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【現地レポ】ベトナムグルメの桃源郷!神奈川には「いちょう団地」と呼ばれる、あまりに現地メシなスポットが存在する

パスポートなしで行ける海外?知られざる多国籍タウン「いちょう団地」

「いちょう団地」って聞いたことありますか?

横浜市と大和市にまたがる神奈川県最大の公営住宅。

そこには、なんと10か国以上の国籍の人々やその家族が住んでいるんです。

そして驚くべきは、この「いちょう団地」でいただけるベトナム料理のレベルの高さ。

もはや、パスポートなしで行けるベトナム旅行。初めて訪れたときの驚きは半端ではありませんでした・・・

今回は、知られざる多国籍タウン「いちょう団地」に潜入、昇天必至のグルメを皆さんにもご案内しましょう。

いちょう団地への行き方

小田急江ノ島線、高座渋谷駅を東口へ出て10分ちょい。

大和市立渋谷中学校を目印に歩いていくと、堺川の向こうに見えてくる巨大な団地群。

緑橋を渡りまっすぐ進むと、そこはもう多国籍タウンです。

多国籍タウンの暮らしを支える「いちょうマート」

まず最初に見えてくるのは「いちょうマート」という商店街。

カンボジアをはじめとした東南アジア食材の「シーワント」や、

中華食材とお菓子のお店「中華菓子 美樹園」にも立ち寄ってみましょう。

皮蛋(ピータン)は1個から買えるので、お散歩のお供にいかが?

団地内表記は6ヶ国語!

さらに進むと、こんな看板が。

そう、「いちょう団地」には日本語が読めない方もいることから、さまざまな案内や注意書きが6か国語で表記されているんです。

他にもあちこちに。

探してみてください。暮らしのリアルが感じられて面白いですよ。

自家製ローストポークの圧倒的美味さ!「金福」

「いちょうマート」を越え、「いちょう団地前」交差点に辿り着くと、右に茶色い瓦が目印の飲食店モールが現れます。

さぁいよいよ、ベトナム現地グルメの登場ですよ。

まずはこちら「金福」

(きんぷく)かと思ったら(かねふく)と読むみたい。そこは日本っぽいんだね・・・

基本は食材店なのですが、奥のキッチンでローストポークやローストダックを作っており、テイクアウトが可能。

分厚いまな板でお母さんがカットしてくれますよ。

予想以上にたっぷりのローストポーク。早速いただいてみましょう。

・・・いやこれ、シャレにならない美味さです!

表面のカリッと感と得も言われぬ香ばしさ、ぜひお土産にすべし!

史上最高クラスのバインミー「banh mi VIET」

「金福」の隣にできた、比較的新しいバインミー屋さん「banh mi VIET」

最近は都内でも人気急上昇中のベトナム式サンドイッチ、楽しみですね。

オススメのバインミ・ティは500円。

オーダーすると、お父さんが何やらお店を出てどっかへ。すると、間もなくさっきの「金福」のお母さんがローストポークを持ってきました。

そう、実はここ「金福」が始めたバインミー屋。

自家製バインミーパンと特製ダレ、ナマスに加え、金福の絶品ポークがサンドされたバインミーは過去最高レベルの美味さ!

表面はパリッと、中はフワッとした独特のパン、タレもアホみたいに旨くて大変なことになっています。

今までのバインミーはなんだったんだ??

チリソースで味変も楽しい!

そうこうしている間にも、また大量のパンが焼きあがりました。地元での人気のほどがうかがえます。

バインミーの他、ベトナムコーヒーやフォーなどのメニューもあり、カフェ利用にも便利。テイクアウトももちろんOKですよ。

本格ベトナム料理と発泡スチロールアート「サイゴン」

同じ建物にもう一軒、「いちょう団地」で一番レストランっぽいレストランがこちら。

何だか独特のオーラを放っていますが、その正体は発泡スチロール。

実はこの店、看板から何まで発泡スチロールをカットしたアートで作られているんです。

店内に入ってみると、壁にメニューがあるんですが全部ベトナム語。

そして全部発泡スチロール・・・

・Bun thit cha 豚肉と揚げ春巻のブン

フォーと違って、つるっとした食感の丸麺ブン。麺が見えないほど具沢山で、揚げ春巻きもゴロゴロ入ってます。

グシャーッと混ぜていただけば、肉の旨味とハーブの香りが麺に絡み最高。

そして、揚げ春巻の圧倒的美味さよ・・・

・Bo xao da lat ダラット風牛肉炒め

黒胡椒がバキッと効いた一皿。

日本にあるベトナム料理店って、ヘルシーを売りにするあまり、味付けが物足りない場合も多いのですが、ここは大丈夫。ビシッとバシッと決めてくれますよ。

この日はいただかなかったのですが、ゴーヤに肉詰めした「苦瓜のシチュー」も超オススメ。

本来なら、ここオンリーでも充分満足できるクオリティ。

けれど恐るべきは「いちょう団地」。

この道の先に"ファイナルウエポン"と呼ぶべきお店が待機しているんです・・・・・

彷徨える者たちよ、ここがベトナムグルメの最終到達地だ!「タンハー」

「サイゴン」から団地の金網沿いに数分歩くと見えてくる、小さな小屋。

なんだか小さな食材店のようですが・・・

脇の扉に白いテープでこっそり「ベトナム料理」と書かれています。

けれど、この扉を開けちゃいけません。(厨房です)

