朝ラー発祥の店「マルナカ」でいただく、"温"と"冷"2種類のハートフルなラーメン

静岡県内のみならず、全国的にも認知度が高い藤枝市の朝ラーメン、通称「朝ラー」。

今でこそ朝ラーという言葉は広まっているが、この朝ラー文化はいつ誰が、どのように始めたのか。

そして、本来は昼や夜に食べることが多いラーメンを、なぜ朝に提供する運びとなったのか。

朝ラー発祥の店といわれている「マルナカ」を訪れ、その歴史を紐解いてきた。

ライター紹介

鈴木さくら
鈴木さくら
1988年静岡県生まれ・静岡県在住。平日制作会社に勤務しながら、土日にうまいものを探して食べ歩く生活を送っている。主な活動エリアは浜松市~静岡市のあいだ。好物は焼肉と浜名湖うなぎの白焼きだが、懐を顧みず食べに走るので給料日前はおのずと静かになる。

みんな2杯食べている

まずはこれを見てほしい。

おいしそうな温かいラーメンと冷やしラーメンだが、朝8時半からこの2杯をペロリとたいらげた。

わたしだけでなく、この時お店にいた多くのお客さんがこの2杯を食べていた。

朝早くから温かいラーメン・冷やしラーメンの2杯を食べるこの文化こそが、静岡県藤枝市で古くから地元の人たちに愛されてきた朝ラー文化なのだ。

そしてここは、朝ラー発祥の店といわれている、1919年創業の老舗ラーメン店「マルナカ」。

まだ朝の8時半だというのに店内は満席!外には順番待ちの列までできている。(朝ラー初体験のわたしは完全になめてかかっていた)

店内を見渡すと、お客さんのほとんどは男性の1人客。

相席なのでラーメンを待つあいだに新聞を読んだり、スマホをいじったり…。

お客さんは大勢いるのに、話し声はあまり聞こえないという独特の雰囲気に包まれていて、わたしもテーブルに置いてあった説明書きを見ては置き、見ては置きを無駄に繰り返した。

1杯目に温かいラーメンを食べ、“おかわり”として2杯目に冷やしラーメンを食べるそう。

1杯目に温かいラーメンを食べ、“おかわり”として2杯目に冷やしラーメンを食べるそう。

1度にラーメンを2杯食べた経験がなかったので、正直食べきれるか不安だったが、今回は地元の文化に乗っ取って2杯にチャレンジ。

温かいラーメン、冷やしラーメン(並)をそれぞれ1杯ずつ頼んでも合計1,100円。

この時代、1杯だけで1,000円を超えるラーメンが多くある中、超良心的な価格設定だ。

1杯目の温かいラーメンを、ひとくち食べた瞬間さとった。

「あ、これは2杯いけちゃうやつ…!」

味はしっかり醤油味がついているのに脂っこさがなく、あっさりしていてどんどん箸が進む。麺も中太ストレート麺でのどごしが最高!

常連さんらしきお客さんが一味をかけていたので、わたしもそれにならって一味をかけてみることに。

あっさり感と、ピリッとした一味のアクセントが、なんだかそばに似ていた。

「そばに似てるなぁ…でも、ラーメンの記事で“そばに似ている”なんて書くのはいかがなものか…」などと悩んでいたら、“おかわり”の冷やしラーメンが到着。

冷やしラーメンにはわさびがトッピングされていた。

完全にそばじゃん!

ツッコミを入れながらこちらもなんなく完食。チャレンジでもなんでもなく、おいしくいただいて大満足だった。

なぜ朝ラー?なぜ8時半?

朝ラーのルーツを探るため、マルナカ初代・小栗喜一さんの孫である由江さんに話を聞いた。

由江さんは現在、旦那さんと共に店を営んでいる。

話を聞かせてくださった小栗由江さん

話を聞かせてくださった小栗由江さん

―――まずは現在に至るまでの「マルナカ」の歴史を教えてください。

1番初めは、わたしのおじいさんである初代・小栗喜一が夜鳴きそばを屋台で始めたことがきっかけです。その時は藤枝ではなく場所も焼津でした。

―――朝どころか超夜型ですね…!いつから朝ラーを始めたんですか?

もともと昼から夜まで営業してたんですが、お客さんが早く来るので、それに合わせてだんだんと開店時間も早めていきました。あんまり早すぎても困るので、最終的には8時半に落ち着きました。

―――8時半開店という時間設定は、なにか理由があるんですか?

