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“ざっくりいろんな人”が集まる「喫茶ランドリー」ってどんな場所?

近年、カフェやコンビニを併設するコインランドリーが急速に増えました。

こだわりのコーヒーを飲んだり、軽食をつまみながら洗濯が終わるのをのんびり待つ……そんな、都会での新たなライフスタイルが確立されつつあります。

昨年1月にオープンした「喫茶ランドリー」も、ランドリーサービスと喫茶店、ノマドスペース、オフィスなどが一体になった複合施設です。喫茶ランドリーが特徴的なのは、ここで新たな活動が生まれ、コミュニティが育まれていること。

しかしながら、こちらの施設はコミュニティづくりを目的につくったわけではないそうなのです。その真意とはーー?

「喫茶ランドリー」を運営する、株式会社グランドレベル代表の田中元子さんにお話を聞きました。

子どもからお年寄りまで。“顔”の見える店

隅田川の東側、両国駅と森下駅のちょうど真ん中くらい。

閑静な住宅街を歩いていると、1階がガラス張りになった建物が見えてきます。

平日だというのにひっきりなしに人が出入りしている、その場所こそが「喫茶ランドリー」です。

もとは手袋の梱包作業場だった、築55年の建物の1階部分をリノベーションしてできたという店内へ。すると、さまざまなものが置かれていることに気づきます。

例えば、お店のフライヤーに、アクセサリー、手作りの帽子、古着etc...。

以前、雑誌で取り上げられた記事を読んだことがありますが、そのときにはこんなに賑やかではなかったはず。ここ数カ月の間に何があったのでしょう?

「フリーマーケットで残ったものをそのまま置いていたり、お客様が趣味で何か作っていると知ったら、その場で売ってもらったり。中古レコードのコレクションを売りたいと友人に頼まれたり。そうしているうちに、どんどん物が増えたんです」と、田中さん。

特定の属性の人が好むようなものではなく、ジャンルレスなアイテムが並んでいます。

「これはおばあちゃんが好きそうな帽子だな」とか、「キッズ用の古着があるってことは、子どもも遊びにくるのかな」とか。今はその場にいない人たちの“顔”も見えるようでした。

「ざっくりいろんな人がいる環境を作りたかった」

最近、急増している複合型ランドリーサービスは、コインランドリー業者がカフェなどの要素を取り入れるパターンがほとんど。「喫茶ランドリー」はそれらとは異なり、最初から“私設の公民館”をイメージしてつくられたといいます。

▲洗濯機・乾燥機、ミシンやアイロンなども借りられる、まちの家事室。洗濯機・乾燥機はコインを入れるのではなく、受付で事前に料金を支払って利用。洗濯の利用は300円で、洗剤は好きなものを選べる

▲洗濯機・乾燥機、ミシンやアイロンなども借りられる、まちの家事室。洗濯機・乾燥機はコインを入れるのではなく、受付で事前に料金を支払って利用。洗濯の利用は300円で、洗剤は好きなものを選べる

ターゲット層を明確にしたお店が多いけれど、ここでは、0歳から100歳まで、街に暮らすいろんな人がいるような環境を作りたかったんです」

実際に、“ざっくりいろんな人”が集まることで、新たな活動の輪が広がり、いろいろな小さいコミュニティも生まれているそう。近所の主婦が集まって裁縫をしたり、子どもたちを集めて凧揚げの凧を作ったり、現代美術作家が展示を行ったりと、使い方は利用者に委ねられています。

お店のスタッフが忙しくなると、お客さんが自主的に皿洗いなどを手伝うこともあるようで、みんなが能動的に、お店づくりに参加している印象でした。

「現代社会で生きている人たちは、職場で気を使って、電車の中でも気を使って、マンションでは下の階の住人に気を使っている。だから、ここでは遠慮しないで、いろんなことを実践してほしいんです」

▲喫茶スペースはすべてが低めの、中古の喫茶店家具で揃えてある。地に足をしっかりつけられることで、くつろぐ態勢になれるのがいい

▲喫茶スペースはすべてが低めの、中古の喫茶店家具で揃えてある。地に足をしっかりつけられることで、くつろぐ態勢になれるのがいい

とはいえ、この施設は、“コミュニティづくり”を目的にしてつくられたわけではないそう。「コミュニティは、さまざまな人が1階にいる状況を可視化することで生まれる副産物」だというのです。

さて、「さまざまな人が1階にいる状況を可視化する」とは?

代表の田中さんはこう言います。

「ここはかつて、工場や倉庫が立ち並んでいるエリアだったのですが、急速にマンションが増えていきました。

そのため、1階がほとんどエントランスと壁と駐車場になっていて、人の気配が感じられなくなってしまいました。

だから、喫茶ランドリーは、お店の通り側の大部分をガラス張りにしました。街から店が見えて、店からも街が見える。人が見えることが安心できる街の条件だと思うんです」

▲半地下になったモグラ席はノマドワークにも良さそう

▲半地下になったモグラ席はノマドワークにも良さそう

コミュニティづくりや地域活性化をテーマにした動きに注目が集まっている昨今ですが、ここでは決して“コミュニティ”を押し付けていないことに気づきました。

1階部分を可視化して、自由に使ってねと開放しているだけ。その柔らかさこそが、使う人の発想を豊かにし、能動的なコミュニティを育んでいるのかもしれません。

自家製カレーにクラフトビールが最高だった

ちなみに、こちらで提供しているメニューはすべて手作りだそう! グルメ媒体らしく、食事もしておこう……と思ったら、想像以上にカレーとクラフトビールの組み合わせが最高だった話を今からしますよ。準備はいいですか。

「喫茶ランドリー」では、クラフトビールのディスペンサー「Tap Marché」を導入し、常時4種類のクラフトビールを提供しています(500〜600円)。

注文するとグラスを渡され、自分で注ぐことができるのも楽しみのひとつ。

昼間からビールを飲む背徳感が最高……。

「なみなみに入れちゃってくださいね!」とスタッフのお姉さんに言っていただけたので、
遠慮なく注ぎましたよ。表面張力!!

このときは日向夏のビールが限定で出ていたので、そちらをセレクト。柑橘らしさのある爽やかなビールで、ほんのり苦味がありました。夏の間、毎日飲みたい……。

水を一切足さずに、野菜の水分のみで手作りしたという「喫ラのカレーライス」(850円)も迷わずオーダー。

一般家庭で食べられているような、カレールウを使ったカレーライスというよりは、ドライカレーに近いイメージですね。

▲いただきます!

▲いただきます!

タマネギやニンジンなどおなじみの具材の他、パプリカ、ナス、レンコン、ズッキーニなど、旬の野菜がごろごろ入っているので、それぞれの食感が楽しめます。複数のスパイスをブレンドした絶妙な味わいで、あとからほんのり辛さがやってくるのもいい。

スパイシーな口の中を爽やかなビールでリセットし、またスパイシーに染まる……これ、永遠にループしたかったぁぁぁ!

ああ、次はいつ行けるだろう。誰かと行ってもいいし、ここで身内だけ集めたイベントをやってもいい。

まずは手はじめにパソコンを持って行って、仕事しながらカレーとビールを……と思ったけど、それじゃ仕事にならないですよね。わかってます!

「喫茶ランドリー」は、空間としても面白いし、クラフトビールとカレーのおいしいお店でした。

ライター紹介

栗本千尋
栗本千尋
1986年生まれ。青森県八戸市出身、杉並区在住のフリーライター/エディター。3人兄弟の真ん中、2児の母。好きなものは金曜のビールと日曜のワイン。
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