堂々と正面から入りましょう。

外からは想像できないほどの広々空間。

ありとあらゆるベトナム食材が並ぶ様は、まるでスーパーマーケット。

そして、お店の真ん中にはズドーンとデカいテーブル。現地の皆さんがわいわい寛いでいるんです。

此処こそが「いちょう団地」最大の楽園。

一度入るとハマってしまい、抜け出すことができないある種の魔窟。

まず驚くのはメニューの分厚さ。

日本ではここでしか食べられないベトナム料理がたくさん!

メニューの説明を読むだけでも楽しすぎます。『基本的に日本人は頼まない方がいいかも?』とか、『日本語はない』とか(笑)。

載っているメニューだけで100種を超えるのですが、ここにある食材ならなんでも作れそう。

ビールは申告制、自分で栓を抜いてテーブルに持ってきます。お値段は、もちろんスーパーマーケット価格で嬉しすぎ。

基本的にはメニューを見て何にするか迷うのが楽しいこのお店ですが、オススメの一部をご紹介してみましょう。

・バップ サオ

ビールを飲むなら絶対に頼んでほしいのがこれ!

トウモロコシのバター炒めです。

え?意外に普通?いやいや、どうぞ食べてみてください。謎の美味さですから。

桜エビとフライドオニオンの香ばしさもさることながら、決め手は使っているトウモロコシ。

実はトウモロコシにも米と同じように「もち」と「うるち」があり、ここでは「もち」トウモロコシを使っているんです。他店ではこうはいきませんぞ。

・ブンマム(さつま揚げ入り)

メニューに『香りが強いマニアック料理です。気をつけてください』とあります。

麺はツルッツルのブン。スープからは発酵系の旨味がめっちゃ溢れ出してます。

ハマる人はどハマりする味!チリペーストを加えると、さらに複雑な旨辛となり最高。

・コム スオン

珍しい料理が目白押しの当店、けれどリピ率No.1はこれかも。

豚のスペアリブご飯なのですが、ご飯抜きでオーダー可能。

齧るたびジュッとくる脂に濃厚なスパイス。ちょっと尋常じゃないウマさですね。

・バインミー

実はこちらのバインミーも絶品!日本一という人もいるほど。

「banh mi VIET」との食べ比べ頂上対決も楽しいですよ。

ベトナム料理マニアの中でも「ここが最終到達地」と人気のこのお店。

1日中いても楽しめます。ぜひ異国感に溶け込んでみてください。

多国籍タウン「いちょう団地」の歴史

しかしなぜ、これほどの多国籍タウンが生まれたのでしょう?

そしてなぜ、ベトナム料理店だけがこれほど発展したのでしょう?

「いちょう団地」が建てられたのは1971(昭和46)年。

以後、改築や増築を繰り返して今に至るのですが、これほどまでに外国人が多く住むようになった背景には、大和市に難民受け入れの施設があったことが大きく関係しているようです。

1975年に南ベトナム共和国が崩壊し、華僑系のベトナム・ラオス・カンボジア人が大量に難民となった「ボートピープル問題」

日本政府はそうした難民を受け入れるため、1979年大和市に「大和定住促進センター」を開設。
日本語教育や就職斡旋をおこなってきました。

現在センターは閉所していますが「いちょう団地」にベトナム料理店やカンボジア食材店が多くあるのは、最初にやってきたのがベトナム・ラオス・カンボジアからの難民たちだったからなのでしょう。

とすれば、「いちょう団地」で様々な国の方々が共存するようになってもう30年。

すでに廃校になっている「いちょう小学校」のコンクリート塀には、各国にルーツを持つ子供たちが描いたであろう絵が残っています。
 

ベトナム
 
 

カンボジア
 
 

ラオス
 
 

ブラジル
 
 

そして日本

 

『たくさんの思い出 ありがとう ここが私達のふるさと♡』
 
 

・・・泣ける。とめどなく泣けるじゃないですか。

料理を食べると人が見えてくる、文化が見えてくる、歴史が見えてくる。

私が「カレー」を足掛かりに日本各地、世界各地の料理を食べてきて、一番おもしろいと感じるのはこのことなんですね。

「いちょう団地」は40年の歴史の中で培われてきた、いわば1つの文化圏。

訪れていただく際にもどうか、そこで暮らす皆さんに敬意を払い、こちらの価値観を押し付けないようにしてくださいね。それこそが、文化交流なのですから。

 

ライター紹介

カレー細胞(H.Matsu)
カレー細胞(H.Matsu)
3000軒のカレー屋を食べ歩いた通称「カレー細胞」。生まれついてのスパイスレーダーでカレーはもちろんのこと、食のトレンドウォッチャーとしても分析力・発信力は折り紙付き。 カレー専門のブログ「カレー細胞-TheCurryCell-」を運営。
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