「丼丸」って聞いたことありますか?
私はプライベートでよく利用するんですが、実は知らない人が結構いるという事実を最近知って驚きました。
「嘘でしょ?」と。
こちらが丼丸のメニューなんですが、いかがでしょう?
豊富な種類の海鮮丼が、一律500円(税抜)で食べられる海鮮丼の専門店で、全国に400店舗以上も存在してしているんです。ふとした時に見かけるので、割と有名だと思ってたんですが…?
もしかしたら、気付かずに利用したことがある人は多いかもしれませんね。なぜなら丼丸は一般的なフランチャイズとは異なる特殊な業態だから。
私も知らなかったんですが、メニューの種類も店によって全然違うし、とにかく自由度が高いらしいんですよね。
丼丸ファンとしては、もっと丼丸のことを知りたいし、広めたい。ということで、さっそく本社に行って話を聞いてきました!
下町のお寿司屋さんが、今の海鮮丼ブームを作った
丼丸の本社があるのは葛飾区・四ツ木。全国に400店舗も広まった海鮮丼の専門店を従えている会社って…と構えていたのですが、着いてみるとそこはいい意味でこじんまりとしたオフィス。
中村:「弊社は元々、昭和54年に葛飾区で創業した寿司屋なんです。当時から握りの種類は多く、丼や太巻きもかなりの種類をやっていました。
今ではどこも色んな丼をやるようになりましたけど、昔は海鮮系の丼と言えば、チラシか鉄火丼くらいしかなかったんです。
そこで目をつけたのが「海鮮丼」。専門店の丼丸1号店をオープンし、一気に全国展開したことで、海鮮丼そのものがメジャーになっていったというわけです」
大島:「寿司の業態が思ったように軌道に乗らなかったとき、一人の女性と運命的に出会ったんです。
彼女、魚は捌けたんですが、握りはできなかったんです。でも、海鮮丼は具を乗せるだけじゃない?だから「丼の専門店をやってみるのはどうか?」と提案した。
今、振り返ると単なる思い付きでしたが、結果的にそれがハマったみたいですね(笑)」
「少しずつ直営を増やしていったところ、問い合わせが増えたので、7年前から「のれん加盟店」という形で募集を開始しました。
丼丸は、一般的なフランチャイズ運営とは違い、屋号のみを共有した集合体なんです。
マニュアルや制約もないし、シャリの量、メニュー数やサイドメニューも独自で考える事ができます。なので良くも悪くも、店舗によって味や素材は違う(笑)
メニューは一番多いところだと120種類以上の店舗もあります。また、これから2種類のみで勝負する店舗もオープン予定なんです」
「喜びを共有する」ために、各店舗の運営は放任する
大島:「オーナーさんのほとんどは飲食業界の未経験者です。なのでみなさんには、「職人にならないでください。商売人になってください」と必ず伝えています。
職人は頭が硬いから…それではなかなか売れないんですよ。それを証明するように、丼丸のメニューは素人さんが考えたメニューも多いんですが、そういうのが意外と流行る。
うちの会社の理念は「喜びの共有」なんです。そのかわり全て自己責任。
全てのオーナーさんには自分のお店に誇りを持ち、独自のメニューやサービスを考えて、お客さんと喜びを共有してもらいたいと考えているわけなんです」
「500円という値段も、先代の頃から変わらないんで大変ですよ(笑)
人気メニューの中には、原価の高いものが多いです。海鮮丼や、どんまる丼、うおがし丼などは特に利益率は悪い。
でも、値上げだけは絶対にしません。むしろ毎月0のつく日は消費税を割引するサービスも実施している店舗が多くあります。
ワンコインぽっきり!ここまでするからお客さんも喜んでくれるわけなんですね」
中村:「メニュー数を減らせばいいじゃないか、という声もたくさんいただきますが、単純にメニューが多いって嬉しいですよね。選ぶ楽しみがあるというか。
また、嬉しいことにギリギリの価格で挑戦していると、協力したいと言ってくれる業者さんが現れたりするんです。
いろんな人の支えや協力のおかげで、高級なくじらを使った丼も500円で食べられるわけなんですよね」
大島:「儲かる儲からないは二の次なんだよね。直営の丼丸だと、原価率が60%を超えている。一般的な飲食店だったらありえないことですよね?
