コンビニやスーパーで手軽に買うことができるメロンパン。日本人にとっては身近に感じるパンではないでしょうか?
そんな馴染み深いメロンパンが主役になる「メロンパンフェス2019」が、今年の5月4日(土)と5日(日)に、東京・千代田にて開催されます。全国各地のメロンパンが集結する、日本最大級のメロンパンの祭典なんですよ!
このメロンパンフェスを主催しているのが、平井萌(ひらいめぐみ)さんというひとりの女性。高校生のころにメロンパンのおいしさにハマってから、今まで200種類以上のメロンパンを食べ歩いている人なんです。
今回、メロンパンの専門家としてTV出演の経験もある彼女に、メロンパンの魅力やイベントについてお話を伺ってみると…なにやらイベントを開催したのは“メロンパンが好き”という気持ちだけではないと言います。
そんな、メロンパンフェスの裏側に隠された熱い想いに迫りました。
ライター紹介
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田中さやか
- テレビ番組制作会社の勤務を経てフリーライターに。インタビュー、グルメ取材をメインに活動をしています。全国のモーニング巡りが趣味。好きな食べ物は唐揚げ、パン、チーズです。
「どこのメロンパンか食べただけで分かる」最強メロンパン専門家・平井萌さん
今日はよろしくお願いします!
さて、いきなりですが…これまで200種類以上のメロンパンを食べ歩いた平井さんの、メロンパン好きとしての実力を測るためにこんな企画を用意しました!
わあ!メロンパンがいっぱい…。
こちらに大手コンビニ5社のメロンパンを用意しました。メロンパンってあまり味に違いがないイメージですが、メロンパンの専門家ならそれぞれの違いが分かりますよね? 見た目と味だけで、どこのコンビニか当ててください!
そうだな〜!うーん…まずは見た目や香りだけで、ある程度予想してみますね。
…はい!ある程度予想ができました。あとは味で判断します。
分かりました!それではまず、こちらのメロンパンからいきましょう。
いただきます。
うんうん…そうですね。分かりました!こちらはファミマのメロンパンです!
おおっ!なぜそう思われましたか?
ファミマのメロンパンのポイントは見た目ですね。少し高さがありつつ、クッキー生地の格子に深さがあることが特徴です。あとは、いい意味で味が濃く、ジャンクっぽい味がするメロンパンなんですよね。
結果は…正解です!
よかった〜。
続いて、こちらはどうでしょう?
ザラメの量と表面の網目がしっかりとついているので、これはセブンのメロンパンです。あとは、端のクッキーの硬さ加減でセブンだな〜と思いました。
すごいっ!正解です。
ほかのメロンパンと比べて若干色が濃いですが、こちらはいかがでしょう?
これは「ローソン」のメロンパンですね!
即答ですね…。
はい!メロンパンを持ち上げたときに軽かったのと、ローソンは昔ながらのカステラのような香りがするんですよね。懐かしい香りというか…。
大正解です!
残りは二つなので、次を正解したら全問正解です。
これは、私が一番好きなコンビニのメロンパンなので食べなくても分かります。絶対にデイリーヤマザキです(笑)。まず表面のクッキー生地の見た目がほかのメロンパンと違うのと、ザラメとクッキー生地の硬さに違いがあります。このしっかりとしたクッキー生地がおいしいんですよね。
迷いがない。大正解です!
で、最後に残ったこちらが、ミニストップのメロンパンでした。
全問正解お見事でした!
どこも同じような感じなのかな?と思いきや、コンビニでも結構違いがあるんですね。
今のコンビニのメロンパンはすごいですよ。パン屋さんも「ライバルはコンビニだ」なんて言っているほど、クオリティが高いんです。
たしかに、このおいしさを100円台で買えるとなると、コスパ抜群ですよね。
思いつきで利きメロンパンを企画してみましたが、正直…失敗したらどうしようかなあ…と心配でした(笑)
失敗したら、今年のメロンパンフェスの開催やめようかと思うところでしたよ(笑)
「好みのメロンパン」の見分け方とは?
平井さんほど、たくさんのメロンパンを食べていると、見ただけで「おいしいメロンパン」かどうかを見極められたりするんじゃないですか?
