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歴史好きがさわやかのハンバーグの凄さを『項羽と劉邦』に例えて解説する。

僕はインターネットをさまよい、メシの情報を収集することに無常の喜びを感じるタイプの人間です。

先日、静岡について調べていたときに、圧倒的にポジティブな意見をみるのが「さわやか」のハンバーグだった。

さわやかを静岡で人気のローカルレストランから全国的に有名にしたのは、諸説あるがインターネット有名人であるヨッピーさんの功績が大きいという。

彼が紹介した途端、御殿場のさわやかは、平日だろうが常時3時間以上待たないと食べられないという異常な事態へと突入した。

これがきっかけで、一気にさわやかの知名度は天空へと駆け抜けることとなった。

こうして全国区レベルの知名度になったさわやかだが、地域限定主義を徹底しており、今なお静岡エリアの近辺でしか食べることができない。

公式サイトのQ&Aにみる「さわやかの信念」

さわやかの牛肉にかけるこだわりはちょっと異常だ。

今でも使用する肉は、オーストラリア産の厳選した地区で育てられた牛を、毎日製造・試食し、基準をクリアしたのものをチルドで配送しているという。

今年で創業43年のさわやかは、以前から何度も何度も全国展開を打診されたようだが、そのたびに「自分たちの目に見えないところで商売をして、お客様に基準以下の品質を提供してはならぬ」と断り続けているそうだ。

正直、儲けや名声だけを考えれば、いくらでも前に突き進めるだろう。それなのに、ここまで静岡限定にこだわるのは、ちょっと普通じゃない。

この異常さは公式サイトにも垣間見える。その一部を以下に抜粋しよう。

以下は、さわやかの公式サイトに置かれたQ&Aコーナーを一部抜粋したものである。

Q:げんこつハンバーグを自宅で食べたいのですが、販売していますか?
A:さわやかのハンバーグやステーキ・ソース・ドレッシングは、通販含め外販を一切しておりません。お店でも購入できません。ご了承下さい。


Q:げんこつ・おにぎりハンバーグをカットしないで、丸いまま提供してもらえますか?
A:ご要望にお応えできず、申し訳ございません(以下略)


Q:げんこつハンバーグのグラム数を増やしてもらいたい
A:(中略)「おいしい基準」での提供が困難となるため、ご要望にお応えできません。申し訳ございません。


<出典:https://www.genkotsu-hb.com/faq/

「お客様は神様だろ!」という意見を真っ向からぶった切るような爽快感ある回答。

お客様になんとしても一番旨いものを提供したいという信念を感じる素晴らしい名文と言えよう。そこに惹かれる憧れるぅ。

というわけで、年末にかけて静岡に行き、僕もさわやかのハンバーグを食べてきた。

そこで驚愕の事実に突き当たったので、それを書いていくことにしよう。

さわやかのサイドメニュー“は”旨すぎる

事前にいろいろ情報収集をしたところ、どうもさわやかはハンバーグだけでなく、サイドメニューのカレーやビビンバ、付け合せのパンがむちゃくちゃに旨いという。

それなら頼まない選択肢はなかろう。というわけで、大人3人で出かけ、ハンバーグ×3、ビビンバ、カレー、パン・ライスを頼み、期待に胸を膨らませ待つことにした。

まず出てきたパンを持ち、全員が驚愕した。

Mayumi Yoshidaさんの投稿より引用

Mayumi Yoshidaさんの投稿より引用

画像引用元:https://retty.me/area/PRE22/ARE79/SUB7901/100001196505/4116636/

ヤバイ!さわやかのパンがヤバイ!

僕はパンを持ち上げた瞬間、笑ってしまった。赤ちゃんのほっぺたと見紛うほどのフワフワのパンを持ち、ここがただのファミレスではないことを思い知らされた。

なんじゃこのパン、マジでふわっふわやん。

そして、ビビンバ、カレーを順々に食した我々は、そのあまりの旨さに唸ることとなる。

パンだけではなく、ビビンバもカレーもそんじょそこらのお店なんかよりも遥かに旨いのだ。

ぶっちゃけ、これだけでも都内で全然商売やれるレベル。

「おいおいおいおい。ここまでサイドメニューが旨いと、ハンバーグ食ったら俺らは昇天しちまうんじゃないか」

皆がそう期待を胸に抱いた所で、ついに本命のハンバーグがやってきた。

さやわかの本質は「ラーメン二郎」である

そうして、お店の人が丁寧に焼いてくれた250gの大ぶりのハンバーグを、お店特製のオニオンソースにつけて口にした途端、この感想が漏れ出た。

「えっ・・・? さわやかのハンバーグ、普通じゃね?」

僕は正直、自分の味覚がおかしいのかと思い、同行者にも確認した。しかし、みな意見は同じであった。

その場でTwitterでつぶやき、複数人に聞いたのだが、みな意見は同じであった。

「さわやかのハンバーグ? まあ美味しいっちゃ美味しいけど、感動するほどでは・・・」

もちろん、僕も今まで日本全国の美味しいと評判のモノを散々食べ歩いてきたから、美味しいと大絶賛されているものが、めちゃくちゃ普通の場合だってあることは重々承知している。

