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100年前の景色がそのまま残る名店!『田っくん商店』は一度訪れたら忘れられないお店でした

ーーー「人は見た目が9割」

そんな言葉があるほど、視覚的な情報は僕たちの脳をビビっと刺激します。第一印象は、よっぽどのことがない限り覆らなかったりもするし、一目惚れを経験したことがある人もきっと多いはずですよね。

でも、見た目とは裏腹に、想像を裏切られる出会いもあります。ギャップがあったからこそ、二度と忘れることができない、心に残る体験となることも。

東京・阿佐ヶ谷には、ズバリ「一度訪れたら忘れられないお店」がありました。

100年前から変わらないクリーニング店の跡地で

それがこちら。その名も『クリーニング半田屋』…ではなく、『田っくん商店』というお店です。

100年以上もの間、この場所で親しまれてきたクリーニング屋さんの跡地に、居抜きで営業を始めた居酒屋さんなんですが、パッと見は正直、どんなお店なのか想像がつかないですよね。

クリーニング店なのに、「たばこ」「おかし」などの文字も。興味がどんどん湧いてきます!

ちなみに、「田っくん」という店名は、ご主人のアダ名から取ったんだそう。

ご主人の畑さん。下の名前が「たくや」なので、「たっくん」と呼ばれている

ご主人の畑さん。下の名前が「たくや」なので、「たっくん」と呼ばれている

畑さん:「ジョギングが趣味なんですけど、物件探しも兼ねてこの辺りを走っていたんです。その時、たまたまテナント募集の張り紙を見つけて…。

昔ながらの"何やってるか分からないような店"の雰囲気が好きなので、外観はそのまま残しつつ、"ここで自分の店をやりたい!"と思ったんです。

100年以上、この場所で続けてこられた店と聞いていたので、景観を崩さずに街の一部として残したいな、と。

ただ、僕の他にも目をつけている人がいたみたいで、何度か断られたんですよ!粘りまくって、勝ち取りましたけどね(笑)」

店内は、明るい照明と綺麗な内装が印象的で、和っぽい雰囲気。

コの字型カウンターを挟むスタイルで、1/3が座席、2/3が立ち飲み席です。

畑さん:「メニューは基本的に毎日変わりますね。以前、僕が会社員をしていたとき、仕事終わりによく行くお店があったんですが、とにかく安くてメニューも豊富だった。

その店から受けた影響が大きいんですが、僕は自分の腕(料理)を安売りするようにしているんです。常に料理人として修行の身であると、自身に言い聞かせています。

仕事終わりって、気持ちがまだホットなままなので、クールダウンさせてから帰りたいなって思ってました。なので、ウチも帰宅前にフラっと寄れる店を目指しているんです」

こちらがお酒のメニュー。やかんシリーズ以外は全て500円以下と、良心的な価格設定です。(日本酒は全て690円

もともとは、代田橋で営業していた同店。6人もいれば身動きが取れなくなるほどの、狭いお店だったんだとか。

畑さん:「代田橋のときの店はとにかく狭くて常にギューギュー。でもその風景が好きだったから、和気藹々としたお店にしたくて、ここも立ち飲みの席を多くしました。

座席をご希望の方は、インスタから予約していただくようにしています。ウチは電話も置いてないので、予約自体もインスタ経由からのみ。一度いらした際に、次回の予約をしていく方も多いですね」

畑さん:「あまり派手なお店にはしたくないんです。常連さんが来づらくなるような雰囲気は作りたくなくて。

代田橋にあった頃からのお客さんも1日に1組くらい、今でもいらっしゃってくれるんです。せっかく来ていただいたのに、客層とかも当時と変わりすぎているとイヤじゃないですか。

とはいえ、常連さんが幅を利かせるお店も入りづらくて好きじゃない。この外観につられてフラっと入ってきてくれる近所の人や、ご新規さん、全ての人が楽しめる雰囲気づくりを今も一生懸命考えています」

今まで食べた中で一番おいしい「ぷるぷるの出汁巻き卵」

そんな『田っくん商店』でぜひ、食べていただきたいのが出汁巻き卵!