そこまではまだ難しいですが、でもメロンパンは見た目の濃さで、好みのおいしさを見分けることができますよ。
以前、京都で20種類ほどメロンパンを食べ比べをしたときに分かったんですが、京都では素材の塩気を活かす甘さを感じられて、見た目の色も濃くなくあっさりとしている上品なものが多かったです。
反対に見た目の色が濃いメロンパンは、黄色味が強く、卵とバターをたっぷりと使っているため、味も濃いものが多いです。
普段から濃い味が好きな人は、色が濃いメロンパンを選んだらいいのか…。
そうですね。東京のメロンパンは比較的、色が濃い、黄色いものが多いです。私はあっさりとしたメロンパンが好きなので、どちらかというと京都風のメロンパンが好きですね。
メロンパンの味にも地域性があるんですね。そうした知識をもっていると、普段のメロンパン選びが楽しくなりそうです!
京都風が好みということですが、東京で食べられるメロンパンの中で、平井さんのおすすめってありますか?
メロンパンフェスにご出店いただくお店のメロンパンはどこもおすすめですが、「毎日食べたい」という点で言うと、渋谷の『パンオスリール』です。
- パン・オ・スリール
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東京都 渋谷区 渋谷
パン屋
焼きたてのメロンパンって、どれもおいしいじゃないですか。でも冷めるとおいしくないところが多い。『パンオスリール』のメロンパンは冷めた状態でもものすごく生地がもちもちしておいしいんです。
なぜ『パンオスリール』のメロンパンは、冷めた状態でもおいしいのでしょうか?
以前、メロンパンフェスに出ていただいたときに教えてもらったんですが、東北地方でとれる「白神こだま酵母」という特殊な酵母を使って生地を作っているそうで、これによって、冷めてももちもちした食感が生まれているそうです。(※今年「パンオスリール」のメロンパンフェスへの出店はありません)
冷めたときのおいしさにもこだわっているんですね。
はい。初めて食べたときは衝撃でした!
もちろんそれだけではなく、『パンオスリール』のメロンパンは、紅茶が使われていることも特徴で、少し茶色がかった、ラグビーボールのような形をしているんです。
紅茶の心地いい香りと、控えめな甘さ…クッキー生地の厚さは薄めなんですけど、ちゃんと口の中に「いるよ!」っていう存在感があるんです。このクッキー生地の厚さと食感が、もちもちのパン生地のおいしさを絶妙に引き立てていて、おいしいんです(笑)。
絶対おいしそう。メロンパンのプレゼンをこんなに熱量たっぷりされたのは初めてです(笑)。
メロンパンフェスを始めたきっかけは、ある“国”を救いたかったから
ご自身で開催されているメロンパンフェスとは、どんなイベントなのでしょうか?
メロンパンフェスは、全国各地からおいしいメロンパンを集めた、日本で唯一のメロンパンに特化した祭典です。
プレーンや変わり種のほか、15種類以上のメロンパンを取り揃え、トークショーやワークショップも行います。事前申し込みチケット制ながら、ありがたいことに毎年参加者は増えていまして、1回目は300人、2回目は700人、3回目は1500人、4回目は2200人でした! ちなみに今年の目標は3000人です。
2000人も集まるメロンパンイベント! 盛り上がりそうですね!
そもそもイベントを開催したきっかけは、純粋にメロンパンが好きだったからですか?
「メロンパンが好き」という気持ちはもちろんですが…中部アフリカの、コンゴ民主共和国で起こっている「スマートフォン製造の裏側」を伝えたいという気持ちもあって、開催しています。イベントでは、収益の一部をコンゴに寄付する活動もしています。
コンゴとメロンパンって直接は関係ない気がしますが…この2つはどう結びついているんでしょうか?
話すと長くなるんですけど…いいですか?(笑)
まずコンゴに興味をもったきっかけは、大学1年生のときに偶然、Facebookでコンゴの問題を伝える動画を見たことでした。コンゴでは、スマホを作るための材料である鉱物物質が豊富にとれるんですけど、それが紛争の軍資金になって戦争が長引いているんです。
その動画の何が平井さんの心にヒットしたのでしょう?
当時、ちょうどみんながスマホを持ちはじめた時期で、私も大学に入ってスマホに変えたんですね。
世の中が便利になることは、当たり前にいいことだと思っていたので…自分の知らないところで、誰かが傷ついていることに衝撃を受けたんです。知ったのに何もしないのは一緒に加担しているのと同じかな?と思って。「何かしなきゃ」という気持ちになりました。
そこからはどんな行動を?