朝の連続テレビ小説の終わり時間です。今は8時15分までですが昔は8時半までやっていて、初代がそれを見終わってから営業を始めたからなんです。

それが今も続いていて、8時半に開店しています。

―――朝ドラを見終わってから「さてやるか!」という感じですね!お客さんの来店時間が早かった理由はなんでしょうか?

詳しくはわかりませんが、朝早くにお茶屋さんの仕事が終わるので、その足でラーメンを食べに来ていたという話が一般的です。

農家の方や魚屋さん、お寿司屋さんが市場へ行った後に寄ってくれることもありました。

この日も次々とお客さんが来店し、手際よくラーメンが作られていた

この日も次々とお客さんが来店し、手際よくラーメンが作られていた

―――「マルナカ」以外にも朝ラーを売りにするラーメン店が増えました。それによって変わってしまったことなどはありますか?

以前は麺がなくなってしまい、せっかく来てくださったお客さんを断らなければならないことがありました。でも、今は近くに朝ラーをやっているお店ができたので、麺がなくなってしまった時は、そちらを紹介するようにしています。

あとは似たようなお店が増えたことと、飲食店自体も増えたので、お客さんをお待たせする時間が減りました(笑)

―――ポジティブですね!(笑)

お客さんにとってはメリットですしね。

それにまわりにお店はできても、ラーメンの作り方は昔と変わらないので。

「負けないぞ~!」と思っていた時もありましたが、そこまで根性もありませんから(笑)

―――やさしい世界…!バチバチしてなくてよかったです。

そばに寄せていた

―――営業時間を変えたことで、ラーメンの味や作り方も変えたんでしょうか?

初代が屋台でラーメン屋を始めた時、「脂っこくて食べられない」とお客さんにいわれたそうです。そもそもラーメン屋自体がなかったので、あまり好まれなかった。

それで、和風にして食べやすくしようとできたのが、今のラーメンです。「朝にピッタリなさっぱりラーメン」というのは後付けですね(笑)

麺も、そばとうどんとラーメンの、あいのこみたいな麺を使っています。

―――たしかに、温かいラーメンには一味をかけるし、冷やしラーメンにはわさびが乗ってるし…正直そばみたいだなぁと思ったんです!

そうですね。ラーメンになじみのないお客さんにおいしく召し上がっていただくために、そばに寄せていったんだと思います。

今も昔と変わらぬ自家製麺です。

ラーメンと思って食べると少し不思議な食感の自家製麺

ラーメンと思って食べると少し不思議な食感の自家製麺

―――「マルナカ」のお客さんはなぜ“おかわり”するようになったんでしょうか?

冷やしラーメンを作ったのも初代なんですが、昔は冷房も冷蔵庫もなかったので、冷たいというより常温の汁に洗った麺を入れていたそうです。 その後、冷蔵庫も買って今の冷やしラーメンができました。

おかわりができたきっかけは、1杯目に温かいラーメン、2杯目に冷やしラーメンを食べるお客さんがいるのに兄が気づいたことです。

昔は温かいラーメンと冷やしラーメンを一緒に出すか、あとから注文してもらうかのどちらかしか提供方法がなかったんですが、兄がお客さんの様子を見て考案しました。

そしたらそれが好評で、だんだんと注文が増えて今のようになったんです。

―――多くのお客さんがおかわりしていますよね。ラーメンの量もおかわり前提で作られているんですか?

それが…実は丼を変えたタイミングで、 注文したかった丼より大きな丼が来ちゃいまして。

最初はそれに少なく盛り付けていたんですが、見た目が悪いのでどんどん増やしていったんです。なので、量は昔に比べて多くなっています。

「昔は2杯食べられたのに最近食べられなくなったなぁ」というお客さんがいるんですが、食べられなくなったのではなく量が増えたんです(笑)

―――なんてハートフルなエピソード…!貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

「マルナカ」は藤枝の朝ラー老舗店として知られ、遠方からも多くのお客さんが訪れることもあるが、地元のお客さんが1番多いようだ。

地元の人に愛され、あたたかな雰囲気と昔から変わらぬやさしい味を感じられる、素敵なラーメン店だった。

ちなみに、1番空いてる時間帯は10時くらい、だそう!

藤枝市民がおすすめする、朝ラー店

今回、藤枝の朝ラー文化を探るにあたって、店の選定を地元の藤枝市に住んでいるラーメン通・松本仁志さん(まっちゃんだ!)にお願いした。

松本さんは「マルナカ」を筆頭に、さまざまな朝ラー店を教えてくれた。

最後にそれらを紹介して終わろう。

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