出汁巻き卵って、だいたいどこの居酒屋にもあるし、"普通に"おいしいイメージですよね。

明太子やチーズと掛け合わせてアレンジをするお店も多いし、なんとなく定番メニュー感もあります。

…ただ、絶対に頼むかと言われるとそうでもなくて、「出汁巻き卵あるやんけ!ヨッシャー!」ともなりづらい。

悲しい現実ですが、「とりあえず頼んでおけば誰かしら食べるし、シェアもしやすいっしょ」的な存在というイメージなんです。

苦手な人もそこまでいないけど、偏愛している人も多くはない。

この出汁巻き卵に出会うまでは、そう思っていましたが、その考えは大きく覆されることに!

まず、見てお分かりになるでしょうか?このプルップルな見た目!とにかく出汁の量が多いこと海の如し!

お味はというと、出汁がものすごく染みていて、口に入れた瞬間に優しさが包みこんでくれます。そしてそのまま、ギュッと強く抱きしめられている気分に。

これだけおいしいなら、一人で来たとしてもマストで頼みたいし、なんなら独り占めしたいレベルです…。

25年以上生きてきて、ようやく悟りました。「おいしい出汁巻き卵に出会ってなかっただけだったんだ」と。

それほどまでに、この出汁巻き卵は僕の中の出汁巻き卵の概念を変えてしまったのです。

ちなみに、関西には出汁巻き卵定食なるものがあるみたいですね。つまり、出し巻き卵をおかずにメシを食らうということ。

出し巻き卵は、メインのおかずになり得るポテンシャルがある!そのことを、今ここで身をもって知りました。

他にも魅力的なメニューがたくさん

他にもオススメをいくつかいただいたのですが、基本的にお料理は何を頼んでもおいしい!と断言できます。そしてマジでコスパが良すぎる…。

こちらは、れんこんまんじゅう(690円)。

レンコンのすり身のなかに大ぶりのエビが入っていて、プリっとした食感が楽しい一品。

優しいお出汁と餡、そこに加えて三葉のアクセントがベストマッチです。

続いて、本日のお任せ6種盛り合わせ(1200円)。

・蒸し胡麻豆腐
・ドライいちじくとサツマイモのクリームチーズ乗せ
・酒粕の天ぷら
・かしわ松風焼き
・鳥ささみ天ぷらオリーブ醤油
・浸し豆

この日のメニューは上の6種類。このボリュームでこのお値段は破格ですね。

仕入れ状況によって内容が変わるので、行ってみてのお楽しみ。

個人的には酒粕の天ぷらが、お酒との相性も良くて好きでした。

日本酒は、各県の蔵元や酒屋など現地まで足を運び定期的に直接仕入れに行くこだわりぶり。

こちらは、畑さんの出身地でもある鳥取のお酒、"此君"。

シャープな口あたりとフルーティーな香りが飲みやすくて、和食との相性が抜群にいい印象。

続いて登場したのが、漬けまぐろ黄身和え(690円)。

卵黄のまろやかさが、まぐろの新鮮な味を引き立てていました。さらに海苔、胡麻、ミョウガ、などの脇役がいい仕事をしており、完成度のかなり高いお味に。

普段はあまりお魚を居酒屋では頼まないのですが、こちらの銀だらふき味噌焼き(890円)は、ふわふわな食感がクセになる旨さ。

優しい味つけを、味噌がビシっと引き締めてくれて、お酒が進むこと間違いなしです!