まずは動画を作ったアメリカのNPOに「なんとかしたいけど、どうしたらいいですか?コンゴ行きたいです!」とメールを送りました。
するとお返事が来て「まだ日本にはコンゴの現状がそこまで知られていないから、まずは今の現状を伝えてほしい」と言われたんです。それでコンゴの現状を伝えるイベントを始めました。
すごい行動力です。実際のイベントはどうでしたか?
それが…イベントを開催したのは良かったんですが、来てくれる人と、私の目的の違いにギャップを感じて、モチベーションが下がってしまったんです。
え…! 一体なぜ…。
そのイベントは、みんなでコンゴ料理を作って食べながら、コンゴの現状が分かる動画を流すというものでした。
コンゴをはじめ、アフリカに興味ある方にたくさん来ていただいたのですが、私はアフリカ自体に興味はなく、"コンゴを救う"ことが一番の目的だったんです。
元々アフリカに興味があった人には届いたけれど、コンゴの問題の認知を広めることにはあまり繋がらなかったんですね。
そうなんです。自分たちにとって身近なものの裏で、紛争が起こっているということを、広くいろんな人に知ってもらいたかったので。だからこの方法じゃダメだなあと思いました。
そこからどのようにして、メロンパンフェスに繋がっていくのでしょうか?
うまく行かない日々が続いて、「就活もあるし活動をやめようかな〜」と思っていたんです…。
でも大学2年の終わりくらいに、バイトの休憩中にメロンパンを食べてたら、社員さんから「そんなに好きなら自分で作っちゃえば?」と言われて。その瞬間にメロンパンとコンゴが繋がりました。
すごく難しい社会問題でも、自分が好きなメロンパンと組み合わせれば「なんとでもなる!」と思えたんです。その後は、そのままの勢いでクラウドファンディングで資金調達をして、2014年に第一回メロンパンフェスを開催しました。
「うまくいかないことの方が多い」それでもメロンパンフェスを続けられる理由
勢いで始めたとはいえ、今年で5回目の開催ということは、運営も順調そうですね。
いやそれがまったく…! パンがめちゃくちゃ余って売り上げがマイナスになったり、ストレスで大腸から出血してしまったり…やばかったエピソードはいっぱいあります…。「うまくいった」という回がないくらい(笑)。
そうなんですか!
そもそも人の集まるところがあんまり得意じゃなくて、イベントを運営するタイプの人間ではないんです。自分でも「不慣れなことをしているなー」と。
正直、九割五分くらい毎年「嫌だなー」と思ってます(笑)。
それなのに、どうして続けられるのでしょうか?
残りの五分で、すごく嬉しいことがあるからです。
以前、コンゴ大使館の力を借りようと思って大使館へ連絡したとき、「問い合わせがたくさんあり、個別では対応できない」と断られてしまったんですね。
でも3回目のメロンパンフェスのときに、ジョン・カビラさんのJ-Waveのラジオ番組に出演させていただいたことがあったんですけど、そのラジオをコンゴ大使館の秘書の方が聞いていて、日本にいる大使が4回目のメロンパンフェスに来てくださったんです。
すごい!
一見、イベントを開催することは遠回りかもしれません。でも「世の中をよくできるかな?」と思っていたことが、ちゃんと大使館の人に伝わったのがとても嬉しくて。そういった五分のおかげで「来年も続けよう!」と思えるんです。
メロンパンフェスは、コンゴの問題を救いたいと思って、始めました。しかし、寄付をするためだけのチャリティーイベントではないので、まずは純粋に、おいしいメロンパンを楽しんでいただければ嬉しいですね。取り揃えているメロンパンには自信があります!
「知らないところで人が傷ついている、そんな現状を変えたい」
そんな一心で始まったメロンパンフェス。運営のプレッシャーに耐えながらも、自分の活動で少しでも世の中に伝えられることがあれば…と平井さんは発信を続けます。
メロンパンフェスは、おいしいメロンパンを食べられるだけでなく、自分のこと、そして少し視野を広げてまわりのことを考えるきっかけになるかもしれませんね。