しかしである。あんなにも旨いサイドメニューを出しているさわやかが、押しであるハンバーグでこんな失態をやらかすことがあるのだろうか? いや、ない。

これはきっと、僕がさわやかの本質を理解していないからに決まっている。

そう思い、ヤケになって一口大に切らずに大ぶりのハンバーグを口にかっこんでモグモグした。

Ichiro Furusawaさんの投稿より引用

Ichiro Furusawaさんの投稿より引用

画像引用元:https://retty.me/area/PRE22/ARE79/SUB7901/100001196505/32093189/

その時!ようやくさわやかハンバーグの真の姿が、僕の目の前に現れたのである。

「こっ、これは!!!ら、ラーメン二郎やないか!!!」
 

中毒メシは旨いメシよりエライ

おそらくほとんどの読者が置いてきぼり状態だと思う。詳しく解説しよう。

ラーメン二郎という、沼のようなメシがある。この二郎、個人的には決して旨い食べ物ではないと思っている。

ある人はブ◯のエサと揶揄するような二郎系ラーメンだけど、恐ろしいことに3回ぐらい食べると、ハマる人は見事に中毒者のごとくハマるのだ。

山盛りの野菜。ぶっとい麺。しょっぱくて脂っこいスープ。そして、大ぶりの煮豚。これらが組み合わさることで、人は驚異的な依存症状態に陥ることとなる。

似たようなメシは他にもいろいろある。

横浜家系ラーメン。CoCo壱番屋のカレー。吉野家の牛丼。マックのフライドポテト。

これらは、旨いとかまずいではなく、時々ムショーに食べたくなるタイプのメシだ。

僕はこの手のメシを「中毒メシ」と呼んでいるのだけど、この中毒メシ、下手な旨いメシよりも遥かに作り出すのが難しい。

美味しさはある意味では方程式だ。最高の食材を最高の方法で調理し、美味しい料理を作る。それはエレガントな解法である。

一方で、中毒メシは優等生的な考えでは絶対に生まれることがない。実物として眼の前に出されて、食べて、ハマってみて、初めてその凄さがわかるのだ。

さて、ではなぜ人はラーメン二郎にハマるのだろうか? 

僕が思うに、そのひとつの要因として口の中いっぱいに食べ物を頬張り、モグモグすることへの快感がある。

たっぷりのコシのある麺と野菜を口いっぱいに入れ、口の中でモグモグすると、不思議なことに妙な満足感が生まれる。ラーメンや丼物も、お行儀よく食べるより、口いっぱいに含んで食べるほうがはるかに旨い。

一部の専門家にいわせると、これは「上口蓋の魔力」というらしく、人は上口蓋(口の天井の硬くてツルツルした部分。舐めるとくすぐったい)を刺激されると性的快感に近いものを覚えるのだという。

ラーメン二郎は、その圧倒的なボリュームゆえ、口いっぱいに食材を頬張ることがある意味では不可避なメニューである。つまり、あの二郎の中毒性と、モゴモゴによる上口蓋の刺激はかなりの関連性があるとみている。

さて表題に書いたさわやかのハンバーグだけど、これは明らかに二郎系の中毒メシである。

さわやかのハンバーグはオーストラリア産の牛肉で作られており、実は多くの日本で作られるハンバーグと違い、非常に硬い。

ファミレスや洋食屋で出てくるハンバーグは、やわらかくて旨いは旨いのだが、ナイフで切るとボロボロと細かくなりがち。

それに対して、さわやかのハンバーグは逆に細かく切ることが難しく、それゆえに口いっぱいに詰め込んでモゴモゴするハメになる。

こうして人は、モゴモゴの魅力に無意識のうちに目覚め、まるで中毒者のようにさわやかにハマるのだ。これが、さわやかのハンバーグを3時間並んででも食べたくなる秘密である。

さわやかのハンバーグは、まるで天下人・劉邦である

これを読んで、どう思うかは人それぞれに任せるが、僕はこの事実に気づいてから、さわやかは本当に凄いと思った。

僕がすごく好きな中国の逸話のひとつに「将の将」という言葉がある。これは中国を舞台とする逸話『項羽と劉邦』に出てくる話だ。

ある時、劉邦が家来の韓信に問うた。


「そちは数百万の将兵を一糸の乱れもなく統率して百戦百勝するが、わしはどれくらいの兵を率いて統率できると思うか?」


韓信はこう答えた。


「陛下は将軍の力量で言えば、1000人の隊長がせいぜいでしょう」


劉邦はムッとし、韓信にこう問うた。


「なら主は何人の兵を扱えるのか?」


韓信はこう答えた。


「私は兵なら10万でも100万でも、多ければ多いほど自在に扱えます」


「しかし、私は将を数人しか扱えませんが、陛下は数十、数百の将を従えることができます」


「陛下は"将の将"たる器なのです。だから陛下のもとには、力ある将軍が集うのです。私は兵隊は束ねられますが、将軍を従えることはできないのです」


こう答え、劉邦は韓信の答えに納得したという。


(出典:横山光輝『項羽と劉邦』)

 

つまり、さわやかのハンバーグは「将の将」なのだ。

Ryuichi Shimodeさんの投稿より引用

Ryuichi Shimodeさんの投稿より引用

画像引用元:https://retty.me/area/PRE22/ARE335/SUB33503/100000034448/26940562/

確かに単純な旨さでいえば、それこそ、さわやかのカレーやビビンバはハンバーグを超える。

しかしだ。そのカレーやハンバーグなどのサイドメニューを従えるには、ただの将軍では駄目なのだ。「将の将」たるハンバーグでないと、その役目は果たせない。

さわやかのハンバーグは本当に凄い。僕はこの中毒メシを心の底から尊敬している。

皆様もぜひ、静岡に行き、さわやかのハンバーグを食べてみて欲しい。そして「将の将」たる器を感じとってみて欲しい。

これこそ正に、正真正銘のキングオブ中毒メシなのである。

 

ライター紹介

高須賀
高須賀
平日は医者をやりつつ、余暇で美味しいものを食べることを生きがいにするものです。食事を単なるエンターテイメントから文化レベルに高める為、食べ手の皆様と共に成長できるヒントとなるお役立ち情報をお伝えできればと思っております。好きな食べ物は寿司とチャーハンとトンカツです。
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