夫婦2人で切り盛りしていたからこそ

畑さん:「ウチは二人でお店を回していたので、全てのお客さんに、目が届きづらい時は正直ありました。

そんな時に、このやかんが活躍してくれるんですよね。僕らとしても、お酒のオーダーを取る回数が減るし、お客さんとしても何度も頼まなくていいので、お互いに利点はあるのかなって。

畑さん:「もともとは、大人数で来ていたお客さんが、シェアする用に頼まれることが多かったんです。

でも、最近はお一人様も、やかんで頼まれることが増えました。女性の方にも人気で、一人でいらっしゃって頼まれる方も結構います。ワイルドですよね(笑)。

気取らない雰囲気の店なので、お客さんもそういう方が大半ですね」

畑さん:「席数が少ないからたくさんの人に来てもらいたいし、楽しんでもらいたい。そういった理由からシメのメニューはナシにしています。

以前、お茶漬けがあったんですけど、それだけを食べに来て、お酒も頼まずに長居する人が増えてしまった」

畑さん:「料理を気に入っていただくのは嬉しい反面、できるだけ多くのお客さんに満足していただきたいという思いが強く、悩みましたがそう決断したんです。

でも、気が向いた時にシメのメニューは作ることもありますよ!そういうタイミングに居合わせたお客さんはラッキーかもしれないですね」

料理に使われるお皿にもこだわりが感じられます。隣にいらしたご夫婦も、「お皿がとても素敵」とこぼしていたほど。

畑さんはお皿が好きだそうで、「ゼロからお店を作ったから、こだわりを言い出したらキリがないですね!」と、楽しそうに話されていました。

一番印象に残っているお皿は、6種盛りのひとつを食べ終わった時に現れたおかめさん。

愛嬌があって可愛らしい。ほっこりします。

見切り発車からの挫折。そして気づいたこと

畑さん:「実は、お店を始めるまで料理はほとんどしたことがなかった。代田橋でお店を始めた時も、最初は何をやるか決まらないまま場所だけ借りましたし。

もともと、その場所にはお世話になっていた焼き鳥屋さんがあったんですけど、『ウチはもう店を畳むから、ここでなんかやりなよ』と、譲ってもらうことになったのが始まりなんです。

近隣に飲食店が多いし、"誰かしら来てくれるだろう"と浅はかに考えていたんですが、実際は一人もお客さんが来ない日も多く、その日暮らしもままならない日々に焦っていました」

畑さん:「そんな折、実家に帰省したタイミングで、母に連れていってもらった日本料理屋のランチに感動したんです。味も見た目にもおいしく、何よりそのコスパに感動しました!

"私もこんな料理を作れるようになりたい"と思い、まずは自分を職人に育てようと考えました。

その時の体験があって、しっかりと目指すべき方向を定めたことで、今の店の枠組みが出来あがっていったんです」

畑さん:「あるとき、

ーーー『ほんとは誰にも教えたくないけど、この店は絶対有名になるだろうから、初期の頃からの常連と言えるように友達たくさん連れてきますっ!』

って言ってくださったお客さんがいるんですけど、その時はシビれましたね。

自分が料理をするのは、誰かの喜ぶ顔を直接見られるのが嬉しくからなんです。だから、自分のために料理は一切しないです。

家の厨房だとやる気が出ないし、アレコレ組み合わせてみよう、という創作意欲も店じゃないと湧かないんですよ。料理人ってそういう人が多いんじゃないですか?なんて、自分はまだまだ修行中の身なんですけどね」

これからも変わらない景色がそこにあってほしい

営業前、忙しい時間の合間をぬって、取材に対応していただいたんですが、話す前と後で畑さんのイメージはガラリと変わりました。

彼がこんなにも「話すことが好き」だと、僕は知らなかった。初めて来たときも、彼は黙々と料理を作っていただけだったから。

この日も、営業が始まると料理に集中してほとんど口を利かなくなりました。でも、僕は本当の彼を知っている。なんだかそれが嬉しくなったんですよね。

世の中にたくさんお店が溢れている中で、人は何を決め手にそのお店を訪れるのでしょう?「また来たい」と感じるのは一体どんなお店なのでしょうか。

僕はこの日、一つの答えにたどり着きました。でもそれが何かは言わないでおきます。なぜなら自分の目で、舌で、そして心で感じてほしいから。

ご馳走様でした。また来ます。

これからも、変わらない景色がそこにあり続けますように…。

ライター紹介

岡田隆太郎
岡田隆太郎
カメラマン→雑誌の編集→PRを経てRettyグルメニュース編集部へ転身。 好きな食べ物はナスの揚げ浸し。基本毎日飲んでます。
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