利益が少なくてもいいから、とにかくお客さんに満足してもらえるものを提供したい思いが根本にあるんです。
この小さな事務所見たら分かるでしょ?私の履いてるジーンズも、元々ダメージジーンズだったわけじゃないからね。履きすぎてやぶれちゃったんだよ(笑)
そういえば、一号店の女性オーナーはまだ働いてるから、行ってみたら?強烈なキャラしてるけど、会えば色々聞けるかも。電話しとくからさ」
ってことで丼丸1号店に行ってみた!
あれよあれよと話が進み、押上にある丼丸の1号店に向かうことになりました。
今では押上と言うと"東京スカイツリー"ですが、スカイツリーができるずっと前から、お店を支えてきた女性オーナーがいるとのこと。
すっかり都会的になった押上の地に響く快活な「いらっしゃいませ!」の声。小粋なねじり鉢巻の彼女は、この地域の住民にとって名物的存在なんだとか。
マリロウ:「ここは元々私のブティックがあったのよ。でも売上が伸びなくてさ〜。
子どもも育てなきゃいけないから、夜は居酒屋でも働きながら魚の捌き方を教わったりしたのよ。
でも夜中まで働くのは現実的じゃないと思っていたときに丼丸の会長に出会って。ウチでお店やってみたら?と、声をかけられたことがキッカケ」
「このバラ丼はね、私が考えた商品なんだよ!今じゃ全国の店でも人気だけどね。
刺し身ってひとつひとつが大きいでしょ?具を小さくして、味も前もってつけておいたら、女の人も食べやすくなるんじゃないかなと思ったわけさ。
しっかり味がついてるから、私のお店では「まず醤油をかけずに食べてみて」って言ってるの。醤油かける手間もないほうがいいもんね?そうでしょ?」
「ブティック、ホテルの清掃、居酒屋とか色々やってきたけど、いつもお客さんとすぐ喧嘩しちゃうんだよね〜(笑)。でもここはピタッときたの。
小さい頃って、みんなオママゴトするでしょ?あんな感じでワクワクするし、楽しみながらやってる(笑)
立ち仕事で腰も痛いし、もう50超えてるし疲れる。でも昔からの常連さんがたくさんいるからさ。
過去に体調を崩してお店に立てなかった時期があるんだけど、その時は売り上げがだいぶ落ちた。みんな私に会えなくなったらパタって来なくなったんだもん。薄情だよね〜(笑)
その時、思った。"潰れる時は1日でお店は潰れる"って。お店を続けていくことってこんなに難しいんだな、って」
「でも今はバトンタッチするために、娘の旦那に色々教えてる途中なの。私のトレーニングは厳しいよ(笑)
とにかくね、私はみんなに幸せになってほしいわけさ!みんなが「おいしい」って言って、食べてくれる顔を見たらそれだけで幸せな気持ちになれる。
大島会長も言ってたでしょ?「喜びを共有しよう」って!その思いがなきゃこんな大変なこと何年もやってないよ〜。そうでしょ?」
ひたすら明るくて、ずっと大声で元気に話してくれたマリロウさん。辛い過去もあっただろうけど、彼女の底抜けのポジティブ思考に、つられて笑ってしまう場面がたくさんありました。
あ〜また会いにここへ来たい。元気がなくなったときは、この人の声を聞きに来たい。楽しいことがあったときも報告しに来たい。そう思えるマリロウさんとの出会いは、私の心を温めてくれさえしたんです。
大島会長、中村社長、そしてマリロウさん。3人に共通していたのは、お客さんの喜んだ顔が大好きだということ。そのために500円という安さで、最高においしい海鮮丼を提供し続けている。
私にとって丼丸の海鮮丼は「ただ安くておいしい」だけの海鮮丼ではなくなりました。この取材で知った丼丸の熱い想いと共に、これからもファンであり続けたいと思います。
そして積極的に丼丸魂を布教していきたい、とも。
- 丼丸 押上店
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東京都 墨田区 業平
弁当屋
ライター紹介
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蛯原天
- タレント・フリーアナウンサー / 八丈島うまれ、伊豆大島出身。グラビアやバラエティで活動の傍ら、2010年よりインターネットライブメディアの世界へ。出演だけでなく企業のライブ配信の企画構成から技術、広告、執筆まで一手に請け負うマルチプレイヤー。好きな食べ物は赤身肉とチョコレート。