ラーメン以外の「麺料理」に光を。サンマーメンにこだわり続けるお店の話

「中華そば」と聞くと、中細のちぢれ麵に和風のダシが効いた、昔ながらの醤油ラーメンが脳裏に浮かぶ人が多いのではないだろうか。

豚骨ラーメンをイメージする人は、たぶんあんまりいないような気がする。

そんな中、「中華そば」を名乗っていながら、そもそもラーメンがメニューにないお店があるとのうわさを聞いた。看板メニューは「サンマーメン」なのだそう。

ライター紹介

少年B
少年B
世界でもっとも意識のひくい宗教「セーフ教」の教祖。ラーメンとお肉と揚げ物が好きで、お腹がいっぱいになると眠くなる機能を搭載。

サンマーメンってなに?秋刀魚が乗ってるの?

しれっと当たり前の事実かのように書いてしまったが、サンマーメンとは、神奈川県を代表するローカルフードだ。

秋刀魚が乗っているわけではなく、肉野菜炒めとあんかけを合わせたラーメンのことで、漢字で書くと「生馬麺」。

広東語で生(サン)には「新鮮でしゃきしゃきした」、馬(マー)には「上に載せる」という意味があるそうだ。

ラーメン店というよりは、町の中華料理屋で提供されているイメージの料理だが、それが看板とは。これは気になる、気になるぞ。

住宅街にあるサンマーメン専門店

やってきたのは、小田急の経堂駅。

落ち着いた雰囲気の住宅街だが、大学への通学路ということもあり、駅前には活気のある商店街も広がっている。

なんというか、気取らずに歩けるいい街だなぁ。

駅の南側に広がる「農大通り」を5分ほど進み、最初の信号を迎えた先にそのお店はあった。その名を「YOKOHAMA中華そば かみ山」という。

約束の時間よりも早く着いてしまったため、向かいの緑道で腰を下ろして待つことにした。入れ替わり立ち替わりで、常に1~3名のお客さんが店外で待っている。人気なんだなぁ。

昼の営業が終わり、最後のお客さんがお店を出る。そろそろお店へ向かおうかな、と思ったその時、店主の神山潤さんがこちらに気付き、道路を渡ってこちらへやってきた。

「今日はありがとうございます。よろしくお願いしますね!」

さわやかな笑顔がすてきな方だ。

湯気が立たないサンマーメン

席数は最小限に抑えられた店内。ご夫婦2人でまかなっているため、これくらいが全てのお客さんに満足していただくにはちょうどいいのだとか。

オープンしたのは、2017年の9月。当初は、「え!?サンマーメンってなに?」なんて言われることも多かったそう。

さっそくサンマーメン(750円)をいただくことに。

麺が見えないほどのあんかけに、彩りを添えるかまぼこと味玉が食欲をそそる。おいしそう!

でも、おかしいな。熱々の麺料理のはずなのに、湯気がぜんぜん立っていない。

そんなことを思っていると、麺を持ち上げた瞬間に立ち昇る湯気。表面を覆うあんかけと油が、熱を逃さない仕組みなのだ。

醤油味のスープはほんのり甘く、それでいて旨みがガツンと主張してくる。そして、渾然一体となった麺とあんかけを夢中になって食べる。しあわせの味だなぁ。

目指したのはナンバーワンではなくオンリーワン

――サンマーメンの専門店って珍しいですよね。なぜこういうお店を?

「ウチの実家が中華料理屋でね。あまり知られていない町中華の麺料理も、丁寧に作れば主役を張れる素晴らしい料理なんだと証明したかったんです」

――ご実家の影響が大きいんですね。

「父が早くに亡くなり、私が店を継いだんですが、建物の老朽化に伴って店を閉めることになって。当時は、 "必ず復活させる!"と、誓ったのですがうまくいかず…。

あるラーメン屋で修行をして色々学んだのですが、やはり自分の根底にあるのは中華料理屋のスタイルだなという想いから今の形になりました」

――それにしても、ずいぶん思い切ったメニュー構成ですね。

「ラーメンには『〇〇系』というジャンルがあるじゃないですか。でも、それだとその『〇〇系』のなかで『あそこのお店は何番目だな』って順位がついてしまう。そうではなく、ここでしか食べられないものを提供したかったんです」

――たしかにサンマーメンの専門店はオンリーワンです。

「町中華の麺料理って昔からあるものなので、そういう類のお店はきっとなくならないと思うんです。どこの町にも、昔ながらの中華料理屋さんって今も残ってるじゃないですか。地域に溶け込む、町の一部のようなお店が理想です」

「おいしい」は当たり前

――ラーメンがないとは言え、メニューは豊富ですね。

「オープン当初はサンマーメンとタンメンと…数少ないメニューでやっていたんですが、期間限定メニューが好評をいただき。お客さんから『続けてほしい』と言われて、どんどんレギュラー化していった感じです(苦笑)」

――お客さまを大切にする姿勢がすごいですね。

「修業先で『自分たちが作るのは何十、何百杯のうちの一杯だけど、お客さんにとってそれはかけがえのない一杯なんだ』と師匠に言われたことが、今も心に残っています。そのたった一杯でリピートしていただけるかどうかも変わってきますしね。

お金をいただいている以上、おいしいものを提供するのは当たり前。心地よい空間づくりや、笑顔、ご挨拶を大切にしています。一期一会ですから」

町中華がもつポテンシャルを知った

せっかくなので、かみ山のもうひとつの柱、タンメン(750円)も食べさせていただいた。たっぷりの野菜と、ふりかけられたフライドオニオンがいかにもおいしそう。

タンメンという言葉からイメージするよりも、いい意味でコッテリしていてジャンクなお味。このスープ、めっちゃ好きだわ。

「これもどうぞ」とガーリックカレーチャーハン(750円)を出していただいた。明らかに1食分のカロリーを超えているけど、これを食べないと記事が書けないからセーフ。

卵のまろやかさが、にんにくとカレーの味をやさしく包み込んでくれる。

町中華がルーツだからか、初めて出会うはずなのに、どこかなつかしい。それが、かみ山の持ち味。

町の風景の一部でい続けたい

「とにかくこれからも、継続していきたい。"常に街の一部としてそこにある"お店をやっていけたら嬉しいですね。大きな波は来ないかもしれないけど、流行りじゃなくて定番を、スタンダードを」

そう語る神山さんからは、底知れない力強さを感じた。サンマーメンという料理の珍しさに惹かれてお話を伺ったけど、そうか、神山さんにとってこれはスタンダードなんだ。

もっとおいしい料理を作りたい。もっとたくさんの人に受け入れてもらいたい。そんなひたむきで純粋な想いが、「かみ山にしかない定番」を生んだのだろう。

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