季節の鮨の魅力に加え、門外不出であろう寿司屋のつまみの作り方を、端から端まで教えていただくこの企画。
目、口、頭で鮨を愛でる、深淵なる鮨の海へぜひ一緒に潜っていただきたい。
シャリとタネの温度は1℃単位で調整
今回は、狂気のこだわりがひかる「鮨 なんば日比谷」。
酢飯とタネの温度を1℃単位で調整し、その温度をメニューに表記するという革新を起こした。
「鮪を温度を変えて食べた時に、味の違いに愕然としました。一番美味しい温度を追求するうちに、この形にたどり着きました」
そう店主の難波英史さんは語る。
まず酢飯へのこだわりが尋常ではない。
粘りなく、米粒が立った酢飯のために、なんと1回のコースの中で2度米を炊き、酢飯を作るのだ。
鮪に合わせる2回目の酢飯はお米が炊き上がってから、酢を入れて切るまで15分、そして提供するまでの時間も15分ジャストと秒単位。
酢飯が暖かく、酢の酸味が飛びすぎない酢飯を合わせるのだ。
鮪は専門の仲卸「樋長」に、身と脂に味があるものを選び抜いてもらう。
この日は戸井産の215kg。豊洲に何本あるかという、希少な大きいサイズで、最高品質の鮪だ。
その鮪のトロは24度とほぼ室温に戻し、40度の熱い酢飯を合わせる。
練乳のように、ほのかに甘みのある脂が、酢飯の高い温度で官能的に溶けていく。
冬に脂がのる真鯖も、仕事で更に輝きを放っていた。
塩で旨味を濃縮し、酢で締めることで、脂の旨味を引き立てるのは定石。
アニサキス対策として、冷凍のタイミングを変えることで、身への酢の入りを微細に調整できるという。
そうして締められた鯖はブランマンジェのよう。滑らかでクリーミーな極上の酢締めだ。
求めるのは写真映えより、口に映えること。
つまみでは、キンキに心奪われた。
なんば色に染まった白い煮付け。
脂の乗った北海道のキンキを、白醤油とみりんでさっと炊く。
最後に刻んだあさつきをさっと散らす。
紅いキンキの皮目があさつきの緑の中で、実に目に華やか。
上品な白醤油はキンキの香りを活かし、皮目のゼラチン質が煮汁の中でぷりっと弾ける。
煮付けの新境地が見えた。
伝統を壊すことなく、現代の技術をもって美味を追求する。
求めるのは写真映えではなく、口に映えること。
それが「なんば」の鮨。
今、江戸前寿司の最前線がここにある。
「キンキの白煮付け」レシピ紹介
〜材料〜
キンキ 1尾
日本酒 100ml
みりん 大さじ3程度
白醤油 大さじ2程度
昆布 ひとかけ 5cm角
あさつき 適量
①キンキの下処理
1.キンキは3枚におろし、塩を身に当てる。
2.しばらく置き、身から水分が出てきたら、水で洗い、しっかりと水分をとる。(臭み抜きの工程)
②キンキの骨から出汁をとる
1.三枚に開いたキンキの中骨と頭に熱湯をかけて、表面のぬめりや汚れを落とす。
2.掃除した骨や頭を、ひとかけの昆布と共に水に入れ、コトコト沸くくらいの火加減で出汁をとる。(綺麗な旨味が出たら良いので、何時間も火にかける必要はない)
③出汁でキンキの身を炊く
1.上でとったキンキの出汁100mlに、日本酒を100ml、白醤油を大さじ2杯弱、みりんを大さじ3ほど入れて、沸騰させて味をみる。
味が足りなければ、白醤油とみりんを少しずつ足して調整する。(醤油の風味は穏やかながらも、程よい塩気と甘みがついているように)
2.三枚におろして下処理をしたキンキの切り身を上の出汁に入れ、10分ほど炊く。 軽く沸いているくらいの火加減。 身に火が入って、味が軽く馴染む程度。長くは煮ない。
Point.長く煮すぎないことで、うまみと脂を身に流出させない。
3.みじん切りにしたあさつきを煮汁にさっと散らす。
▼「キンキの白煮付け」の完成。
- 鮨 なんば
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東京都 千代田区 有楽町
寿司