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恥ずかしい話だが、若い頃はとにかくお金がなかった。
介護士として、横浜で働き始めた社会人1年目。奨学金の返済に、実家への仕送り…そしてはじめての一人暮らし。
とにかくお給料が足りない。働けど働けど、我が暮らし楽にならざり、ってやつだ。「人間をやる」ってこんなにお金がかかるんだなぁ、なんてことを考えていた。
でも、そんな生活のなかで楽しみだったこともある。それは、学生時代に友人が教えてくれたあの店に行くことだった。
月に一度、必ず食べに通ったお店
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給料日のあと、1ヶ月がんばった自分へのご褒美に通っていた店がある。
月末が楽しみだったのは、あの店に行けるから。
あのころは原付で30分かけて通っていたが、今日は電車で来た。
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……この大通りを原付で走っていたことを思い出す。
今日は歩道から、ちょっと角度のちがう景色を見れた。
すこし先の角を曲がると、その店はある。
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バーグ戸部店。
横浜・川崎市内に5店舗ある、ハンバーグとカレーの店だ。
「安くてうまくて、おなかがいっぱいになるぜ~」
そう教えてくれた友達は、このお店の常連だった。
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年季の入ったビジュアルの店構え。
「カレーとハンバーグの店」ってキャッチコピーが最高にいい。
どちらも子どもから大人まで、みんな大好きな料理だ。
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横浜を離れてかなり経つ……このお店に来るのもたしか、5年ぶりだ。
でも、ドアをくぐった瞬間に「お帰りなさい」と言われた気分になる懐かしいお店。
この店を教えてくれたアイツと。時にはひとりで。はたまた別の友達と。そして彼女とも……。
いろんな人とここに来た。20代前半の想い出の一角には、必ずこの景色がある。
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メニューをめくる……そう、これだ。
横浜市民のソウルフードである「スタミナカレー」。
あの頃は、770円が贅沢だったなぁ。
「生」派と「焼き」派がいて、わたしは焼き派だ。
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メニューには、生ビールの下に注意書き。
「生!」って頼むと「スタミナカレーの生でよろしいですか?」って聞かれるのも、アイツから教えてもらったこと。
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壁を見ると、トッピングのメニューも豊富。
辛さが選べるけど、救急車ってどんな感じなんだろう。
我こそはと思う方はぜひ、試してみてほしい。わたしにはちょっと、勇気が足りない。
横浜市民のソウルフード・スタミナカレー
バーグの特徴は、提供スピードがものすごく早いこと。
注文してから30秒もすると、ほぉら、もう出てきた。
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アイツの顔が脳裏に浮かんだから、今日は「生」のスタミナカレー。
立ちのぼる香りが食欲をそそる。
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卵をつぶして、特製の豚バラ生姜焼きと絡めて。
ジャンクな味わいなんだけど、これがすごくおいしいんだ。
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歯ごたえのしっかりしたバラ肉のうまみ。
ぴりっと辛い、濃いめのカレーを、脂身の甘味と卵がしっかり包んでくれている。
「あー、うまいもん食った!」という満足感にひたる、至福の一瞬。
食べ盛りの若者や、毎日働く社会人など、横浜で頑張るみんなを支え続けてきたのは、きっとこのスタミナカレーだ。
スタミナカレーだけじゃない、想い出の味
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カレー以外のメニューで人気なのは、店名にもなっているハンバーグ。
アツアツの鉄板の上に、大ぶりのハンバーグが鎮座。特製のデミグラスソースと半熟の目玉焼きが食欲をそそる。
スタミナカレーと並ぶ、もうひとつの名物だ。
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ジュウジュウとデミグラスソースが焦げる音。食べる前から、耳が「おいしい」を約束してくれる。
そう言えば、あの子と半分こして食べたっけな。
そんなことを思い出しながら食べた今日のハンバーグは、なんだかちょっと甘酸っぱくて、ほろ苦い味がした。
ここにしかない味を求めて
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「北海道へ転勤になった常連さんが、年3回必ずここに立ち寄る」って話を店長さんから聞いた。
ここにしかない味を求めて、今日もだれかがやってくる。
年に3回、必ず寄るお客さんがいるなんてすごい。でもそのお客さんを覚えているお店のほうだってすごくないか。
すっとやさしく受け入れてくれるような雰囲気が、ここにはある。そう、たとえ5年ぶりに来るわたしであっても。
じつはアイツとは、ちょっと疎遠になってしまっていた。
べつになにがあったとか、どっちがわるい、というわけではない。
物理的にも精神的にも、ちょっと距離が開いたようで、なんとなく連絡が取りづらくなっていた。
そうだ、ちょっと勇気を出して、久々に連絡をしてみようかな。
「久しぶりにバーグへ行ってみたんだよ」ってさ。
- カレーとハンバーグの店 バーグ 戸部店
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神奈川県 横浜市西区 戸部町
カレー