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こんな悪魔になら騙されてもいい。黒々しいのに、やさしい美味しさ「イカスミチャーハン」の魅力

白か黒。完全に分割できるほど単純な世の中じゃないけど、もし2分割するとしたら、白は善、黒は悪だと言われがちだ。

そして、白いご飯と黒いご飯。どちらが良い? と聞かれたら、白いご飯を選ぶ人が大多数だろう。というか、そもそも「黒いご飯ってなんだ?」ってなるんじゃないだろうか。

しかし黒いご飯は存在する。しかも美味いのだ。

歯ブラシを持参してでも食べたい「真っ黒いチャーハン」

まずは写真から見てほしい。こちらが、黒いご飯こと「イカスミチャーハン」だ。

黒い。どす黒い。極めて黒い。

「どうしたどうした。何があったんだ?」と思わず声をかけたくなる黒々しさである。「ひいっ」と悲鳴をあげたくなった人もいるかもしれない。

正直なところ、撮影した本人ですら、絶句しながら「まるで美味しそうに見えない写真だな……」と思っている。

というか、初対面のとき、「なぜこの食べ物を己の意思でオーダーしてしまったんだろう」とも思った。

だが勇気を出し、食べてみたところ「ああ、見た目で判断して本当にすみません……」と謝りたい気持ちでいっぱいになったのだ。

実は、イカスミチャーハンを口にする数分前に、お店の入り口付近で盛大にこけていた。

いい大人がこける。周りには人がいた。そりゃあもう猛烈に恥ずかしかったわけなんだが、そのあと出会った真っ黒なチャーハンがあんまりに美味しかったため、羞恥心や悲しみは、あっさりと相殺され、むしろプラスにすら転じた。

なお、この黒々しさは口周りにも、物理的な影響を及ぼしてしまう。食べた時のことを想像し、歯ブラシの必要性を感じた人がいたのなら、大正解だ。

食べ歩きに際し、歯ブラシセットの持参をおすすめする……と言ったら、ひるんでしまう人もいるかもしれない。だが、そのリスクを背負ってでも食べる価値は存分にある。

そこで今回は、東京周辺でイカスミチャーハンを食べられる、おすすめの3店舗を紹介したい。

カメラも困惑する黒々しさ。赤い中華屋さんのチャーハン

まずは、原宿の「麺'S 原宿」。原宿駅の竹下口から3分ほど歩き、地下に潜ったところにある。味わい深い手書き文字の看板が目印。

先に述べた、筆者が生まれてはじめてイカスミチャーハンを食べたお店である。なお先に言っておくと、このお店の紹介で使用する写真は、ほぼ赤・黒・白の3色で構成されている。

この店のイカスミチャーハンの正式名称は「黒チャーハン パートⅡ」。「パートⅡ」とはつかないただの「黒チャーハン」もあり、それはソースでつくられているという。

で、こちらが先ほども見ていただいた黒々しい姿である。一粒一粒、墨汁で丁寧に塗ったかのうように黒い。

カメラを向けていると、カメラ機能までもが、困惑のそぶりを見せてきた。どうやら皿の白と、ご飯の黒さのコントラストが強すぎるらしい。明暗をどう調整しようか、決めかねているようで、なかなかピントが合ってくれない。

だが、それで躊躇してはいけない。口に含むと、その印象は大きく飛躍を遂げるのだ。

生臭さは全くない。目をつぶって食べたらイカスミだって気がつかないだろう。悪魔のような見た目なのに、口のなかでは、天使まがいの勢いで優しさとまろやかさ、旨味を発揮してくる。こんな悪魔にだったら年中無休で騙されたいと思ってしまう。

具は、黒すぎるため、全く視認できないと思うのだが、小さく刻まれた焼き豚が入っていることをお知らせしたい。強めの歯ごたえが食感に、塩っけは味わいにアクセントを添えてくれる。

紅生姜と合わせて食べるのも最高だ。

キリッとした紅生姜の酸味が、イカスミの旨味成分を引き立たせている。たまらない。たとえ、見た目がドラキュラの一節みたいだとしても、だ。

イカセンター横浜西口本店でだけ食べられるチャーハン

さて。そんなイカスミチャーハンだが、イカ専門店でも食べられる。JR横浜駅西口から徒歩5分くらいのところにある「横浜イカセンター 横浜駅西口本店」だ。

「イカセンター」自体は、横浜だけでなく、各地に点在しているお店だ。

名前のとおり、メニューはイカだらけ。店内を生きたイカが泳いでおり、活き造りを注文すると、スケルトンのような透明なイカが出てきて驚愕してしまう。

だけど、今日はチャーハンだ。イカスミチャーハンは全店舗にあるわけではなく、このお店限定らしい。

やっぱりというかなんというか、黒い。

青ネギの緑色が、いつにも増して鮮やかに視界に飛び込んでくる。ただ、先ほどの黒々しさと比較すると、一段階やわらいだんじゃないだろうか。基準がおかしくなっている可能性は否めないが。

こちらも生臭さは全くない。同じことを繰り返してしまうが、目をつぶって食べたら、何の味わいだか当てる自信はさっぱりない。甘みと旨みとともに、かすかに塩っ気が漂い、そのせいか思わずお酒に手がのびてしまう。

このチャーハンの特筆すべき点は、メインの具が白身魚なこと。聞いたところ、その時々によって入れる魚が違うのだとか。鮮魚を扱うお店ならではだ。

「魚金」から独立したお店がつくる、居酒屋の〆チャーハン

最後の1店はサラリーマンの聖地、新橋にある。名前は「酒の魚 和海(なごみ)」。

かつて、人気居酒屋チェーン「魚金」で働いていた店主が、独立してつくったお店だという。木のぬくもりに包まれた、品の良い海鮮居酒屋といった雰囲気だ。

今回は紹介しないが「魚金」各店舗にもイカスミチャーハンがある。で、「魚金」から独立したというこのお店にもイカスミチャーハンがあるのだ。

どん。

十分黒いが、今回紹介したなかでは最も柔らかい見た目であろう。白地に紺で絵柄が描かれた上品なお皿が、心なしか、ビジュアルショックをやわらげ、美味しそうに見せてくれている……気がする。

いや、「気がする」のではなく、美味いのだが。こちらも青ネギが乗っており、歯ごたえがシャキシャキ。イカのほかに鶏肉も入っている。見た目の主張は強いくせに、味はあくまでも優しい。雨の日に捨てられた子犬を抱える不良とも、仲良くできるタイプなんじゃないかと思う。きっと。

ちなみに、帰り際にハーフサイズ(480円/普通サイズは780円)もあることを教えてもらえた。お酒やおつまみと合わせるなら丁度良さそうだ。食べてみたいけど不安……という人がスタートを切るのにもぴったりなんじゃないだろうか。

というわけで、黒々としたチャーハンを見続けてもらったわけなのだが、みなさんが少しでも、ビジュアルショックを払拭し、試してみたいと感じてくれたら幸いだ。

黒は悪とも限らない。少なくとも、イカスミチャーハンの世界に限っては、黒は善にもひっくり返るのだ。ぜひともチャレンジしてみてほしい。なにとぞ歯ブラシセットも持参のうえ。

ネッシーあやこ

ネッシーあやこ
ネッシーあやこ
群馬県出身、東京都在住のライター兼イラストレーター。食べものという食べものをすぐ口に入れたがる。特に好きなのは、派手じゃない郷土料理とカレー。スーパーと100円ショップが好き。
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