらはどのように肉のうまさにつながっているのか。聞いてきました。

放牧牛はなぜ美味しいか

▲旦那さんの川村孝信(かわむらたかのぶ)さん(左)と、千里さん(右)

▲旦那さんの川村孝信(かわむらたかのぶ)さん(左)と、千里さん(右)

「放牧牛のローストビーフ丼、すごく美味しかったです!」

「ありがとうございます。各地でイベントに出店しているんですけど、うちのローストビーフはね、すごく人が並んで、午前中で全部なくなっちゃうんです」

「朝から数時間で品切れに? すごい」

「そうなんですよ。何度か同じイベントに出店していると『あれがまた食べたい』と言って、うちのお店に並んでくれるらしいんです」

「忘れられない味なんですね」

「牛肉が苦手で食べたらお腹が痛くなってしまう人でも、うちのお肉は美味しいと言って食べられる方も多いんです」

「一般的な牛肉とは何が違うんでしょう?」

「ギトギト感が違うんでしょうね」

「つまり、脂肪の量ですか?」

「そうですね。日本の牛肉はすごく柔らかいものが多いでしょう。口の中に入れたときにトロみたいな感じで、溶けますよね。でもそれは、本当の牛肉のうまみじゃないんですよ」

「と、言いますと?」

年齢を重ねた牛のほうが、牛肉としての味わいは濃くなるんです」

「なるほど! それが経産牛の魅力なんですね」

「そうなんです。なんでも霜降り肉がよいとされてきましたけど、最近はだんだん、熟ビーフと呼んだりして、お産した肉のうまさも少しずつ知られてきているようですね。あとは、筋肉が違うんですよ」

「筋肉?」

「そう。赤身のうまみが違うんです。内臓も他とは違います。うちの牛は、しっかり草を食べているんですよ」

▲大自然のなかで育つ三瓶の放牧牛

▲大自然のなかで育つ三瓶の放牧牛

「草をたくさん食べると何が変わるんでしょう?」

牛は草食動物なんです。だから草をいっぱい食べると、胃が丈夫に育ちます

「ほお! 穀物じゃなくて、草が大事なんですね」

「牛の筋肉は草じゃないとできないんです。穀物ではできないんですよ。だから、ビール粕やおからをあげることも、少々はあってもいいんだけど、たくさんやったら味は落ちていきます」

オイルショックで感じた危うさと、自然の中で育つ大切さ

「放牧牛にこだわるのは、何か理由があるんでしょうか」

自分の牛を原っぱに放牧して、馬で見回りたいというのが、夫の子どもの頃からの夢だったんです。私も放牧の牛をはじめて見たときは驚きましたよ。酪農家さんの暮らしを見て、こんな生き方が日本にあるのかと」

「へー!」

「それがちょうど第一次オイルショックの頃です」

「1970年代ですね」

デパートやスーパーから石油製品がなくなっていきました。トイレットペーパーすらなかったんですよ。海外に頼りっきりで大丈夫かな?という思いもあって、山なんかも好きだったから、ここに移り住みました」

「千里さんは、当時は東京にお住まいだったんですよね」

「そうなんです」

「東京の暮らしより今の生活のほうがおもしろいですか?」

「東京も好きでしたよ。便利だし。幼稚園に勤めていたんですけど、仕事も好きだったし。だけど、三瓶の自然に触れる生活は、人間らしくていいなあと感じました

「うんうん」

「ただやっぱりね、どうしたら子どもを守れるかという教育が主流になっていったでしょう」

「どういうことでしょう」

「鉄棒の下に、ケガをしないようにマットを敷いたりね。どうしたら元気な強い子になるかじゃなくて、どうしたら子どもを守れるかという教育。それは、本来持っている人間の力を削ぐような教育ですよ。そこにも疑問を持ったんです」

「なるほど……」

「それがいいのか悪いのかはわからないけれど、私は、自然の中で育てたほうがいいんじゃないかなと思ったんです」

「親だけじゃなくて、自然と一緒に子どもを育てるというような」

「そうなんです。自然と関わり合ったりとか、近所のおじいさんおばあさんとか、いろいろな人と関わりながら育てていったほうがいいんじゃないかなと感じました」

「牛もやっぱり、自然の中で育ったほうがいいですか?」

「牛だっておんなじですよ。私は今でも牛の力に日々、驚かされます。牛舎に入ると病気になることもあるけど、原っぱで生まれた子牛ってあんまり病気しないんですよ」

「強い子に育つんですね」

「どういうことかというと、自分の身体にあった草を選んで食べられるわけじゃないですか。人間が『これだよこれだよ』ってエサを与えるよりも、運動しながら野生のものを食べたほうが元気なんだなって、そういうことを学びました」

たくさんの緑と草は、日本の宝

「日本にはたくさん緑がありますよね。豊かな資源があるんです。だけど、草は敵みたいに扱われるじゃないですか。日本人は勤勉だから綺麗に刈るのを好むんだけど、草はすごい資源なんですよ」

「たしかに雑草とか、道端の草をどんどん刈りますね」

「そうそう。オーストラリアなんかは水が少ないし、植物がそんなに大きくないんだけど、そういうところでも放牧をやっているんです。(草木が少なくても)できないわけじゃないんですよ。日本は豊かな資源があるんだから、もっと畜産に使うべきだと思いますね」

「草は資源と気づくべきだと」

「そう。効率的なことを考えた結果、たくさん刈って、たくさん絞って、その分、お金を稼ぐ畜産に変わってしまいました。でもね、放牧すれば牛も長生きしますし、草はエサになるし、いい循環になる」

「放牧すごい」

「みんな、一生懸命に化石エネルギーと自分の身体を使って、大変な思いをしながら草を刈っています。でも、そんなことする必要はありません。草は宝なんです。三瓶に放牧の文化が残ったのも、雪が降ったり、厳しい条件の農家だったから」

▲冬の三瓶の山。雪が深い

▲冬の三瓶の山。雪が深い

「そういうことなんですね」

「厳しい土地だったから、放牧に頼るしかなかった。それが生き残る道だったんです。もっと牛を信じて、もっと日本の自然がもつ価値を理解していくことが大切です」

「今ある日本の資源にきちんと目を向けることですね」

自然と一緒に生きていると、人間も楽だし、牛も幸せだし、土地も守れるし、できた肉は美味しいんです」

さいごに

川村さんご夫妻が伝えたかったのは、とにもかくにも日本の自然のこと。

足りないものを輸入して補うのではなく、日本に今ある資源のことを見つめて、きちんと使っていくこと。

草の話と言ってしまえばその通りですが、これは、僕らが生きていく上でも大切な教訓なのではないかと感じました。

必要なものをなんでも外に求めるのではなくて、自分の中にある知識や知恵、人とのつながりを使ってサバイブしていくこと。

それが、これからの時代に必要なスキルなのかもしれません。
 

ライター紹介

くいしん
くいしん
1985年、神奈川県小田原市生まれ。フリーの編集・ライター・PR。主にカルチャー/ライフスタイル領域で執筆をしています。「灯台もと暮らし」編集部。高校卒業後、お笑い芸人、レコードショップ店員、音楽雑誌編集者、webディレクター、web編集者を経て、現在。グビ会主宰。
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